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9 代償

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 俺はカナミとネリスの前で土下座させられて、悪事の数々を告白した。

 二人を妻にしたいから嘘をついて一緒にいることにしたのだと、素直に告白した。
 初めから素直になるべきだったんだ。二人は呆れ果てていた。

「兄さんがそこまでゲスだったなんて……。ネリスを奴隷にする下りなんて虫唾が走ります」
「酷すぎるだろ! あたしのこと騙してたんだな! いやいや妹としたとか言って、押し倒したのはタクマの方じゃないか!」
「言葉もない。だが、二人を愛してるんだ。どうしても手放したくなかった。例え悪人になろうとも、お前達を幸せにするっていう決意だけは本物だったし今でも揺らいでない。そこだけは信用してくれ」

 二人は怪訝な視線を俺に向ける。
 当然だよな。しかし、俺にはまだ二人に訴える手段があった。

「うう……。ごめんなさい。どうか俺を捨てないでください。好きなんだ……」

 俺は……泣いたのだ。
 恥を捨てて、泣いた。

 いついかなる時も偉そうにしていた俺が、涙を流した。

 そのことは少なからず二人にショックを与えたようだった。

「それと、俺は実はこの世界の人間じゃない。異世界の日本という場所からきた転生者なんだ」
「え……?」
「転生者って何だ!?」

 俺はカルマオンラインの設定を元に、転生者について説明をした。
 すなわち、異世界から魔王を討つために召喚された勇者の一人なのだということを。

「本当だ。だから、俺は盗賊王の居場所も知っている。全部、知っているんだ。転生する時に神から知識を植えつけられたから。ネリスに売った情報も植えつけられた知識から掘り起こしたものだ」

 二人は驚き固まっている。

「それと、日本では文化的に一夫多妻が歓迎されていた。五人までなら同時に愛してもいいという嫁に関する暗黙のルールがあったんだ。異世界人の俺だが、それでもこの世界のルールには従って生きないといけないと思っていた。この世界にも一夫多妻制度があるのは知っている。だが、それは子を残すべき貴族の権利で、俺達平民には関係のないことだと分かっていたんだ。
 それなのに、俺は自分の抱える愛に耐えられなかった。一人を選ぶことができなかったんだ。カナミは心優しくいつも俺を慕ってくれる大事な妹。そして、ネリスは俺が初めて放っておけないと感じた少女だ。二人の内、どちらか一人を切り捨てるなんて俺にはできなかった。俺は、自分が悪に染まればいいと言うエゴで、大事な二人を傷つけた。こうなったら、俺はもう命で償うよ」

 俺は部屋に立てかけられた剣を掴んだ。
 そして、迷わず自分の腹を裂いた。

「やめて! 何をしているんですか兄さん!」
「あたしはそんなこと望んでない! 薬を……!」
「いてえぇぇぇ……」

 『変異体』が発動するって期待してたのに、中途半端に傷つけたせいで全然発動しなかった! クソが……! さっさとポーション持って来い! 俺の鞄にあるから!

「ありました! これ、ポーションですね! 使い方が……」
「あたしがやる!」

 カナミの手からネリスがポーションの小瓶を奪い、俺に飲ませようとする。

「カナミ、こいつ押さえてろ! 錯乱してて自分じゃ飲めそうにない!」
「分かりました!」

 ネリスが口にポーションを含んで俺に呑ませる。
 自分でも飲めたんだが、二人は俺が本気で死のうとしていたと誤解してる。
 俺は絶対に死なない自信があったから誠意を見せただけだ。

 ちゅむ……と口を密着される。

「私も飲ませます!」

 今度はネリスのポーションを奪い、カナミが口に含んで口づけをしてきた。

(お前ら、遊びじゃねえんだぞ!)

 だが、どうにか一命は取りとめた。

 ベッドに寝かされた俺だが、熱が出てしまった。

「はぁ……はぁ……すまなかった、二人とも」

 内心切れつつ二人に謝罪する。
 お前らが遊んでる間に傷が悪化しただろうが。

「私達が傍にいますから、もう先走ったことはしないでください」
「そうだぞ。ずっと傍にいてやるからもう早まるな。その、お前の世界は五人までオーケーなんだろ? さすがにそれは引くけど、二人まではセーフにしといてやるから」
「兄さんは異常な……いえ、兄さんは悪くないですけど、ちょっとその、変わった風習の国から来てしまったんですよね。日本という国はちょっと、貴族も平民も関係なく五人はやり過ぎだと思いますけど、私達も善処しますね。兄さんの心を守る為に」

 良かった……。日本のイメージは悪くなったが、お陰でハーレムに対する理解が深まった。

「二人ともありがとう。少し寝るな……」
「ゆっくり休んでください」
「その、愛してるからな?」

 二人が順番にキスをしてくれる。

 怪我の功名だ。
 これからも幸せを目指して頑張るぞ……。

 く、それにしても腹が痛い。
 腸が飛び出さなくて良かった。

 少し寝よう……。
 二人の女の視線を感じつつ、俺は眠りについた。
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