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異世界こんにちわ
20,おやすみなさいの言葉
しおりを挟む亜希side
「ふぁ……。」
「亜希、そろそろ寝ようか。部屋に案内するよ。」
欠伸をした僕にシルさんが気を使ってくれた。
「あ、ごめんね。」
「大丈夫だよ。色々あったし疲れたよね。」
今日は確かに色々あった。もう休んでもいいかもしれない。眠くなってきたし。
「じゃあ行こうか。ミトリア、ディコル。お前たちは仕事に戻れ。」
「はぁ、魔王様も早くお戻りになってくださいよ。亜希さんまた会いましょう。」
「えぇ、亜希ちゃんとお別れ~?やだなぁ。亜希ちゃんまたねぇ……。」
2人とも渋々?ながら廊下の反対方向に向かって行った。
「おやすみなさい。」
就寝前の挨拶をするとディコルさんがバッと振り返り手を振ってくれた。
ミトリアさんも振り返って、綺麗なお辞儀をしてくれた。
イケメンだ……。
ゆっくりシルさんが手を引いてくれる。身長差が恐ろしいくらいにあるから手を繋ぐのも一苦労だ。ほんとやばいくらい差がある気がする……。羨ましい。ミトリアさんもディコルさんも高かった。男の夢だと思う……、高身長って…。
「ねぇ、亜希。部屋に入る前にひとつ言ってもいいかな。」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
おそらく最初にいた部屋の扉の前で神妙な面持ちで聞いてきた。命の恩人であるシルさんの質問だ。きちんと答えよう。
「こっちに無断で連れてきてしまって申し訳ない。」
シルさんが突然しゃがんで目線を合わせて謝った。
「……。」
もっと他の大事なことを言われるのかと身構えていたのでその言葉は拍子抜けだった。
微笑んでシルさんの手をぎゅっと握り返す。
「なんだ、その事か……。僕は気にしてないよ。謝らないで。」
「許してくれるの?俺のせいでこっちに連れてきて人間じゃなくなるのに?」
「確かにね、戸惑ったけど嬉しかったんだよ。明日どうしたらいいのかよく分かんない僕を、命を助けてくれた。逆にありがとうって言いたいくらい。」
「だけど、。」
「仮にもシルさんって魔王なんだよね……?あんまりそう見えないな。いい意味でだけど。とにかく、ありがとう。」
そこまで僕が笑いながら言うとシルさんは泣きそうな嬉しそうななんとも言えない表情をしていた。
「そうか。俺こそありがとう。」
「ふふっ。」
僕が笑うとシルさんも笑ってくれた。
「亜希。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
隣の部屋だからなにかあったら呼んで欲しいと言われ僕がベットに入ったのを見て微笑んでくれた。
いい匂いのするベットに包まれシルさんの顔を見ながら微睡む。
もしかしたら、……。
いや、こういうのは気にしない方がいい。
うつらうつらと深い眠りの中へ落ちていく。
おやすみなさい。
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