9 / 67
9話 記憶。3
しおりを挟む
「あんた何回同じことすれば気が済むんだ!」
「気の迷いだったんだ……」
「付き合ってられないよ。そんなに女性の方が良いなら、おれなんて要らないじゃないか」
「どこに行くんだ」
「もう来ない!」
『樹、ごめん。会いたいんだ』
『ヒカル……』
『指輪、流石にもう、捨てた?』
『……有るよ、まだ。埃被ってるけど』
「手」
「嫌だよ、恥ずかしい」
「繋いでる方が暖かいだろ。だからほら、手」
「うん」
「ずっとこうしていよう」
「昨日来るって言うから待ってたのに」
「仕方ないだろ、仕事だったんだから」
「昨夜どこに行ってたんだ」
「友達の家だってば。ちゃんと言っておいただろ」
「クリスマスプレゼント」
「ぬいぐるみ……って……」
「樹に似てる気がしたんだ」
「うさぎが?」
「気に入らなかった?」
「いや、嬉しいよ。有難う、ヒカル」
「一人で帰って来れないなんて……飲み過ぎじゃないのか」
「煩いな、仕方ないだろ」
「薬、テーブルに出しておくよ」
「……帰るのか」
「最近あまりうちに来ないな」
「ごめん、勉強が忙しいんだ。三年から、やることが増えて……」
「俺はほったらかしか」
「そんなんじゃないよ。ヒカルだって仕事ばっかりじゃないか」
「仕方ないだろ」
「人妻って……」
「向こうが誘ってきたんだ」
「また仕方ないで済ませるつもりかよ」
「じゃあどうしろって言うんだよ」
「どうしろって……あんたこそ何がしたいんだ。おれのこと何だと思ってんの?」
「……」
「なあヒカル。おれ今、あんたの何なのかな……」
「……何だろうな」
「……」
「分からないよ、最近」
「……。……なら、もう、やめよう。会う必要ないよな」
「……そう、かもな」
「そうだよ。なんか、おれも疲れた。何にこんなに怒ってるんだろ」
「樹」
「帰って貰えないかな。グラス、片付けるから」
「……樹、なぁ」
「もう会わないから」
「樹、ちょっと待て」
「触んな」
「……」
「……やめたろ、もう」
「涙とまんない……」
「気の迷いだったんだ……」
「付き合ってられないよ。そんなに女性の方が良いなら、おれなんて要らないじゃないか」
「どこに行くんだ」
「もう来ない!」
『樹、ごめん。会いたいんだ』
『ヒカル……』
『指輪、流石にもう、捨てた?』
『……有るよ、まだ。埃被ってるけど』
「手」
「嫌だよ、恥ずかしい」
「繋いでる方が暖かいだろ。だからほら、手」
「うん」
「ずっとこうしていよう」
「昨日来るって言うから待ってたのに」
「仕方ないだろ、仕事だったんだから」
「昨夜どこに行ってたんだ」
「友達の家だってば。ちゃんと言っておいただろ」
「クリスマスプレゼント」
「ぬいぐるみ……って……」
「樹に似てる気がしたんだ」
「うさぎが?」
「気に入らなかった?」
「いや、嬉しいよ。有難う、ヒカル」
「一人で帰って来れないなんて……飲み過ぎじゃないのか」
「煩いな、仕方ないだろ」
「薬、テーブルに出しておくよ」
「……帰るのか」
「最近あまりうちに来ないな」
「ごめん、勉強が忙しいんだ。三年から、やることが増えて……」
「俺はほったらかしか」
「そんなんじゃないよ。ヒカルだって仕事ばっかりじゃないか」
「仕方ないだろ」
「人妻って……」
「向こうが誘ってきたんだ」
「また仕方ないで済ませるつもりかよ」
「じゃあどうしろって言うんだよ」
「どうしろって……あんたこそ何がしたいんだ。おれのこと何だと思ってんの?」
「……」
「なあヒカル。おれ今、あんたの何なのかな……」
「……何だろうな」
「……」
「分からないよ、最近」
「……。……なら、もう、やめよう。会う必要ないよな」
「……そう、かもな」
「そうだよ。なんか、おれも疲れた。何にこんなに怒ってるんだろ」
「樹」
「帰って貰えないかな。グラス、片付けるから」
「……樹、なぁ」
「もう会わないから」
「樹、ちょっと待て」
「触んな」
「……」
「……やめたろ、もう」
「涙とまんない……」
2
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
one night
雲乃みい
BL
失恋したばかりの千裕はある夜、バーで爽やかな青年実業家の智紀と出会う。
お互い失恋したばかりということを知り、ふたりで飲むことになるが。
ーー傷の舐め合いでもする?
爽やかSでバイな社会人がノンケ大学生を誘惑?
一夜だけのはずだった、なのにーーー。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる