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16話
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アティアは、近づいて来るヒーロスを待っていた。
ヒーロスは、遠くを見たり近くを見たり、実に楽しそうだ。
「殿下。お聞きしたい事があるのです」
「うん。僕も君と話したい事がいっぱいあるよ」
「では、馬車に……」
ヒーロスは、その言葉に手を挙げて遮ると。
「公爵、聖女様と馬に乗りたいんだけど、いい?」
「ご髄意に」
そんな会話をしている中、ヒーロスの横に立っているエクエスに、ポロボロが歩み寄って来る。
「おい、そこの貴様! 何故、貴様は武具を身に着けている!」
「私は軍団長。そして、殿下の護衛。本来であれば、ひと班は供回りとして武装させなければならん。それを、殿下の申しつけで護衛を付けていないのだ。私一人ぐらいは何かあった時のために、剣を手放すわけにはいかん。それとも何か、君たち数千の兵は、私一人に臆する者たちなのか?」
「ぐっ……ま、まあいい」
そういうと、ポロボロは馬車へ戻って行った。
「彼は、何故、あんな感じなのでしょうか?」
エクエスが、不思議そうにヒーロスを見た。
「うーん、さっきは家族から情報が伝わってないのかなと思ったんだけどさ、考えてみたら彼は愚兄を恨んで、国を捨ててここに来たんだよね。国からすれば裏切り者。だから、報復に来るかもしれないと怯えてたんじゃないかなー。だから、簡単に信用できなかったんだろうさ」
「恨んでる……王に何かされたのですか?」
「その話はやめておこう。名誉のためにね」
ヒーロスはそう言いながらアズバルドが引いて来ていた、自分の馬に飛び乗った。
そして、アズバルドにアティアを後ろに乗せるため、土台を作るよう指示した。
アズバルドは、馬の横で片膝をつくと、両手を前に出した。
「どうぞ、聖女様。私の手の上へ」
「ありがとう」
アティアは、馬に対し後ろ向きに、片足をアズバルドの上へ乗せた。
ヒーロスが、バランスを取らせるため片手を差し出し、アティアもその手を掴む。
「いい、アズバルド。思いっきり力を入れて上へ持ち上げてね」
「は、はい……」
アズバルドは、アティアがそんなに重そうには見えなかったようで、不思議そうにしながら、言われた通り思い切り力を入れて持ち上げた。
すると、余りの軽さに宙に放り投げてしまう。
アティアが落下する時、スカートは風の抵抗を受けて捲れあがった。
真下に居たアズバルドにしか見えていないが、見えてしまった。
「よいしょっと」
ヒーロスは、タイミング良く手を引いて、アティアは後方に座らせる。
アティアは、片手で慌てたように、太ももを抑え、顔を赤らめた。
その下で、アズバルドも少し俯き顔を赤らめている。
アズバルドは、何かに気づいたように、ヒーロスを見上げた。
ヒーロスは、今にも笑いだしそうな顔で、見下ろしている。
アズバルドは、してやられたと言いた気な表情となり、恨めしそうにヒーロスを睨んだ。
「ね、アズバルド、やっぱり白だっ……いででででで……」
ヒーロスの耳を、アティアは捻り上げている。
アズバルドは、自分は知らないとばかりに、馬を引く位置へ。
「痛いって、ごめんごめん」
ヒーロスは、やっと捻りから解放された。
耳を撫でながら。
「おーいてー……僕、一応王子だよ?」
「知りません!」
アティアは、そっぽを向いてしまった。
しかし、ヒーロスは既にいつもの調子に戻っている。
横の馬上から、それを見ていたエクエスは、額に手を当て首を横に振った。
かくして総勢一万数千の大行列は、ヒエムスの長閑な陽気の中を進んでいく。
ヒーロスは、遠くを見たり近くを見たり、実に楽しそうだ。
「殿下。お聞きしたい事があるのです」
「うん。僕も君と話したい事がいっぱいあるよ」
「では、馬車に……」
ヒーロスは、その言葉に手を挙げて遮ると。
「公爵、聖女様と馬に乗りたいんだけど、いい?」
「ご髄意に」
そんな会話をしている中、ヒーロスの横に立っているエクエスに、ポロボロが歩み寄って来る。
「おい、そこの貴様! 何故、貴様は武具を身に着けている!」
「私は軍団長。そして、殿下の護衛。本来であれば、ひと班は供回りとして武装させなければならん。それを、殿下の申しつけで護衛を付けていないのだ。私一人ぐらいは何かあった時のために、剣を手放すわけにはいかん。それとも何か、君たち数千の兵は、私一人に臆する者たちなのか?」
「ぐっ……ま、まあいい」
そういうと、ポロボロは馬車へ戻って行った。
「彼は、何故、あんな感じなのでしょうか?」
エクエスが、不思議そうにヒーロスを見た。
「うーん、さっきは家族から情報が伝わってないのかなと思ったんだけどさ、考えてみたら彼は愚兄を恨んで、国を捨ててここに来たんだよね。国からすれば裏切り者。だから、報復に来るかもしれないと怯えてたんじゃないかなー。だから、簡単に信用できなかったんだろうさ」
「恨んでる……王に何かされたのですか?」
「その話はやめておこう。名誉のためにね」
ヒーロスはそう言いながらアズバルドが引いて来ていた、自分の馬に飛び乗った。
そして、アズバルドにアティアを後ろに乗せるため、土台を作るよう指示した。
アズバルドは、馬の横で片膝をつくと、両手を前に出した。
「どうぞ、聖女様。私の手の上へ」
「ありがとう」
アティアは、馬に対し後ろ向きに、片足をアズバルドの上へ乗せた。
ヒーロスが、バランスを取らせるため片手を差し出し、アティアもその手を掴む。
「いい、アズバルド。思いっきり力を入れて上へ持ち上げてね」
「は、はい……」
アズバルドは、アティアがそんなに重そうには見えなかったようで、不思議そうにしながら、言われた通り思い切り力を入れて持ち上げた。
すると、余りの軽さに宙に放り投げてしまう。
アティアが落下する時、スカートは風の抵抗を受けて捲れあがった。
真下に居たアズバルドにしか見えていないが、見えてしまった。
「よいしょっと」
ヒーロスは、タイミング良く手を引いて、アティアは後方に座らせる。
アティアは、片手で慌てたように、太ももを抑え、顔を赤らめた。
その下で、アズバルドも少し俯き顔を赤らめている。
アズバルドは、何かに気づいたように、ヒーロスを見上げた。
ヒーロスは、今にも笑いだしそうな顔で、見下ろしている。
アズバルドは、してやられたと言いた気な表情となり、恨めしそうにヒーロスを睨んだ。
「ね、アズバルド、やっぱり白だっ……いででででで……」
ヒーロスの耳を、アティアは捻り上げている。
アズバルドは、自分は知らないとばかりに、馬を引く位置へ。
「痛いって、ごめんごめん」
ヒーロスは、やっと捻りから解放された。
耳を撫でながら。
「おーいてー……僕、一応王子だよ?」
「知りません!」
アティアは、そっぽを向いてしまった。
しかし、ヒーロスは既にいつもの調子に戻っている。
横の馬上から、それを見ていたエクエスは、額に手を当て首を横に振った。
かくして総勢一万数千の大行列は、ヒエムスの長閑な陽気の中を進んでいく。
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