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21話 ストーカー、ストーカーを卒業する。3
しおりを挟む「だからさ、今度から普通に声かけてよ、そしたら気持ち悪くなんてないよ」
にっこり。
ジュリアの笑顔に、拓ちゃんは鼻の奥がつんとした。
やはりジュリアは天使だ。
自分はなんて汚いのだろう。
つんと指で小突かれた額から清涼飲料水が体中ににじみ渡っていくような感覚だった。
「それにあたし、拓ちゃんの顔、好みだしね」
「は、」
ついでのように言われた言葉に、拓ちゃんは意味を理解しようとしてその反面、一度思考を停止した。
その間にジュリアはもう一度取ってつけたようににこっと微笑み、
おもむろに、
ゆっくりと、
膝立ちになって拓ちゃんの左横にやってきた。
拓ちゃんは手に持っていたカップを落としてひっくり返す前になんとかテーブルに置き、カップから手を離し、近づいてくるジュリアの目をガン見した。
ジュリアは柔らかく微笑みながら、拓ちゃんの太もも辺りにしなだれるようにしてぺたんと床に座り、そこから上目遣いに拓ちゃんを見上げてきた。
そうして、拓ちゃんの太ももにそっと左手を乗せ、もう片方の手で、拓ちゃんのくちびるに触れてくる。
「あたし好きなんだよね、こういう、男らしいくちびる。厚くて、ちょっとかさかさしてて。きれいな肌。この鼻も、顎のラインも。髪の毛切ったら、もっと男前なのにね、拓ちゃんは」
拓ちゃんは、生まれてこのかた自分の容姿を出来たほうだと思ったことはない。
くちびるがかさかさしているのは手入れをしていないからだし、鼻だって別にそんなに高いわけでもない。
顎のラインとか言われてもよく分からない。
どちらかといえば、イケメンと呼ばれる類いの人間の隣には立ちたくない。
それでも、今のこの状況は、拓ちゃんにとって非常に刺激的だった。
「ねえ、拓ちゃんは、今までずっと見てきたんだよね、あたしのこと。あのときも、あのときも、……、あのときも……?」
あのとき。
どの時のことか。
言われなくても分かる。
しょうちゃんに組み敷かれていたとき。
ゆたかくんと抱き合っていたとき。
だいちくんと服を脱がせあっていたとき。
ゆうたんに脚を開いていたときだ。
視界の端にワンピースからはみ出したジュリアのふくらはぎが見える。
腕を少し動かせばそのふくらはぎに触れることができる。
拓ちゃんはごくりと生唾を飲み込んだ。
「ねえ拓ちゃん」
呼ばれて、意識をもう一度ジュリアの顔に向けると、それはさっきよりもぐっと近く拓ちゃんの顔の傍にあって、拓ちゃんの太ももに置かれたジュリアの手に力が入るのが重みで分かる。
「拓ちゃんはあたしのことが好き?」
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