上 下
9 / 118

9 代償

しおりを挟む
 俺はカナミとネリスの前で土下座させられて、悪事の数々を告白した。

 二人を妻にしたいから嘘をついて一緒にいることにしたのだと、素直に告白した。
 初めから素直になるべきだったんだ。二人は呆れ果てていた。

「兄さんがそこまでゲスだったなんて……。ネリスを奴隷にする下りなんて虫唾が走ります」
「酷すぎるだろ! あたしのこと騙してたんだな! いやいや妹としたとか言って、押し倒したのはタクマの方じゃないか!」
「言葉もない。だが、二人を愛してるんだ。どうしても手放したくなかった。例え悪人になろうとも、お前達を幸せにするっていう決意だけは本物だったし今でも揺らいでない。そこだけは信用してくれ」

 二人は怪訝な視線を俺に向ける。
 当然だよな。しかし、俺にはまだ二人に訴える手段があった。

「うう……。ごめんなさい。どうか俺を捨てないでください。好きなんだ……」

 俺は……泣いたのだ。
 恥を捨てて、泣いた。

 いついかなる時も偉そうにしていた俺が、涙を流した。

 そのことは少なからず二人にショックを与えたようだった。

「それと、俺は実はこの世界の人間じゃない。異世界の日本という場所からきた転生者なんだ」
「え……?」
「転生者って何だ!?」

 俺はカルマオンラインの設定を元に、転生者について説明をした。
 すなわち、異世界から魔王を討つために召喚された勇者の一人なのだということを。

「本当だ。だから、俺は盗賊王の居場所も知っている。全部、知っているんだ。転生する時に神から知識を植えつけられたから。ネリスに売った情報も植えつけられた知識から掘り起こしたものだ」

 二人は驚き固まっている。

「それと、日本では文化的に一夫多妻が歓迎されていた。五人までなら同時に愛してもいいという嫁に関する暗黙のルールがあったんだ。異世界人の俺だが、それでもこの世界のルールには従って生きないといけないと思っていた。この世界にも一夫多妻制度があるのは知っている。だが、それは子を残すべき貴族の権利で、俺達平民には関係のないことだと分かっていたんだ。
 それなのに、俺は自分の抱える愛に耐えられなかった。一人を選ぶことができなかったんだ。カナミは心優しくいつも俺を慕ってくれる大事な妹。そして、ネリスは俺が初めて放っておけないと感じた少女だ。二人の内、どちらか一人を切り捨てるなんて俺にはできなかった。俺は、自分が悪に染まればいいと言うエゴで、大事な二人を傷つけた。こうなったら、俺はもう命で償うよ」

 俺は部屋に立てかけられた剣を掴んだ。
 そして、迷わず自分の腹を裂いた。

「やめて! 何をしているんですか兄さん!」
「あたしはそんなこと望んでない! 薬を……!」
「いてえぇぇぇ……」

 『変異体』が発動するって期待してたのに、中途半端に傷つけたせいで全然発動しなかった! クソが……! さっさとポーション持って来い! 俺の鞄にあるから!

「ありました! これ、ポーションですね! 使い方が……」
「あたしがやる!」

 カナミの手からネリスがポーションの小瓶を奪い、俺に飲ませようとする。

「カナミ、こいつ押さえてろ! 錯乱してて自分じゃ飲めそうにない!」
「分かりました!」

 ネリスが口にポーションを含んで俺に呑ませる。
 自分でも飲めたんだが、二人は俺が本気で死のうとしていたと誤解してる。
 俺は絶対に死なない自信があったから誠意を見せただけだ。

 ちゅむ……と口を密着される。

「私も飲ませます!」

 今度はネリスのポーションを奪い、カナミが口に含んで口づけをしてきた。

(お前ら、遊びじゃねえんだぞ!)

 だが、どうにか一命は取りとめた。

 ベッドに寝かされた俺だが、熱が出てしまった。

「はぁ……はぁ……すまなかった、二人とも」

 内心切れつつ二人に謝罪する。
 お前らが遊んでる間に傷が悪化しただろうが。

「私達が傍にいますから、もう先走ったことはしないでください」
「そうだぞ。ずっと傍にいてやるからもう早まるな。その、お前の世界は五人までオーケーなんだろ? さすがにそれは引くけど、二人まではセーフにしといてやるから」
「兄さんは異常な……いえ、兄さんは悪くないですけど、ちょっとその、変わった風習の国から来てしまったんですよね。日本という国はちょっと、貴族も平民も関係なく五人はやり過ぎだと思いますけど、私達も善処しますね。兄さんの心を守る為に」

 良かった……。日本のイメージは悪くなったが、お陰でハーレムに対する理解が深まった。

「二人ともありがとう。少し寝るな……」
「ゆっくり休んでください」
「その、愛してるからな?」

 二人が順番にキスをしてくれる。

 怪我の功名だ。
 これからも幸せを目指して頑張るぞ……。

 く、それにしても腹が痛い。
 腸が飛び出さなくて良かった。

 少し寝よう……。
 二人の女の視線を感じつつ、俺は眠りについた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...