172 / 247
イリステラ王国編
158話 主人公、ドラゴンの本質を知るー3
しおりを挟む「ようこそ、恋愛成就の神殿へ!って、タクミじゃん!」
やっぱりソラ!
「数百年ぶりにカップルが来たと思って喜んだのに、タクミなのかよ~!」
「そんなに残念がらなくても。本当のカップルかもしれないよ?」
「それはないな!だって、タクミはまだ子供だし。ドキドキするような相手にはまだ出会ったことはないはずだから、本当のカップルじゃないだろ!」
そっ、それはそうだけど!
断言されるのも、なんだか納得いかないなぁ。
「ねぇねぇ、もしかしてドラゴンのソラ?私、ティアだよ!」
「ティア?ラシードの横に常にいたティア?」
「わーい、久しぶりだね!でもその姿…、何かの作戦中?」
作戦?なにそれ?
「それは秘密だぞ!それにしてもティアは変わってないなぁ。元気に恋してるようだな!」
「うん!ラシードが亡くなる時に、ティアだけの運命の人を見つけろって言うから、ずっとそうしてきたの。」
「そうか、ラシードはティアを本当に大事にしてたんだなぁ。」
ソラが懐かしそうな目でティアを見ている。その眼差しは、子供には見えない。
「ソラとティアって知り合いなの?」
「うん!ティアが精霊種として生まれた時に、ソラも居たんだよ!ソラのおかげでティアは人型になれたの!」
「ティア、そこまでだ!まだタクミにはその話は早いからな。秘密だぞ!」
「そうなの?じゃ、黙ってるね!」
なに?教えてくれてもいいのに。
「それにしても、ティアはまだラシードが好きなのか?」
ソラはティアの思いを言い当てる。ティアの思念を読んだんだな。
「うん!でもタクミに、ラシードとは違う愛を探すように言われたの。ラシードと他の人を比べちゃダメだって。」
「そうだぞ!ラシードはもう居ない。同じ愛を求めていても、それは見つからない。そうだ!ここのダンジョンをクリアしたご褒美に、ティアに良いことを教えてやるぞ。」
「なぁに?」
「ラシードのことだよ。ラシードがどうしてティアと結婚しなかったのかを。」
「だって、それはアリアと結婚してたからでしょ?」
「いや、アリアが亡くなった後にティアと結婚できたはずだ。」
たしかにそうだ。一夫一妻制度では、配偶者が亡くなった後に再婚することができる。ラシードはどうして、ティアと結婚しなかったんだろう?
「ラシードは別名、色欲のイリスと呼ばれていた。ラシードは異常なくらい女性にモテるんだよ。」
そっ、それはうらやましい!
「が、ラシードはそれで困っていた。好意をもっても、実際に相手の女性と付き合うと豹変してしまうことが多かったからだ。」
「豹変って?態度が急に変わるってこと?」
「ラシードを独占したいという気持ちになるらしくて、他の女性と話すのもダメ、一緒にいるのもダメ、などと束縛が激しくなる。それでラシードは、誰とも付き合わなくなった。」
「でも、アリアと結婚したよ?」
「そうだ、ティア。アリアはラシードを束縛しなかった。だから、ラシードはアリアを選んだんだぞ。」
「アリアが特別だったってこと?じゃあ、やっぱりアリアがラシードの運命の人だったんだね。」
「それは違う。アリアもラシードを独占したいって気持ちはあったと思うぞ!ただし、アリアはすべてを受け入れる広い心の持ち主だった。」
「すべてを受け入れる?」
「アリアは、ラシードが女性にモテるのを分かっていて、結婚した。こんなにモテるラシードが自分を選んでくれた。それだけで嬉しいと言っていたよ。そして、もし、ラシードに他に好きな人ができたら、それを受け入れると言っていた。大好きなラシードが好きになった人なら、自分も好きになれるって言ってたな。」
「それって、結婚相手の男性には逆らえないっていう日本の古い考えみたいだね。」
「タクミ、それとは違うぞ。アリアは強い女性だった。ラシードが自分を好きでいてくれる間は、一緒にいたいと言っていた。」
「アリアはいつも言ってたよ。ラシードがアリアの事を嫌いになったら、出て行くって。それでいいって。人の気持ちは永遠に続かないこともあるけど、それは仕方ないことだって。でもだからこそ、この気持ちがあるうちは一緒にいたいって、言ってた。」
「すごい女性だね。理解があるというか、達観してるっていうか…。」
「他の女性に『ラシードのことが本当に好きなら独占したくなるはず!そうならないアリアは、ラシードのことが本当に好きじゃないのよ!』って言われて、こう反論してたよ。『好きって気持ちは自分だけのものよ。本当の好きかどうかなんて、貴女に決められたくない』って。」
「優しいだけの女性じゃないんだね。」
「そうだよ。だからラシードはアリアと結婚したの。優しくて強いアリアとね。」
「ティアは、アリアのことも大好きなんだね。」
「うん!2人とも大好きだったよ。」
「ラシードがティアと再婚しなかった理由は、ただひとつだよ。ティアには、そのままでいてほしかったからだ。ラシードと付き合う女性は、豹変してしまう。ティアには、そうなってほしくなかった。だから、再婚せずに、そのままの関係でいたんだよ。ティアが本当に好きだったから。」
「そうなんだ…。ティアはラシードに愛されていたんだ…。ありがと、ソラ。教えてくれて。」
人を好きなるっていろいろな形があるんだな。僕には恋と愛の違いも分からないけど、好きって気持ちは自分だけのものっていうアリアの考えには賛成だな。
「じゃあ、次はタクミにご褒美だ。タクミがドキドキするような相手に会ったことがない理由を教えてやるぞ!」
えっ?それって、理由があったんだ?
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる