20 / 39
魔女の供述
しおりを挟む
捕えられた魔女の元へ赴き、若い女に化けていた彼女と対面する。
もう杖は取られて、抵抗もできなくされてる。
魔女は腰のひん曲がったお婆さんで、その指は節くれだっていた。
ただ、その容姿だけはとても美しい女の子の姿のままだった。
「お前が、俺を女にしようとした魔女だな」
「うひひ。ついに捕まっちまったねえ」
「ふざけるな。散々逃げ回って手こずらせてくれやがって。何の目的で俺に近づいた。言えよ」
「……言ったら罪を軽くしてくれるのかい?」
王族に対する犯罪は即座に死刑だ。
それでも、お兄様は顔色一つ変えずに減刑すると言い放った。
その言葉が嘘であることは、同じ王族である僕が誰よりも知ってる。
魔女は騙されたのか知らないけど、話す気になったみたいだった。
「あたしはねえ、昔から未来が見えんだよ」
「未来だって?」
「そうさ。今、あたしに見えんのは、あんたと弟が仲良く子育てしてる未来だ。一緒になって、幸せに暮らしてるねえ。その近くには、いい女になった護衛の騎士もいるねえ」
ヒッヒッヒとお婆さんは不気味に笑う。
でも、その目は何だか孫を思いやるみたいに優しい気がした。
だけど、僕を除く、お婆さんを牢屋に繋いだ面々は、信じられないと思ってるみたいだった。厳しいままの表情で、お婆さんの供述に耳を貸している。
「あたしはねえ、長いこと、何にもしないで過ごしてた。ただ自分の為だけに魔術を磨いて、生まれてこの方、一度も施しなんてしたことなかった。だって、そりゃそうじゃねえか。あたしが磨いた技術はあたしの為のもので、あたしが誰かに施してやる理由にはならないんだって、ずっとそう思ってたからね」
お婆さんは冷笑する。
「ま、だけどさ。こんなあたしでも人生で一度だけ、命を拾ってもらったことがあってね。ありゃいつだったかな。たまにゃ淀んだ空気でも吸いてえなってんで、若いガキの恰好して裏路地をぶらついてたんだよ。そしたらさぁ、若いごろつきに目つけられて、襲われかけたんだ。で、やばいなってんで正体バラそうとも思ったんだけど、せっかくだしってので若いのと楽しんだんだ。そしたら魔法が解けちまってさ。やってる最中に相手がババアに戻って、ガキ共は大慌て、何をとち狂ったのかあたしを殺そうとしてきやがった! そんときにたまたま偶然、助けてくれたのが、コレット、お前のとこの護衛だよ」
アリーのこと……?
「そうそう。まだあんたと知り合う前だったのかねえ。見すぼらしい恰好したガキだと思ったけど、腕っぷしは強かったなぁ。あっという間に男共を撃退してくれてね。何かお礼をと思ったけど、あたしにやれるもんはなかった。だから、一個だけ聞いたんだ。望みはないのかって。そしたら、こう答えたんだ」
『将来、私に家族ができたら守ってください』
「……だから、あたしはあの子の家族を救ってやったのさ」
話を聞いていたアリーが青ざめている。
「どういうこと。なんで、意味が分からない」
「アリー、あんたは生涯に渡って仕える方を見つけたんだね。コレットは身寄りのないあんたを拾って、家族にしてくれた。アリーの大事な大事な家族。それがコレット。でも、コレットは実の兄に殺される運命だった。だからあたしはそれを、変えてやったんだねえ。可愛い可愛いイモウトにしてやることでさ」
ヒッヒッヒと老婆が笑う。
お兄様は冷めた目で老婆を睨んでいた。
もう杖は取られて、抵抗もできなくされてる。
魔女は腰のひん曲がったお婆さんで、その指は節くれだっていた。
ただ、その容姿だけはとても美しい女の子の姿のままだった。
「お前が、俺を女にしようとした魔女だな」
「うひひ。ついに捕まっちまったねえ」
「ふざけるな。散々逃げ回って手こずらせてくれやがって。何の目的で俺に近づいた。言えよ」
「……言ったら罪を軽くしてくれるのかい?」
王族に対する犯罪は即座に死刑だ。
それでも、お兄様は顔色一つ変えずに減刑すると言い放った。
その言葉が嘘であることは、同じ王族である僕が誰よりも知ってる。
魔女は騙されたのか知らないけど、話す気になったみたいだった。
「あたしはねえ、昔から未来が見えんだよ」
「未来だって?」
「そうさ。今、あたしに見えんのは、あんたと弟が仲良く子育てしてる未来だ。一緒になって、幸せに暮らしてるねえ。その近くには、いい女になった護衛の騎士もいるねえ」
ヒッヒッヒとお婆さんは不気味に笑う。
でも、その目は何だか孫を思いやるみたいに優しい気がした。
だけど、僕を除く、お婆さんを牢屋に繋いだ面々は、信じられないと思ってるみたいだった。厳しいままの表情で、お婆さんの供述に耳を貸している。
「あたしはねえ、長いこと、何にもしないで過ごしてた。ただ自分の為だけに魔術を磨いて、生まれてこの方、一度も施しなんてしたことなかった。だって、そりゃそうじゃねえか。あたしが磨いた技術はあたしの為のもので、あたしが誰かに施してやる理由にはならないんだって、ずっとそう思ってたからね」
お婆さんは冷笑する。
「ま、だけどさ。こんなあたしでも人生で一度だけ、命を拾ってもらったことがあってね。ありゃいつだったかな。たまにゃ淀んだ空気でも吸いてえなってんで、若いガキの恰好して裏路地をぶらついてたんだよ。そしたらさぁ、若いごろつきに目つけられて、襲われかけたんだ。で、やばいなってんで正体バラそうとも思ったんだけど、せっかくだしってので若いのと楽しんだんだ。そしたら魔法が解けちまってさ。やってる最中に相手がババアに戻って、ガキ共は大慌て、何をとち狂ったのかあたしを殺そうとしてきやがった! そんときにたまたま偶然、助けてくれたのが、コレット、お前のとこの護衛だよ」
アリーのこと……?
「そうそう。まだあんたと知り合う前だったのかねえ。見すぼらしい恰好したガキだと思ったけど、腕っぷしは強かったなぁ。あっという間に男共を撃退してくれてね。何かお礼をと思ったけど、あたしにやれるもんはなかった。だから、一個だけ聞いたんだ。望みはないのかって。そしたら、こう答えたんだ」
『将来、私に家族ができたら守ってください』
「……だから、あたしはあの子の家族を救ってやったのさ」
話を聞いていたアリーが青ざめている。
「どういうこと。なんで、意味が分からない」
「アリー、あんたは生涯に渡って仕える方を見つけたんだね。コレットは身寄りのないあんたを拾って、家族にしてくれた。アリーの大事な大事な家族。それがコレット。でも、コレットは実の兄に殺される運命だった。だからあたしはそれを、変えてやったんだねえ。可愛い可愛いイモウトにしてやることでさ」
ヒッヒッヒと老婆が笑う。
お兄様は冷めた目で老婆を睨んでいた。
11
お気に入りに追加
1,004
あなたにおすすめの小説
ある日、人気俳優の弟になりました。2
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
【R18】兄弟の時間【BL】
菊
BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。
待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!
斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。
「じゃぁ結婚しましょうか」
眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。
そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。
「結婚しましょう、兄さん」
R18描写には※が付いてます。
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる