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6 悪夢

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 ギルドでの仕事を終えてアパートに戻った。
 ドアノブに手をかけたところで、勢いよく扉が開いた。

「兄さん! 遅くて心配しました」
「おいヒカリ、落ち着けって」

 妹たちに歓迎されて癒される。
 変わり者の妹だけど、ハグで少し癒された。

「兄さん、少し疲れてませんか? 表情が暗いですし」
「気のせいだよ。僕は全然平気だし……」

 妹に心配をかけるなんてダメな兄貴だな。
 僕は頬を軽く叩いて表情を切り替えた。

「たまには外食でもする? 少しお金が入ったんだ」
「今日は疲れてるでしょうし、明日デートしませんか? 前から兄さんと行きたかった店があるんです」
「ちょ、まさか二人でデートか? あたしも連れてけよ!」
「明日だけ空気を読んで留守番をお願いします。食パンとジャムもありますから」
「嫌だよ!?」

 ヒカリの暴走を押さえる為に抱きしめる。

「ちゃんと時間作るから」
「約束ですよ? 兄さんのデート相手は私じゃなきゃ嫌です」
「兄貴とデートとか普通しないだろ」
「え……。ミアさんは兄さんとデートしないんですか? 妹なのに……」
「ヒカリの方が異常だからな!」
「考えすぎだと思うけど」

 ヒカリだってそんな気はないと思う。
 彼女は純粋に兄として僕を慕ってくれているだけだ。

「私、兄さんと結婚したいです」
「はは。少し箱入りに育てすぎたかな」
「笑いごとじゃねえよ! ヒカリは目がマジなんだよ!」

 純粋に慕ってくれて嬉しい。

(これからもヒカリの期待に応えて頑張らないといけないね……)

「ミアはそういう相手とかいないの? 好きな人とかさ」
「はぁ? あたしなんかガサツだし、胸はあるけどそれだけだもん」
「そんなことないよ。ミアは可愛いし、きっとモテると思うけどな」
「そうか? へへ、じゃあ兄貴に引き取ってもらおうかな」
「……ミアさん。実の兄妹で結婚はできませんよ。ちゃんと相手を探した方がいいと思います。兄さんも困惑してますし」
「お前にだけは言われたくねえよ!」

 今日もヒカリとミアは仲がいいなぁ。
 僕はこの二人を守っていきたいと思う。

 父さん、母さん、見ててね。
 きっと二人を幸せにしてみせるから。

 妹たちに夕飯を用意した僕は、魔力が切れるまで呪符を作ってからシャワーを浴びた。で、自分の部屋のベッドで横になっていたんだけど、気がつくと自分が古い夢を見てることに気づいた。

『デブが告白とかすんなよ! ブース!』

 この声は……ジューク?

『私、ヒロト様が好きなんです。ヒロト様の為だったら綺麗になれます』
『ブスが調子乗ってんじゃねえ!』

 教室のなかでジュークと女の子が揉めてる。
 僕はこれ以上やるとジュークが退学処分を受けると思って、間に入った。

『女の子を苛めたら駄目だよ』
『はぁ? お前、こんな女がいいのかよ』
『きっと可愛くなるよ。○○さん』

 心にもない言葉を、吐いた。
 その瞬間、彼女はニッコリと笑って、僕に手紙を――

『うぜえんだよ!』

 ジュークが手紙を払いのける。
 そして、少女の身体に蹴りを入れた。
 少女が苦しげにうずくまり、僕に助けを求める。

『行こうぜ。ヒロト』

 僕は、少女に手を差し伸べず、うずくまった彼女を見捨ててジュークについていった。

『…………』

 去り際、僕は少女が心配で振り返った。
 彼女は、鬼のような形相で僕たちを睨んでいた。
 読まれなかった手紙を、クシャクシャになる程に握りしめて……。

『…………許さない』

「うああああっ!!!」

 気がつくと、僕は汗だくで毛布を払いのけていた。

「ハァ……ハァ……夢?」
「兄さん!? 今、すごい声がしましたけど、大丈夫ですか!?」
「ヒカリも声がでけえよ……何時だと思ってんだよ……」

 部屋に妹たちが入ってくる。
 かなり、心配させてしまったみたいだ。

「起こしたみたいでごめん。少し悪い夢を見てた」
「添い寝しましょうか?」
「……うん。ヒカリの顔見ながら寝ていい?」
「はいっ。ではミアさん、お休みなさい」
「まてまてまて。おかしいって! なんかヤバそうだしあたしも一緒に寝るわ」
「ミアも可愛いから助かるよ」
「……どういう基準なんだよ」

 ――夢の中の彼女は、イファだったのだろうか。
 今と似ても似つかない容姿だったけど、あれは確かにイファだったと思う。

「……兄さん。怖いなら私を抱き枕にしてくれて構いませんから」
「兄貴、義妹はヤバいからあたしで我慢しろ」
「実妹の方が不味いと思いますよ。私は血が繋がってませんし、最悪妊娠してもイケるはずです」
「何の話だよ! 第一世間体だってあるだろうが!」
「その時は遠いところに引っ越します。誰も私と兄さんを知らない場所へ……」
「お前の将来設計怖すぎ……」

 日の出までまだ時間がある。
 それでも、全然休める気がしなかった。
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