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49 相違と疑惑と協力者(上)
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「気の毒になるくらいの逃げっぷりでした。あそこまで精神を叩き折られたら、更生するかどうかはともかくとして、人格は変わりそうですね」
「今ある自分を変える為には、一度壊さないといけない。荒療治になったが、クオンがやり直してくれることを祈るよ」
「さすがに可哀想でした」
「同情したなら慰めてやったらどうだ?」
「お断りですよ! それならまだタクマ様の方が――何でもないです!」
お、脈アリか?
なんて、カレーかシチューかみたいな二択だから真に受けたりはしないけどな。
「分かります。タクマには男性として安心感がありますよね。何より無限の愛も感じます。タクマの腕に抱かれていると、本当に安心できるんです。でも、次はもっと優しくして欲しいです。オナホとか……便器とか……ううっ……タクマにとってミイナは性欲処理に使う道具なのですか?」
「違う! そんなわけないだろ! お前だからどうしても強く求めてしまうんだ。ミイナだから、完全に俺のモノにして離したくなくなるんだよ! 可愛すぎて苛めたくなるが、日溜まりのなかで抱き合ってイチャイチャするだけのセックスも好きだし、本心から道具だなんて思ったことは一度もない! 誓ってだ!」
「じゃあ、次は日溜まりセックスですね。ふふ」
本気で胸が痛くなったが、甘える為の演技だったらしい。
まったく……。
「また俺を騙したのか?」
「毎回騙されるタクマが悪いです」
ミイナを抱き寄せ、触れるだけのキスを長くする。
いつもはイチャイチャするセックスをしてるから趣向を変えたが、ミイナは可愛すぎて苛めたくなってしまうから気をつけないといけないな。今度はミイナの好きなロマンチックなセックスをしよう。
「ギルドの方に向かうか」
「そうですよ! こんなところで遊んでる時間はないはずです! 姫様の為に働いてください!」
リリカが勢いよく乗ってきた。
「今のお前は俺のメイドだろ」
「心まで明け渡したつもりはないです!」
そうだったのか。
まあ、どうでもいいが。
「ギルドマスターの協力を得るんですよね?」
「そうだが、知ってるのか?」
「かなり頑固で、自分の意思を曲げない方だと聞いてます。アルジャン公爵が味方に引き入れようと接触しましたが、失敗してました。タクマ様ではきっと難しいですよ」
「まあ、俺もそう思う。頭を下げてみるしかないな」
リリカは俺を信じていないようだ。
疑わしい目で見ている。
「タクマを信じましょう。きっと何とかしてくれます」
「俺が駄目でも聖女の魅力ならイチコロかもしれない」
「真面目にやってください!」
文句を言われつつ、俺は隣室でふて寝していたアリアスを回収して冒険者ギルドへ向かった。
目的が脱線しまくっていたが、俺達はレイナ姫の協力者を募り、アルジャンが擁するアルニス派に一泡吹かせることが目的だ。その為には、やはり法の天秤の力が不可欠だと思う。
法の天秤は『罪』に反応して傾くマジックアイテムだ。
冒険者ギルドと商人ギルド、あとは魔術ギルドくらいにしか置かれていないが、これは貴族や王族といった上流階級の者達が、自らの悪事を公にされない為である。
連中の言い分によれば、法の天秤など所詮はマジックアイテムであり、人間と比べて信用ならない為、裁判で用いることは許されないという理屈になっている。
俺からしてみればこれだけ精度の高いマジックアイテムを裁判に用いないことに違和感しか覚えないが、利益があってもよく分からない価値観によってそれが阻まれることは、まあ何処にいてもままあることだ。
しかし、貴族が後から冒険者の身分を獲得した場合、法の天秤を使用することに問題はない。
なぜなら、貴族と言えども冒険者であるからには、ギルドのルールに縛られることになるからだ。
無法者も参加することの多い冒険者ギルドでは、ギルドマスターと法の天秤による簡易裁判が認められている。
簡易裁判の後、ただちに罪が確定するわけではないが、限りなく有罪判決の確定した被疑者として、そのまま衛兵に身柄を引き渡した上で裁かれることになるのだ。
簡易裁判の結果を覆す証拠がなければ、そのまま有罪判決が下される。
アルニス王子やアルジャン公爵を牢に放り込める目算も高まるということだな。
冒険者ギルドへ赴いた俺達は、ギルドマスターのラスクを懐柔して身内に引き込む為、面談を申し入れた。
ラスクは俺とミイナが来たと聞くと、すぐに個室を用意して招いた。
勇者と聖女、教会の権威の象徴ともされる二人が現れては、対応せざるを得なかったのだろう。
でかい図体と温和そうな性格、苦労人のラスクが珈琲をご馳走してくれた。
「お前、俺が天秤を貸した時に言った言葉を覚えてるよな?」
開口一番、これが言いたかったらしい。
「ああ、王族の争いには巻き込むなと言っていたな」
「どういうことだ!? どうしてお前は、俺を継承権争いの最前線に引きこもうとしてるんだ!?」
「あんたが頼りになりそうだったからだ。ちなみに第一王子が勝利したら、辺境へギルドを立てる際の補助金を出すそうだ。各ギルドの魔物討伐への報酬は依頼人(領主)からの支払いによるものだが、レオニード王子は地方と王都の不公平感を無くす為、新たに予算を組むとも言っていたな」
「ぐ……。細々とした改革を餌にぶら下げやがって。どうせお前の入れ知恵だろうが」
「もちろん、それであんたらの抱える問題が解決するとは思ってない。だが、あんたがセラの一件で口利きをしてくれたように、俺もあんたへの恩は返したいと思ってる。不義理を働いたのは俺だが、どうか許してもらえないだろうか」
潔く頭を下げる。ミイナも俺に倣って頭を下げてくれた。
俺が誠実に頭を下げたのを見て、ラスクだけじゃない、リリカが驚いた気配が伝わってきた。
「今ある自分を変える為には、一度壊さないといけない。荒療治になったが、クオンがやり直してくれることを祈るよ」
「さすがに可哀想でした」
「同情したなら慰めてやったらどうだ?」
「お断りですよ! それならまだタクマ様の方が――何でもないです!」
お、脈アリか?
なんて、カレーかシチューかみたいな二択だから真に受けたりはしないけどな。
「分かります。タクマには男性として安心感がありますよね。何より無限の愛も感じます。タクマの腕に抱かれていると、本当に安心できるんです。でも、次はもっと優しくして欲しいです。オナホとか……便器とか……ううっ……タクマにとってミイナは性欲処理に使う道具なのですか?」
「違う! そんなわけないだろ! お前だからどうしても強く求めてしまうんだ。ミイナだから、完全に俺のモノにして離したくなくなるんだよ! 可愛すぎて苛めたくなるが、日溜まりのなかで抱き合ってイチャイチャするだけのセックスも好きだし、本心から道具だなんて思ったことは一度もない! 誓ってだ!」
「じゃあ、次は日溜まりセックスですね。ふふ」
本気で胸が痛くなったが、甘える為の演技だったらしい。
まったく……。
「また俺を騙したのか?」
「毎回騙されるタクマが悪いです」
ミイナを抱き寄せ、触れるだけのキスを長くする。
いつもはイチャイチャするセックスをしてるから趣向を変えたが、ミイナは可愛すぎて苛めたくなってしまうから気をつけないといけないな。今度はミイナの好きなロマンチックなセックスをしよう。
「ギルドの方に向かうか」
「そうですよ! こんなところで遊んでる時間はないはずです! 姫様の為に働いてください!」
リリカが勢いよく乗ってきた。
「今のお前は俺のメイドだろ」
「心まで明け渡したつもりはないです!」
そうだったのか。
まあ、どうでもいいが。
「ギルドマスターの協力を得るんですよね?」
「そうだが、知ってるのか?」
「かなり頑固で、自分の意思を曲げない方だと聞いてます。アルジャン公爵が味方に引き入れようと接触しましたが、失敗してました。タクマ様ではきっと難しいですよ」
「まあ、俺もそう思う。頭を下げてみるしかないな」
リリカは俺を信じていないようだ。
疑わしい目で見ている。
「タクマを信じましょう。きっと何とかしてくれます」
「俺が駄目でも聖女の魅力ならイチコロかもしれない」
「真面目にやってください!」
文句を言われつつ、俺は隣室でふて寝していたアリアスを回収して冒険者ギルドへ向かった。
目的が脱線しまくっていたが、俺達はレイナ姫の協力者を募り、アルジャンが擁するアルニス派に一泡吹かせることが目的だ。その為には、やはり法の天秤の力が不可欠だと思う。
法の天秤は『罪』に反応して傾くマジックアイテムだ。
冒険者ギルドと商人ギルド、あとは魔術ギルドくらいにしか置かれていないが、これは貴族や王族といった上流階級の者達が、自らの悪事を公にされない為である。
連中の言い分によれば、法の天秤など所詮はマジックアイテムであり、人間と比べて信用ならない為、裁判で用いることは許されないという理屈になっている。
俺からしてみればこれだけ精度の高いマジックアイテムを裁判に用いないことに違和感しか覚えないが、利益があってもよく分からない価値観によってそれが阻まれることは、まあ何処にいてもままあることだ。
しかし、貴族が後から冒険者の身分を獲得した場合、法の天秤を使用することに問題はない。
なぜなら、貴族と言えども冒険者であるからには、ギルドのルールに縛られることになるからだ。
無法者も参加することの多い冒険者ギルドでは、ギルドマスターと法の天秤による簡易裁判が認められている。
簡易裁判の後、ただちに罪が確定するわけではないが、限りなく有罪判決の確定した被疑者として、そのまま衛兵に身柄を引き渡した上で裁かれることになるのだ。
簡易裁判の結果を覆す証拠がなければ、そのまま有罪判決が下される。
アルニス王子やアルジャン公爵を牢に放り込める目算も高まるということだな。
冒険者ギルドへ赴いた俺達は、ギルドマスターのラスクを懐柔して身内に引き込む為、面談を申し入れた。
ラスクは俺とミイナが来たと聞くと、すぐに個室を用意して招いた。
勇者と聖女、教会の権威の象徴ともされる二人が現れては、対応せざるを得なかったのだろう。
でかい図体と温和そうな性格、苦労人のラスクが珈琲をご馳走してくれた。
「お前、俺が天秤を貸した時に言った言葉を覚えてるよな?」
開口一番、これが言いたかったらしい。
「ああ、王族の争いには巻き込むなと言っていたな」
「どういうことだ!? どうしてお前は、俺を継承権争いの最前線に引きこもうとしてるんだ!?」
「あんたが頼りになりそうだったからだ。ちなみに第一王子が勝利したら、辺境へギルドを立てる際の補助金を出すそうだ。各ギルドの魔物討伐への報酬は依頼人(領主)からの支払いによるものだが、レオニード王子は地方と王都の不公平感を無くす為、新たに予算を組むとも言っていたな」
「ぐ……。細々とした改革を餌にぶら下げやがって。どうせお前の入れ知恵だろうが」
「もちろん、それであんたらの抱える問題が解決するとは思ってない。だが、あんたがセラの一件で口利きをしてくれたように、俺もあんたへの恩は返したいと思ってる。不義理を働いたのは俺だが、どうか許してもらえないだろうか」
潔く頭を下げる。ミイナも俺に倣って頭を下げてくれた。
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