龍が噛みついて浸食してくる

夏緒

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前編

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「いっ……っだあああ!!」

 こいつまた噛んでる。
 首筋とか、皮膚の薄いところにやられると本当に痛い。

「あ、ごめん、痛かった?」
「痛いっていつも言ってるじゃないか、気持ちいいのも飛んでくわ」
「それはいかんね」
 反省の素振りはあまりないまま、龍之介くんはまた僕の尻に向かって腰を打ち付けた。
 震えるほど気持ちよくて、おかげで忘れそうだった下っ腹がまた疼き始める。

 龍之介くんには噛み癖がある。
 しばらく経ってから気がついた。
 最初は、やたらとスキンシップの激しいタイプなんだと思っていた。背中の辺りが多かったから自分では見えなくて、それもあって強い勢いでキスマークつけられてるんだとばっかり思ってたし。
 でもしばらくして、なんかやたら風呂で滲みるなと思って鏡でよく見たら、左肩のところに歯形がついていた。
 これは歯形である、とはっきり認識できるほど、くっっっきり分かりやすい歯形がついていて、え、これ肉を食いちぎられる寸前じゃね? ってくらいにその跡は深かった。
 え、……なにこれこっわ……!!
 なんだよお前吸血鬼かよ、そら痛ぇわ……。
 と、僕は風呂場の鏡で自分の肩を見ながら驚愕した。

 そんな龍之介くんは今日も僕を組み敷いて楽しそうに酷いことをしてくる。
 今やられたのは左の首筋だった。因みに言うとこないだは右のふくらはぎにやられた。
 痛いんだから、本当。

「なんで噛むの……」
「いやあなんか、噛んだ感触が気持ちよくて」
「犬みたいぃ……」
「ちゃんと人間だから大丈夫だよ、獣姦じゃないって」
「だまれ……っ、あ、あ  はあ、んんんんぅ……」
「あれ、イった?」
「や…………、踏みとどまった……」
「あら残念。じゃあもっと激しくしてあげようか」
「あ  あ  あ  あ  あ  だめ、ちょ、あ、だ  め  っ」

 そもそも何故僕が同じ職場の龍之介くんとこんなことをしているのかといえば、正直に言うと実は事の始まりを覚えていない。多分飲み会のあとの酔った勢いとか、そんなんだったと思う。
 とにかく僕たちは、毎週金曜日の夜にどっちかの家に泊まりに行って、ひたすらこんなことばっかりしている。
 前はもっと頻度が高くて、最初の頃はほとんど毎日だったと思う。加えていつぞや4時間ぶっ続けでやった時は本当に死ぬかと思った。歯形の量が尋常じゃなかったし、息も絶え絶えで、最後の方なんて僕は気絶寸前だった。
 腹上死とかいう言葉が浮かんできて、いやいや腹の上じゃなくて完全に下敷きですがなこれ……とか、考えていたと思う。
 それからお互いに節度というものの重要性を認識し、毎週金曜日というところに落ち着いたわけだ。因みに今週は龍之介くんの家。
 とっ散らかっている僕の家と比べると、龍之介くんの部屋はとても綺麗。猥雑な僕の部屋でするのも酔狂で良いけど、こんな清潔感のある部屋でこんなひたすら汚すようなことをするのも興奮する。

「噛むよ」
「だから嫌だって……あ、い゛っ………………だ、」
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