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35 最適化(下)

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 メナンドの身体が綺麗に潰れて水溜りになっている。
 誰がどう見ても助からない状態だ。

 これが、『変貌』の力の一端らしい。が、予想以上に凶悪な腕だった。

 俺は右腕をクッションにして着地する。
 空はいい眺めだったな。

「カシラが……おぇぇぇ」
「なんだあの腕……スライムか?」
「い、異形だ。こいつ人間じゃねえ!」

 しまった、メナンドから何も聞き出せなかったな。
 少し、俺もこの状況に焦っていたらしい。
 色々と聞きたいこともあったし、あれだけの強者を一瞬で屠ってしまったことを申し訳なく思う。

 まあ、俺の大事な女達を回すと公言してたようなクズだったからな。ああいう死に様が相応しいだろう。
 俺は思考を加速させて残った賊共の『鑑定』を行った。そして、今回の事態を引き起こした下手人の名を知った。

「よっと」

 必要な情報は既に手に入った。
 俺は腕を一振りして残りの盗賊を両断した。

 命乞いをする奴もいたが、過去に女を輪姦して死に至らしめていたので、躊躇なく殺すことにした。
 俺が見逃したことによって、次の被害者が出たら目も当てられないからな。

「自分に甘い屑が」

 刃の形状に変化した俺の腕は、薙いだだけで柔軟に変化して敵を殲滅する。
 どこまでも伸びるし、よく曲がるし、よく切れる。便利な腕になったもんだ。
 お陰で人質は無事だ。一人も死なせずに済んだ。

「バケモノ野郎が。俺なんかが勝てないはずだぜ」

 命拾いしたロシノが呆れていた。

「顔の怪我は大丈夫か?」
「ああ、俺はいいからその腕を何とかしろよ。女が待ってるぞ」

 村人達は解放した。
 助かったことを喜ぶというよりは、俺のことを不気味がる雰囲気だ。

 これは女にも引かれたかな、と思っていると、カナミが駆け寄ってきて抱きついてきた。他の女達も我先にと俺の元に集まってくる。

 ……どうやら杞憂だったらしい。

「兄さん……! 大丈夫ですか! いっぱい殴られて……」
「ヒヤヒヤさせるなよ!」
「本当に、よくご無事で……」

 ネリスとミイナも心配してくれる。

「その腕は治るんですか? 何かの呪いならミイナさんに解いてもらわないと」
「呪いではないから大丈夫だ」

 俺は変貌を解いた。
 すると、まるで幻たったかのように俺の右腕は元の質感に戻った。

 女達を見るとホッとしているようである。

「驚かせてすまない。魔法による一時的な変化だ」

 そう言いつつも今回は流石にドキドキした。
 こんなことが俺の身体に起こるなんてな。
 おまけに変異体の効果が変更され、発動時間が短くなった代わりに強化倍率が上がった。
 インターバルも伸びたので発動に関する制限は実質的にきつくなった感じだ。

 元に戻った右手をグーパーして伸ばしてみる。

 やっぱり、こっちの腕の方がいいよな。
 第一、あんな腕を見られたら魔物扱いされてしまう。

 皆がちょっと引いてたみたいに。

「もう大丈夫だ」
「お前、人間やめたかと思ったぞ」
「魔法の力のようでしたが、完全に戻ったようですね」とミイナが俺の腕に触れてくる。
「良かったわ……。一瞬、何が起こったのか分からなかったけど」
「変な腕だったわね。ねえ、もう一回見せなさいよ」

 アリシアの発言に皆が引いている。
 自分に視線が集まったことに気づくと、「冗談よ!」と慌てて否定した。

 アリシア、元気になってきて良かったな。
 俺にベッタリなのは相変わらずだが。
 空いた左腕をずっと薄い胸で挟んでる。
 可愛いから、あとで犯したいな。

 ひとまず腕のことは俺が開発した特殊な魔法ということで誤魔化させてもらうことにした。
 村人の手前、あまり怪しまれても困る。
 異教の悪魔なんて言われて目をつけられた日には最悪だ。
 女達にも迷惑が掛かってしまう。

「人体にどんな影響が出るか分かりません。兄さん、あんな魔法もう使わないでください。兄さんの身体が心配なんです」
「分かってるよ」
「分かってないから言ってるんです! どれだけ怖かったと思ってるんですか! 本当に、もうあんなこと二度とやめてください!」
「分かった……。すまない」

 正直、セックスの時に触手みたいに使えるか試してみたかったが、やめておこうと思った。
 これ以上、心配をかけても悪いと思う。

 何はともあれ、俺は女達を無事に守れたことに安堵していた。
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