兄に嫌われてる弟ですが誤解が解けたら十数年分溺愛されました(完)

ゴールテープが見えてきた

　え？　政略結婚って、完璧な寝取られチャンスじゃん！
　お兄様やったね！　って表情を覗き見たらめっちゃ切れてる！

「どこの誰です？　俺のコレットに手を出そうとする愚か者は」
「アースラを知ってますか？」
「あまり良い噂を聞かない男ですね。権力志向の人物で媚びるのは得意だが、下の者に対して厳しいと聞きます。その屑が犯人ですか？」

　あ、その人僕も知ってる。
　羊みたいな顔の形をした人で、普段は黙ってることが多いけど、時折一人でニヤついてたり、急に部下に切れだしたりすることもある危険な人だ！

「ええ、その屑が魔女事件の首謀者をコレットにしようとしているようです」
「俺を庇ったのはコレット自身じゃありませんか」
「それは自身を容疑者から外す為の偽装で、本当は魔法に当たる予定ではなかったと言い張ってるそうですよ」
「下らない。初めからコレットに罪を負わせるつもりで吹聴しているのか。ますます許せないな」
「アースラに同意する者は我が派閥でも全体の一割に満たない数でしょう。その者らをどう裁くか、あなたに任せたいと考えます」

　お兄様は静かに紅茶を口に運ぶ。

「決まっています。コレットを首謀者に仕立てるということは、魔女事件の真相を有耶無耶にするということ。俺はアースラの不自然な言動こそ、疑うべきだと思います。故に、アースラを拷問してでも真実を吐かせる」

　拷問って……お兄様こわっ！

「そうですね。可愛いコレットを犯罪者呼ばわりするなんて許せないわ。拷問でも生温いくらいね」

　メイリアート様もこわっ！
　上品で完成された美を誇る彼女が「拷問」って口にすると現実味があって怖い！
　母上、僕はこんな恐ろしい二人を敵に回さなくて良かったよ！

　ガタガタ震えてると二人がニッコリと笑みを浮かべた。

「何も心配はいらないからな？　お前の身も心も髪の毛の一本に至るまで、俺が守ってやる。お前を傷つける者は全て敵だ。そうですよね、母上」
「コレットは何にも心配せずに私達と一緒にいるといいわ。……将来的にはレインと結婚させるのも手ですね。そうすれば派閥が合流出来て私達も安泰ですし。多少血は混じるけれど気にせずともいいでしょう。今回は特例です」
「それは良い考えだ。コレットを俺の妻に……」

　嬉しいけど半分は同じ血が流れてるのにゴールテープを余裕で切ろうとしてるよ！

　テーブルの下でお兄様の手が僕の手をしっかりと掴む。
　それだけでお兄様のズボンがテントを張ってる。
　変態同士一緒になるのもいいのかな？

　正直、ミコト皇国の民に同情するよ。
　女体化した弟を妻にする変態が、この国のトップになるなんて。

　でも僕が幸せならオッケーです！　ごめん国民の皆！