異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
上 下
169 / 247
イリステラ王国編

155話 主人公、愛を知るー3

しおりを挟む
 
「友達と恋人の違い…。ふふっ。難しいこと聞くわねぇ。そうねぇ。一般的には、相手のことが好きで好きで仕方なくて、相手を独占したくなって、裏切られた時にものすごく憎くなる、こんな感じが恋愛の"好き"だと言われているわ。」

「んっ?でもそれって、友達の"好き"でもあるよね?ものすごく仲の良い親友が他の友達と遊んでたら、なんかショックだよ。」

「そうよねぇ。これは一般的な話。私が思う、友達と恋人の違いはただ一つよ!」

「それはなんだべ?」

「性行為をしたいかどうかよ!」
 ドヤ顔で、ハッキリと言いきるイリス様。

 そっ、それはそうかも。友達とはそういうことしたいと思わないからな。同じくらい好きな人がいても、友達とはしない。恋人だから、そういう行為をする。なるほどなぁ。

「ティアはラシードのことをそういう意味で好きだっただか?」

「そうよぉ。いつも言ってるわ。ラシードの子供を産んであげたかったって。」

「ティアはずっとこのままなのかな?このまま、運命の人を探しながら、この国を見守り続けるの?」

「仕方ないわ。それがティアの望みなんだもの。だから代々のイリステラ王は、ティアのために、ティアの相手に忘却の術を使うのよ。」

「ティアには幸せになってほしいよ。まだ出会って少ししか経ってないけど、大事な友達なんだ。」

「んだんだ。オラもそう思うべ。」

「ありがとう、タクミ、タム。ティアは幸せよね。こんな良い友達が出来たんだから。」

 イリスは、ティアが横になっているベッドの方を愛おしそうに見ている。

 イリス様もティアが大好きなんだな。

「あっ、タクミ!ティアが起きたみたい。」
 ティアの側で様子を伺っていたミライが、パタパタと飛んできて教えてくれる。

「あれっ?ここ、どこ?」

「ティア、目が覚めた?」

「あれっ?タクミ?タム?あれれっ?イリス様?」

「タクミとタムがティアを連れてきてくれたのよぉ。ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れちゃったのかしらぁ?」

「あっ、そうだったの。タクミ、タム。ありがとね。」

 ティアがニッコリ笑う。
 ジャンのことは覚えていないようだ。

 人は心を守るために、一部の記憶を忘れるようになっていると聞いたことがある。ティアは、ジャンに会ったことを覚えていないのだろう。

 その方がいいよ。
 あんなにヒドイことを言われた記憶なんか、忘れた方がいい。

『ティアのことを愛する人なんて永遠に現れない』

 そんな記憶は無くなった方がいいんだ。

 でも。
 ティアのこの状態…。このままでいいのかな?恋や愛を知らない僕が言うのは、間違っているのかもしれないけど。

「ティア。ラシードのことを聞いたよ。」

「そう。タクミ達だったのね。誰かがラシードのことを話してるのが聞こえたの。ティア、ラシードの夢を見てたわ。夢の中でもラシードに会えて、幸せだった。」

「ティアは本当にラシードのことが好きなんだね。」

「うん!大好きだよ。」

「ティアはさ。ラシードがアリアと結婚したら、ラシードのこと好きじゃなくなった?」

「ううん。ラシードが誰と結婚しても、ラシードのことは大好きだよ。」

「じゃあさ。ラシードがアリアと結婚してたら、ティアはラシードのこと好きにならなかった?」

「ティアとラシードが出会う前に、ラシードがアリアと結婚してたらってこと?」
 ティアは少し考えた後、こう答える。
「それでも…。それでもラシードのことは好きになったと思う。」

「ティアにとっての運命の人ってさ。愛した人に愛されることなんだよね?」

「うん。ティアが愛した人には、ティアを愛してほしいの。」

「ティアだけじゃないといけないの?どうして?」

「どうしてって…。それが運命の人なんでしょ?」

「僕は、それは違うと思うんだ。だって、ラシードもティアのことを大好きだったと思うから。それ、その指輪ってラシードからのプレゼントでしょ?」

 僕は、ティアが小指にはめている指輪を見つめる。ティアをドラゴンの瞳で見た時に気になっていた。僕は再びドラゴンの瞳を発動させる。

「そこから、強い思いが伝わってくる。ティアの事が大好きだ、幸せになってほしいって感情がね。」

「この指輪はラシードからもらったの。小指は運命の人に繋がってるからって。」

「ラシードがアリアのことを愛してたのは間違いないよ。でもそれと同じようにティアの事も愛してたと思うんだ。だって、その指輪からは自分だけをずっと愛してほしいって気持ちも伝わってくるんだよ。」

「紋章システムができる前は、一夫一妻が普通だったわぁ。ラシードはアリアと結婚したから、ティアの気持ちを受け入れてはいけないって思ってたのね。」

「ラシードがこの時代に生まれてたら違ったのかもしれないだな。オラのおっ父みたいにアリアとティアを嫁にすれば良かっただよ。」

「えっ?タムのお父さんは好きな人がいっぱいいるの?」

「んだ。嫁が5人いるけど、全員、運命の人だって言ってるだ。」

「それでもいいの?」

「んだよ。おっ父もおっ母達も全員幸せだよ。」

「ティアもさ。ラシード以上の人を探すんじゃなくて、今の相手を見てあげなよ。ラシードへの好きとは違うかもしれないけど、それでいいんだよ。相手が違えば、好きって気持ちも違うと思う。ラシードへの好きは、ラシードだけのものだ。同じ好きを求めてるから、見つからないんだよ。だって、ラシードはもういないんだから。」

「そうねぇ。タクミ、良いこと言うわぁ。ラシードへの愛は永遠に心にしまっておけばいいのよ。ラシードへの愛とは違う愛を探すの!それがティアの運命の人よぉ。」

「ティアは、今まで付き合った人達をラシードと比べていたの?そっかぁ。ラシードへの愛と比べちゃいけなかったんだ。」

「ごめんよ。恋も愛も知らない僕が偉そうに…。」

「ううん、いいの。私、よく考えてみる。ありがとう、タクミ。」

 運命の人とか関係ない。ティアが愛した人と幸せになるなら、それでいいと思うんだ。ティアが今度こそ幸せになりますように。

 僕はそう強く思いながら、王宮を後にした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...