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25話 ストーカー、ストーカーを卒業する。7
しおりを挟む「おいで、拓ちゃん」
まるでペットの犬にそうするかのように腕を広げて呼ばれ、従順な犬はパンツだけ穿いてからご主人さまのいるベッドにふらふらと寄って行く。
遠慮もなくベッドに上がってジュリアを抱きしめると、ジュリアはふふっと笑って拓ちゃんの胸にすり寄ってきた。
「また来てくれる?」
「きみが呼んでくれるなら」
「じゃあ、寂しくなったら呼ぶね」
「いやじゃなかった?」
「全然。次はどんなふうにしてくれるの?」
「……。ど、どんなふうに……?」
「あははっ!」
しばらくそうしてふたりで転がってから、ジュリアはおもむろに「よいしょ」と起き上がった。
「拓ちゃん、まだ時間ある? あたしコンビニ行ってくるから、お留守番しててくれない?」
言われて、拓ちゃんも慌てて身体を起こした。
「コンビニなら僕が」
「あ、いいのいいの、おやつ買ってくるだけだから。拓ちゃんはその代わり~……」
ジュリアは喋りながらひとりでベッドを降りた。
テーブルに置いていた自分の赤い花柄のスマートフォンを手に取り、何事かを簡単に操作してから、テーブルの上に置きっぱなしだったカップに横向きに立てかけるようにして、そのスマートフォンを置いた。
拓ちゃんがその画面をよくよく見ると、そこには下がパンツ一枚穿いただけの、情けない姿の自分が写っている。
カメラが起動している。
録画モードだ。
「あの、……?」
「拓ちゃんほら、ずっとカメラのこと気にしてたでしょ? だからこれでおあいこよ、お利口にしててね」
「え、あの、」
「じゃあちょっと行ってくるね!」
「あのっ、じゅ、待って、ジュリア……!!」
それだけ言い残して、ジュリアはろくに返事もせずに財布だけを持って、さっさと玄関から出て行ってしまった。
いつも通りにまたしても鍵を掛けていない。
残された拓ちゃんは、混乱しながらもう一度ジュリアのスマートフォンを見た。
何度見ても自分が写っている。
録画されている。
拓ちゃんはベッドの上で固まってしまった。
どうしたらいいのか分からない。
自分の行動の全てが記録されてしまう。
たとえばこのままベッドにもう一度寝転べば、たとえばこのジュリアのスマートフォンを触ろうものなら、たとえば画面外に移動すれば、トイレを借りようものなら、部屋を漁ろうものなら、もしくは部屋を見渡したとしても、それら全てが見られてしまう。
画面外に出ればいいってわけでもない。
音が入るし、あとあとジュリアが帰宅してこの録画を確認して、そうなれば必ず聞かれるだろう。
なにしてたの。
答えられる自信がない。
拓ちゃんは、考えに考えた末、そのまま固まっていることに決めた。
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