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15話 線。3
しおりを挟む「ちょっと待って」
腹に腕を回して抱き寄せると、裕太の身体が急激に熱を持ち始める。触ってたらすぐに分かるくらいだ。気にせずそのまま首筋や耳朶に舌を這わせると、裕太はされるがままだとでも言わんばかりに固まってしまった。
期待していたくせに、と鼻で笑いそうになるのを我慢して、襟首引っ掴んで無理やり肩を露わにしてやる。多少キスマークがついても、どうせ本人からは見えないから文句は言われないだろう。
「あの、ししょう」
「こっち向きな」
「はいぃ、」
背中側のシャツを引っ張って無理やりこっちを向かせると、裕太は困ったような顔で真っ赤になっている。慌てたように引き結んだ唇が微かに震えているのは見えたけど、無視して自分の唇で覆ってやった。口を開けるのはわりと抵抗なくなってきたみたいで、固まってた身体から力が抜けていくのは回数を重ねるたびにどんどん早くなる。
吸い付いていた唇を離すとちゅっと音がする。前にこの音が恥ずかしいって言っていたから最近はわざと音を立てているんだけど、多分こいつはわざとだってことには気付いていない。
しばらくそうしていると裕太が身体ごと完全にこっちを向くから、俺はそっとその身体を離した。
「おしまい」
「師匠……」
恨みがましそうな目で抱き付いて来られるともう暑い。言わないけど。
「なんでいつもここまでなんですか」
言いたい事は分かっている。答える代わりに抱き寄せて頭を撫でてやる。
「こんなんじゃ嫌ですよ、だって俺、もっと……」
「まだ駄目」
「何でですか」
そこが俺の中での、一線だからだよ。
「ガキ相手にはしねぇの。お前まだ高校生だろ」
「オレ、ガキじゃないですよ、もう」
真っ直ぐな瞳で見詰められて、思わず頬が緩む。犬が尻尾振っているようにしか見えない。
「なら、こうしようぜ。高校卒業したら最後までしてやる」
「え……」
「ガキじゃねぇんだろ」
「本当に?」
「約束な。卒業式の日に、ちゃんと最後までしてやるよ、裕太」
「師匠……本当に?」
さっきまでとは違う表情で赤らんで、段々と涙目になっていく。俺のことでそんなに思い悩んでいるのかと思うと、可愛くて仕方がない。
「だから今日はもうお預け。分かったか?」
「はい。絶対、絶対約束ですからね」
目の前に自分で引いた一本の線。目的は「護る」ため。
先ずは自分と、それから、大切にしたい筈の相手を。
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