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「すごいです! 兄さん、全然余裕そうでした!」
ま、実際に余裕なんだよ。
ネームドモンスターも目をつけないような世界の片隅だ。
道に迷いさえしなければ王都までの道のりも余裕だろう。
小国ラムネアはドラクエで言う始まりの村の付近にある辺境国と変わらない。
魔王にとって戦略的価値が皆無だから弱い魔物しか生息してないんだ。
王都周辺ですらそんなに大した魔物が出ない。
一応、魔物にも二つの分類があり、魔王が召喚したのとは別に、初めからこの世界に生息していた強力なのもいる。そういう奴らが生息してるスポットを探索すればハードなレベリングも可能だが、人里からは遠く離れた場所にあるので、アクセスはあまりよろしくない。
これが、戦略的価値のある大きな国になってくると事情が全く違うんだがな。
何も知らない妹は目を輝かせて喜んでいる。
可哀想なくらい世間知らずだが、村から出たことがないなら当然か。
いや、村を出て王都に行っても大して見識は広まらないだろうな。
前世の知識がなければ俺も井の中の蛙だっただろう。
世界から取り残されたような国に、俺達は住んでるんだから。
「アリシア達はどこへ消えたんでしょうか」
「さあな。森の中にいるなら誰かが見つけただろうから、俺は王都に居ると思うんだが」
「巣に持ち帰られた可能性もありますよ?」
「そうなったらお手上げだな」
同じ村の誼でもっと心配するべきだなんて言う奴もいるかもしれないが、俺からしたら狭い村のなかで嫌って程に嫌味を言われてきた相手だから、できれば死んでて欲しいってのが正直なところだった。
実は俺が取られた畑は村長の息子夫婦に持って行かれたんだ。
だから俺からすれば死んでろってのが正直なところだ。
遺産泥棒、犯罪者がどうなろうが知ったことじゃない。
「兄さんはあまり心配してない感じですね」
「当たり前だろうが。親父の畑を奪ったのはあいつらだぞ」
「憎いですけど、アリシアまで死ぬのはさすがに可哀想だと思います。孫娘ともなれば無関係とも言えるじゃないですか」
キスして胸まで揉んだ妹だけど、この性根の甘さは嫌いだな。
何より不安だ。レベルを上げるにしても、こいつの成長のさせ方はサポート型にした方が良さそうだ。どうせ直接攻撃を命じても躊躇ったりするだろうし。
「……はぁ」
「兄さん、私も非情になりますから。そんな風に溜息をつくのはよしてください」
「人間ってのはそう簡単に変わったりしない。でも、俺の為に変わろうとしてくれるなんていい女だな。やっぱり俺にはカナミしかいない」
「当然です。私は兄さんの女ですからね」
すぐに擦り寄って胸を当ててくる妹。
こいつは根っからのビッチだ。
ところで、俺は元々冒険者として活動していたのも合わせてせっかくレベルが27まで上がったので、ステータスポイントを割り振ることにした。レベルが上がると自然と全パラメーターが上がるんだが、こうしてポイントを振ることでさらに強化することができる。
俺は戦士型のステータスにする為に筋力と体力を弄った。
妹は魔術師型に育てて、二人だけでパーティが完結するようにする。
知らない顔を混ぜて裏切られたりするのは御免だからな。
いい女がいれば別だが、現時点では将来的に仲間を増やすつもりはない。
ちなみに俺が魔術師になっても良かったんだが、別に魔術師じゃないと出来ないことがあるわけでもなし、何より戦士職は万能で多くの敵に後れを取る心配がないから、踏み切ることにした。
足りない部分は妹を使って補えばいい。
一気に溜め込んでいたステータスポイントを消費したことで、俺の戦力値は100まで上昇した。
システムを使ってない他の連中に申し訳なくなるが、彼らが俺と同等の強さになる為には、レベルを80以上に上げなければならない。
酷な話だが、まあ同情したところで何が変わるわけでもない。
俺は強化した身体で軽く剣を振ってみた。身体が空気のように軽くなり、どんな敵にも負けないくらいの万能感を感じる。だが、さすがにただの錯覚だろう。
この程度の強さまでなら、鍛え始めたばかりの妹もすぐに辿りつける。
蘇生薬がない世界なので、無理をさせるつもりはないのだが。
「兄さん、何だか顔つきが変わりましたね」
「そうか? まあ、久しぶりに魔物とやりあったから血が騒いだのかもな」
ところで、俺には神から譲り受けた特別なスキルもあるんだった。
Sランクスキル、『変異体』。
どんな致命傷でも一回だけ蘇生できるスキルだ。
しかも使った後3時間の間は戦力値が+50される。
ただし、一度使ったら12時間は再発動できないのが玉に瑕だな。
あと、死ななきゃ発動しないから基本的には絶対頼りたくないスキルだ。
人間、死ぬのは誰だって怖い。当たり前だろ。
しかし、これだけ強化してれば生半可な魔物はぶっ殺せるだろ。
という俺の予測は正しく、俺と妹の旅は大した危険もなく続いた。
そして、結局失踪した二人の情報は見つからないまま、王都に到着してしまった。
ひとまず魔物が二人を襲ったような痕跡はなかった。
ということは、やっぱり盗賊にでも攫われたんじゃないかって疑いたくなる。
ひとまず情報を得る為に、王都に足を踏み入れよう。
ま、実際に余裕なんだよ。
ネームドモンスターも目をつけないような世界の片隅だ。
道に迷いさえしなければ王都までの道のりも余裕だろう。
小国ラムネアはドラクエで言う始まりの村の付近にある辺境国と変わらない。
魔王にとって戦略的価値が皆無だから弱い魔物しか生息してないんだ。
王都周辺ですらそんなに大した魔物が出ない。
一応、魔物にも二つの分類があり、魔王が召喚したのとは別に、初めからこの世界に生息していた強力なのもいる。そういう奴らが生息してるスポットを探索すればハードなレベリングも可能だが、人里からは遠く離れた場所にあるので、アクセスはあまりよろしくない。
これが、戦略的価値のある大きな国になってくると事情が全く違うんだがな。
何も知らない妹は目を輝かせて喜んでいる。
可哀想なくらい世間知らずだが、村から出たことがないなら当然か。
いや、村を出て王都に行っても大して見識は広まらないだろうな。
前世の知識がなければ俺も井の中の蛙だっただろう。
世界から取り残されたような国に、俺達は住んでるんだから。
「アリシア達はどこへ消えたんでしょうか」
「さあな。森の中にいるなら誰かが見つけただろうから、俺は王都に居ると思うんだが」
「巣に持ち帰られた可能性もありますよ?」
「そうなったらお手上げだな」
同じ村の誼でもっと心配するべきだなんて言う奴もいるかもしれないが、俺からしたら狭い村のなかで嫌って程に嫌味を言われてきた相手だから、できれば死んでて欲しいってのが正直なところだった。
実は俺が取られた畑は村長の息子夫婦に持って行かれたんだ。
だから俺からすれば死んでろってのが正直なところだ。
遺産泥棒、犯罪者がどうなろうが知ったことじゃない。
「兄さんはあまり心配してない感じですね」
「当たり前だろうが。親父の畑を奪ったのはあいつらだぞ」
「憎いですけど、アリシアまで死ぬのはさすがに可哀想だと思います。孫娘ともなれば無関係とも言えるじゃないですか」
キスして胸まで揉んだ妹だけど、この性根の甘さは嫌いだな。
何より不安だ。レベルを上げるにしても、こいつの成長のさせ方はサポート型にした方が良さそうだ。どうせ直接攻撃を命じても躊躇ったりするだろうし。
「……はぁ」
「兄さん、私も非情になりますから。そんな風に溜息をつくのはよしてください」
「人間ってのはそう簡単に変わったりしない。でも、俺の為に変わろうとしてくれるなんていい女だな。やっぱり俺にはカナミしかいない」
「当然です。私は兄さんの女ですからね」
すぐに擦り寄って胸を当ててくる妹。
こいつは根っからのビッチだ。
ところで、俺は元々冒険者として活動していたのも合わせてせっかくレベルが27まで上がったので、ステータスポイントを割り振ることにした。レベルが上がると自然と全パラメーターが上がるんだが、こうしてポイントを振ることでさらに強化することができる。
俺は戦士型のステータスにする為に筋力と体力を弄った。
妹は魔術師型に育てて、二人だけでパーティが完結するようにする。
知らない顔を混ぜて裏切られたりするのは御免だからな。
いい女がいれば別だが、現時点では将来的に仲間を増やすつもりはない。
ちなみに俺が魔術師になっても良かったんだが、別に魔術師じゃないと出来ないことがあるわけでもなし、何より戦士職は万能で多くの敵に後れを取る心配がないから、踏み切ることにした。
足りない部分は妹を使って補えばいい。
一気に溜め込んでいたステータスポイントを消費したことで、俺の戦力値は100まで上昇した。
システムを使ってない他の連中に申し訳なくなるが、彼らが俺と同等の強さになる為には、レベルを80以上に上げなければならない。
酷な話だが、まあ同情したところで何が変わるわけでもない。
俺は強化した身体で軽く剣を振ってみた。身体が空気のように軽くなり、どんな敵にも負けないくらいの万能感を感じる。だが、さすがにただの錯覚だろう。
この程度の強さまでなら、鍛え始めたばかりの妹もすぐに辿りつける。
蘇生薬がない世界なので、無理をさせるつもりはないのだが。
「兄さん、何だか顔つきが変わりましたね」
「そうか? まあ、久しぶりに魔物とやりあったから血が騒いだのかもな」
ところで、俺には神から譲り受けた特別なスキルもあるんだった。
Sランクスキル、『変異体』。
どんな致命傷でも一回だけ蘇生できるスキルだ。
しかも使った後3時間の間は戦力値が+50される。
ただし、一度使ったら12時間は再発動できないのが玉に瑕だな。
あと、死ななきゃ発動しないから基本的には絶対頼りたくないスキルだ。
人間、死ぬのは誰だって怖い。当たり前だろ。
しかし、これだけ強化してれば生半可な魔物はぶっ殺せるだろ。
という俺の予測は正しく、俺と妹の旅は大した危険もなく続いた。
そして、結局失踪した二人の情報は見つからないまま、王都に到着してしまった。
ひとまず魔物が二人を襲ったような痕跡はなかった。
ということは、やっぱり盗賊にでも攫われたんじゃないかって疑いたくなる。
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