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type C 1

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「なーあー、あんた本当にこれ楽しいのか?」
 子猫ちゃんが自分のちんちんをにぎにぎしながらうんざりしたような顔で御主人様に問い掛ける。
 御主人様は御主人様で、げんなりした顔で子猫ちゃんの股間を眺めていた。
「お前のその態度のおかげで全っ然楽しくない」
「だろうなあ」
 二人は同じようにはあああー……と深い溜め息を吐いた。
 全裸で床に座り込んで大股開きながら面倒くさそうにちんちんを握っている子猫ちゃんを、御主人様はベッドにだらけて座って眺めている。ジーンズに隠された御主人様の筋肉質な細い脚は子猫ちゃんのお気に入りだ。
「大体さあ、今更この間柄でおれに羞恥心とか求められても無理だって。見てこのやる気のないちんちん。興奮材料どこにもないから無理よ、無理」
 子猫ちゃんの言う通り、子猫ちゃんのちんちんはさして元気もやる気も出す様子はなさそうだ。たるん、と重力に従順になっている。
「そうだよなあ、お前にそんなもん求めた俺が間違いだったか」
 御主人様は心の底からどんよりした顔で嘆いた。
「そうそう。今までどんだけ隅々まで見られてると思ってんの。今更あんたの前で全裸になろうがちんちん触ろうがどうってことないんだって」
「なんてこった……」
 俺の躾が間違ってたか、と御主人様は完全に項垂れてしまった。子猫ちゃんは面倒くさいと思いながらも一応困った。
 そもそもはこんな不思議な無理難題を押し付けようとした御主人様が100パー悪いんだけど、子猫ちゃんは別に御主人様を悪戯にがっかりさせたいわけでもない。子猫ちゃんは御主人様の項垂れて丸見えになった旋毛を眺めながらうーん……と唸った。
「まあ、あんたがおれの躾に失敗してんのは否定しないけどさあ。要するに、あんたがおれを見て興奮出来ればそれで良いわけだろ」
「言っとくが俺も大概お前と変わりないからな」
 ただ子猫ちゃんを眺めたところでちょっとやそっとじゃ興奮はしない、と御主人様が相変わらずのげんなり顔で膝に頬杖をつくと、企んだ子猫ちゃんはにやっと口の端を上げて笑ってみせた。
「ペットと飼い主っていうのは似てくるもんだねえ。じゃああれだな、折角だから、ひとりで楽しく玩具遊びでもしようかと思ってたんだけど、気が変わったわ」
「なんだ」
「楽しいコトすっか」
「嫌な予感」
「だーいじょうぶだって」
 子猫ちゃんは自分で思いついたことに気を良くして急に楽しくなってきた。床に座り込んでいた身体を起こして、膝立ちで御主人様の側に寄っていく。ベッドに怠そうに座っている御主人様の太ももに両手を置いて、その仏頂面を覗き込んだ。
「あんた、俺に触んなよ」
 上目遣いで挑発的に微笑んだ子猫ちゃんはそう言って御主人様の唇にキスをした。唇で唇を挟むようにして、軽く、しっとり。
「なんだ? 反抗期か、口答えか?」
「襲い受けだよ」
 ペットと飼い主は似てくるものらしい。御主人様はにっと口端を上げて、子猫ちゃんの悪戯に少なからずの興味を示した。
 御主人様の反応に更に気を良くした子猫ちゃんはもう一度御主人様にキスをする。わざとちゅうっと音を立てて、吸い付いたり、軽く噛んだり、唇同士を擦り合わせたりした。そのうち舌で唇を舐め、薄く開いた間から前歯を舐めてから御主人様の舌を引きずり出す。んんっとわざとらしく息を吐きながら舌を絡ませ合えば、お互いのものが緩く反応したのが分かった。
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