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私たちはファミリー(思いつき)
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クマと執事さんが厳しくアリシアを睨み、アレンはアリシアを庇いたいけど庇えないといった感じに殺気立っている。
「アリシア……。お前、何ということをしてくれたんだ!」
真っ先に怒りを示したのはクマだった。
続いて、執事が的確に私の状況を見て助け船を出してくれた。
「すぐにお着替えになった方がよろしいでしょう。アリシアについては然るべき罰を与えますので、ここは私にお任せください」
「然るべき罰ですか?」
「ええ、鞭打ちの刑と、望むのであれば打ち首が相応しいかと」
「え!?」
ドレスを駄目にしたくらいで鞭打ちと打ち首って、本気で言ってるの!?
「私にはこのドレス一着と彼女の命が釣り合うとはとても思えないのだけど」
「……申し訳ありません」
アリシアが私の元に跪く。
そんな彼女を庇うように、アレンが私に頭を下げた。
「今回の采配は僕の責任です。代わりに、僕が罰を受けます」
「卑怯だぞアレン! お前は団長のお気に入りだ! お前が身代わりになればアリシアは無事でいられるし、代わりに自分が処刑されることもないという腹積もりだろう!」
「アレンよ、一番の罪はアリシアにある。彼女は元は敵国の将軍の娘だ。ジュン・アルガスに恨みを抱き、その奥方となるリリナ様に反意を抱いたとしてもおかしくはない。今回は無事に済んだが、次は命を狙いかねないのだぞ」
うわー、クマさんも執事さんもブチギレだよ。
青褪めたアリシアは土下座から復帰しないし……。
ていうか、毎回こんなことされたらお菓子を楽しむことさえできないわ。
せっかく息抜きの時間をもらったのにもったいない。
「はぁ……。皆、少し落ち着いてちょうだい。このドレスは安物ですし、とても人の命に変えられるような代物ではありません。アリシア、あなたに罪を求めるようなことはしないから、頭を上げて。アレンは構わないけど、そこの二人はこの子を脅かさないでください。まだ子供なんです」
「し、しかし……」
「クマ……じゃなくてすみません。名前は何でしたっけ」
「グライです、リリナ様」
そうそう、グライだった。ほとんど接点がないからと言って、人の名前を忘れるとは大失態だと思う。辺境に来てから社交界にも参加しなくなってしまったが、顔と名前くらいは一致させないとなぁと反省した。
一応、執事さんの方はちゃんと覚えてる。
マルコだ。こちらは忘れないよう気をつけたいと思う。
「グライ、あなたが私を護ろうとしてくれていることには感謝します。ですが、元帝国人だからといって全員を危険分子だとする考え方には賛同しかねます。私は、あなたたちのこともアリシアたちのことも家族だと思ってます。いたずらに傷つけるのはやめてください」
「う……うう」
クマが泣き始めた……。
いや、泣きたいのはこっちなんだけど。
子供相手にムキになって処刑だのなんだの、正直今すぐにでもクビにしてもらいたいくらいなんだけど。
「申し訳ありません、リリナ様! そしてアリシア! お前にもすまないことをした! 私は、先の大戦で仲間を失った悲しみをアリシアにぶつけていたのかもしれない! すまない! 私にはこうして家族ができていたというのに!」
うん、クマ……じゃない、グライも反省してるみたいだし許そう。
「失ったものを数えるより、今あなたが守っている者のことを考えなさい」
「はい! 私は、リリナ様に恥じない騎士になります!」
頑張ってください。次、アリシアにおかしな暴走したらクビにしてもらうからね。
「奥方様」
執事が私に一礼する。
この人、ナチュラルに奥方様呼びするから突っ込めないんだよね。まだ未婚だって。
「何かしら、マルコ」
「私は奥方様のことを誤解していました。貴族のなかには敵国の子供を買収し、苛め抜く悪辣な方も多いと聞きます。私はアリシアを密かに屋敷から逃し、私の目の届く孤児院で面倒を見ようと思っていたのです」
「は……はぁ」
「しかし、今回の一件で考えを改めました。奥方様のことをホンの一ミクロンも信用していなかった己を恥じ、これからは誠心誠意、務めて参りたいと考えます」
「そ、そう。それは本当に良かったわ」
こんなに頑張ってるのに全く信用されてなかったのか。辛すぎるよマルコ。何なのよマルコ。
戦いは心に傷を残す。
だから、ラブ&ピースが一番なのだと思う。
平和が一番だよ。
「リリナ様すき」
その後、アリシアはすっかり私に懐いてくれた。
それからは皆、特に暴走することもなく、アリシアも怖いオッサンたちに睨まれず伸び伸びと仕事ができるようになってミスも減ったから万々歳だった。
一番の成果はアリシアが私を姉のように慕ってくるようになったことだけど、その話はまた今度ね。
はー。辺境ライフ、ひとまずはリラックスできるし万々歳かな。
「アリシア……。お前、何ということをしてくれたんだ!」
真っ先に怒りを示したのはクマだった。
続いて、執事が的確に私の状況を見て助け船を出してくれた。
「すぐにお着替えになった方がよろしいでしょう。アリシアについては然るべき罰を与えますので、ここは私にお任せください」
「然るべき罰ですか?」
「ええ、鞭打ちの刑と、望むのであれば打ち首が相応しいかと」
「え!?」
ドレスを駄目にしたくらいで鞭打ちと打ち首って、本気で言ってるの!?
「私にはこのドレス一着と彼女の命が釣り合うとはとても思えないのだけど」
「……申し訳ありません」
アリシアが私の元に跪く。
そんな彼女を庇うように、アレンが私に頭を下げた。
「今回の采配は僕の責任です。代わりに、僕が罰を受けます」
「卑怯だぞアレン! お前は団長のお気に入りだ! お前が身代わりになればアリシアは無事でいられるし、代わりに自分が処刑されることもないという腹積もりだろう!」
「アレンよ、一番の罪はアリシアにある。彼女は元は敵国の将軍の娘だ。ジュン・アルガスに恨みを抱き、その奥方となるリリナ様に反意を抱いたとしてもおかしくはない。今回は無事に済んだが、次は命を狙いかねないのだぞ」
うわー、クマさんも執事さんもブチギレだよ。
青褪めたアリシアは土下座から復帰しないし……。
ていうか、毎回こんなことされたらお菓子を楽しむことさえできないわ。
せっかく息抜きの時間をもらったのにもったいない。
「はぁ……。皆、少し落ち着いてちょうだい。このドレスは安物ですし、とても人の命に変えられるような代物ではありません。アリシア、あなたに罪を求めるようなことはしないから、頭を上げて。アレンは構わないけど、そこの二人はこの子を脅かさないでください。まだ子供なんです」
「し、しかし……」
「クマ……じゃなくてすみません。名前は何でしたっけ」
「グライです、リリナ様」
そうそう、グライだった。ほとんど接点がないからと言って、人の名前を忘れるとは大失態だと思う。辺境に来てから社交界にも参加しなくなってしまったが、顔と名前くらいは一致させないとなぁと反省した。
一応、執事さんの方はちゃんと覚えてる。
マルコだ。こちらは忘れないよう気をつけたいと思う。
「グライ、あなたが私を護ろうとしてくれていることには感謝します。ですが、元帝国人だからといって全員を危険分子だとする考え方には賛同しかねます。私は、あなたたちのこともアリシアたちのことも家族だと思ってます。いたずらに傷つけるのはやめてください」
「う……うう」
クマが泣き始めた……。
いや、泣きたいのはこっちなんだけど。
子供相手にムキになって処刑だのなんだの、正直今すぐにでもクビにしてもらいたいくらいなんだけど。
「申し訳ありません、リリナ様! そしてアリシア! お前にもすまないことをした! 私は、先の大戦で仲間を失った悲しみをアリシアにぶつけていたのかもしれない! すまない! 私にはこうして家族ができていたというのに!」
うん、クマ……じゃない、グライも反省してるみたいだし許そう。
「失ったものを数えるより、今あなたが守っている者のことを考えなさい」
「はい! 私は、リリナ様に恥じない騎士になります!」
頑張ってください。次、アリシアにおかしな暴走したらクビにしてもらうからね。
「奥方様」
執事が私に一礼する。
この人、ナチュラルに奥方様呼びするから突っ込めないんだよね。まだ未婚だって。
「何かしら、マルコ」
「私は奥方様のことを誤解していました。貴族のなかには敵国の子供を買収し、苛め抜く悪辣な方も多いと聞きます。私はアリシアを密かに屋敷から逃し、私の目の届く孤児院で面倒を見ようと思っていたのです」
「は……はぁ」
「しかし、今回の一件で考えを改めました。奥方様のことをホンの一ミクロンも信用していなかった己を恥じ、これからは誠心誠意、務めて参りたいと考えます」
「そ、そう。それは本当に良かったわ」
こんなに頑張ってるのに全く信用されてなかったのか。辛すぎるよマルコ。何なのよマルコ。
戦いは心に傷を残す。
だから、ラブ&ピースが一番なのだと思う。
平和が一番だよ。
「リリナ様すき」
その後、アリシアはすっかり私に懐いてくれた。
それからは皆、特に暴走することもなく、アリシアも怖いオッサンたちに睨まれず伸び伸びと仕事ができるようになってミスも減ったから万々歳だった。
一番の成果はアリシアが私を姉のように慕ってくるようになったことだけど、その話はまた今度ね。
はー。辺境ライフ、ひとまずはリラックスできるし万々歳かな。
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