異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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イリステラ王国編

158話 主人公、ドラゴンの本質を知るー3

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「ようこそ、恋愛成就の神殿へ!って、タクミじゃん!」

 やっぱりソラ!

「数百年ぶりにカップルが来たと思って喜んだのに、タクミなのかよ~!」

「そんなに残念がらなくても。本当のカップルかもしれないよ?」

「それはないな!だって、タクミはまだ子供だし。ドキドキするような相手にはまだ出会ったことはないはずだから、本当のカップルじゃないだろ!」

 そっ、それはそうだけど!
 断言されるのも、なんだか納得いかないなぁ。

「ねぇねぇ、もしかしてドラゴンのソラ?私、ティアだよ!」

「ティア?ラシードの横に常にいたティア?」

「わーい、久しぶりだね!でもその姿…、何かの作戦中?」

 作戦?なにそれ?

「それは秘密だぞ!それにしてもティアは変わってないなぁ。元気に恋してるようだな!」

「うん!ラシードが亡くなる時に、ティアだけの運命の人を見つけろって言うから、ずっとそうしてきたの。」

「そうか、ラシードはティアを本当に大事にしてたんだなぁ。」
 ソラが懐かしそうな目でティアを見ている。その眼差しは、子供には見えない。

「ソラとティアって知り合いなの?」

「うん!ティアが精霊種として生まれた時に、ソラも居たんだよ!ソラのおかげでティアは人型になれたの!」

「ティア、そこまでだ!まだタクミにはその話は早いからな。秘密だぞ!」

「そうなの?じゃ、黙ってるね!」

 なに?教えてくれてもいいのに。

「それにしても、ティアはまだラシードが好きなのか?」

 ソラはティアの思いを言い当てる。ティアの思念を読んだんだな。

「うん!でもタクミに、ラシードとは違う愛を探すように言われたの。ラシードと他の人を比べちゃダメだって。」

「そうだぞ!ラシードはもう居ない。同じ愛を求めていても、それは見つからない。そうだ!ここのダンジョンをクリアしたご褒美に、ティアに良いことを教えてやるぞ。」

「なぁに?」

「ラシードのことだよ。ラシードがどうしてティアと結婚しなかったのかを。」

「だって、それはアリアと結婚してたからでしょ?」

「いや、アリアが亡くなった後にティアと結婚できたはずだ。」

 たしかにそうだ。一夫一妻制度では、配偶者が亡くなった後に再婚することができる。ラシードはどうして、ティアと結婚しなかったんだろう?

「ラシードは別名、色欲のイリスと呼ばれていた。ラシードは異常なくらい女性にモテるんだよ。」

 そっ、それはうらやましい!

「が、ラシードはそれで困っていた。好意をもっても、実際に相手の女性と付き合うと豹変してしまうことが多かったからだ。」

「豹変って?態度が急に変わるってこと?」

「ラシードを独占したいという気持ちになるらしくて、他の女性と話すのもダメ、一緒にいるのもダメ、などと束縛が激しくなる。それでラシードは、誰とも付き合わなくなった。」

「でも、アリアと結婚したよ?」

「そうだ、ティア。アリアはラシードを束縛しなかった。だから、ラシードはアリアを選んだんだぞ。」

「アリアが特別だったってこと?じゃあ、やっぱりアリアがラシードの運命の人だったんだね。」

「それは違う。アリアもラシードを独占したいって気持ちはあったと思うぞ!ただし、アリアはすべてを受け入れる広い心の持ち主だった。」

「すべてを受け入れる?」

「アリアは、ラシードが女性にモテるのを分かっていて、結婚した。こんなにモテるラシードが自分を選んでくれた。それだけで嬉しいと言っていたよ。そして、もし、ラシードに他に好きな人ができたら、それを受け入れると言っていた。大好きなラシードが好きになった人なら、自分も好きになれるって言ってたな。」

「それって、結婚相手の男性には逆らえないっていう日本の古い考えみたいだね。」

「タクミ、それとは違うぞ。アリアは強い女性だった。ラシードが自分を好きでいてくれる間は、一緒にいたいと言っていた。」

「アリアはいつも言ってたよ。ラシードがアリアの事を嫌いになったら、出て行くって。それでいいって。人の気持ちは永遠に続かないこともあるけど、それは仕方ないことだって。でもだからこそ、この気持ちがあるうちは一緒にいたいって、言ってた。」

「すごい女性だね。理解があるというか、達観してるっていうか…。」

「他の女性に『ラシードのことが本当に好きなら独占したくなるはず!そうならないアリアは、ラシードのことが本当に好きじゃないのよ!』って言われて、こう反論してたよ。『好きって気持ちは自分だけのものよ。本当の好きかどうかなんて、貴女に決められたくない』って。」

「優しいだけの女性じゃないんだね。」

「そうだよ。だからラシードはアリアと結婚したの。優しくて強いアリアとね。」

「ティアは、アリアのことも大好きなんだね。」

「うん!2人とも大好きだったよ。」

「ラシードがティアと再婚しなかった理由は、ただひとつだよ。ティアには、そのままでいてほしかったからだ。ラシードと付き合う女性は、豹変してしまう。ティアには、そうなってほしくなかった。だから、再婚せずに、そのままの関係でいたんだよ。ティアが本当に好きだったから。」

「そうなんだ…。ティアはラシードに愛されていたんだ…。ありがと、ソラ。教えてくれて。」

 人を好きなるっていろいろな形があるんだな。僕には恋と愛の違いも分からないけど、好きって気持ちは自分だけのものっていうアリアの考えには賛成だな。

「じゃあ、次はタクミにご褒美だ。タクミがドキドキするような相手に会ったことがない理由を教えてやるぞ!」

 えっ?それって、理由があったんだ?

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