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わたくしが嫁ぐ予定であった、ヨーレイア王国、祖国のテンダリウム王国、お爺様が治めるハイデル帝国を含む大陸、いや全世界の8割を占める国々はカティーラ教を国教としている。
基本的に教会は政治に介入することはなく、大陸にある教会領は各国から干渉を受けることの無い、独立領である。
また、カティーラ教の教えを簡単に言えば、清貧を尊び、貞潔であることが良いとされている。
そのため、婚姻に関する法では一夫一妻制を採用している国がほとんどであり、王侯貴族も例外ではない。
その他にも、平民では簡略化されてきた宗教的行事に関しても事細かく決められていることが多々ある。
婚姻の儀もそのひとつだ。
昔は貞潔さを示しために、3ヶ月にわたり周囲から異性を遠ざけ、禊を行うことが慣例であった。
しかし、現在では国政や生活に影響が出てしまうとして王族の場合では7日間を禊する期間として婚姻の儀に望む。
にも関わらず。
王太子は期間中は知らないが、よりにもよって儀式直前に不貞とみなされる行いをしたわけである。
「儀式を軽んじているとしか思えませんわ。蛙の子は蛙ということですね」
「その通りだな、ナルシア」
お爺様の肯定の言葉で、あらと思う。
「口に出してましたか?」
「しっかりとな。しかし、事実であるから問題なかろう」
ヨーレイア国の方々はミリア様以外は何を言われたが分かっているようで、怒りだか羞恥だかで顔色が赤かったり青かったりしている。
当のミリア様は怪訝な顔をしており、ヨーレイア国王に「何のことですか?」などと聞いている。余程おめでたい頭の中身をしているとみえるが、指摘すると長くなりそうなのであえて無視をする。
「それで、王太子殿下。何故かな?」
お父様はにこやかに問うが、目の奥は冷たく光っている。
お父様は1人の父親である前に国王であるために非常に厳しいお方だが、子供を惜しみなく愛してくださっている。婚姻の儀の前に入国し、王宮住まいをしている間の事も伝えているので娘を蔑ろにされた挙句、婚姻の条件すら無視するようなこの国の行動に怒り心頭のようだ。
「も、申し訳···」
「私は何故、ときいているのだが」
お父様は王太子の言葉を遮るように言った。
もはや、何を言っても怒りを買うことが分かっているようでそれ以上何も言えないようだった。
知られなければ良いと思っていたのかもしれないが、国を統治していくものとして子供の思考のようで愚かすぎる考えだ。
基本的に教会は政治に介入することはなく、大陸にある教会領は各国から干渉を受けることの無い、独立領である。
また、カティーラ教の教えを簡単に言えば、清貧を尊び、貞潔であることが良いとされている。
そのため、婚姻に関する法では一夫一妻制を採用している国がほとんどであり、王侯貴族も例外ではない。
その他にも、平民では簡略化されてきた宗教的行事に関しても事細かく決められていることが多々ある。
婚姻の儀もそのひとつだ。
昔は貞潔さを示しために、3ヶ月にわたり周囲から異性を遠ざけ、禊を行うことが慣例であった。
しかし、現在では国政や生活に影響が出てしまうとして王族の場合では7日間を禊する期間として婚姻の儀に望む。
にも関わらず。
王太子は期間中は知らないが、よりにもよって儀式直前に不貞とみなされる行いをしたわけである。
「儀式を軽んじているとしか思えませんわ。蛙の子は蛙ということですね」
「その通りだな、ナルシア」
お爺様の肯定の言葉で、あらと思う。
「口に出してましたか?」
「しっかりとな。しかし、事実であるから問題なかろう」
ヨーレイア国の方々はミリア様以外は何を言われたが分かっているようで、怒りだか羞恥だかで顔色が赤かったり青かったりしている。
当のミリア様は怪訝な顔をしており、ヨーレイア国王に「何のことですか?」などと聞いている。余程おめでたい頭の中身をしているとみえるが、指摘すると長くなりそうなのであえて無視をする。
「それで、王太子殿下。何故かな?」
お父様はにこやかに問うが、目の奥は冷たく光っている。
お父様は1人の父親である前に国王であるために非常に厳しいお方だが、子供を惜しみなく愛してくださっている。婚姻の儀の前に入国し、王宮住まいをしている間の事も伝えているので娘を蔑ろにされた挙句、婚姻の条件すら無視するようなこの国の行動に怒り心頭のようだ。
「も、申し訳···」
「私は何故、ときいているのだが」
お父様は王太子の言葉を遮るように言った。
もはや、何を言っても怒りを買うことが分かっているようでそれ以上何も言えないようだった。
知られなければ良いと思っていたのかもしれないが、国を統治していくものとして子供の思考のようで愚かすぎる考えだ。
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