大事に育てた畑を奪われたからこの村は見捨てることにした ~今さら許しを乞うても無駄なんだよ~(完)

みかん畑

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3 俺だけレベリング

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 俺はスキル『鑑定』を持っている。

 その影響で、他人の強さが『戦力値』というパラメーターで数値化されて見える。
 一応、目安になるが、例えば村人の戦力値だと大体20とかそれくらいだ。
 ゴブリンとかのその辺によくいる低級の魔物なら40以下。
 王都にいる騎士とかは45~50。
 俺が行きつけの冒険者ギルドにいる連中の戦力値は35~60だったりする。

 さて、肝心の俺の戦力値はと言えば、45だ。

 この数値は正直低い方だが、俺には他の連中にはないアドバンテージがある。それは、この世界が半ばゲームのようなものであることを自覚し、尚且つそのシステムを熟知しているということだ。

 ネタ晴らしすると、この世界は俺が生前に楽しんでいた『カルマオンライン』ってゲームと瓜二つなんだよな。

 だからどのエリアにどういう魔物がいて、どれを狩れば効率的に成長できるとか、そんなことは把握しきれている。

 ついでに言うとこの世界の連中にはレベルを上昇させた際に得られるステータスポイントを割り振るという概念がなく、成長率が著しく低いことも分かってる。

 この世界にいる俺以外の『人間』、『魔物』は、最初から到達するレベルが決められているようだった。
 そして、固有のレベルに達してからは、成長率が一気に鈍化する。
 定められた固有の戦力値を、大きく上回ることができないのだ。

 何度か暫定的にパーティを組んで狩りをしてみた時に、俺以外の連中は全くレベルが上がらなくて驚いたことがある。レベルが微増した奴もいたが、大した強化にはなっていなかった。

 じゃあ、カナミを連れまわすことに全く意味がないのかと言えば、そんなことはない。
 実は、俺にはある特殊な技能が備わっている。それは、NPCのステータスを初期化し、サブクラスを与えて育てなおす『リセット』という特殊なスキルであった。

 これはどういうスキルかと言うと、それまでの成長を初期化する代わりに、プレイヤーという特殊なサブクラスを与えて育てなおすという技能であった。

 こ特技を使えば、俺は他のNPCをプレイヤーとして育成しなおすことができるらしい。
 恐らくは俺以外にプレイヤーが存在しないが故の救済措置なんだろうな。
 ただし、リセットを使う為には相手の同意も必要だ。

 誰でも能力をリセットできるわけではないのだ。

 一応、カナミに「俺を信じて一から成長しなおしてみないか?」と説得したところ、彼女は俺を信じて『リセット』に応じてくれた。本人にその自覚なないのだろうが、俺にとっては大変ありがたいことだった。

 ちなみに、ステ振りは俺が介入することでプレイヤー化したキャラクターにも行うことができるらしかった。
 だから、今は戦力値が20しかないカナミでも、成長させて王都の冒険者クラス……いや、それを遥かに上回る実力にも育成できるということだ。

 その気になればいずれは魔王すら倒せるステータスにもできるだろう。

 転生前に聞いた話では、この世界を支配している魔王の戦力値は300ということだった。
 試算したところ、レベルが94になれば越えられる数値だと思う。

 さすがにレベル上げがキツイが、絶対に越えられない数値ではないはずだ。
 俺が所有していたアカウントの戦力値は400付近だったからな。
 10万以上課金していたので当然の強さだったが。

 ちなみにどうして魔王の戦力値といった細かい情報を覚えているのかと言えば、ゲームとしてプレイしていた時代にデートスポットとして様々な狩場をまんべんなく使っていたからだ。

 ぶっちゃけ俺が戦力値に詳しいのは女の子と親しくなる為だった。ネトゲの世界では知識があるだけでモテるからな。男にも女にもモテるが、男にモテても嬉しくはない。

 俺は女のフレンドを作りまくり、初心者から中級者、はては上級者まで、よく一緒に狩りを行っていた。そのうちの半数以上がネカマだと思うが、そんなこんなで俺は攻略情報には非常に詳しかった。

 フレンドのレベル上げもかなり手伝ってたから、この世界で強くなる術は俺が一番知っていると思う。もしかしたらそんな俺だからこの世界に転生させてもらえたのかもな。

 おっとゴブリンが出てきた。
 排除しないといけない。

 ゴブリンの戦力値は40。
 対する俺は45。
 戦力値が5も違えば実力の差は明確だ。
 ゴブリンの攻撃は俺からすると遅く、余裕で避けることができた。

 たった5の違いに思われるかもしれないが、戦力値というのはカーストに似ている。よほど運が味方しない限り、下位にあるものは上位には絶対に勝てないように出来ている。
 1~4程度の差ならば、運や精神力の差によっては覆せる可能性も捨てきれない。
 しかし、5というのは絶対の差だろう。感覚的なものだが、俺はそう捉えている。

 ゴブリンが余裕綽々と言った表情で仕掛けてきたが、俺は容易く奴の攻撃を避けてやった。
 こいつらオスしかいないんだよな。
 メスも探せば存在するのだろうか。

 俺は即座に斬り返して首を刎ねた。
 信じられないと目が見開かれてるのは、人間を完全に食い物にしてきた証拠だ。

 村の連中なんかと比べられても困る。
 俺が一匹始末すると、それだけでカナミははしゃいでいた。
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