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三好の臣従

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慧仁親王 大坂城 1522年

「さて、元長、握り飯でも食べぬか? 腹が減っただろ。 食べながらでも話しは出来るしな」
「はっ、遠慮なく」

気を遣ってくれた様で、俺用に小さいおにぎりがある。
この頃のご飯はやや硬め。 でも大丈夫。 奥歯が生えて来てるからね、よく噛めばいける。
歯が生えるのに、昼夜構わずむず痒いのが難点。 歯固め欲しい、噛みたい。

「実はな、元長。 其方に相談が有るんだが」
「相談ですか?」
「少しの間、其方に相談役をお願いしたい」
「相談役をですか」
「うぬ、俺の周りは武家の機微に疎い。 今後について、いろいろ自分一人で決めかねん事も多い」
「構いませんが……」
「じゃあ、淡路は求めん、これでどうだ」
「お役に立てます様に励みます」

おお、先ずは良しと。

「弥七!」

……。

「弥七!」

……。

おらんのかい! 聞こえんのかい!
襖までハイハイして、襖を開ける……開かない。
元長が気を利かせて開けてくれた。

「かたじけない」

つい、武士っぽく。

「誰か、お茶を!」

大きな声で呼びかけると、隣の部屋の襖が開き、

「ただいま!」

と、弥七が廊下を走って行く。
隣りか~い!

元長が抱き上げて元の場所に戻してくれた。

「か、かたじけない」

居ずまいを正し、気持ちを立て直す。

「さて」

はぁ、顔を背けるなよ。 許すよ、笑っていいよ。

「では、元長、臣従してくれるか」
「はっ、身命を賭して殿下に仕えたいと存じます」
「いや、そこは陛下に臣従して欲しい。 陛下への拝謁を取り計らう。 一緒に上洛してくれ」
「はっ、しかし高国の方は大丈夫なんですか?」
「ん~、幕府を潰してから意外と従順でな、そんなものなのかな」
「はい、高国の気持ち、分からなくも有りません。 今までは幕府内での権力争いでしたから」
「そんなものかな。 して、四国平定の方はどうだ?」
「家内を纏める事が出来ました。そちらも準備が整い次第にかかれます」
「土佐の一条だけどな、あれは京に戻して京の治安を任せようと思ってる。 所領の禄は保証してあげたい」
「御意に」
「うぬ、では今日は泊まっていけ、いろいろ相談したい事もある。 播磨、尼子、山名、いろいろな」
「畏まりました」
「一旦下がって休むと良い。 俺も限界だ、眠い」
「では、下がらせて頂きます」
「あ、ちょっと抱っこ」

雅綱の居る部屋の前まで連れてって貰い、雅綱を呼んでバトンタッチ。
雅綱と部屋に戻る。
あ、普通に雅綱を呼んで貰えば良かったよ。

「雅綱、手紙を書いてくれ」

天王寺屋、そしてみんな大好き伊賀の服部・百地・藤林、甲賀の鵜飼孫六に宛ててだ。

「弥七、伊賀、甲賀に伝手は有るか?」
「もちろん有ります。 風魔にだって有ります」

ドヤ顔でそう話す弥七にイラッとして、

「お、俺だって風魔ぐらい伝手はあるさ」

北条を思い浮かべながら言い返したが、大人気なかったと反省。

「あ、嘘、嘘、風魔すげぇ」

と、フォローするが……まあ、ごめん。

「とにかく、この書状を天王寺屋、伊賀、甲賀に頼む」
「はっ、御意に」
「ホント、ごめん、これ仕事だから、モチベーション上げて!」
「モチベーション?」
「そそ、要はやる気だよ、やる気出して! 頑張れ!」

菊の御紋入りの文箱を渡す。
大原の者を使いに出す用に注文していた文箱が、大坂へ出発する頃にちょうど届いていたのだ。
叱咤激励し、弥七を送り出した。

ストレスだ、ストレス。
どうやら、昼寝の時間が来た様だ。
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