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3話 櫻子と葉太と桜佑 3
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知らない人の家を訪ねるなんて、いくつになったって、どうやったって緊張する。
今日は挨拶に来ただけだ、顔を見せて、手土産の和菓子だけ渡したら早々にお暇しよう。
そう思っていると、はい、とインターホン越しに女性の声が聞こえたので、
「あ、すいません、あの、佐々木さんに紹介いただいてきた秋田と申します」
と、ぼくは緊張で上ずりそうになる声をなんとか抑えつつ、カメラに向かって軽く頭を下げた。
すると、
「ああ、伺っております、少々お待ちくださいね」
と柔らかな声が返ってきて、しばらくすると玄関から優しそうな、小柄な中年の女性が出てきた。
「秋田、葉太さん、ですね、初めまして、春川と申します。この度はとんだご迷惑をおかけしまして本当に申し訳ございません。息子の桜佑のこと、どうかよろしくお願い致します」
お母さんと見られるその女性は、門扉を開けるやいなや深々と頭を下げてまず今回のことを詫びてきた。
佐々木さんの知り合いらしいから、佐々木さんの性格を知っていて、強引にはなしを勧めてきたと見当でもつけていたのかもしれない。
「あ、いえいえ、こちらこそ、お役に立てるかは分かりませんが、どうぞ宜しくお願いします」
釣られるようにして同じく頭を下げ、おうすけ、と読むのか、と、一昨日佐々木さんから渡された紙切れを思い出した。
その紙切れにはこの家の住所と、簡単な地図と、春川桜佑という名前が書かれていて、ぼくは、この名前はどう読むのだろうかと思っていたのだ。
佐々木さんに聞きそびれてしまって、万が一人の名前を間違うなんて失礼だから、どうしようかと困っていた。
おうすけくんだな、おうすけくん桜佑くん、と、頭の中で繰り返しながら、お母さんの後に続いて家の中へとお邪魔する。
玄関ホールは花のような優しい香りが漂っていた。
家の中は綺麗に片付けられていて、統一された家具や装飾品が落ち着いた雰囲気を醸し出している。
ぼくが手土産の和菓子を差し出すと、お母さんはそれを快く受け取ってからリビングでぼくにお茶と、その和菓子を開けて出してくれた。
はなしが途切れないように気を使ってくれて、いいお母さんだな、と思った。
「桜佑、2階の自室にいるんです、宜しかったら、ちょっと顔を見てやってください」
というお母さんの言葉でぼくたちは2階への階段を上がり、左側に位置するドアの前に立った。
「桜佑、秋田さんが来てくださったわよ」
お母さんがそう声をかけてノックをすると、すぐにドアはがちゃりと開けられて、中から男の子が顔を出した。
「あ、初めまして、秋田さん。春川桜佑です、よろしくお願いします」
「あっ、こんにちは、初めまして。役に立てるか分からないんだけど、出来る限りのことは頑張るから、よろしくね」
出てきた男の子は至って普通だった。
引きこもりとか深夜徘徊とか聞いていたから、どんな暗そうな子か、とか、どんな不良かとか、いろいろ想像していたのに、目の前にいる彼、桜佑くんは、ごくごく普通の、明るそうな17歳だった。
今日は挨拶に来ただけだ、顔を見せて、手土産の和菓子だけ渡したら早々にお暇しよう。
そう思っていると、はい、とインターホン越しに女性の声が聞こえたので、
「あ、すいません、あの、佐々木さんに紹介いただいてきた秋田と申します」
と、ぼくは緊張で上ずりそうになる声をなんとか抑えつつ、カメラに向かって軽く頭を下げた。
すると、
「ああ、伺っております、少々お待ちくださいね」
と柔らかな声が返ってきて、しばらくすると玄関から優しそうな、小柄な中年の女性が出てきた。
「秋田、葉太さん、ですね、初めまして、春川と申します。この度はとんだご迷惑をおかけしまして本当に申し訳ございません。息子の桜佑のこと、どうかよろしくお願い致します」
お母さんと見られるその女性は、門扉を開けるやいなや深々と頭を下げてまず今回のことを詫びてきた。
佐々木さんの知り合いらしいから、佐々木さんの性格を知っていて、強引にはなしを勧めてきたと見当でもつけていたのかもしれない。
「あ、いえいえ、こちらこそ、お役に立てるかは分かりませんが、どうぞ宜しくお願いします」
釣られるようにして同じく頭を下げ、おうすけ、と読むのか、と、一昨日佐々木さんから渡された紙切れを思い出した。
その紙切れにはこの家の住所と、簡単な地図と、春川桜佑という名前が書かれていて、ぼくは、この名前はどう読むのだろうかと思っていたのだ。
佐々木さんに聞きそびれてしまって、万が一人の名前を間違うなんて失礼だから、どうしようかと困っていた。
おうすけくんだな、おうすけくん桜佑くん、と、頭の中で繰り返しながら、お母さんの後に続いて家の中へとお邪魔する。
玄関ホールは花のような優しい香りが漂っていた。
家の中は綺麗に片付けられていて、統一された家具や装飾品が落ち着いた雰囲気を醸し出している。
ぼくが手土産の和菓子を差し出すと、お母さんはそれを快く受け取ってからリビングでぼくにお茶と、その和菓子を開けて出してくれた。
はなしが途切れないように気を使ってくれて、いいお母さんだな、と思った。
「桜佑、2階の自室にいるんです、宜しかったら、ちょっと顔を見てやってください」
というお母さんの言葉でぼくたちは2階への階段を上がり、左側に位置するドアの前に立った。
「桜佑、秋田さんが来てくださったわよ」
お母さんがそう声をかけてノックをすると、すぐにドアはがちゃりと開けられて、中から男の子が顔を出した。
「あ、初めまして、秋田さん。春川桜佑です、よろしくお願いします」
「あっ、こんにちは、初めまして。役に立てるか分からないんだけど、出来る限りのことは頑張るから、よろしくね」
出てきた男の子は至って普通だった。
引きこもりとか深夜徘徊とか聞いていたから、どんな暗そうな子か、とか、どんな不良かとか、いろいろ想像していたのに、目の前にいる彼、桜佑くんは、ごくごく普通の、明るそうな17歳だった。
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