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二話目
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ダンス配信の翌日、お昼から同期の梔子シロと紅葉コウと雑談配信をしていた。3人でお昼ご飯の話をしているときに、同時に3人の通知を知らせる音が鳴った。
「3人同時なんて奇跡じゃん!」
やや高い声で、嬉しそうにシロが言う。
「あ、運営さんからだ」
コウが何気なしにつぶやいた。
「そりゃ3人同時になるか」
私が言い放って二人が同時に笑い出した。私も笑っていたけれど、何か嫌な予感がする。内容が『今日の午後4時から本社の2階ミーティングルームで会議を開きます。来れる人はなるべく来てください』だったからだ。
二人も嫌な予感がしたのか、内容については何も触れず配信が終わった。
配信が終わってから、私はすぐにミーティングに行く準備を始めた。ここから会社まで1時間はかかる。今は2時だから、準備して行くのに丁度いい時間だろう。
準備をしている間、何でミーティングがあるのかいろいろ考えていた。一番あり得そうなのは誰かの引退だ。しかし、そうでないことは分かっている。
引退なら、バーチャル空間で連絡すれば済む話だ。バーチャル空間でできない話は、なかなか思いつかず考えるのをやめた。
シロから来ていた『会議ってなんだろうね?』のメッセージも何も言えず『なんだろ?』と淡白な返しをしてしまった。
「今から仕事の方で会議があるのでいってきます。6時くらいには帰ってきます」
硬くなりながら、居間にいたおばさんに声をかける。おばさんは唯一Vtuberをしていることを知っている。おばさんは何も言わず、小さく首を縦に振った。もうここ数年、おばさんが話したところを見ていない。
私がこの家に来た頃はよく話しかけてくれたのに。なぜか久しぶりに、おばさんの落ち着く透き通った声が聞きたくなった。
やっと会社の近くの駅に着いた時『会社近くのコンビニにいるけど何かいる?』とコウからメッセージが来ていた。私は目のコンビニにいるコウを確認し、そのままコンビニに入っていった。
「久しぶり」
コウの肩を叩きながら、声を掛けた。
「おぉ、久しぶり!ってさっきまで話してたっけ」
驚きながら振り返ったコウの顔は物凄く整っている。相変わらず見惚れるほどの美しさに、何も言葉が出ない。
「何か買う?今なら私の奢りだよ」
さりげなくこんなことを、口に出すところもコウのいいところだ。私は迷わず目の前のチョコレートを手に取り「ありがと」と言いながら、コウの持っているカゴの中に入れた。
コウは「いえいえ~」と呟きながら、極硬の文字がついたグミを2つと7個入りのミルクチョコを手に取った。
そのまま指紋認証で、会計を済ませコンビニを出るコウの後ろをついて行く。
「ありがと、またそのグミ食べてるの?」
コンビニを出ながら、受け取ったチョコレートに感謝する。
「いや、この硬さがいいんだって」
私が一個でも噛み切れなかったグミを、3つ食べながら済ました顔で言う。
「そういうけど、いっつもそのチョコレート食べてるよね」
「うん、これ美味しいよ」
「一緒じゃん!」
コウとまた同時に笑い出した。本当はこれより150円高いチョコレートの方が好きだけれど、そんな高いものを買ってもらいたくない。そもそも奢ってもらうのも嫌いだが、コウはどうしても奢ってくれる。罪悪感でほろ苦いチョコレートを口の中に入れた。
「あっ、ほら!」
コウの指差した先にはシロが歩いていた。白のワンピースに淡い青のカーディガンを羽織っていて黒のタイツに黒い靴を履いている。お嬢様みたいに可愛い服装をしているシロは性格もとても可愛い。
コウの声に反応してシロがくるりとこちらを振り返って、手を振りながら近寄ってきた。
「久しぶり~、ってさっきまで話してたか!」
コウと同じことを言いながら、私とコウに抱きつく。抱きついた瞬間ふわっとゆずのいい匂いがする。流石女の子だ。匂いまで気を遣っている。
「ほら、チョコ買ってきたよ」
シロの頭を撫でながら、コウがチョコレートを出す。
「あー!ありがとー!今日はこれの気分だったの!」
「だろ?何でもいいって言われた時は焦ったよ」
「コウならわかってくれると思って」
一瞬にして3人の時が止まった。それぞれ横目で、周りに誰が居るかを確認した。幸い、視界に入ったのは声の届かない程度の距離で、電話をしているサラリーマンだけだった。3人で目を合わせて安堵した。
「ご、ごめん…」
「大丈夫だよ。誰も聞いてなかった」
「大丈夫だって!そんな声大きくなかったし」
私達Vtuberは顔も体も隠して活動している。身バレなんてしようものなら、活動ができなくなってしまう。
それに、ファンだけじゃなく会社の関係者の人に聞かれていたら、間違えなく大目玉を喰らうだろう。
「そろそろ時間だしいこっか」
「うん、ほら行くよ。そんなに落ち込んでるなら極硬グミの刑にするぞ~」
コウがさっきのグミをシロの口に押し込もうとする。
「もうやめてよ!わかった、わかったから~」
コウの一言で落ち込んでいたシロは元気を取り戻した。シロの笑顔を見ていると私まで明るくなれるような気がする。
私もこんな女の子になれたら、頭の中で少し呟いた。
「3人同時なんて奇跡じゃん!」
やや高い声で、嬉しそうにシロが言う。
「あ、運営さんからだ」
コウが何気なしにつぶやいた。
「そりゃ3人同時になるか」
私が言い放って二人が同時に笑い出した。私も笑っていたけれど、何か嫌な予感がする。内容が『今日の午後4時から本社の2階ミーティングルームで会議を開きます。来れる人はなるべく来てください』だったからだ。
二人も嫌な予感がしたのか、内容については何も触れず配信が終わった。
配信が終わってから、私はすぐにミーティングに行く準備を始めた。ここから会社まで1時間はかかる。今は2時だから、準備して行くのに丁度いい時間だろう。
準備をしている間、何でミーティングがあるのかいろいろ考えていた。一番あり得そうなのは誰かの引退だ。しかし、そうでないことは分かっている。
引退なら、バーチャル空間で連絡すれば済む話だ。バーチャル空間でできない話は、なかなか思いつかず考えるのをやめた。
シロから来ていた『会議ってなんだろうね?』のメッセージも何も言えず『なんだろ?』と淡白な返しをしてしまった。
「今から仕事の方で会議があるのでいってきます。6時くらいには帰ってきます」
硬くなりながら、居間にいたおばさんに声をかける。おばさんは唯一Vtuberをしていることを知っている。おばさんは何も言わず、小さく首を縦に振った。もうここ数年、おばさんが話したところを見ていない。
私がこの家に来た頃はよく話しかけてくれたのに。なぜか久しぶりに、おばさんの落ち着く透き通った声が聞きたくなった。
やっと会社の近くの駅に着いた時『会社近くのコンビニにいるけど何かいる?』とコウからメッセージが来ていた。私は目のコンビニにいるコウを確認し、そのままコンビニに入っていった。
「久しぶり」
コウの肩を叩きながら、声を掛けた。
「おぉ、久しぶり!ってさっきまで話してたっけ」
驚きながら振り返ったコウの顔は物凄く整っている。相変わらず見惚れるほどの美しさに、何も言葉が出ない。
「何か買う?今なら私の奢りだよ」
さりげなくこんなことを、口に出すところもコウのいいところだ。私は迷わず目の前のチョコレートを手に取り「ありがと」と言いながら、コウの持っているカゴの中に入れた。
コウは「いえいえ~」と呟きながら、極硬の文字がついたグミを2つと7個入りのミルクチョコを手に取った。
そのまま指紋認証で、会計を済ませコンビニを出るコウの後ろをついて行く。
「ありがと、またそのグミ食べてるの?」
コンビニを出ながら、受け取ったチョコレートに感謝する。
「いや、この硬さがいいんだって」
私が一個でも噛み切れなかったグミを、3つ食べながら済ました顔で言う。
「そういうけど、いっつもそのチョコレート食べてるよね」
「うん、これ美味しいよ」
「一緒じゃん!」
コウとまた同時に笑い出した。本当はこれより150円高いチョコレートの方が好きだけれど、そんな高いものを買ってもらいたくない。そもそも奢ってもらうのも嫌いだが、コウはどうしても奢ってくれる。罪悪感でほろ苦いチョコレートを口の中に入れた。
「あっ、ほら!」
コウの指差した先にはシロが歩いていた。白のワンピースに淡い青のカーディガンを羽織っていて黒のタイツに黒い靴を履いている。お嬢様みたいに可愛い服装をしているシロは性格もとても可愛い。
コウの声に反応してシロがくるりとこちらを振り返って、手を振りながら近寄ってきた。
「久しぶり~、ってさっきまで話してたか!」
コウと同じことを言いながら、私とコウに抱きつく。抱きついた瞬間ふわっとゆずのいい匂いがする。流石女の子だ。匂いまで気を遣っている。
「ほら、チョコ買ってきたよ」
シロの頭を撫でながら、コウがチョコレートを出す。
「あー!ありがとー!今日はこれの気分だったの!」
「だろ?何でもいいって言われた時は焦ったよ」
「コウならわかってくれると思って」
一瞬にして3人の時が止まった。それぞれ横目で、周りに誰が居るかを確認した。幸い、視界に入ったのは声の届かない程度の距離で、電話をしているサラリーマンだけだった。3人で目を合わせて安堵した。
「ご、ごめん…」
「大丈夫だよ。誰も聞いてなかった」
「大丈夫だって!そんな声大きくなかったし」
私達Vtuberは顔も体も隠して活動している。身バレなんてしようものなら、活動ができなくなってしまう。
それに、ファンだけじゃなく会社の関係者の人に聞かれていたら、間違えなく大目玉を喰らうだろう。
「そろそろ時間だしいこっか」
「うん、ほら行くよ。そんなに落ち込んでるなら極硬グミの刑にするぞ~」
コウがさっきのグミをシロの口に押し込もうとする。
「もうやめてよ!わかった、わかったから~」
コウの一言で落ち込んでいたシロは元気を取り戻した。シロの笑顔を見ていると私まで明るくなれるような気がする。
私もこんな女の子になれたら、頭の中で少し呟いた。
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