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13 アイスの助言
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「魔法を扱う感覚を覚えた今のマスターであれば、スキルを今までよりも使いこなせると思うんです」
「時間停止のスキルか」
「はい。強力であると同時に、魔力の消費が激しすぎて使えなかったということですよね」
二度目の転生の時に、時間停止のスキルを使って立ち回ろうとした結果、魔力を使い果たして動けなくなったのだ。
「スキルの効果範囲が広すぎたのが失敗の原因だと思うんです。例えば、範囲を部屋の中だけに限定してみることで消費魔力を抑えられないでしょうか?」
「そうか。範囲を限定する方法なら使いやすくなるかもしれない」
早速試してみることにする。
「……止まれ」
念じた瞬間、部屋の中だけが停止した。
当然、アイスも停止した状態だ。
俺はアイスの後ろに回ってから、停止状態を解除した。
「すごいですマスター! 今、時を止めたのですね?」
「アイスの発想のお陰だよ。部屋の中を停止させるだけなら全然魔力を使わないらしい」
「マスター、停止範囲を城全体まで広げられますか?」
「ああ、余裕だと思う」
停止させる範囲を城内に広げてみた。しかし、部屋を止めている時と大差ない印象だ。
「こちらから仕掛けてもいいかもな」
「倒すだけなら問題ないですが、事後処理を考えると待ち構えて生け捕りにした方が正解かと……。正当防衛だったという証拠は作っておいた方がいいと思います」
確かに、この部屋で迎え撃った方が証拠は残しやすいだろうな。
「マスター、一つ新しい魔法を覚えてみませんか?」
「新しい攻撃魔法か?」
「いえ、敵を感知する為の魔法です。アイスサークルという感知用の魔法があります。ドーム状に不可視の結界を張って、侵入者がいたらすぐに感知できるようになる魔法です。この結界は張っていることがすぐにバレてしまう類の魔法ですが、牽制にもなります」
「相手の奇襲にすぐ気づけるのか。それは便利そうだな」
「はい、とても便利な魔法です。マスターは魔法のセンスがありますし、すぐに扱えるようになると思いますよ」
センスがあるかは分からないが、経験値は着実に増えてると思う。
アイスの期待に応える為にも、覚えてみるか。
俺はアイスを通じて魔法の登録を行い、さっそく練習に入った。
「驚きました。たった二度の発動で完全に修得するなんて……。さすがは女神の使徒ですね」
「この結界は常時張らせてもらうか」
「その方がいいでしょうね。元帥は恐らく奇襲で来るでしょうし――」
「貴様らの時間はここで終わりだ」
――奇襲のタイミングが変わった!?
空間を割いて現れた男の指が輝いたが、事前に感知できていたことで、冷静に対処することができた。
俺はすぐさま時間停止のスキルを発動し、ドーグを停止させる。
凍りついた表情のドーグを観察しながら、拳を叩き込んだ。
「よくもフレアを……」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。死んでも構わないと思いながら殴り続ける。
「はぁ……はぁ……」
時間停止の範囲を部屋からドーグ本人に切り替える。
細かい出力の調整まで出来るようになってきた。
だいぶ器用になってきた自覚がある。
「ハジメ様……その手は……っ」
「ああ、苛立ちが抑えきれなかった」
「無理をなさらないでください! すぐに治癒します!」
アイスを驚かせてしまったな。
しかし、フレアの仇だと思えばまだ殴り足りない程だ。
「時間停止は完全に操れてますね」
「アイスの発想のお陰だよ。こんな使い方、考えもしなかった」
「いえ、アイスサークルがあったことを加味しても、完璧な対応でした」
「ドーグは警戒心が強い魔人だったからな。既に警戒していた俺がさらに術を習得したとなれば、焦って動き出す可能性はあると思ってたんだ」
「さすがの読みです」
そう言いつつ、アイスにも動じた様子はない。
彼女ももしかしたら読んでいたのかもしれない。
ドーグが網に掛かることを。
「……なあ、アイスなら俺がいなくてもこいつを倒せたか?」
「それは意味のない仮定ですよ。マスターがこの地上にいない場合、精霊は力を行使できませんから」
「それでも聞かせて欲しいんだ。アイスと同等の精霊がここにいたとして、俺が奇襲で倒れなかったなら、反撃で倒すことはできたと思うか?」
「そうですね。私の友人でも勝てたと思いますよ。奇襲しか能のない小物でしたし」
俺が倒れなければ、フレアは勝っていたということだ。
アイスから聞けてスッキリした。
あとはこいつの処罰だ。
女王に突き出して裁いてもらわないとな。
「時間停止のスキルか」
「はい。強力であると同時に、魔力の消費が激しすぎて使えなかったということですよね」
二度目の転生の時に、時間停止のスキルを使って立ち回ろうとした結果、魔力を使い果たして動けなくなったのだ。
「スキルの効果範囲が広すぎたのが失敗の原因だと思うんです。例えば、範囲を部屋の中だけに限定してみることで消費魔力を抑えられないでしょうか?」
「そうか。範囲を限定する方法なら使いやすくなるかもしれない」
早速試してみることにする。
「……止まれ」
念じた瞬間、部屋の中だけが停止した。
当然、アイスも停止した状態だ。
俺はアイスの後ろに回ってから、停止状態を解除した。
「すごいですマスター! 今、時を止めたのですね?」
「アイスの発想のお陰だよ。部屋の中を停止させるだけなら全然魔力を使わないらしい」
「マスター、停止範囲を城全体まで広げられますか?」
「ああ、余裕だと思う」
停止させる範囲を城内に広げてみた。しかし、部屋を止めている時と大差ない印象だ。
「こちらから仕掛けてもいいかもな」
「倒すだけなら問題ないですが、事後処理を考えると待ち構えて生け捕りにした方が正解かと……。正当防衛だったという証拠は作っておいた方がいいと思います」
確かに、この部屋で迎え撃った方が証拠は残しやすいだろうな。
「マスター、一つ新しい魔法を覚えてみませんか?」
「新しい攻撃魔法か?」
「いえ、敵を感知する為の魔法です。アイスサークルという感知用の魔法があります。ドーム状に不可視の結界を張って、侵入者がいたらすぐに感知できるようになる魔法です。この結界は張っていることがすぐにバレてしまう類の魔法ですが、牽制にもなります」
「相手の奇襲にすぐ気づけるのか。それは便利そうだな」
「はい、とても便利な魔法です。マスターは魔法のセンスがありますし、すぐに扱えるようになると思いますよ」
センスがあるかは分からないが、経験値は着実に増えてると思う。
アイスの期待に応える為にも、覚えてみるか。
俺はアイスを通じて魔法の登録を行い、さっそく練習に入った。
「驚きました。たった二度の発動で完全に修得するなんて……。さすがは女神の使徒ですね」
「この結界は常時張らせてもらうか」
「その方がいいでしょうね。元帥は恐らく奇襲で来るでしょうし――」
「貴様らの時間はここで終わりだ」
――奇襲のタイミングが変わった!?
空間を割いて現れた男の指が輝いたが、事前に感知できていたことで、冷静に対処することができた。
俺はすぐさま時間停止のスキルを発動し、ドーグを停止させる。
凍りついた表情のドーグを観察しながら、拳を叩き込んだ。
「よくもフレアを……」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。死んでも構わないと思いながら殴り続ける。
「はぁ……はぁ……」
時間停止の範囲を部屋からドーグ本人に切り替える。
細かい出力の調整まで出来るようになってきた。
だいぶ器用になってきた自覚がある。
「ハジメ様……その手は……っ」
「ああ、苛立ちが抑えきれなかった」
「無理をなさらないでください! すぐに治癒します!」
アイスを驚かせてしまったな。
しかし、フレアの仇だと思えばまだ殴り足りない程だ。
「時間停止は完全に操れてますね」
「アイスの発想のお陰だよ。こんな使い方、考えもしなかった」
「いえ、アイスサークルがあったことを加味しても、完璧な対応でした」
「ドーグは警戒心が強い魔人だったからな。既に警戒していた俺がさらに術を習得したとなれば、焦って動き出す可能性はあると思ってたんだ」
「さすがの読みです」
そう言いつつ、アイスにも動じた様子はない。
彼女ももしかしたら読んでいたのかもしれない。
ドーグが網に掛かることを。
「……なあ、アイスなら俺がいなくてもこいつを倒せたか?」
「それは意味のない仮定ですよ。マスターがこの地上にいない場合、精霊は力を行使できませんから」
「それでも聞かせて欲しいんだ。アイスと同等の精霊がここにいたとして、俺が奇襲で倒れなかったなら、反撃で倒すことはできたと思うか?」
「そうですね。私の友人でも勝てたと思いますよ。奇襲しか能のない小物でしたし」
俺が倒れなければ、フレアは勝っていたということだ。
アイスから聞けてスッキリした。
あとはこいつの処罰だ。
女王に突き出して裁いてもらわないとな。
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