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今回の騒動の発端はわたくしの行動にあるようにミリア様には言われたが、そもそもが王太子のせいであることは関係者に伝えたことがすべてだ。
おそらく、控えの間に進行の確認としていたはずの王太子の側近や婚姻の儀が執り行われる予定だった聖堂への入場をしていなかった王太子には伝わっていなかったのだろうが。
「そもそも、わたくしが予定の時刻になっても姿を現さなかった原因は王太子殿下にあるのですが。王太子殿下にはお心当たりはございませんか?」
視線は王太子に集まり、王太子は一層顔色を悪くする。当事者が1人たりないが、どうとでもなる事だ。
王太子の言葉を待つものの、当人は口を開いたり閉じたりするばかりで音は出てこない。
「ウィリアル、何も悪いことをしていないから何も言えないのね!」
予想はしていたが、自分の都合の良いようにしか考えることができないミリア様には頭が痛くなる。王太子の顔色は悪いし、よくよく見れば側近も冷や汗をかいているようだ。知っていて見逃したのか。
「でしたら、わたくしが諸悪の根源とでも?」
「あら、そうでなかったら何が原因なの?それに、王妃である私を立たせたままでその女が座ってるなんておかしくないかしら」
セレン様を指さして、ミリア様は言った。
自分勝手が服を着て歩いているような女を尊敬しようとも思わないので、座ることも特に促さなかった。
それに、セレン様が座ったことでこの部屋のソファは埋まっている。
「現在、この部屋の主たるわたくしが客人と認めた方だけにお座りいただいただけですわ。それに、今は王太子殿下にお伺いしているのです」
暗にミリア様には黙っていろと、王太子にはさっさと答えろと言っているのだが、一向に話しは進まず、思わず淑女らしくもないのに溜息をついてしまった。
「ナルシアが言っても答えないなら、私が聞こうか」
「お父様」
「何故、ウィリアル王太子殿下は婚姻の儀前に女性と熱く抱擁を交わし、口付けをしていたのかな?」
聖堂にいた参列者の方々には内容をオブラート多めに包んで、問題が発生したために婚姻の儀は取りやめとすると伝えてある。
では、何故お父様がオブラートに包まれたはずの内容を知っているかといえば、その現場を見ていたからである。
お父様の口調は柔らかく聞こえるが、怒りと苛立ちが隠しきれずに滲み出ていた。
「それは···」
ようやく王太子が言葉を発するものの、弁明を聞きたくないとばかりにお父様は畳み掛ける。
「まあ、何を言おうと事実は変わらない。仮に私やナルシア、イオニスが口裏を合わせて貶めようと。等と言われたとしても、私らだけでなくハイデル皇帝陛下や大司教様も見ていたよ。随分と熱く、長く楽しんでいたようだからね」
お父様は熱く、長くを強調して言った。
おそらく、控えの間に進行の確認としていたはずの王太子の側近や婚姻の儀が執り行われる予定だった聖堂への入場をしていなかった王太子には伝わっていなかったのだろうが。
「そもそも、わたくしが予定の時刻になっても姿を現さなかった原因は王太子殿下にあるのですが。王太子殿下にはお心当たりはございませんか?」
視線は王太子に集まり、王太子は一層顔色を悪くする。当事者が1人たりないが、どうとでもなる事だ。
王太子の言葉を待つものの、当人は口を開いたり閉じたりするばかりで音は出てこない。
「ウィリアル、何も悪いことをしていないから何も言えないのね!」
予想はしていたが、自分の都合の良いようにしか考えることができないミリア様には頭が痛くなる。王太子の顔色は悪いし、よくよく見れば側近も冷や汗をかいているようだ。知っていて見逃したのか。
「でしたら、わたくしが諸悪の根源とでも?」
「あら、そうでなかったら何が原因なの?それに、王妃である私を立たせたままでその女が座ってるなんておかしくないかしら」
セレン様を指さして、ミリア様は言った。
自分勝手が服を着て歩いているような女を尊敬しようとも思わないので、座ることも特に促さなかった。
それに、セレン様が座ったことでこの部屋のソファは埋まっている。
「現在、この部屋の主たるわたくしが客人と認めた方だけにお座りいただいただけですわ。それに、今は王太子殿下にお伺いしているのです」
暗にミリア様には黙っていろと、王太子にはさっさと答えろと言っているのだが、一向に話しは進まず、思わず淑女らしくもないのに溜息をついてしまった。
「ナルシアが言っても答えないなら、私が聞こうか」
「お父様」
「何故、ウィリアル王太子殿下は婚姻の儀前に女性と熱く抱擁を交わし、口付けをしていたのかな?」
聖堂にいた参列者の方々には内容をオブラート多めに包んで、問題が発生したために婚姻の儀は取りやめとすると伝えてある。
では、何故お父様がオブラートに包まれたはずの内容を知っているかといえば、その現場を見ていたからである。
お父様の口調は柔らかく聞こえるが、怒りと苛立ちが隠しきれずに滲み出ていた。
「それは···」
ようやく王太子が言葉を発するものの、弁明を聞きたくないとばかりにお父様は畳み掛ける。
「まあ、何を言おうと事実は変わらない。仮に私やナルシア、イオニスが口裏を合わせて貶めようと。等と言われたとしても、私らだけでなくハイデル皇帝陛下や大司教様も見ていたよ。随分と熱く、長く楽しんでいたようだからね」
お父様は熱く、長くを強調して言った。
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