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マルクトール王国編

141話 主人公、ドラゴンの魂源を知るー3

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「そうだ。エレーナにはドラゴンの能力がある。それとは別の能力もな。」

 エレーナの精霊球とソラの光る玉の戦いは、もうすぐ15分になろうとしていた。

『ダメだよ、ダメだよ』
 誰かの声がする。これが精霊の声?

 エレーナを見ると苦しそうだ。
 アドラが15分が限界だと言っていた。ソラが限界まで戦わせている理由はなんだ?

『ダメだよ!』

 その声に驚くと同時にエレーナが倒れた。ソラが抱きとめている。

「エレーナ!」
「限界まで脳力を使ったから、気絶しているだけだ。」
「ソラ、何でこんな無茶なことを?」
「それはアドラなら分かるだろ?」

「たぶんエレーナに限界の感覚を覚えさせることが目的なのです。そうですね?ソラ。」

「正解だ!エレーナはアドラが過保護なせいで自分の限界を知らない。これ以上は無理だという感覚を知ることで、脳力のコントロールを覚えるんだ。そして、アドラがそれをサポートするんだぞ!お前達パートナー精霊には、使用者の感覚を監視する機能があるだろ?」

「ミライ、そんな機能があるの?」
「あい!パートナー精霊は使用者の心や感情の動きに連動して動いているんだよ。元々、ストレスを少なくするための存在だからね。大きな負荷がかかったなって時は、対策をするよ。」

 対策ね。例えば、リオンの愚痴を聞きにウサ吉が出てくるってヤツだな。

「限界まで脳力を使うと、身体が脳を守ろうとして気絶させる。アドラ、この感覚は覚えたな?エレーナは年齢を重ねるごとにどんどん脳力を無理に使うようになる。身体が慣れて、気絶しなくなるからだ。でも脳の負担は相当だ。だから、それをアドラが止めるんだ。」

 エレーナのお母さんが短命だったのは、止める人がいなかったから?

「短命の問題はアドラが止めることで解決するが、出来事の記憶と共にその時の感情まで蘇ってしまう問題は、僕にもどうすることもできないぞ。」

「ソラでもコントロール方法は分からないの?」

「出来事とその時の感情を別で記憶する、または、出来事を思い出す時に感情だけを思い出さないようにする。脳力の使い方次第でそれができるようになるが、この感覚は教えることはできない。自分で試行錯誤するしかないんだよ。」

「脳力の使い方を試行錯誤する…。やはりすぐには無理なのですね…。」

「大丈夫だよ。この世界にはお前達パートナー精霊がいる。脳力をコントロールできるように、アドラが手伝うんだ。アドラとエレーナなら、きっと出来るようになる。エレーナにはドラゴンの血が入っている。普通の人より精神耐性があるし、もうひとつの能力もあるしな。」

「エレーナにある、もうひとつの能力って?」

「シルフの能力だ。エレーナは意識せずに精霊の声を聞いている。だから、高速での対応が可能だったんだ。」

「僕にも聞こえたけど、あれが精霊の声?」

「タクミさん、何か聞こえたのですか?」

「えっ?トールくんには聞こえてないの?」

「精霊の声は純血のドラゴンか、シルフにしか聞こえない。ドラゴノイドでは無理だろうな。」

「僕に分かるのは、タクミさんの周りに精霊がたくさん集まっている気配だけです。愛されてますね。」

「そこまで分かれば、上出来だよ。トールは合格!あとはサーシャに稽古をつけてもらえよ。代わりに、ドラゴンの瞳の使い方をサーシャに教えてやれ。」

「ふふっ、分かりました。あっ、エレーナの意識が戻ったようですよ。」

「エレーナ、僕が分かるか?」

「うん、大丈夫よ。ソラ。」

「限界の感覚は掴めたな?後は自分で限界のコントロール方法を見つけるんだぞ。自分で、じゃなかったな。アドラと共に、だな。」

 エレーナは腕の中のアドラを見つめる。

「詳しいことはアドラから聞いてくれ。周りの精霊は常にエレーナを心配している。その声を感じることができたら、エレーナの脳力はコントロールできるようになると思うぞ。アドラはお前の分身だ。2人でなら、乗り越えられる。頑張るんだぞ!」

「うん。ありがとう、ソラ。」

 エレーナは、心からの感謝の気持ちを込めて、礼を言う。

「じゃ、限界まで頑張ったエレーナに良いことを教えてやろう。この神殿を造ったダグザ族の秘密をな。」

「ダグザ族の秘密?」

「お前達がこの神殿に来たのは運命だと思う。ダグザ神は、知識の神と呼ばれているな。その通り、ダグザ族は頭が良かった。エレーナと同じ瞬間記憶の能力があったからだ。だが、その能力をコントロールできなかったために滅んだ。これが真実。証明する文献などは残ってないから、信じるか信じないかはお前達次第だけど。」

「私の能力と同じ…。」

 その能力のせいで滅んだなんて聞いたら、余計に落ち込むと思うんだけど、ソラはどういうつもりなんだろう?

「ダグザ族の最後の1人は、こう言っていた。『この脳力を止めてくれる者がいたら、ダグザ族は滅びずにすんだのに』と。」

「止めてくれる者……。」

「エレーナ、お前にはアドラがいる。アドラがいる限り、お前に無理はさせない。だから、母親のように短命で亡くなることはないはずだ。感情が忘れられないのは、他の人も同じだよ。ずっと同じ感情に囚われる者もいる。でもそれを軽くするために、今のこの世界には、アドラのようなパートナーがいるんだろ?後はお前の覚悟次第だ。このまま誰にも会わずに図書館で過ごすのか、外に積極的に出るのかを選ぶのはエレーナ自身だ。それを忘れるなよ。」

「うん、分かったわ。」

 エレーナがまたアドラを見つめている。図書館の外に出れるようになるといいね。

「じゃ、最後はタクミだ!ちょっと付き合ってもらうぞ!」

 ソラのこの言葉を聞き終わる前に景色が変わる。

 またこのパターンか!
 もう勘弁してくれ!

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