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ベアルダウン王国編
188話 主人公、精霊王の秘密を知るー6
しおりを挟む「お目覚めになってすぐに申し訳ありませんが、避難している国民の代表者から話がありました。自分たちも外に出て、龍王様たちを手伝いたいと。」
「でも、外は危険よ。異世界への穴が開いているし。私にはまだ穴を塞ぐチカラは無い…。」
「えぇ。危険なことは説明しました。ですが、今まで精霊王様の加護で幸せに暮らしていた。その恩返しがしたいと言うのです。精霊の声が聞こえる精霊種達は、精霊王様と王妃様に何が起こったか分かっています。ヒト種が精霊王の呪いだと言いふらしていることも。」
「そうよ。ヒト種が父さまを殺したから世界はこうなってしまったのに、ヒト種はこれを精霊王の呪いだと言っている。すべてはヒト種のせいなのに。ヒト種がこんな事をしなければ、あの呪いも発動することは無かったのに…。」
「彼らは、このままでは妖精種や獣人種とヒト種で争いになると心配しています。」
「妖精種や獣人種は、父さまがこの世界を守っていたことを知っているから…。」
「国民達は、関係のないヒト種と争いが起こることは、精霊王様も王妃様も望んではいない。自分たちが外に出て、争いが起こるのを少しでも止めたいと言っています。」
「全てのヒト種が悪いワケじゃない。犯人が悪い…。そうよね。その通りね。みんな…。ありがとう…。」
姫は涙ぐみながら、決断する。
「この城には父さまの強固な結界が張ってある。一度外に出たら、戻ってこれないわ。それでもいいのね?」
「はい。私から皆に説明しました。それでも行くと。ただし、わたしの独断でひとつの術を行使しました。外に出る皆に、知り得た情報をこちらに送ってもらおうと思います。」
「情報?」
「はい。精霊王様は言っていました。異世界の穴が開くことで、大切な技術や文化が失われると。それに、どんな事が起こるのか分からないと。ですから、外に出る皆には、大切な技術や文化、異変について見たり聞いたりしたことを、こちらに送ってもらいます。そして、この城で保管します。それらがいつか役に立つでしょう。」
「ありがとう、トゥーラ。」
「身体の弱いものやまだ小さい者数名を残して、皆を各地へ転移させます。目印はこの紋様。」
「それは…。父さまの、精霊王の紋様?いえ、少し違うわね。」
「はい。これは私達、精霊王の民の紋様です。精霊王様のことを忘れないように。いつか外の世界で出会った時に、お互いが精霊王の民だと分かるように。」
「わかったわ。私が皆を転移させます。出来るだけ被害が少ない土地へ。」
「はい。では、姫さま。よろしくお願いします。」
こうして、精霊王の民はエレメンテ各地へ転移していった。
(この精霊王の民が、流浪の民のはじまりなんだ!だから、世界各地で紋様の付いた物が発見されたんだ!)
「ヒト種の姫はどうしているの?」
精霊王の民を転移させた姫が聞く。
「従者の方たちと部屋で過ごしてもらっています。でも、あの方達の様子が少し…。」
「やはり変化が起きてしまったのね…。私が説明するわ。トゥーラもついてきて。」
姫は、ヒト種の姫の部屋を訪ねる。
「△△△、体調はどう?」
「◯◯◯様、お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。あっ、あの。お話というのは…。」
「あなた達に起こっている変化について話そうと思って。あなた達は、母さまの、王妃の血に触れたわね?」
「はい…。ここにいる者達が、私の手や服に付いていた血を拭ってくれました。」
「王妃の血には、父さまの、精霊王のチカラが含まれていた。それをあなた達は浴びてしまった。強過ぎるチカラであなた達の身体は変化してしまったのよ。」
「それは…、どういうことですか?」
「普通のヒト種ではなくなってしまった。あなた達は普通のヒト種より、長命になるでしょう。そして、△△△。直接血を浴びた貴女は簡単には死ねない身体になってしまった。」
「そう、だったのですね…。きっと、それが私への罰。長く生きて罪を償えということなのでしょう。」
「ごめんなさい。私にはどうすることもできない。私には父さまのようなチカラが無いから…。」
「いえ、いいのです。私はこのまま生きていきます。そして、◯◯◯様を手伝わせてください。私が犯人を見つけます。犯人は王宮にいるのでしょう?」
「犯人には、父さまが印を付けたわ。精霊王の紋様が犯人の身体のどこかに必ず現れる。魂に刻まれているから、憑依したとしても隠すことはできない。」
「分かりました。必ず見つけます。」
こうして、ヒト種の姫達は自分の国に帰っていった。
「父さまが居なくなったこの世界を守るのは、私の役目…。父さまと母さまがあんな事になったのは、私があの事を話してしまったからよ。だから、私が。私がこの世界を守るのよ。」
ここで映像は終了した。
目を覚ますと、トゥーラが僕達を見つめていた。
「いま見たものが真実です。そこからどう判断されるかは、あなた達次第です。」
トゥーラの言葉に、僕達は黙る。
いろいろな情報が一気に入ってきたため、処理できない。
「とっ、とにかく。情報を整理しましょう。」
いち早く発言したのは、ライルだ。
「この建物は精霊王を祀る神殿ではなく、精霊王の居城だった。精霊王はエンシャントエルフで、妃はヒト種。その肖像画の姫は、エンシャントエルフとヒトの間の子供。精霊王は何者かに操られたヒトの姫に殺された。精霊王はヒトを呪って死んだのではなかった。呪いは、呪いを抑え込んでいた精霊王が死んだから発動した。
そして、流浪の民とは精霊王の民のことだった。」
「ヒト種を呪いながら死んだというのはウソだったんだね。精霊王の指示でそう書いていたんだ。」
「ソラが言っていたね。『書いてあることが全て真実とは限らない』って。あれは、この事だったんだ…。」
リオンとシオンが、そうつぶやく。
「精霊王自身が精霊王の呪いとするようにと指示したことで、全ての異変は精霊王の所為になった。その後、人々は呪いを恐れて精霊王のことを記録から消した。だから、精霊王に関する書物が残ってないのですね。」
ヒト種を呪いながら死んだっていうのは真実では無かったけど、実際に呪いが発動したし、異世界の穴からは怪物が大量に出現した。その時代の人々は、精霊王を恐れたんだ。
「では皆様には、その後の話をしたいと思います。こちらについてきてください。」
いつまでも茫然としている僕達を見かねたトゥーラが、僕達に指示をする。
その後の話って?
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