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ガンガルシア王国編
205話 主人公、怪異を討伐するー2
しおりを挟む町から北に行った山岳地帯には、標高の高い山々が連なっている。
ガンガルシア王国の国土の大部分は、荒廃した土地。草木の生えない荒れた土地が広がっているという。
紋章システムが開発されるまでは、この世界ではいつもどこかで戦争が起こっていた。特にこのガンガルシアのある大陸には、いくつもの国があり、様々な理由で戦争を繰り返していた。
領土争いや貧富の差による反乱、軍事大国による侵略など、それこそ終わりが無いのではないかというくらい、戦乱の時代が続いた。
そして、ついにそれは起こる。
戦争で疲弊した人々の心にグールが取り憑き、強力な怪異が多数発生。この大陸にあった国を滅ぼし、そして、この大陸は不毛の土地となったそうだ。
「それって、ホントのことなの?」
ミライの説明に、疑問を口にする。
「あい!半分ホント。本当はね。怪異だけのせいじゃないんだよ。強大な怪異を倒そうと、ある大国が禁術を使用してしまったんだ。その術のせいで、この大陸には草木があまり生えないんだよ。まぁ元々、この大陸ってあまり気候が良くないから、農地には向かないんだ。わずかな農耕地を取り合って戦争をしていたのに、禁術のせいで貴重な土地も不毛な土地になってしまった。」
戦争って、ホント嫌だな。人の都合でこんな土地にしてしまうなんて…。
だからタイジュは、怪異討伐の場所にこの大陸を選んだってことか。農耕地として利用できないし、こんな何も無いところに住みたいって人もあまりいないだろう。
今まで行った他の国は、緑が豊かでキレイなところだった。同じ世界だとは思えないな。
「さぁ、そろそろ目的の地点よ。今日はこの辺りが怪しいと思うの。何かが出てくれるといいけど…。」
アリシアの指示で、ホバーを降りる。ここからは付近を警戒しながら、歩くという。
「いつもこんな感じで討伐してるの?」
「そうよ。私が推測した地点で怪異の出現を待つの。昨日はたまたま町から近い場所に怪異が出現したから見学に行ったのだけど、そこでタクミとタムに会えたのは運命だったわ!行って良かった!」
「ははっ、運命ね。それはありがとう。それにしても、他のチームはいないね。ここには、集まってないのかな?」
「タムの言っていた歪みは、狭くても半径数キロよ。なかなか他のチームと出会うことはないわ。それに、怪異は必ずヒトを襲う。だから、多くのチームは町の近くで待ってるの。待っていれば、怪異が現れるから。でも、早い者勝ちだから、大変よ。」
「アリシアとシグルトが半年で多くの怪異を討伐できたのは、基本的に町の近くでの討伐をしないからなんだね?出現予測ポイントで出現を待って、できるだけ他のチームと奪い合わないようにしてるってことか。」
「うん、そうよ!でも、たまには他のチームと奪い合うこともある。私達には、時間がないの。他のチームには構ってられないわ。ガンガルシアの討伐は早い者勝ちなんだから!」
「早い者勝ちって具体的にどういうことかな?」
僕はミライにこっそり聞く。
「あい!それはね、先に一撃いれた人のものってことだよ!」
攻撃したチームが優先ってことか!
ミライとそんな話をしていると、周りの空気が変わったのが分かった。
何か、来る?
イヤな気配を察した僕は、ドラゴンの瞳を発動して上空を見る。すると空間に穴があいていた。そこから、異形のモノが這い出てくる。
が、アリシア達の様子は変わらない。
みんなには見えていないのか?
異形のモノが完全に出てくると、穴は閉じる。そこでやっと、アリシア達にも視認できるようになったようだ。
「やった!今日も出現したわ!ラトニー、あれは何?」
アリシアが聞くと、メタリックボディのラトニーが現れ、返事をする。
「あれはたぶんトゥトゥーレである。今まで出現したものとは形状が少し異なるが、間違いないのである。」
ラトニーがトゥトゥーレと呼んだ怪異は、大型バスくらいはある岩の塊だった。
「討伐対象ね!じゃ、タクミ。ドラゴノイドに変現して。それは堅そうに見えるけど、打撃が効くはず。」
打撃が効く?
それより、これってただの岩の塊に見えるけど…。
僕はアリシアに言われた通り、ドラゴノイドに変現する。そして大きく飛ぶと、硬化させた腕の鱗で怪異の中心を、上空から殴打する。
ガキンッ!!!
岩ではなく、硬い金属のような手応えだ。
見た目通りじゃないってことだな。
しかし、打撃が効いてないような…。
僕は何度も拳を打ちつけるが、ビクともしない。
「変なのである。今までのトゥトゥーレは、殴打すると、手足が出てきたのである。」
僕が攻撃の手を緩めると、今度はシグルトがハルバードを振り回しながら、走ってきた。そして、トゥトゥーレの側面を殴打する。
トゥトゥーレは派手に吹っ飛んでいく。
あのデカイ塊を吹っ飛ばすのか?スゴイ威力だな!
すると、ただの塊だった物体から、頭と尻尾、手足が生えたのだ!
亀?いや、アルマジロに近いんだ!
丸まっていた形態から手足を出したトゥトゥーレは、さらに大きく見える。
表面は金属のように硬い。
こんなもの、どうやって討伐するんだろう?
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