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8話 ストーカー、窮地に陥る。1
しおりを挟む世はSNS社会。個人の特定など吉崎 拓哉の執念にかかれば造作もないことだった。
まずは吉崎 拓哉自身があらゆるSNSに登録し、ジュリアを探す。
決して自身の素性を明かさぬよう、アカウント名は登録SNSによって使い分け、必要以上の接触をしないように細心の注意を払いつつ、調べて調べて調べて調べて調べまくった。
ジュリアの働く店や昼間に遊びに行った相手、買い物の中身、何を食べたか、どこで何の映画を観たか。
さらにそこから派生してジュリアのネットワークを白み潰しに調べ上げた。
そうして導き出した答えは、彼らが全員、ジュリアの恋人なんかではなく、一般的にいうところの友だちだ、ということだった。
ジュリアは店の客には手を出さない。
店のママからきつく言われているからだ。
店の女の子が客に手を出しているなんてことがあれば、その店の信用はガタ落ちだ。
ジュリアはその代わりに友だちに手を出した。
ちなみにしょうちゃんは中学生のときの同級生、だいちくんは高校のときの先輩、ゆたかくんは高校の同級生、ゆうたんはナンパしてきた相手だった。
絶対に店に顔を出さないことを条件に、相手に彼女がいようがいまいがお構いなし、誘われれば乗った。
事実、4人のうち、しょうちゃんとゆたかくんには彼女がいる。可愛いかどうかは別として。
つまりはそういうことだった。
「淫乱……? 淫乱か……? 淫乱なのか……?」
ジュリアのことを知れば知るほど吉崎 拓哉は落ち込んだ。
ぼくの天使が思ったよりも天使じゃなかった。
だがそれと同時に、高嶺の花であるという幻想も解けた気はする。
自分だって万にひとつでもチャンスさえあれば、あわよくば……。
だが、そこまで考えて吉崎 拓哉はいつも首を横に振る。
万にひとつはない。
なぜなら自分にそんな勇気がないから。
勇気がなければ自信もない。
だから、直接ジュリアの前に己の姿を晒すなんてことは、できるはずがない。
ジュリアはやはり、たとえ彼女がどんな人物であったとしても、吉崎 拓哉にとっては高嶺の花だった。
彼ら4人と店の客を羨み続けるしかない。
そう思いながら吉崎 拓哉はパソコン画面を眺め続け、気づけば2年の歳月が流れていた。
隠しカメラはひとつとしてバレることはない。
ジュリアは、年末の大掃除なんてことは、しない女だった。
その日の吉崎 拓哉は焦っていた。
いつものパソコン画面にいつもとは違うものが映っている。
ジュリアが、吉崎 拓哉の知らない男を家に上げたのだ。
いつもの4人ならまだ良かった。
彼らのことは徹底的に調べ上げたから素性が知れているし、なによりもう2年も見ているものだから充分といえるほど見慣れたので、ジュリアの相手として安心できる人物たちだ。
ところがあれは一体誰だ。
吉崎 拓哉はパソコン画面に齧りつきながらひたすら焦った。
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