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ベアルダウン王国編
189話 主人公、異世界の秘密を知るー1
しおりを挟むトゥーラが案内してくれたのは城の最上階だった。その部屋に入った僕は、すぐに息が苦しくなる。
むせ返るほどの精霊!
この部屋には精霊が集まっている。いや、集まり過ぎている。
「この部屋はなんだか息苦しいね。アタイには少し居心地が悪いよ。」
アズマのところで修行したユーリは、この部屋の精霊を感知できているようだ。
「精霊濃度が異常だよ。苦しいのはそのせいだ。」
「外の大陸には精霊がほとんどいないのに、この部屋には集まっているだって?」
「うん。この城の中にも精霊が存在してるよ。でもこの部屋には異常な程の精霊が集まっている。」
「タクミ様。精霊が集まっているのには理由があるのです。それは、これです。」
トゥーラはそう言うと、部屋の奥を見るように促す。
奥には肖像画で見た精霊王の姫がいた。
全身の肖像画?いや、違う!
綺麗な金色の髪、尖った耳の特徴を持つハーフエルフの姫は、透明な球体に包まれて浮かんでいたのだ。
目は閉じている。
「この城の姫さまです。」
「生きているのかい?」ユーリが訪ねる。
「生きてるよ。仮死状態だけどな。」
姫の前に誰かが現れた。姿が透けている。トゥーラと同じだ。立体映像?
「精霊王の城へようこそ。外の砂のガーディアンを倒したのか?お前達の強さは本物だな。」
「あっ、あの。貴方は?」
「あっ、そうか。はじめまして、だな。オレの名前はタイジュ。お前達が初代王と呼んでる存在だ。」
タイジュと名乗ったのは、まだ幼さが残る高校生くらいの男性だった。
「初代王?ということは、今のセシルさまの前世の人物?」
「まぁ、そういう事になるな。」
「貴方は一体…。それにその姿は…。」
「今のオレはただの管理人。肉体は遥か昔に死んでるが、記憶だけを特別に残したんだよ。これを管理するためにな。」
「管理人?何を管理するのです?」
ライルの質問にタイジュは即答する。
「もちろん、オレが作った紋章システムだ。」
「紋章システム?ソレはドコに?どのような仕組みなのデスか?」
カシムが興奮気味に質問する。
「ハハッ!ちょっと落ち着けよ。それを詳しく説明するために、お前達をここに呼んだんだよ。」
「えっ?あの映像の続きを教えてくれるんじゃないの?精霊王の姫はどうして、こんな状態に?」
「おっ、お前が先祖返りのドラゴン、タクミ。そして、肩にいるのが人工精霊のミライだな。時代は進化してるねぇ。」
なっ、何?この人?
質問に答えてくれないよ…。マイペースなのか?
「ちょっと長い話になるから、茶でも飲んで聞いてくれよ。」
タイジュはそう言うと、部屋の真ん中にテーブルと机、そしてトゥーラが出してくれた飲み物まで再現する。
「んじゃ、面倒クセーけど、説明するぞ。」
タイジュは、精霊王の姫のことを話し始めた。
「お前達が見たのは、ヒト種の姫が国に帰って行くところまでだな?」
「はい。精霊王の姫は自分が世界を守らなくてはと思い詰めていた。それから、どうなったんです?」
僕は、あの時の精霊王の姫の思念を思い出して、苦しくなる。精霊王と王妃が亡くなったのは自分の所為だと、彼女はとても自分を責めていた。
「あの後、何年も進展は無かった。異世界への穴は開いたまま。そこから現れる異形のモノ達は龍王達が退治してくれるが、この世界の多くの人が犠牲になった。地震や噴火などの自然災害も多くてな。人がいっぱい死んだよ。」
「空白の歴史と呼んでる期間は200年です。まさか、その間ずっと異世界への穴が開いていたのですか?」
「ライルは歴史家だったな。そうだよ。異世界の穴を閉じるのに、200年もかかったんだ。」
「ソラは?精霊王は言っていたよね?困ったことがあったら、ソラを呼ぶようにって。」
「ソラが現れたのは、精霊王が消えてから50年も経った後だった。この城の姫さんは、その間ありとあらゆることを試していた。でも、異世界への穴を塞ぐことはできなかった。異世界への扉を管理できるのは、精霊王だけなんだよ。」
「ソラは50年もどこに?」
「異世界に行ってたらしい。面白いものを見つけたから、遊んでいたって言ってたよ。この世界に戻ってきたソラは、すぐに城に現れた。※※※※、死んだのか?が第一声だったよ。姫さんはそれまでにあったことを話した。細かく話さなくても、ソラはすべてを理解したようだった。ドラゴンにはそういうチカラがあるんだろ?タクミ。」
「そうですね…。ドラゴンの瞳は相手の思いを感じることができるから。しかもソラは、この世界の精霊達の声を聞くことができる。それに、精霊王の思念が残っていたと思いますよ。精霊王は最後、ソラに姫のことを頼んでいた。そういう強い思いはいつまでも残るから。」
「そうか。だからソラは…。」
タイジュは少し考え込む。
「それからソラは姫さんを鍛え始めた。チカラの使い方を教えようとしたんだ。ドラゴンは異世界に移動できるチカラがある。でも異世界の穴を塞ぐことはできない。だから、姫さんが頑張るしかなかった。」
「ソラは、ドラゴンは異世界最強だって言ってたのに。異世界の穴は塞げないって、なんだよ。」
「万能なヤツなんていないさ。誰にでも得意と不得意がある。」
「んだども、異世界の穴を塞ぐだけでこの世界は助かるだべか?」
「さすが!タムは鋭いな。お前達には、この世界の成り立ちを教えるよ。ソラに聞いたから、どこまで真実か分からないが。」
「この世界の成り立ち?」
「この世界はソラと精霊王が作ったんだとよ。」
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