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39 修羅場
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妹に盛大に嫌われたあと、俺は元老院のウェガに挨拶回りをした。協力的な派閥への挨拶は進んでやるようクアラからも言われている。
「満場一致で認められたな。これで晴れて国王というわけだ」
「ウェガの根回しのおかげだよ」
「それは確かに一つの要因だが、それだけで王になれるほど生易しくはない。事実、俺はなれなかったわけだしな」
「それもそうだ」
俺が認めるとウェガが苦笑した。いつも鉄面皮な彼には珍しいことだ。
「これから忙しくなる。お前が評価されたのは政治的手腕ではなく、純粋な力だ。これからは争いに巻き込まれることが多くなるだろう」
「まあ、望むところだな」
「心強い限りだ。……しかし、俺としてはこの国の窮状にも目を向けて欲しいと思っている。エルフや獣人といった亜人達への差別が、人的資源の枯渇や精霊から見放される原因にもなっている。いずれも一部の貴族達の傲慢が招いたことだ」
「その辺りのことはおいおい教えて欲しい」
「そうだな。男の教師も紹介しよう。俺もそれなりに忙しい身ではある」
ウェガが紹介する奴なら信用はできる。
変な奴は寄こさないだろう。
できれば女の教師が欲しいが。
「勉学も大事だが直接その目で見るのも大切だ。民のことをよく見ておくことを勧めるよ」
「ありがとう。妹の社会見学がてら街の様子を見にいくかな」
「その前に関係性を修復する方が先じゃないか?」
「おい、どうしてウェガまでそのことを知ってる」
「王の試練を受ける前に身辺をもう少し整理しておくべきだったな」
情報元はダンマリか。……まあいい。
「この世界での俺の権力を見れば少しは認めるだろ」
「くだらん権力者にはなってくれるなよ」
「期待に沿えるよう努力はするさ」
元老院での挨拶回りを終わらせ、一度本邸に戻る。
妹との話し合いも重要だが、先に話した方がいいのはリンネの方だ。
このまま放っておくと大きな火種になるだろう。
本邸と別邸で分けて女達を管理し、本邸の妻達に愛情を注ぐ一方、別邸は息抜きに使う計画だった。
しかし、ふたを開けてみればそんな時間など一切作れないくらいに忙しかった。それが分かっていたからこそ、女達は俺に別邸を持つことを許したのだろう。そして、リンネは見事に貧乏くじを引いたわけだ。
今回、女達がリンネに優しかったのは、別邸を許可した負い目もあったのかもしれない。
(やってしまったな……)
数カ月も放置する前に、いっそのこと好感度を0にして冒険者ギルドに戻すべきだったかもしれない。
(やめよう。変えられない過去に思考を巡らせても意味はない)
別邸の空き部屋だった部屋にリンネはいる。
扉を開けるなり、彼女は涙目で飛びついてきた。
「旦那様……」
「独りにしてすまなかった」
三カ月弱は放置しすぎだよな。
リンネの顔を覗き込む。少しやつれて、目線は左右をいったりきたりしている。元々はもっと落ち着いていて、全身で媚びてくるような女じゃなかった。俺が変えてしまったんだな……。
「ごめんな。もう限界だったんだろ?」
俺の腕を掴む力が強まった。
さすがは元冒険者だ……。
骨が軋む程の握力を感じる。
「ユウ君がトラウマになるくらい目の前で犯して、彼からもギルドからも引き離して、メイドにした挙句放置ですか? 優しい顔してないでハッキリ言ってくださいよ。平民の、その場限りのオモチャが欲しかっただけなんですよね!? 飽きたなら消せばいいじゃないですか! 王様になれたんですし、私みたいな生意気な平民は簡単に処刑できますよね!」
「リンネ……ッ!」
リンネの口を塞ぐ。愛情が足りないというなら、これからはしつこいくらい注いでやる。
「話の途中でキスしないでくださいよ」
「俺の専属メイドになれ。四六時中俺といろ。俺が抱きたいと思った時に抱かせろ」
「今さら……!」
「本当はもっと早くにお前を迎えに行きたかった。だけど、俺は……会いにいけなかったんだ」
リンネに謝罪をすると、彼女の怒気が和らいだ。腕に込められていた力も抜けて、腰が抜けたように脱力する。俺はリンネが倒れないよう強く抱きしめた。
「すみませんでした。旦那様が忙しいのは知ってたんです。王様になる為に頑張ってたことも、私なんかよりちゃんとした肩書きのある方達のお相手をしていたことも知ってます。でも、私は惨めで……見初めてもらったのに、何の価値も示せない自分が情けなくて……押しつぶされそうで……もう、このまま忘れられちゃいそうで……。あの、処刑するなら私だけにしてください。パパとママは……」
「俺は王としてお前の前に立ってるんじゃない。不甲斐ない恋人としてお前の前にいるつもりだ」
「でも、忘れてたじゃないですか……ッ!」
すまん、正直忘れてた。口が裂けても言えないが。
「ごめんな……。お前を忘れるなんてありえない。リンネのことはずっと大切に思ってた。お前の優しさに甘えていた俺の責任だ」
「たまにでいいのでちゃんと抱いてください。あまりにも寂しかったです」
「そうだな。俺が悪かった。これからはもうずっと一緒だ」
よしよしと頭を撫でると全力で抱きついてきた。胸がぐいぐい押しつけられて形を変えている。こんな愛情深くていい女を放置してたなんて、完全に俺が悪かったな。これからは他の女達と同じくらい愛そう。
「満場一致で認められたな。これで晴れて国王というわけだ」
「ウェガの根回しのおかげだよ」
「それは確かに一つの要因だが、それだけで王になれるほど生易しくはない。事実、俺はなれなかったわけだしな」
「それもそうだ」
俺が認めるとウェガが苦笑した。いつも鉄面皮な彼には珍しいことだ。
「これから忙しくなる。お前が評価されたのは政治的手腕ではなく、純粋な力だ。これからは争いに巻き込まれることが多くなるだろう」
「まあ、望むところだな」
「心強い限りだ。……しかし、俺としてはこの国の窮状にも目を向けて欲しいと思っている。エルフや獣人といった亜人達への差別が、人的資源の枯渇や精霊から見放される原因にもなっている。いずれも一部の貴族達の傲慢が招いたことだ」
「その辺りのことはおいおい教えて欲しい」
「そうだな。男の教師も紹介しよう。俺もそれなりに忙しい身ではある」
ウェガが紹介する奴なら信用はできる。
変な奴は寄こさないだろう。
できれば女の教師が欲しいが。
「勉学も大事だが直接その目で見るのも大切だ。民のことをよく見ておくことを勧めるよ」
「ありがとう。妹の社会見学がてら街の様子を見にいくかな」
「その前に関係性を修復する方が先じゃないか?」
「おい、どうしてウェガまでそのことを知ってる」
「王の試練を受ける前に身辺をもう少し整理しておくべきだったな」
情報元はダンマリか。……まあいい。
「この世界での俺の権力を見れば少しは認めるだろ」
「くだらん権力者にはなってくれるなよ」
「期待に沿えるよう努力はするさ」
元老院での挨拶回りを終わらせ、一度本邸に戻る。
妹との話し合いも重要だが、先に話した方がいいのはリンネの方だ。
このまま放っておくと大きな火種になるだろう。
本邸と別邸で分けて女達を管理し、本邸の妻達に愛情を注ぐ一方、別邸は息抜きに使う計画だった。
しかし、ふたを開けてみればそんな時間など一切作れないくらいに忙しかった。それが分かっていたからこそ、女達は俺に別邸を持つことを許したのだろう。そして、リンネは見事に貧乏くじを引いたわけだ。
今回、女達がリンネに優しかったのは、別邸を許可した負い目もあったのかもしれない。
(やってしまったな……)
数カ月も放置する前に、いっそのこと好感度を0にして冒険者ギルドに戻すべきだったかもしれない。
(やめよう。変えられない過去に思考を巡らせても意味はない)
別邸の空き部屋だった部屋にリンネはいる。
扉を開けるなり、彼女は涙目で飛びついてきた。
「旦那様……」
「独りにしてすまなかった」
三カ月弱は放置しすぎだよな。
リンネの顔を覗き込む。少しやつれて、目線は左右をいったりきたりしている。元々はもっと落ち着いていて、全身で媚びてくるような女じゃなかった。俺が変えてしまったんだな……。
「ごめんな。もう限界だったんだろ?」
俺の腕を掴む力が強まった。
さすがは元冒険者だ……。
骨が軋む程の握力を感じる。
「ユウ君がトラウマになるくらい目の前で犯して、彼からもギルドからも引き離して、メイドにした挙句放置ですか? 優しい顔してないでハッキリ言ってくださいよ。平民の、その場限りのオモチャが欲しかっただけなんですよね!? 飽きたなら消せばいいじゃないですか! 王様になれたんですし、私みたいな生意気な平民は簡単に処刑できますよね!」
「リンネ……ッ!」
リンネの口を塞ぐ。愛情が足りないというなら、これからはしつこいくらい注いでやる。
「話の途中でキスしないでくださいよ」
「俺の専属メイドになれ。四六時中俺といろ。俺が抱きたいと思った時に抱かせろ」
「今さら……!」
「本当はもっと早くにお前を迎えに行きたかった。だけど、俺は……会いにいけなかったんだ」
リンネに謝罪をすると、彼女の怒気が和らいだ。腕に込められていた力も抜けて、腰が抜けたように脱力する。俺はリンネが倒れないよう強く抱きしめた。
「すみませんでした。旦那様が忙しいのは知ってたんです。王様になる為に頑張ってたことも、私なんかよりちゃんとした肩書きのある方達のお相手をしていたことも知ってます。でも、私は惨めで……見初めてもらったのに、何の価値も示せない自分が情けなくて……押しつぶされそうで……もう、このまま忘れられちゃいそうで……。あの、処刑するなら私だけにしてください。パパとママは……」
「俺は王としてお前の前に立ってるんじゃない。不甲斐ない恋人としてお前の前にいるつもりだ」
「でも、忘れてたじゃないですか……ッ!」
すまん、正直忘れてた。口が裂けても言えないが。
「ごめんな……。お前を忘れるなんてありえない。リンネのことはずっと大切に思ってた。お前の優しさに甘えていた俺の責任だ」
「たまにでいいのでちゃんと抱いてください。あまりにも寂しかったです」
「そうだな。俺が悪かった。これからはもうずっと一緒だ」
よしよしと頭を撫でると全力で抱きついてきた。胸がぐいぐい押しつけられて形を変えている。こんな愛情深くていい女を放置してたなんて、完全に俺が悪かったな。これからは他の女達と同じくらい愛そう。
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