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思わぬ再会
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「……はぁ」
いけないと自覚してるけど溜息は増える。
寒さが本格化してきたので、私は装いを暖かいものへ変えた。
学園の令嬢は休日でもしっかりとドレスを着ている娘が多いけど、私はレギから逃げる為に平民のような装いに着替えて街の図書館へ向かっていた。
早朝、まだ霧が立ち込める時間だ。
「あったかいけど寒い」
ジュンと以前のように話せなくなってから、孤独を埋める為に独り言が増えた。
「……というか、こんな時間だと図書館も開いてないよね」
当たり前のことに気づいて溜息する。
仕方なく、予定を変更して朝の市場へ向かった。
商人や聖職者くらいしか出歩いてない街を歩く。
王都の街並みは雄大で、無機質な石造りの建物は見ているだけでも飽きない。
グルグルと市場を歩いて最後に広場へ辿り着く。
朝食を売ってる露店があったから、そこで適当に買いそろえた紙袋を抱いて公園のベンチに座る。
いつだったか、辺境の広場のベンチでジュンと談笑したことを思い出した。
「もういちど話したいよ」
過去を振り返っても、取り戻せるものなんてないけれど。
今は、ジュンの熱を一秒でも長く思い出していたい。
そうしないと、心が壊れてしまいそうになるから……。
「ん?」
と、物乞いらしい少女が歩いてくるのが見えた。
フラフラとおぼつかない足取りで、ボサボサの前髪の下は表情が伺えない。
前の私なら危険を感じて逃げていたところだけど、無気力な私が足を動かしてくれなかったから、孤児が近づくのを許してしまった。
……許してしまったんだけど。
近くでその顔を見て、私は驚いた。
だって、その顔が他でもない、アリシアのものだったから。
辺境に居たあの娘が街の広場なんかにいるはずないのに……。
「…………」
「…………」
アリシアと無言で見つめ合う。
(……やっぱりアリシアよね)
近くで見るとよく分かる。
瞳の色、髪の色、体躯、顔立ち、全部私が可愛がってたアリシアのものだ。
アリシアは私をじっと見てたけど、食べ物がもらえそうにないと分かるとそのまま背を向けて行ってしまいそうになった。
(え!? ごはん分けて欲しいとか、一言くらいないの!?)
「ちょ、ちょっと待って!」
「…………?」
アリシアがちょこんと小首を傾げる。
……かわいい。
じゃなくて、
「こっちにきて。一緒にご飯を食べましょう? あなたの分もあるわよ」
「……私、くさいからいい」
心遣い……!
ああ、うん、確かに匂うけど!
この季節に外で行水したら風邪で死んでしまうものね!
別に匂いについては我慢できないこともないけど、まだ子供なのにお風呂に入れてないのが可哀想で……。
どこかでお風呂を借りれないかしら。
守衛がいるので学園には連れて入れない。
他に思いつくところはジュンのいる別邸くらいだ。
彼は学園には寝泊りしていないみたいだから、訪ねれば交渉次第で借りられるかもしれない。
だけど、ジュンは私のことを……。
いや、それはもう、関係ないんだ。
ジュンが私を忘れてしまったというなら、思い出すまでずっと傍にいればいいんだ。
ジュンが私を思い出してくれる可能性があるなら、私は何だってする。
「お姉ちゃん。ばいばい」
「ま、待って! 行かないで! 宛てがあるの! お風呂を借りにいきましょう?」
「いい」
「あなたがよくても私がよくないの! お願いだから世話をさせて!」
逆行前の世界では散々世話をしてもらったけど、今は反対の立場になってしまった。
とにかく、幼く身寄りもなさそうな彼女を寒空の下に放り出すなんてできない。
私はアリシアを連れて、記憶にあるジュンの別邸を訪ねることにした。
いけないと自覚してるけど溜息は増える。
寒さが本格化してきたので、私は装いを暖かいものへ変えた。
学園の令嬢は休日でもしっかりとドレスを着ている娘が多いけど、私はレギから逃げる為に平民のような装いに着替えて街の図書館へ向かっていた。
早朝、まだ霧が立ち込める時間だ。
「あったかいけど寒い」
ジュンと以前のように話せなくなってから、孤独を埋める為に独り言が増えた。
「……というか、こんな時間だと図書館も開いてないよね」
当たり前のことに気づいて溜息する。
仕方なく、予定を変更して朝の市場へ向かった。
商人や聖職者くらいしか出歩いてない街を歩く。
王都の街並みは雄大で、無機質な石造りの建物は見ているだけでも飽きない。
グルグルと市場を歩いて最後に広場へ辿り着く。
朝食を売ってる露店があったから、そこで適当に買いそろえた紙袋を抱いて公園のベンチに座る。
いつだったか、辺境の広場のベンチでジュンと談笑したことを思い出した。
「もういちど話したいよ」
過去を振り返っても、取り戻せるものなんてないけれど。
今は、ジュンの熱を一秒でも長く思い出していたい。
そうしないと、心が壊れてしまいそうになるから……。
「ん?」
と、物乞いらしい少女が歩いてくるのが見えた。
フラフラとおぼつかない足取りで、ボサボサの前髪の下は表情が伺えない。
前の私なら危険を感じて逃げていたところだけど、無気力な私が足を動かしてくれなかったから、孤児が近づくのを許してしまった。
……許してしまったんだけど。
近くでその顔を見て、私は驚いた。
だって、その顔が他でもない、アリシアのものだったから。
辺境に居たあの娘が街の広場なんかにいるはずないのに……。
「…………」
「…………」
アリシアと無言で見つめ合う。
(……やっぱりアリシアよね)
近くで見るとよく分かる。
瞳の色、髪の色、体躯、顔立ち、全部私が可愛がってたアリシアのものだ。
アリシアは私をじっと見てたけど、食べ物がもらえそうにないと分かるとそのまま背を向けて行ってしまいそうになった。
(え!? ごはん分けて欲しいとか、一言くらいないの!?)
「ちょ、ちょっと待って!」
「…………?」
アリシアがちょこんと小首を傾げる。
……かわいい。
じゃなくて、
「こっちにきて。一緒にご飯を食べましょう? あなたの分もあるわよ」
「……私、くさいからいい」
心遣い……!
ああ、うん、確かに匂うけど!
この季節に外で行水したら風邪で死んでしまうものね!
別に匂いについては我慢できないこともないけど、まだ子供なのにお風呂に入れてないのが可哀想で……。
どこかでお風呂を借りれないかしら。
守衛がいるので学園には連れて入れない。
他に思いつくところはジュンのいる別邸くらいだ。
彼は学園には寝泊りしていないみたいだから、訪ねれば交渉次第で借りられるかもしれない。
だけど、ジュンは私のことを……。
いや、それはもう、関係ないんだ。
ジュンが私を忘れてしまったというなら、思い出すまでずっと傍にいればいいんだ。
ジュンが私を思い出してくれる可能性があるなら、私は何だってする。
「お姉ちゃん。ばいばい」
「ま、待って! 行かないで! 宛てがあるの! お風呂を借りにいきましょう?」
「いい」
「あなたがよくても私がよくないの! お願いだから世話をさせて!」
逆行前の世界では散々世話をしてもらったけど、今は反対の立場になってしまった。
とにかく、幼く身寄りもなさそうな彼女を寒空の下に放り出すなんてできない。
私はアリシアを連れて、記憶にあるジュンの別邸を訪ねることにした。
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