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マルクトール王国編

139話 主人公、ドラゴンの魂源を知るー1

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 僕達は神殿の入り口に向かう。

「やっぱりタクミ達だったか!そうじゃないかと思ったぞ!」
 嬉しそうなソラが出迎えてくれる。

「迷宮での声はソラだったよね?僕達だって、分からなかった?」

「あれは誰かが来たら自動で対応するようになってるだけだ。中で何があったのかはわからないよ。でもここに現れたって事は、全問正解したんだろ?」

「うん。エレーナとトールくんのおかげでね。」

「よぉ、はじめまして。前マルクトール王の娘と現マルクトール王。僕がソラだ。」

「貴方が!僕はトールです。はじめまして。」
「私がエレーナです。よろしくお願いします。」

 2人ともソラに丁寧に頭を下げる。

「ふふん。最低限の礼儀は知ってるようだな。僕のこの姿を見て、無礼な振る舞いをするヤツはいっぱいいたんだが。」

「ふふっ。いまのエレメンテでは、見た目と年齢が比例しない者も増えましたからね。見た目が全てではないということは、この世界のみんなが知っていますよ。」

「そうか。セシルは面白い世界を作ったものだな。」
 ソラがポツリとつぶやく。
 が次の瞬間、表情を変えて「それより!この仕掛けは面白かったか?」と、僕達の顔を見回しながら、嬉しそうに聞いてくる。

「この迷宮はソラが造ったの?」

「タクミ、ここは昔の遺跡を再利用したものだ。この神殿は2000年くらい前に滅びた王族の避難場所だった。王宮に攻め込まれた時に、この神殿に逃げ込むんだ。」

「だから、迷宮なんだね?」

「そう、時間稼ぎ。第一の部屋で全問正解できた者だけが、この神殿に直通で行けるって仕掛けが面白かったからな。それを利用させてもらったんだ。」

「この神殿を管理してた王家は種族ごと滅んでしまったし。放置されてたのを800年くらい前に再利用してこれを造ったら、知識の神殿って名がついて、腕試しの奴らがいっぱい押しかけて来たんだ。中でもメティスってヤツがしつこくてな。何度も何度も挑んでくる。だから最後にはちょっと稽古をつけてやったぞ。」

「メティスって有名な人なの?」
 僕はミライにこっそり聞く。
「あい!メティスはその時代で一番の知識人として有名だったんだよ。ソラの弟子だったからなんだねぇ。」

「メティスの後は戦争がひどくなって、あまり人も来なくなったんだ。だから、僕もここの更新を忘れてたぞ。問題が簡単過ぎただろ?」

「そう。それで問題が古かったのね。でも面白かったわ。また再開してくれないかしら?」

「おっ!エレーナとは気が合いそうだな!」

 ソラとエレーナが意気投合して、ふふふっと笑いあっている。

 うーん。2人が組んだら、なんかダメな気がする。ものすごい意地悪な迷宮が出来上がるに違いない。

「あの…、ソラ。ここは、まさか…。ダグザ神の神殿なのですか?」
 神殿の中をキョロキョロ見ていたトールが驚いたように質問する。

「よく分かったな。ここはダグザ族の神殿。王家と共に種族ごと滅びたがな。」

「なっ…。そんな…。」
 トールが驚きのあまり、声を失っている。

「そんなに驚くこと?」
「あい!ダグザ神は謎の多い神様なんだよ。とても頭が良かったって話なんだけど、文献が少なくて、ほとんど分かっていないんだ。ダグザ茶の語源になった神様だよ。ダグザ茶は飲むと頭がスッキリするから、知識の神であるダグザの名前がついたってことらしいけど。」

 ダグザ茶の語源の神様なんだ。

「ダグザ族っていう種族がいたというのですか?驚きました。」

「もう滅んだからな。誰も知らないと思うぞ。」

「それを知っているということは、もしかしてソラは…。」

 そうだよ!ダグザ族が滅んだのが2000年前って事は、ソラは2000歳以上!でもドラゴンの寿命は2000年だって、セシルさまは言ってた。

「ソラ、ドラゴンの寿命は2000年じゃないの?セシルさまがそう言ってたんだ。」

「あぁ、それか!セシルがしつこく聞いてくるから、2000年くらいかなって答えたことがあるけど。それのことか?」

「なっ?それじゃあ、寿命は…。」

「タクミさん、聞き方を変えた方がいいですよ。ソラ、貴方がこの世界で記憶している一番古い記憶は何年前のものですか?」

「面白い質問だ。そうだな。この世界での時間で言うと、5000年前かな。」

 なんでもないことのようにサラリと言うソラ。

 嘘だろ……。
 5000年も生きてるってこと?

「純血のドラゴンには不思議な力があったと伝えられています。エルから聞いた時間の感覚がおかしいこと、いまは別の場所にいるということ。それらを総合して考えると、ドラゴンには時空の壁を越える能力があるのでは?そして、いま貴方の本体は別の時空に居るのではないですか?」

 時空の壁を越える……?
 驚き過ぎて頭がついていかない。

「ほぅ、そうきたか。なかなか面白い考察だな。」

「教えていただけませんか?」

「仕方ないな。この迷宮の問題を全問正解したご褒美だ。答えてやる。」

 そして、「たしかにドラゴンには特有の能力がある。」と言う。

 ソラは僕の目を見て、こう続ける。

「ドラゴンには、この世界以外の、異世界と呼ばれる場所に行ける能力があるんだよ。」

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