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ガンガルシア王国編
204話 主人公、怪異を討伐するー1
しおりを挟む次の日の朝。
僕達は朝食を食べながら、討伐の作戦をアリシアから聞いていた。
「シグルト、今日から4人で討伐に行くわよ。当然、作戦も変更になるからよく聞いてね。」
アリシアの言葉にシグルトはコクリと頷く。
「とりあえず今日は、タクミとタムの得意と不得意が知りたいわ。あまり無理はせずに、小型の怪異と遭遇した時だけ戦闘しましょ。」
へぇ、アリシアって無闇に戦うばかりじゃないんだな。退いたことは無いって、ラトニー達は言ってたけど、討伐する怪異をキチンと選んでいたんだ。
「アリシア。僕は、実戦は初めてなんだよ。何が出来るのか、よく分かってないから教えてくれるかな?」
「あら、タクミって年下にも敬意を払える人なのね。」
アリシアが感心したように言う。
「僕は討伐の素人だからね。討伐者になって半年でも、アリシアとシグルトの方が経験がある。経験者に聞くのは重要なことだと思うよ。」
「ふふっ。やっぱりタクミに声をかけて正解だったわ。良いチームになりそうね。」
アリシアは嬉しそうに笑う。こうしていると、本当に普通の子に見えるのに。
「タクミはドラゴノイドだったわね。何かできることはある?」
「そうだな…。僕は全身に鱗の鎧を纏うことができるから、基本的にはそれで相手を殴り倒すことが多いな。腕の鱗だけを大きな爪のようにして、相手の核を粉砕したり。後は、竜の鱗に追跡機能を持たせて、相手を追尾、当たった瞬間に爆破させることも出来るよ。」
「へぇ、スゴいわ。タクミってば、いろいろなことができるのね。タムは?何か得意なものはあるかしら?」
アリシアがタムの目を見て聞く。
「オラは普通のファーマーだ。得意なものはないべよ。ソコソコのものばかりだべ。なぁ、碧?」
タムは自分のパートナー精霊に呼び掛ける。すると、左手が光って碧が出てきた。
「アリシア~。タムはね~。器用貧乏なんだよ~。」
「器用貧乏?」
「タムは、どの武器もソコソコ使えるよ~。でも、これだ!っていう武器がないの~。だからシグルトみたいに、ひとつの武器で戦ってる人が羨ましいんだよ~。術式もソコソコなの~。」
「んだんだ。オラは平凡なファーマーだ!それに誇りをもってるだ!」
「でもね~。本人はソコソコだって言ってるけど、ヴォルケーノスフィアも展開できるんだよ~。」
碧の発言に、アリシアがとても驚いている。
「えっ?あの術式の展開は、普通の人にはできないわ。タム、あなた何者なの?」
「だから、普通のファーマーだべ。」
タムの表情は変わらない。タムには自覚がないようだ。
やっぱりタムって、スゴイ才能の持ち主だったんだな。小さな頃から病気がちで、成人してからもスカラで病気治療してたから、あまり他人と比べたことがないんだ。だから自覚が無いんだな、きっと。
「タクミとタムのことは分かったわ。そうね。今までは私が牽制役をしてたけど、タクミにやってもらおうかしら?ドラゴノイドの身体防御能力は抜群らしいし。その後、シグルトがハルバードで攻撃。タムは様子を見て、加勢して。いろいろな武器を使えるなら、その時々に合わせることができるわね。私はその間に怪異の弱点を探るわ。みんなが戦ってる間に、強力な術式を展開できるし…。うん!いいチームになりそう!頑張りましょうね!」
作戦会議を兼ねた朝食を終えた僕達は、初めての討伐に向かったのだった。
町から出て、ホバーに乗る。今日は北の山岳地帯に行くという。
「そういえば、怪異が出現するポイントは分かるの?」
僕はミライに、素朴な疑問を投げかける。
「あい!怪異の出現は特定できないよ。だから、近くにいたチームの早い者勝ちなんだ。でも経験あるチームだと、どの辺りに出るのか分かるみたいなんだ。不思議だよね。」
ミライの解説に、アリシアがフフッと笑う。
「ミライの言ってることは、間違いじゃないわ。怪異の出現場所は特定できない。でもね。私、あることに気付いたの。怪異が出現する時って、空間が不安定になる。怪異は異世界からやってくるって話は本当だと思うの。つまり、怪異がこの世界に入ってくる時に、空間に穴が開く。すると、周りの精霊達が騒ぐ。経験のある討伐者は、それを感じ取ってるのだと推測してるのよ。」
アリシアの言葉にタムが驚く。
「それはアリシアが自分で考えた推測だべか?天才ってのは、本当だべなぁ。」
「あら、誉めてくれるの?ありがとう。でもタムは何かを知ってるのね。」
「昔、戦闘訓練してくれた元討伐者に聞いただよ。その人は空間が不安定になることを"歪み"と呼んでいただ。その歪みは、日によって出る場所が違う。だから、ガンガルシアの様々な場所で怪異が出現するのだと。」
「つまり、その歪みが出てる場所に怪異が出現しやすいってことだね?経験豊かな討伐者は、その歪みを感じとって、その付近で怪異の出現を待ってるってことか。」
「そうよ。討伐数が多いチームには、必ずシルフやドラゴノイドの血が強い人がいる。たぶん、精霊の変化を感じとっているのだと思うの。私は過去の怪異の出現データとガンガルシア王国の精霊濃度のデータから、次に出現するポイントを推測してるのだけど。」
データから、出現ポイントを推測だって?
そんなことができるなんて…。アリシアって、ホントに天才なんだ!
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