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61 魔人化
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クロエ達の裁判が終わった後も、アルニス派の貴族達は容赦なく裁かれていった。
そうして、ようやく一通りの裁判が終わったところで、今度はホールで軟禁中の近衛騎士達に変化が起こったとの連絡が届いた。
「俺はもうクタクタだぜ」
「申し訳ありません、ラスク様。王家のゴタゴタに巻き込んでしまいまして……」
「いえいえっ! 最近は書類仕事ばかりだったんでね、王宮に出て仕事すんのもいい息抜きですよっ!」
調子のいい男だな。
そう思ってると姫から距離を置いたラスクに耳打ちされた。
「お前、本当にこんな綺麗な姫様と付き合ってるのかよ」
「まあな。カナミもネリスもセラもミイナもアリシアもエリスもリリカ(二軍)もアクアスも俺の大事な女だけどな」
「ひーふーみー……。死ねよお前……。世界を救う時に魔王と相打ちになって伝説になって死ねよ」
「いや、俺は魔王を倒した後も老後まで平穏にこの世界で過ごす予定だが」
破壊神になるとかいう話もあるから状況次第だが、可能ならこっちの世界でダラダラ過ごしたい。
「さて、ふざけてないで見に行くか。なんかヤバそうだしな」
「私もついていきます」
「いえ、姫様は――まあタクマの隣が一番安全だよな」
「そういうことだ。一緒に行こう」
報告があった最初のホールへ向かうと、軟禁中の近衛騎士達に明確な変化が起こりつつあった。
「うっ……うぎぎぎ」
マグマシードを喰らった影響だろうか。
身体を掻き始め、理性を失った目で悶えている。
気になって鑑定するが、ステータスにノイズが掛かって表示されなくなっていた。
「こいつらどうする。何か放っといたらやべえ感じだぞ」
「それは分かるが……。まさか殺すわけにもいかないだろ。捕虜を私刑にするようなものだ。正当防衛ならまだ分かるが」
ラスクと対応を練っていたその時、パキッと何かが割れるような音が聞こえた。
見ると、騎士達の身体の表面が裂け、何かに変貌している最中だった。
「おい、アレなんだ? ベテランとしてラスクの意見が聞きたい」
「あんなもん俺が知るかよ!?」
裂けた皮膚から石膏のような灰色の肌が露出している。
「王宮を取り囲んでた連中もアレを喰らってたのか?」
「いや、実を食らったのはここにいる連中だけだ!」
ノイズが消え、敵のステータスが表示されるようになっている。
ただし、名称はストーンデーモンへ変化していた。
「アルニスの野郎、とんでもない置き土産だな」
「ありゃやべえ奴だ! 全員で応戦しろ! 頭数が足りればいい! 外の近衛も連れてこい!」
唐突に延長戦が始まってしまった。
ストーンデーモンの強さは戦力値150。
連中は本来、魔王の城へ通じる銀嶺と呼ばれる領域の守護者だった。
そこは極寒の銀の世界で、あまりの寒さにエリアに侵入するだけでダメージが発生するような場所だった。
不味いってレベルじゃないぞ。
この国の騎士や冒険者ではこいつらには対応できない。
ラスクや仲間の冒険者、騎士達、王宮を取り囲んでいた近衛騎士までが駆けつけて戦うが、まるで歯が立たなかった。このままでは犠牲が増えるだけだ。
「ホールの入り口まで下がれ! 俺が足止めする!」
「連中がここを飛び立ったらどうする!?」
ストーンデーモンの背中には異形の翼が生えていた。
あの重さで飛ぶわけないと思いたいが、飛行のスキルがあれば飛ぶだろう。
ここはそういう世界だ。
「魔物の性質上、目の前にいる人間を無視して他の獲物のところには向かわないんじゃないか?」
「ああ、俺も聞いてる最中にそのことに思い至ったぜ」
「冷静になれよ。俺がいる限り負けることはない。まとめて吹き飛ばしてやりたいが、変化中のもいるな」
「全員処分しましょう」
姫が言い切った。
「……いいのか?」
「仕方ありません。それに、ここにいるのはアルニスの私兵のなかでも、特に汚い仕事を請け負っていた者達です。どのみち極刑は免れないでしょう。でしたら、被害がこれ以上出る前に処分すべきです」
「分かった。とにかく皆、後退だ」
俺達はホールの出入り口まで下がった。
そして、向かってきたストーンデーモンを神竜斬で粉々に消し飛ばす。
威力を調節し、建物を倒壊させないよう出力を絞りながら撃滅した。
だが、倒しても倒しても次が来る。
俺は消耗戦を強いられた。
そして、ガス欠になって神竜斬を放てなくなった辺りで、ようやく敵も打ち止めになった。
「はぁ……はぁ……。レベルが10近く上がったか?」
「ほんま強烈やなぁ。人間が魔物に変化するのなんて初めて見たわ」
途中で合流していた女がストーンデーモンの頭を踏み潰す。
「おい、壊すな」
「すまへんすまへん。つい頭に来てもうてな」
「いや、助かった……。あとで礼がしたい。何か考えておいてくれ」
「それはええんやけど、なんかあかんのが近づいてくる気配がするで。入口の皆さんも避けとった方がええわ」
強烈なプレッシャーが近づいてくる。
ホールに居たのは片付いたが、まだいるのか?
「タクマァァァ……!!!!」
濁った声のモンスターがホールに侵入してきた。
俺はレイナを抱いて飛び退き、女がラスクの首根っこを掴んで跳躍する。
だが、突然現れた魔物の突撃で、固まっていた複数の冒険者や騎士が散った。
現れたのはアークデーモンと化したアルニスだった。
人間だった頃の倍以上の体格となり、六つの手と紫色の肌になっている。
トカゲのような尾まであり、人間だった頃の面影はほとんど消えている。
「お前も食べてたのか」
「お前を犯す! 殺す! 八つ裂きにする!」
新しいタイプの告白だな。
これが本当のラストバトルになるだろう。
そうして、ようやく一通りの裁判が終わったところで、今度はホールで軟禁中の近衛騎士達に変化が起こったとの連絡が届いた。
「俺はもうクタクタだぜ」
「申し訳ありません、ラスク様。王家のゴタゴタに巻き込んでしまいまして……」
「いえいえっ! 最近は書類仕事ばかりだったんでね、王宮に出て仕事すんのもいい息抜きですよっ!」
調子のいい男だな。
そう思ってると姫から距離を置いたラスクに耳打ちされた。
「お前、本当にこんな綺麗な姫様と付き合ってるのかよ」
「まあな。カナミもネリスもセラもミイナもアリシアもエリスもリリカ(二軍)もアクアスも俺の大事な女だけどな」
「ひーふーみー……。死ねよお前……。世界を救う時に魔王と相打ちになって伝説になって死ねよ」
「いや、俺は魔王を倒した後も老後まで平穏にこの世界で過ごす予定だが」
破壊神になるとかいう話もあるから状況次第だが、可能ならこっちの世界でダラダラ過ごしたい。
「さて、ふざけてないで見に行くか。なんかヤバそうだしな」
「私もついていきます」
「いえ、姫様は――まあタクマの隣が一番安全だよな」
「そういうことだ。一緒に行こう」
報告があった最初のホールへ向かうと、軟禁中の近衛騎士達に明確な変化が起こりつつあった。
「うっ……うぎぎぎ」
マグマシードを喰らった影響だろうか。
身体を掻き始め、理性を失った目で悶えている。
気になって鑑定するが、ステータスにノイズが掛かって表示されなくなっていた。
「こいつらどうする。何か放っといたらやべえ感じだぞ」
「それは分かるが……。まさか殺すわけにもいかないだろ。捕虜を私刑にするようなものだ。正当防衛ならまだ分かるが」
ラスクと対応を練っていたその時、パキッと何かが割れるような音が聞こえた。
見ると、騎士達の身体の表面が裂け、何かに変貌している最中だった。
「おい、アレなんだ? ベテランとしてラスクの意見が聞きたい」
「あんなもん俺が知るかよ!?」
裂けた皮膚から石膏のような灰色の肌が露出している。
「王宮を取り囲んでた連中もアレを喰らってたのか?」
「いや、実を食らったのはここにいる連中だけだ!」
ノイズが消え、敵のステータスが表示されるようになっている。
ただし、名称はストーンデーモンへ変化していた。
「アルニスの野郎、とんでもない置き土産だな」
「ありゃやべえ奴だ! 全員で応戦しろ! 頭数が足りればいい! 外の近衛も連れてこい!」
唐突に延長戦が始まってしまった。
ストーンデーモンの強さは戦力値150。
連中は本来、魔王の城へ通じる銀嶺と呼ばれる領域の守護者だった。
そこは極寒の銀の世界で、あまりの寒さにエリアに侵入するだけでダメージが発生するような場所だった。
不味いってレベルじゃないぞ。
この国の騎士や冒険者ではこいつらには対応できない。
ラスクや仲間の冒険者、騎士達、王宮を取り囲んでいた近衛騎士までが駆けつけて戦うが、まるで歯が立たなかった。このままでは犠牲が増えるだけだ。
「ホールの入り口まで下がれ! 俺が足止めする!」
「連中がここを飛び立ったらどうする!?」
ストーンデーモンの背中には異形の翼が生えていた。
あの重さで飛ぶわけないと思いたいが、飛行のスキルがあれば飛ぶだろう。
ここはそういう世界だ。
「魔物の性質上、目の前にいる人間を無視して他の獲物のところには向かわないんじゃないか?」
「ああ、俺も聞いてる最中にそのことに思い至ったぜ」
「冷静になれよ。俺がいる限り負けることはない。まとめて吹き飛ばしてやりたいが、変化中のもいるな」
「全員処分しましょう」
姫が言い切った。
「……いいのか?」
「仕方ありません。それに、ここにいるのはアルニスの私兵のなかでも、特に汚い仕事を請け負っていた者達です。どのみち極刑は免れないでしょう。でしたら、被害がこれ以上出る前に処分すべきです」
「分かった。とにかく皆、後退だ」
俺達はホールの出入り口まで下がった。
そして、向かってきたストーンデーモンを神竜斬で粉々に消し飛ばす。
威力を調節し、建物を倒壊させないよう出力を絞りながら撃滅した。
だが、倒しても倒しても次が来る。
俺は消耗戦を強いられた。
そして、ガス欠になって神竜斬を放てなくなった辺りで、ようやく敵も打ち止めになった。
「はぁ……はぁ……。レベルが10近く上がったか?」
「ほんま強烈やなぁ。人間が魔物に変化するのなんて初めて見たわ」
途中で合流していた女がストーンデーモンの頭を踏み潰す。
「おい、壊すな」
「すまへんすまへん。つい頭に来てもうてな」
「いや、助かった……。あとで礼がしたい。何か考えておいてくれ」
「それはええんやけど、なんかあかんのが近づいてくる気配がするで。入口の皆さんも避けとった方がええわ」
強烈なプレッシャーが近づいてくる。
ホールに居たのは片付いたが、まだいるのか?
「タクマァァァ……!!!!」
濁った声のモンスターがホールに侵入してきた。
俺はレイナを抱いて飛び退き、女がラスクの首根っこを掴んで跳躍する。
だが、突然現れた魔物の突撃で、固まっていた複数の冒険者や騎士が散った。
現れたのはアークデーモンと化したアルニスだった。
人間だった頃の倍以上の体格となり、六つの手と紫色の肌になっている。
トカゲのような尾まであり、人間だった頃の面影はほとんど消えている。
「お前も食べてたのか」
「お前を犯す! 殺す! 八つ裂きにする!」
新しいタイプの告白だな。
これが本当のラストバトルになるだろう。
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