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結婚したい相手
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「私には以前から交際している女性がいます。彼女を妻にしたいのです」
夕食後に父親の執務室を訪れたジョージ・グレイキャットは、書類仕事を続ける父にそう用件を告げた。
「あの平民の女か?」
「――っ! はい…」
「馬鹿を言うな。却下だ」
平民の恋人と結婚したいと告げたジョージに対する父の返答は、非常に冷ややかなものだった。
ジョージが雑貨屋で働く平民の娘と懇意にしていることは、既に父の耳に入っていた。
彼が身分を隠して付き合っていることもだ。
父が知っている事に、ジョージは驚いた。
「何故ですか? 私には婚約者はいませんし、我が家の経済状況も悪くない。政略結婚をする理由はないはずです」
「だからどうした。急いで他家の令嬢と婚約をする必要性は確かにないが、わざわざ平民の女を娶る理由もないだろう」
「――っ、私は愛する者を妻に迎えたいのです!」
「結婚し妻となった者を愛するのだ。愛する者を妻にすることだけが結婚ではない」
「それは父上が政略結婚だったからでしょう! 私には愛する者が既にいるのです!彼女以外の女性を伴侶にするつもりはありません!」
ジョージは感情をあらわにして訴えた。
父はそんな息子の様子を冷ややかな目で一瞥する。
「お前はいずれ伯爵位を継ぐつもりなのだろう? その平民の女を妻にすることで、我が伯爵家にどのような利益があるのだ?」
「…それは…」
ジョージには答えられなかった。
彼個人にとってのメリットはある。
愛する人と結ばれること。こんな素敵な事はない。
だが家としてのメリットは皆無だ。
大商会の娘ならばまだしも、商才も、学力も、人脈も何一つ持たない平民の娘なのだから。
「この際メリットはなくても良い。だがデメリットがあるのなら結婚は許可できない」
「デメリット…ですか…」
「その平民の女は貴族の礼儀や作法を知っているのか。来客時の対応や、他家に失礼がないように手紙のやりとりはできるのか。
国内貴族の名前と顔をすべて覚えられるのか。伯爵家の者として相応しい品を目利きする力はあるか、さらに身につけ着こなすことはできるか?」
「……」
出来ないだろうと思った。
彼女は貴族社会とは無縁の生活を送る、ごくごく普通の少女だから。
「お前1人の問題なら誰を娶ろうが構わん。だが、お前が娶る者はいずれグレイキャット伯爵夫人となるのだ。
家を潰す可能性があるのなら、私には許可を出すことは出来ん」
「…」
「ジョージ、お前はグレイキャット伯爵家当主となるつもりなのだろう? 貴族として生きるのならば平民との結婚は諦めて、政略結婚を受け入れるんだ」
「…」
「話はそれだけか? 用がないなら部屋に戻って寝なさい」
「――はい…」
トボトボと部屋に逃げ帰ったジョージは、そのままベッドに潜り込んだ。
「――くそっ!」
無性に悔しくて、クッションに拳をたたき込んだ。
夕食後に父親の執務室を訪れたジョージ・グレイキャットは、書類仕事を続ける父にそう用件を告げた。
「あの平民の女か?」
「――っ! はい…」
「馬鹿を言うな。却下だ」
平民の恋人と結婚したいと告げたジョージに対する父の返答は、非常に冷ややかなものだった。
ジョージが雑貨屋で働く平民の娘と懇意にしていることは、既に父の耳に入っていた。
彼が身分を隠して付き合っていることもだ。
父が知っている事に、ジョージは驚いた。
「何故ですか? 私には婚約者はいませんし、我が家の経済状況も悪くない。政略結婚をする理由はないはずです」
「だからどうした。急いで他家の令嬢と婚約をする必要性は確かにないが、わざわざ平民の女を娶る理由もないだろう」
「――っ、私は愛する者を妻に迎えたいのです!」
「結婚し妻となった者を愛するのだ。愛する者を妻にすることだけが結婚ではない」
「それは父上が政略結婚だったからでしょう! 私には愛する者が既にいるのです!彼女以外の女性を伴侶にするつもりはありません!」
ジョージは感情をあらわにして訴えた。
父はそんな息子の様子を冷ややかな目で一瞥する。
「お前はいずれ伯爵位を継ぐつもりなのだろう? その平民の女を妻にすることで、我が伯爵家にどのような利益があるのだ?」
「…それは…」
ジョージには答えられなかった。
彼個人にとってのメリットはある。
愛する人と結ばれること。こんな素敵な事はない。
だが家としてのメリットは皆無だ。
大商会の娘ならばまだしも、商才も、学力も、人脈も何一つ持たない平民の娘なのだから。
「この際メリットはなくても良い。だがデメリットがあるのなら結婚は許可できない」
「デメリット…ですか…」
「その平民の女は貴族の礼儀や作法を知っているのか。来客時の対応や、他家に失礼がないように手紙のやりとりはできるのか。
国内貴族の名前と顔をすべて覚えられるのか。伯爵家の者として相応しい品を目利きする力はあるか、さらに身につけ着こなすことはできるか?」
「……」
出来ないだろうと思った。
彼女は貴族社会とは無縁の生活を送る、ごくごく普通の少女だから。
「お前1人の問題なら誰を娶ろうが構わん。だが、お前が娶る者はいずれグレイキャット伯爵夫人となるのだ。
家を潰す可能性があるのなら、私には許可を出すことは出来ん」
「…」
「ジョージ、お前はグレイキャット伯爵家当主となるつもりなのだろう? 貴族として生きるのならば平民との結婚は諦めて、政略結婚を受け入れるんだ」
「…」
「話はそれだけか? 用がないなら部屋に戻って寝なさい」
「――はい…」
トボトボと部屋に逃げ帰ったジョージは、そのままベッドに潜り込んだ。
「――くそっ!」
無性に悔しくて、クッションに拳をたたき込んだ。
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コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
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