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元老院のウェガという議員の屋敷に招かれた俺は、手土産のワインを持ってクアラと共に向かった。今回、俺は王を目指すにあたって元老院にも手を回すことにした。ウェガは公爵としての肩書きも持ち、元老院でも有数の権力者である。
「女王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう。ハジメはよく来たな」
女王を前にしても媚びる素振りは一切見せない。まるで冷めた鉄のような男だ。ウェガはグラスを用意し、俺達にワインを注いだ。その手つきは洗練されている。
「おめでとう。明日の決議でお前は王に推薦される。票は俺の方で確保できた」
「そうか。感謝しよう」
「ありがとうございますっ」
一番感動しているのはクアラだな。ウェガは冷めた顔のままだ。
「まだ安心するには早い。王家の血を継がぬ者が王族に連なる時は、試練を受ける決まりがある。歴代の王族は試練をくぐり抜けてきた。お前も例外じゃない」
「どんな内容かは知ってるのか?」
「知っているが、口外はできない決まりだ。ちなみに、俺は一度落ちている」
何でもそつなくこなしそうなウェガが落ちているということは、能力を測るものではなさそうだ。
「試練の内容を伝えてやりたいが、事前に内容を知って挑めば落とされる。そういう類のものだと思ってくれ」
「なるほど。質問を変えるが、仮に俺が王になれなかったとしたら、クアラは別の男を娶らないといけないのか?」
「慣例に従えばそうなる。ミナガルデの王子との婚姻を推す声も大きい」
「クアラは俺の女だ。例え王になれずとも、彼女は俺の妻にする」
隣に座るクアラの手を握ると、しっかりと握り返された。ウェガの前で甘えるように肩をぶつけてきたので少し呆れたが、まあこういう抜けてるところは愛嬌に映る。惚れた弱みかもな。
「男を利用することしか考えてなかった陛下が、ここまで変わられるとは……」
「ちょっとやめてください! 処刑しますよ!?」
「好きになさってください。ですが、いざというときは手を貸しましょう。くだらん慣習など破壊してしまえばいいのです」
「ん……そうですか。じゃあ国外に逃げる手引きとかお願いします」
クアラの毒気が抜かれる。ウェガはこういう男だ。
「しかし、俺としてはハジメに王になって欲しい。停滞したこの国を動かせるのはお前のような力を持った男だ」
「女達以外で純粋に俺を買ってくれるのはウェガくらいだろうな」
「それはそうだろう。お前は美人を連れすぎだ。男であれば誰もがお前のようになりたいと願う。だが、羨望は嫉妬の感情を引き起こす。素直に男としての器を認めるのは難しいだろうな」
ウェガは人間という生き物をよく知っている。
年は俺とそう変わらないはずだが、馬車の事故で父を失くしたとは聞いている。
苦労をした分、見識も広いのだろう。
「そういえば、スピリタニアとミナガルデに向かうそうだな」
「ああ、精霊王を捕えているそうじゃないか。興味を惹かれたから話を聞きに行こうと思ってな」
話の内容が気に入らなければ無理やりにでも連れ帰るが。
「しかし、内政がままならない内から外遊に出れば、どんな突き上げをくらうか分からないぞ。国王がまず為すべきは、足場を固めることだ」
「勿論、俺だって固めるさ。上手くいけば精霊王を四柱も独占することになる。そうなれば誰も俺には逆らえないはずだ」
「呆れたな。一柱だけでも前例がないというのに、それを四柱か。単騎の実力としてみれば、間違いなく世界最強の戦力になるだろうな。他国にしてみれば魔王の誕生だろうな」
魔王……。いい響きだ。
「今までトリテアを舐めてきた連中に分からせてやるだけさ」
「まさか俺の目が黒い内に力による外交に傾くとは……。やはりお前は面白い。推薦して正解だったよ」
トリテアは不利な条件で外交をしてきた。彼らが今までしてきたことを、今度は俺達がやるだけだ。
立ち塞がる者は叩き潰してやる。誰が相手であってもな。
「女王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう。ハジメはよく来たな」
女王を前にしても媚びる素振りは一切見せない。まるで冷めた鉄のような男だ。ウェガはグラスを用意し、俺達にワインを注いだ。その手つきは洗練されている。
「おめでとう。明日の決議でお前は王に推薦される。票は俺の方で確保できた」
「そうか。感謝しよう」
「ありがとうございますっ」
一番感動しているのはクアラだな。ウェガは冷めた顔のままだ。
「まだ安心するには早い。王家の血を継がぬ者が王族に連なる時は、試練を受ける決まりがある。歴代の王族は試練をくぐり抜けてきた。お前も例外じゃない」
「どんな内容かは知ってるのか?」
「知っているが、口外はできない決まりだ。ちなみに、俺は一度落ちている」
何でもそつなくこなしそうなウェガが落ちているということは、能力を測るものではなさそうだ。
「試練の内容を伝えてやりたいが、事前に内容を知って挑めば落とされる。そういう類のものだと思ってくれ」
「なるほど。質問を変えるが、仮に俺が王になれなかったとしたら、クアラは別の男を娶らないといけないのか?」
「慣例に従えばそうなる。ミナガルデの王子との婚姻を推す声も大きい」
「クアラは俺の女だ。例え王になれずとも、彼女は俺の妻にする」
隣に座るクアラの手を握ると、しっかりと握り返された。ウェガの前で甘えるように肩をぶつけてきたので少し呆れたが、まあこういう抜けてるところは愛嬌に映る。惚れた弱みかもな。
「男を利用することしか考えてなかった陛下が、ここまで変わられるとは……」
「ちょっとやめてください! 処刑しますよ!?」
「好きになさってください。ですが、いざというときは手を貸しましょう。くだらん慣習など破壊してしまえばいいのです」
「ん……そうですか。じゃあ国外に逃げる手引きとかお願いします」
クアラの毒気が抜かれる。ウェガはこういう男だ。
「しかし、俺としてはハジメに王になって欲しい。停滞したこの国を動かせるのはお前のような力を持った男だ」
「女達以外で純粋に俺を買ってくれるのはウェガくらいだろうな」
「それはそうだろう。お前は美人を連れすぎだ。男であれば誰もがお前のようになりたいと願う。だが、羨望は嫉妬の感情を引き起こす。素直に男としての器を認めるのは難しいだろうな」
ウェガは人間という生き物をよく知っている。
年は俺とそう変わらないはずだが、馬車の事故で父を失くしたとは聞いている。
苦労をした分、見識も広いのだろう。
「そういえば、スピリタニアとミナガルデに向かうそうだな」
「ああ、精霊王を捕えているそうじゃないか。興味を惹かれたから話を聞きに行こうと思ってな」
話の内容が気に入らなければ無理やりにでも連れ帰るが。
「しかし、内政がままならない内から外遊に出れば、どんな突き上げをくらうか分からないぞ。国王がまず為すべきは、足場を固めることだ」
「勿論、俺だって固めるさ。上手くいけば精霊王を四柱も独占することになる。そうなれば誰も俺には逆らえないはずだ」
「呆れたな。一柱だけでも前例がないというのに、それを四柱か。単騎の実力としてみれば、間違いなく世界最強の戦力になるだろうな。他国にしてみれば魔王の誕生だろうな」
魔王……。いい響きだ。
「今までトリテアを舐めてきた連中に分からせてやるだけさ」
「まさか俺の目が黒い内に力による外交に傾くとは……。やはりお前は面白い。推薦して正解だったよ」
トリテアは不利な条件で外交をしてきた。彼らが今までしてきたことを、今度は俺達がやるだけだ。
立ち塞がる者は叩き潰してやる。誰が相手であってもな。
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