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10 精霊フレア
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どうしてあんなことしてしまったんだ……。
アイスが綺麗すぎて歯止めがきかなかった。
しかし、彼女は最初からそんな関係を俺に求めてなかった。
何度も釘を刺されてたのに、言うことを聞かず暴走してしまった。
強引にキスまで迫ってしまった。
「すまなかった」
伝える相手がいなければ、ただの独り言だ。
アイスに契約破棄された俺は、失った魔法を再現できないか試すことにした。
魔力を消費し、アクア・ランスの魔法を何度も試行する。
しかし、やはり発動すらしない。
俺に才能がないのか、精霊がいなければ発動すらしないように作られているのか、答えは分からない。一つだけ分かるのは、このまま精霊と契約しなければ、俺の身に危険が及ぶということだ。この国が力を持たない人間をどう扱うか、俺は身を以って知っている。
アイスとの契約を失ったことは辛かったが、悲しんでいる暇もないというのが現実だった。
「精霊よ、我が魔力と引き換えに百年の契約を願う」
『我、汝の呼びかけに応じ、契約に応じよう』
アイスを失った俺の元に召喚されたのは、真紅の髪を持つ少女だった。アイスと同年代くらいの見た目で、俺は自分がロリコンなのではないかと疑いたくなった。どうして若い少女ばかり召喚してしまうのだろう。
彼女には好戦的な雰囲気があり、なぜか睨まれてしまった。
「あなた、結構な魔力を持ってるみたいだけど、見てたわよ。精霊と交わろうとするなんて、かなりのヘンタイみたいね。あたしに舐めた真似してくれたら十倍にして返してあげるから」
「二度と精霊には手を出さないつもりだ」
「当然でしょ。あたしはあの娘みたいに甘くない。魔法を奪って始末してやってもいいくらいのところを、契約破棄だけで済ませたのは恩情なんだからね?」
「ああ……」
「本当に分かってる!? 精霊はね、自分の魔法に誇りを持ってるの! 肉体関係なんか結んだら、そっちで契約を取ってるって思われるじゃない! アイスはずっと自分の魔法を役立てることを夢見てたのに……こんなの悲しすぎるじゃない!」
どうやらアイスの知り合いのようだ。
フレアは怒りのあまり泣いてしまっていた。
友達の為に泣けるのは、それだけ情が深い精霊だからだ。
俺は罪悪感で胸が痛んだ。
「本当にすまなかった……」
契約するなり睨んできたのは、俺が友人に手を出してしまったせいだろう。
「なあ、どうして俺みたいなのと契約してくれたんだ……?」
「言いたくないけど、アイスの頼みよ」
あんなことがあったばかりなのに、別の精霊に口添えしてくれたのか。
アイスの優しさに視界がぼやけた。
俺は、全然彼女の気持ちを汲みとれてなかった。
せめて、期待に恥じない戦士になりたいと思う。
それが、せめてもの罪滅ぼしだ。
フレアの魔法は屋内で使うには危険すぎるということで、外に出て練習することになった。俺が最初に学んだ魔法は、フレア・バーストという空間を指定して爆発させる魔法だった。フレアは炎の揺らめきで的を作り、そこを爆破するよう俺に命じた。練習は夜中まで続き、食事の時間さえ削って俺は練習に励んだ。
「筋はいいわね。的を素早く正確に狙えるのは才能よ。魔力量も申し分ない」
「……ありがとう」
「ただ、フレアバーストは魔法のなかでももっとも簡単な部類よ。狙いを定めて魔力を注ぐだけ。あなたが習ったウォーターカッターやアクアランスとは毛色が違うでしょう」
「正直、魔力を安定させる工程がないから楽に使えた印象だ」
「そうね。遠距離で戦うだけなら最初はこれだけでいいわ。撃ち漏らしたら終わりだけど」
「近距離と遠距離、両方使えた方がいいよな」
「いずれそうなる必要はある。でも、今は実践に投入できる魔法を一つでも増やすことを優先しなさい。それまではあたしがカバーしてあげる」
フレアの申し出は意外だった。
「精霊は直接的に魔法を行使しないんじゃないのか?」
「そうね。魔力で生命を維持してる精霊にとって、魔法を使うことは身を削るに等しい行為よ。でも、あなたはきっと大物になる。その為だったら、少し身を削るくらいなんてことないわ。アイスのお願いでもあるしね……」
フレアは本当に情が深い……。
俺は今度こそ精霊を裏切らないことを誓った。
きっと、二人の期待に応えてみせる。
アイスが綺麗すぎて歯止めがきかなかった。
しかし、彼女は最初からそんな関係を俺に求めてなかった。
何度も釘を刺されてたのに、言うことを聞かず暴走してしまった。
強引にキスまで迫ってしまった。
「すまなかった」
伝える相手がいなければ、ただの独り言だ。
アイスに契約破棄された俺は、失った魔法を再現できないか試すことにした。
魔力を消費し、アクア・ランスの魔法を何度も試行する。
しかし、やはり発動すらしない。
俺に才能がないのか、精霊がいなければ発動すらしないように作られているのか、答えは分からない。一つだけ分かるのは、このまま精霊と契約しなければ、俺の身に危険が及ぶということだ。この国が力を持たない人間をどう扱うか、俺は身を以って知っている。
アイスとの契約を失ったことは辛かったが、悲しんでいる暇もないというのが現実だった。
「精霊よ、我が魔力と引き換えに百年の契約を願う」
『我、汝の呼びかけに応じ、契約に応じよう』
アイスを失った俺の元に召喚されたのは、真紅の髪を持つ少女だった。アイスと同年代くらいの見た目で、俺は自分がロリコンなのではないかと疑いたくなった。どうして若い少女ばかり召喚してしまうのだろう。
彼女には好戦的な雰囲気があり、なぜか睨まれてしまった。
「あなた、結構な魔力を持ってるみたいだけど、見てたわよ。精霊と交わろうとするなんて、かなりのヘンタイみたいね。あたしに舐めた真似してくれたら十倍にして返してあげるから」
「二度と精霊には手を出さないつもりだ」
「当然でしょ。あたしはあの娘みたいに甘くない。魔法を奪って始末してやってもいいくらいのところを、契約破棄だけで済ませたのは恩情なんだからね?」
「ああ……」
「本当に分かってる!? 精霊はね、自分の魔法に誇りを持ってるの! 肉体関係なんか結んだら、そっちで契約を取ってるって思われるじゃない! アイスはずっと自分の魔法を役立てることを夢見てたのに……こんなの悲しすぎるじゃない!」
どうやらアイスの知り合いのようだ。
フレアは怒りのあまり泣いてしまっていた。
友達の為に泣けるのは、それだけ情が深い精霊だからだ。
俺は罪悪感で胸が痛んだ。
「本当にすまなかった……」
契約するなり睨んできたのは、俺が友人に手を出してしまったせいだろう。
「なあ、どうして俺みたいなのと契約してくれたんだ……?」
「言いたくないけど、アイスの頼みよ」
あんなことがあったばかりなのに、別の精霊に口添えしてくれたのか。
アイスの優しさに視界がぼやけた。
俺は、全然彼女の気持ちを汲みとれてなかった。
せめて、期待に恥じない戦士になりたいと思う。
それが、せめてもの罪滅ぼしだ。
フレアの魔法は屋内で使うには危険すぎるということで、外に出て練習することになった。俺が最初に学んだ魔法は、フレア・バーストという空間を指定して爆発させる魔法だった。フレアは炎の揺らめきで的を作り、そこを爆破するよう俺に命じた。練習は夜中まで続き、食事の時間さえ削って俺は練習に励んだ。
「筋はいいわね。的を素早く正確に狙えるのは才能よ。魔力量も申し分ない」
「……ありがとう」
「ただ、フレアバーストは魔法のなかでももっとも簡単な部類よ。狙いを定めて魔力を注ぐだけ。あなたが習ったウォーターカッターやアクアランスとは毛色が違うでしょう」
「正直、魔力を安定させる工程がないから楽に使えた印象だ」
「そうね。遠距離で戦うだけなら最初はこれだけでいいわ。撃ち漏らしたら終わりだけど」
「近距離と遠距離、両方使えた方がいいよな」
「いずれそうなる必要はある。でも、今は実践に投入できる魔法を一つでも増やすことを優先しなさい。それまではあたしがカバーしてあげる」
フレアの申し出は意外だった。
「精霊は直接的に魔法を行使しないんじゃないのか?」
「そうね。魔力で生命を維持してる精霊にとって、魔法を使うことは身を削るに等しい行為よ。でも、あなたはきっと大物になる。その為だったら、少し身を削るくらいなんてことないわ。アイスのお願いでもあるしね……」
フレアは本当に情が深い……。
俺は今度こそ精霊を裏切らないことを誓った。
きっと、二人の期待に応えてみせる。
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