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甘々な生活
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二人きりの時、彼は私の胸にすがって甘えてくる。
その弱さは私にとって心地よいもので、お互いの弱さを見せ合えるのが人を愛する喜びなのかなと思ったりした。
ジュンから信頼を預けてもらえるようになった私のことを、屋敷の人たちは信用してくれた。
だから、驚くほど簡単に彼の生い立ちを知ることになってしまった。
聞けばジュンは幼い頃に母親から捨てられ、以来、実の父ともほとんど面識のないまま成長して傭兵会社の社長になったらしい。
その後、武功を認められて半ば押しつけられるように辺境伯となったのだけど、その目的は腹違いの兄を見返すことにあるらしかった。
その見返す対象が誰かまでは聞かせてもらえなかったけど、まあ、そういう目標で領地を発展させようとしているんだなぁっていうことは分かった。
ジュンには復讐なんか忘れて私と幸せになって欲しいんだけどね。
夜、同じ寝室で眠るジュンのことを抱きしめて、温もりを与える。
胸にポッカリと穴が空いているらしいジュンの為に熱を与えることは、治療と同じだと思っている。
ジュンは抵抗もせず、何も言わず、ただ私という温もりに溺れるように胸に顔を埋めてくる。
彼は戦場では悪鬼と呼ばれる程に優秀で、戦うことが得意だそうだ。
けれど、私と二人きりの時は幼子と変わらない。
相変わらず、言葉なんてないけれど。
月明かりが差し込むベッドで、彼は静かに私を求める。
「……明後日、時間を作ったんだ。デートをしよう」
誰にも邪魔をされることのない時間帯、彼はようやく素直に言葉を吐きだす。
私はそれを飲み込んで、緩くジュンのことを抱きしめる。
このまま穏やかな時間が続いていけば……。
私たち、けっこう幸せになれるんじゃないかな。
そんなことを考えてしまうくらい、私自身もジュンに溺れているのかもしれない。
「……幸せ」
「僕もだ」
眠りに落ちる直前。
ジュンの力強い腕に背中を引き寄せられて、ウエストがウっとなってしまった。
さっき、調子に乗ってクッキーを食べ過ぎたから……。
醜いヒキガエルのような声を上げながら、彼の後頭部を叩く私。
い、今のは生理反応で……。
「…………」
「…………」
いたたまれない気持ちになりつつ、「今夜は暑いですね」と言って肌着になる。
いや、ね? 発散しないと男の人って苦しいみたいだから、そういうことには協力するものだと思うし。
王子と違ってジュンと私には結ばれる未来しかないから、ちゃんと協力できるところは協力するよ。
私はその辺りの知識を本に頼って収集してるから、どこまで本当か分からないけど、殿方の猛る気持ちはよく分かるんだ。
しかし、いかんせんジュンとこういう関係に発展するまで場数とかが皆無だったので、そういうムードに持っていくのが下手だというのは自覚している。
それでも、私はめげない!
(さ……寒っ)
「あ、暑いわ。寝巻を脱がないと」
「まだ肌寒い季節だよね」
「……はい」
羞恥で顔を真っ赤にしながら、ジュンに毛布で包んでもらう。
こういう気遣ってくれるところ、好きなんだけど。
今日は自分が情けない。
枕の下から何かを引っ張るジュン。
「リリナ。愛してる」
「……え? はい。私もです」
「愛しいリリナを見てたら、我慢できそうもない」
「愛しくなるような要素ありました?」
「あったよ」
彼との行為で気持ちよくなったことはまだない。
くすぐったかったり、照れが先行してしまって。
でも、ジュンが私で……私を求めてくれてるって分かるのが、嬉しいなって思えるから。
それが恋なんだって、私は彼と過ごして初めて知れた。
だから、ジュンには感謝してる。
「いつもありがとう」
「……それはこっちの台詞だよ」
ジュンは私を労わってくれる。
頭を撫でて、いっぱい好きだと伝えてくれる。
皆の話だと、彼は女性を苦手にしてるみたいだし、実際そうなのかもしれないけれど。
じゃあ、私は彼の特別になれたってことでいいのかな。
そうだとしたら嬉しいなって、私は思うよ。
一つずつ彼の気持ちを確かめていきたいなって、私は思っている。
その弱さは私にとって心地よいもので、お互いの弱さを見せ合えるのが人を愛する喜びなのかなと思ったりした。
ジュンから信頼を預けてもらえるようになった私のことを、屋敷の人たちは信用してくれた。
だから、驚くほど簡単に彼の生い立ちを知ることになってしまった。
聞けばジュンは幼い頃に母親から捨てられ、以来、実の父ともほとんど面識のないまま成長して傭兵会社の社長になったらしい。
その後、武功を認められて半ば押しつけられるように辺境伯となったのだけど、その目的は腹違いの兄を見返すことにあるらしかった。
その見返す対象が誰かまでは聞かせてもらえなかったけど、まあ、そういう目標で領地を発展させようとしているんだなぁっていうことは分かった。
ジュンには復讐なんか忘れて私と幸せになって欲しいんだけどね。
夜、同じ寝室で眠るジュンのことを抱きしめて、温もりを与える。
胸にポッカリと穴が空いているらしいジュンの為に熱を与えることは、治療と同じだと思っている。
ジュンは抵抗もせず、何も言わず、ただ私という温もりに溺れるように胸に顔を埋めてくる。
彼は戦場では悪鬼と呼ばれる程に優秀で、戦うことが得意だそうだ。
けれど、私と二人きりの時は幼子と変わらない。
相変わらず、言葉なんてないけれど。
月明かりが差し込むベッドで、彼は静かに私を求める。
「……明後日、時間を作ったんだ。デートをしよう」
誰にも邪魔をされることのない時間帯、彼はようやく素直に言葉を吐きだす。
私はそれを飲み込んで、緩くジュンのことを抱きしめる。
このまま穏やかな時間が続いていけば……。
私たち、けっこう幸せになれるんじゃないかな。
そんなことを考えてしまうくらい、私自身もジュンに溺れているのかもしれない。
「……幸せ」
「僕もだ」
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さっき、調子に乗ってクッキーを食べ過ぎたから……。
醜いヒキガエルのような声を上げながら、彼の後頭部を叩く私。
い、今のは生理反応で……。
「…………」
「…………」
いたたまれない気持ちになりつつ、「今夜は暑いですね」と言って肌着になる。
いや、ね? 発散しないと男の人って苦しいみたいだから、そういうことには協力するものだと思うし。
王子と違ってジュンと私には結ばれる未来しかないから、ちゃんと協力できるところは協力するよ。
私はその辺りの知識を本に頼って収集してるから、どこまで本当か分からないけど、殿方の猛る気持ちはよく分かるんだ。
しかし、いかんせんジュンとこういう関係に発展するまで場数とかが皆無だったので、そういうムードに持っていくのが下手だというのは自覚している。
それでも、私はめげない!
(さ……寒っ)
「あ、暑いわ。寝巻を脱がないと」
「まだ肌寒い季節だよね」
「……はい」
羞恥で顔を真っ赤にしながら、ジュンに毛布で包んでもらう。
こういう気遣ってくれるところ、好きなんだけど。
今日は自分が情けない。
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「リリナ。愛してる」
「……え? はい。私もです」
「愛しいリリナを見てたら、我慢できそうもない」
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でも、ジュンが私で……私を求めてくれてるって分かるのが、嬉しいなって思えるから。
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だから、ジュンには感謝してる。
「いつもありがとう」
「……それはこっちの台詞だよ」
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そうだとしたら嬉しいなって、私は思うよ。
一つずつ彼の気持ちを確かめていきたいなって、私は思っている。
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