64 / 69
64 一試合目
しおりを挟む
ミナガルデの大会に予選大会はなく、カイル王が招待状を送った国にそれぞれ枠が作られ、各国の王が参加者を決めるという仕組みのようだった。我がトリテアに割り振られた枠は元々二つで、参加するのは俺とシロナの二人だ。残りの枠はほぼミナガルデの勇者で埋め尽くされている。16人しか枠がなくて、その内の10人がミナガルデの勇者なのだから、力の入れようが分かると言うものだ。
「シロナ、他は全員勇者みたいだけど勝てそうか?」
「余裕だよー」
「本当か?」
「うん。でも、準決勝が私達だね。悪意感じるなー。手は抜かないけど」
シロナと本気で戦ったことはない。
俺も楽しみにしておこう。
「じゃあ、一回戦に行ってくるから」
シロナの試合は一試合目。
俺は少し飛んで四試合目だ。
選手用の控室から、彼女の出番を見守る。
大会のリングは野球ドームのような形で、場外負けなどという生易しいルールは存在しない。勝つか負けるか、それが全てのリングだ。
「よう、また会えたなおチビちゃん」
「誰だっけ」
シロナと昨日の勇者が対峙している。
まさか、一試合目があいつになるとはな。
「昨日会ったユウマだろ! 今日の試合で忘れられない名前にしてやるぜ。お前のことも実は狙ってたんだよ。可愛い顔してるからな」
「思い出したかも。アンナにちょっかいかけてたオッサンだ」
「これでも22なんだよ。ハジメの二つ下だぜ」
「へえー。興味ないけど」
ユウマは大剣を持っている。
対するシロナの武器は、聖剣のレプリカだ。
特別な力は何もないただの剣である。
トリテアに魔剣があったら渡してやれたのにな。
鍛冶系のスキルも今後は手に入れたいところだ。
鍛冶師の女を抱いたら手に入るだろうか?
「両者、礼!」
司会進行役の男が会場の中心から大きく離れた場所に位置取りする。
シロナとユウマは互いに礼をした。
(シロナ、相手に神器を使わせるなよ……)
間もなく試合が始まろうとしている。
俺は緊張と共に、シロナの試合を見守った……。
そして――
「試合始め!」
「『節制』しろ……!」
先に仕掛けたのはユウマの方だ。
彼の大剣が異様なプレッシャーを放ち、周囲を圧する。
次の瞬間、シロナは膝をついていた。
「くくく。節制は相手のステータスを全て一割にする能力……! どうだ剣聖よ。これでは試合にならんだろう」
「うまく動けない……助けて」
「可愛いなぁ剣聖シロナ! 俺のペニスを受け入れるなら助けてやる!」
なんて外道だ……! それでも男か!?
優勢になったとはいえ、相手は戦士だ。
その矜持を踏みにじろうとは……。
『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』
観衆から悪意の篭もったコールが響く。
それに応えるようにユウマは大剣を掲げた。
「ここに勝敗は決した! さあ、服を脱げ。ハジメの前で繋がろうではないか! 幼き剣聖よ!」
「うーん。ムリ。『節制』してくれない?」
「うっ!?」
ユウマが苦しげにしている。
今のは何が起きたんだ?
「相手の能力を一割にするかー。くらってみた感想はどう?」
「お前がなぜ……俺の能力を使える!」
「自分の能力とかバラすわけないじゃん。試合後も生きてたら教えてあげるよ。ま、ムリだろうけど」
シロナが剣を一閃した直後、ユウマの首がボトリと落ちた。
『おおおおおおっ!!!!』
大きなどよめきが会場を震えさせた。
「やった……!」
トリテアの誇る剣聖シロナ。
その一勝目だった。
「シロナ、他は全員勇者みたいだけど勝てそうか?」
「余裕だよー」
「本当か?」
「うん。でも、準決勝が私達だね。悪意感じるなー。手は抜かないけど」
シロナと本気で戦ったことはない。
俺も楽しみにしておこう。
「じゃあ、一回戦に行ってくるから」
シロナの試合は一試合目。
俺は少し飛んで四試合目だ。
選手用の控室から、彼女の出番を見守る。
大会のリングは野球ドームのような形で、場外負けなどという生易しいルールは存在しない。勝つか負けるか、それが全てのリングだ。
「よう、また会えたなおチビちゃん」
「誰だっけ」
シロナと昨日の勇者が対峙している。
まさか、一試合目があいつになるとはな。
「昨日会ったユウマだろ! 今日の試合で忘れられない名前にしてやるぜ。お前のことも実は狙ってたんだよ。可愛い顔してるからな」
「思い出したかも。アンナにちょっかいかけてたオッサンだ」
「これでも22なんだよ。ハジメの二つ下だぜ」
「へえー。興味ないけど」
ユウマは大剣を持っている。
対するシロナの武器は、聖剣のレプリカだ。
特別な力は何もないただの剣である。
トリテアに魔剣があったら渡してやれたのにな。
鍛冶系のスキルも今後は手に入れたいところだ。
鍛冶師の女を抱いたら手に入るだろうか?
「両者、礼!」
司会進行役の男が会場の中心から大きく離れた場所に位置取りする。
シロナとユウマは互いに礼をした。
(シロナ、相手に神器を使わせるなよ……)
間もなく試合が始まろうとしている。
俺は緊張と共に、シロナの試合を見守った……。
そして――
「試合始め!」
「『節制』しろ……!」
先に仕掛けたのはユウマの方だ。
彼の大剣が異様なプレッシャーを放ち、周囲を圧する。
次の瞬間、シロナは膝をついていた。
「くくく。節制は相手のステータスを全て一割にする能力……! どうだ剣聖よ。これでは試合にならんだろう」
「うまく動けない……助けて」
「可愛いなぁ剣聖シロナ! 俺のペニスを受け入れるなら助けてやる!」
なんて外道だ……! それでも男か!?
優勢になったとはいえ、相手は戦士だ。
その矜持を踏みにじろうとは……。
『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』『犯せ!』
観衆から悪意の篭もったコールが響く。
それに応えるようにユウマは大剣を掲げた。
「ここに勝敗は決した! さあ、服を脱げ。ハジメの前で繋がろうではないか! 幼き剣聖よ!」
「うーん。ムリ。『節制』してくれない?」
「うっ!?」
ユウマが苦しげにしている。
今のは何が起きたんだ?
「相手の能力を一割にするかー。くらってみた感想はどう?」
「お前がなぜ……俺の能力を使える!」
「自分の能力とかバラすわけないじゃん。試合後も生きてたら教えてあげるよ。ま、ムリだろうけど」
シロナが剣を一閃した直後、ユウマの首がボトリと落ちた。
『おおおおおおっ!!!!』
大きなどよめきが会場を震えさせた。
「やった……!」
トリテアの誇る剣聖シロナ。
その一勝目だった。
1
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる