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『精霊王の加護』と『女神の加護』。
この二つを手に入れた者は、精霊王としての権能を得る。
女王の配偶者が権力を得るように、俺自身も精霊の王としての力を得ることができるんだ。
「手に入れたばかりの権能の力を見せてやるよ」
「今さら何をしても無駄なんだよ!」
「それはどうかな」
紅蓮の炎が俺の身体を包む。焦げた肉塊になってもおかしくない程の超高熱、近づくだけで融解する程の熱をまとって尚、俺には余裕がある。権能の一端を見せただけだが、ユウスケを後退させるには十分だったようだ。
「逃げる気か? まさか自分から仕掛けておいて逃げたりしないよな?」
「そんなわけねえだろ!」
俺の手に入れた権能は二つある。
一つは『煉獄』という破壊の権能だ。
対峙した者は原初の炎によってその身を焼かれる。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
ユウスケの身体と聖剣が自然発火する。
「負けだ負けだ負けだ負けだ負けだぁ! あぎゃぁぁぁぁ!!!!!」
「甘えるな。愛する者を奪おうとした罪に焼かれろ」
「ひぃぃぃぃ!!!!」
さすがに放っておいたら死にそうだ。
「癒しの雨よ、降り注げ」
癒しの術式によって雨が降り注ぐ。火傷したユウスケの身体が癒えていく。
「勝負あったな。この決闘の勝者はハジメだ!」
おおおおおおお!!!!
観客から喝采の声が生まれる。
新たな勇者の誕生を祝う声だ。
「違う! こんな戦い無効だ!」
ユウスケが騒ぎ始めた。
「こんなの狡いだろ! オッサンは精霊王と契約した力で勝っただけだ!」
「それを言うなら聖剣と契約したお前だって同じだろ」
誰もハジメの言い分など相手にしていない。
エルフの首輪はフレアが焼き払ってしまった。
「思った通りね。やるじゃない」
「すごいです! ハジメさんの圧勝でした!」
興奮した様子で祝福してくれる二人が微笑ましい。
せっかく勝利したので、俺は転がっていた聖剣を奪って掲げてやった。
「おい、なに勝手に人の物取ってやがる! 聖剣もエルフも俺のものだぞ!」
「いいや、両方ともハジメのものだよ。貴様は聖剣にすら見放されたのだ」
シディアの言うとおり、そういえば聖剣は俺の手の中に納まっている。
本来の持ち主でないと手を弾かれるって話だったよな。
「そんなわけないだろ! こいつは俺を選んだんだ!」
ユウスケがしがみついてきて聖剣を取り返そうとする。
しかし、剣に触れた瞬間に信じられないことが起こった。
ユウスケの手が焼かれ、煙が上がったのである。
「うあああ……!!!」
手を抑えて蹲ったユウスケは、火傷した手でヒステリックに髪を掻き毟った。
「何かの間違いだぁぁぁ!」
ユウスケの悲鳴を聞き流し、俺は高々と聖剣を掲げてやる。
往来からは勇者コールが沸き起こった。
「俺が本物の勇者なんだ……!」
怨嗟の声は喝采に掻き消された。
この二つを手に入れた者は、精霊王としての権能を得る。
女王の配偶者が権力を得るように、俺自身も精霊の王としての力を得ることができるんだ。
「手に入れたばかりの権能の力を見せてやるよ」
「今さら何をしても無駄なんだよ!」
「それはどうかな」
紅蓮の炎が俺の身体を包む。焦げた肉塊になってもおかしくない程の超高熱、近づくだけで融解する程の熱をまとって尚、俺には余裕がある。権能の一端を見せただけだが、ユウスケを後退させるには十分だったようだ。
「逃げる気か? まさか自分から仕掛けておいて逃げたりしないよな?」
「そんなわけねえだろ!」
俺の手に入れた権能は二つある。
一つは『煉獄』という破壊の権能だ。
対峙した者は原初の炎によってその身を焼かれる。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
ユウスケの身体と聖剣が自然発火する。
「負けだ負けだ負けだ負けだ負けだぁ! あぎゃぁぁぁぁ!!!!!」
「甘えるな。愛する者を奪おうとした罪に焼かれろ」
「ひぃぃぃぃ!!!!」
さすがに放っておいたら死にそうだ。
「癒しの雨よ、降り注げ」
癒しの術式によって雨が降り注ぐ。火傷したユウスケの身体が癒えていく。
「勝負あったな。この決闘の勝者はハジメだ!」
おおおおおおお!!!!
観客から喝采の声が生まれる。
新たな勇者の誕生を祝う声だ。
「違う! こんな戦い無効だ!」
ユウスケが騒ぎ始めた。
「こんなの狡いだろ! オッサンは精霊王と契約した力で勝っただけだ!」
「それを言うなら聖剣と契約したお前だって同じだろ」
誰もハジメの言い分など相手にしていない。
エルフの首輪はフレアが焼き払ってしまった。
「思った通りね。やるじゃない」
「すごいです! ハジメさんの圧勝でした!」
興奮した様子で祝福してくれる二人が微笑ましい。
せっかく勝利したので、俺は転がっていた聖剣を奪って掲げてやった。
「おい、なに勝手に人の物取ってやがる! 聖剣もエルフも俺のものだぞ!」
「いいや、両方ともハジメのものだよ。貴様は聖剣にすら見放されたのだ」
シディアの言うとおり、そういえば聖剣は俺の手の中に納まっている。
本来の持ち主でないと手を弾かれるって話だったよな。
「そんなわけないだろ! こいつは俺を選んだんだ!」
ユウスケがしがみついてきて聖剣を取り返そうとする。
しかし、剣に触れた瞬間に信じられないことが起こった。
ユウスケの手が焼かれ、煙が上がったのである。
「うあああ……!!!」
手を抑えて蹲ったユウスケは、火傷した手でヒステリックに髪を掻き毟った。
「何かの間違いだぁぁぁ!」
ユウスケの悲鳴を聞き流し、俺は高々と聖剣を掲げてやる。
往来からは勇者コールが沸き起こった。
「俺が本物の勇者なんだ……!」
怨嗟の声は喝采に掻き消された。
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