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11話 あはーん!! 1
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っ、は あ 、
と、ふたりのくちびるの間で熱い吐息が交錯する。
この4年の間にぼくも一人暮らしを始めていて、ぼくが待つ公園に『キスする権利』を持ってきた桜佑くんを、そのまま自分の部屋に持ち帰った。
薄い布団の上で座り込んで、せっかく帰ってきたその身体を逃がさないようにときつく抱きしめる。
くちびるを塞ぐたびに桜佑くんは「んっ、」と喉を詰まらせ、離すと小さく、っああ、と声を洩らした。
不慣れなのが充分に見て取れるから、できるだけ丁寧にしてやろうと思うのだけど、この4年でぼくもなんだかんだ自分の気持ちに整理をつけたわけで、ずっとおあずけ食らっていたのはぼくも同じなわけで、つまりはもうちょっと満足してからじゃないと、離してやれそうにない。
「せんせ、」
「ん、なに」
「もう、いい……」
「もうちょっと」
「っふ、」
無理やりくちをこじ開けて、ぬるりとその舌に自分のそれを絡める。
桜佑くんがたどたどしくそれに応じようとしてくれるから、ぼくもなんとかそれに合わせようと、少し勢いを落とした。
一度くちびるを離すと、今まで見たことのない表情をした桜佑くんがそこにいた。
「桜子のほうが良かったですか」
「いや、別に、そんなことないよ。脱いだら同じだし」
「脱ぐの!?」
ぼくが敢えてしれっと言った言葉に桜佑くんは派手に反応してくれて、そんなちょっとしたリアクションが堪らなく嬉しい。
「あれ、本当にキスだけで良かったの」
「だって先生、おれ、男だし……」
「え、今更それを君が言う?」
ぼくは君のために腹を括ったも同然なんだぞ。
ぼくは、きみに会いたかったんだ。
桜佑でも桜子でも、どっちでも構わない。
「先生。……好きって言って」
「好きだよ。桜佑くん」
「本当に?」
「本当だよ。自分でも想定外だったから、ぼくが一番驚いてる」
「前のときみたいなキスをして」
「どんなキスだったかなんて忘れてしまったよ」
首筋に顔を埋めると、嗅いだことのある花のような匂いがした。
「桜佑くんちの玄関の匂いがする」
「それは、くすぐったい、……そ、れは、あっ、桜の、香りのやつ、……」
と、ふたりのくちびるの間で熱い吐息が交錯する。
この4年の間にぼくも一人暮らしを始めていて、ぼくが待つ公園に『キスする権利』を持ってきた桜佑くんを、そのまま自分の部屋に持ち帰った。
薄い布団の上で座り込んで、せっかく帰ってきたその身体を逃がさないようにときつく抱きしめる。
くちびるを塞ぐたびに桜佑くんは「んっ、」と喉を詰まらせ、離すと小さく、っああ、と声を洩らした。
不慣れなのが充分に見て取れるから、できるだけ丁寧にしてやろうと思うのだけど、この4年でぼくもなんだかんだ自分の気持ちに整理をつけたわけで、ずっとおあずけ食らっていたのはぼくも同じなわけで、つまりはもうちょっと満足してからじゃないと、離してやれそうにない。
「せんせ、」
「ん、なに」
「もう、いい……」
「もうちょっと」
「っふ、」
無理やりくちをこじ開けて、ぬるりとその舌に自分のそれを絡める。
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一度くちびるを離すと、今まで見たことのない表情をした桜佑くんがそこにいた。
「桜子のほうが良かったですか」
「いや、別に、そんなことないよ。脱いだら同じだし」
「脱ぐの!?」
ぼくが敢えてしれっと言った言葉に桜佑くんは派手に反応してくれて、そんなちょっとしたリアクションが堪らなく嬉しい。
「あれ、本当にキスだけで良かったの」
「だって先生、おれ、男だし……」
「え、今更それを君が言う?」
ぼくは君のために腹を括ったも同然なんだぞ。
ぼくは、きみに会いたかったんだ。
桜佑でも桜子でも、どっちでも構わない。
「先生。……好きって言って」
「好きだよ。桜佑くん」
「本当に?」
「本当だよ。自分でも想定外だったから、ぼくが一番驚いてる」
「前のときみたいなキスをして」
「どんなキスだったかなんて忘れてしまったよ」
首筋に顔を埋めると、嗅いだことのある花のような匂いがした。
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「それは、くすぐったい、……そ、れは、あっ、桜の、香りのやつ、……」
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