異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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ガンガルシア王国編

206話 主人公、怪異を討伐するー3

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 目の前にいるアルマジロ型の怪異トゥトゥーレは、大きな尻尾を振り回しながら、僕とシグルトに向かってくる。

 硬い金属のような巨大な尻尾に当たれば、ただではすまない。シグルトに当たれば、一撃で重傷だ。防御能力最強の僕がヤツの気を引かなくては。

 トゥトゥーレは巨大な尻尾で僕達を薙ぎ払おうとする。
 シグルトは小柄な身体をサッと翻して避けるが、僕はその尻尾を全身で受け止める。吹っ飛ばされないように、足を踏ん張って耐える。

 スゴイ衝撃だ。

 僕が受け止めたことで、トゥトゥーレの意識が僕に向いたようだ。執拗に僕を狙ってくる。 

 おっ、作戦は成功かな?
 これで、シグルトが自由に攻撃できるぞ。
 しかし、トゥトゥーレは硬い。ハルバードの攻撃も効いていないように見える。

 その間にタムは、弓を取り出して矢を放つ。トゥトゥーレの硬い表皮の隙間の柔らかそうな部分をピンポイントで狙う。矢は当たった瞬間に、爆発する。普通の矢ではないようだ。

 タムって、ホント何でも使えるんだ?元討伐者に教えてもらったって言ってたけど、その人がスゴイのか、タムの才能がスゴイのか…。

 矢は確実に当たっているが、トゥトゥーレはビクともしない。弱点は、無いのか?

「アリシア!トゥトゥーレの弱点とかって無いの?」

「いま考えてるわよ!ソイツ、普通のトゥトゥーレとは違うようだわ!仕方ないわね。物理攻撃が効かないタイプには、術式攻撃よ!発動に時間がかかるから、少し時間稼ぎしててね!」

 なんだか嬉しそうに指示をしたアリシアは、その後何かに集中している。

 強力な術式は、発動に時間が必要だというが…。

 僕とシグルトは、トゥトゥーレの意識がアリシアへ向かないように攻撃を繰り返す。タムはアリシアをガードしながら、隙を見て攻撃を加えていた。

 しばらくすると、アリシアから声がかかる。

「展開完了!発動するわよ。私の指示する場所に誘い込んで!」

 その言葉に僕とシグルトは、トゥトゥーレを指定の場所へと誘い込む。
 地面の上にかかれた術式の上に怪異が乗ると発動する仕組みのようだ。

「よし!上手く乗ったようね!」

 怪異が術式の上を通過しようとした瞬間、凄まじい炎柱が上がる。トゥトゥーレは逃げようともがくが、包み込むように結界が発生して、逃げられない。

 トゥトゥーレは手足を引っ込めて、丸くなるが、あの炎では助からないだろう。

「うふふっ。逃げられないわよ。それに丸くなってもダメよ。蒸し焼きにしてあげる。」

 クスクスと笑いながらその光景を見ているアリシアは、狂気を感じさせる表情をしていた。

 そして、そのままトゥトゥーレは動かなくなった。

「はい、討伐完了!じゃ、ラトニー、後始末よろしくね。」

「了解なのである。」
 ラトニーは、黒焦げになったトゥトゥーレの方を向いて、いつもとは違う声を出す。
「怪異トゥトゥーレの機能全停止を確認。討伐完了を報告。回収します。」

 その後、トゥトゥーレを包み込むように光が発生して、僕達の目の前から消えた。

「はい。これで怪異討伐完了よ。簡単でしょ?それにしてもメンバーが増えるといいわね。あんな術式、使ったことなかったわ。展開に時間がかかるから…。うん、楽しかったわね!」

 アリシアは嬉しそうだが、シグルトは不満のようだ。ハルバードを握りしめながら、「……。つまらない」とつぶやく。

「シグルト、怪異討伐には相性がある。あなたのハルバードは完璧じゃない。打撃も斬撃も効かない相手はいる。それは仕方ないわ。だからチームを組むの。その中でやれることを増やしていけばいいのよ。」

「……。わかった…。」

 アリシアに諭されたシグルトは、ようやくハルバードを紋章システムに収納する。

 こうやって、シグルトを諭すアリシアはとても常識的に見える。
 が、さっきの狂気の表情を忘れられない僕は、不安が大きくなるのだった。



 その後、トゥトゥーレを討伐した場所付近で他の怪異をさらに3体倒すことができた僕達は、町へと戻った。そして、またオヤジさんの店で反省会を兼ねた夕食をとることにした。

 今日も自分で食事と飲み物を出したアリシアは、上機嫌で話し出す。
「トゥトゥーレの後は簡単だったわね。小型の怪異で、シグルトのハルバードが効く相手ならかなり楽勝になってきたわ。タクミは気になったこと、ある?」

「とりあえず、討伐の流れは分かったけど、確認してもいいかな?」

「いいわよ。何でも聞いて!」

「えっと、最初に討伐対象か確認して、討伐したら、パートナー精霊に後始末を頼む。こういう流れでいいのかな?」

 討伐者の仕事がどういうものか分からない僕は、素直に聞く。この世界では、自分の興味がないものは学ばないから、全く知らないことも珍しくない。知らないことは恥ずかしいことではないので、相手が年下でも素直に聞ける。
 これが日本だったら、変なプライドのある人ほど、年下に聞くことを拒否するだろうけど。

「そうよ。タクミは本当に討伐者に興味がなかったのね。」

「うん。今回はある人に誘われてこの国に来たんだよ。そして、討伐者の仕事を体験したくなって。」

「それなら、私が詳しく説明してあげるわ。そして、このまま私達のチームに本当に入ってくれるといいのだけど。ふふっ。」
 アリシアはニッコリと笑うと、討伐者のルールを話しだした。
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