結婚式をボイコットした王女

椿森

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ボイコットされるまでの裏舞台

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庭園にいる男女、王太子のウィリアルとヘンリッカ・テルヴォ公爵令嬢は、非常に仲睦まじい様子だった。
以前は知ったことではないが、わたくしと婚約を交わした今、不貞という事実が出来上がった。

「堂々としてらっしゃいますわね」

嫌味というわけでもなく、すんなりと感じたままの言葉が溢れ出た。

「ええ、最近はとても懇意にされているようですわ」
「あらあら、元気ですわね。彼女は」

テルヴォ公爵令嬢は王太子と繋いでいた手を離して、スカートの裾を絡げて走り出す。そのまま何が楽しいのかクルクルと回る。

「令嬢としましては、、少々はしたないですね」

少々、どころかかなりはしたないと思う。
聞けば、テルヴォ公爵が愛人に産ませ、存在を知った5年ほど前に引き取られたとか。
お茶会や夜会などの社交場では、未熟なマナーに顔をしかめられることも多々あるらしい。
しかし、一部の子息達はそれが新鮮に映って良いという。
何の因果か女児が生まれにくいテルヴォ公爵家にようやく生まれたヘンリッカ嬢を王太子妃として、王家の権威が落ち目のいま介入することによって、民の支持を得ようとする狙いがあるとか。

「···5年もあって、アレですの?ミリア様の二の舞いになりかねないのではないかしら」

一同は苦笑し、微妙な空気が流れる。
テルヴォ公爵は老獪な狸なのかもしれないが、あれでは駒に難あり、教育は失敗なのではないか。

「いずれにせよ、テルヴォ公爵は退けるべきですので···」
「、そうね。油断していては、足元を掬われるわね」

微妙な空気のまま、大公殿下とその一行は退室していった。
窓の外では、いまだに王太子と公爵令嬢が仲睦まじげに戯れている。

「彼らはナルシア様を侮辱しているのでしょうか」

侍女が憤慨したように、憎らしげに彼らに視線を向ける。

「別に構わないわよ、わたくしは何とも思わないし。でも、不貞はないわね。···あらぁ」

2人を眺めながら侍女と話をしていれば、見つめ合い。互いを大事そうに抱きしめ、口付けた。

「大司教様にもお手紙を書かなくては、かしらね」
「本当に有り得ませんわ!ナルシア様、抗議をしなくてよろしいのですか?!」
「面倒だから良いわ。むしろ、何も言わないことで許されていると思っていたところに罪を突きつけるのも面白そうだわ」

神に祝福された子だからと言って、完全なる善人なわけではない。
わたくしだって人間だ。腹ただしいこともある。

知っていてやってるかはわからないが、これはわたくしを馬鹿にした上での挑戦状として受け取った。

「5日後には夜会もあることですし、様子見もしますが···彼らはどうするのかしら」

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