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真相
始まりの乙女
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明日も更新します。
◆
ピンク色した腰まで届きそうな柔らかい髪、髪色と同じ色の大きな瞳とまつ毛も長く誰もが羨む様な健康的で絹のようにきめ細かい肌にほっそりした鼻、ふっくらとした可愛らしい薔薇色の唇、
少女は美の女神が祝福を送ったと言っても過言ではない程整った顔をした少女だ。
実際他の国の貴族に是非と婚姻を求められたが、少女は姉と一緒じゃないと嫌だと言うと、諦めきれない貴族は何としても少女を手に入れようとした。拐われる1歩手前で精霊に助けられた。少女は意思を持った精霊に人類史上初めて精霊の加護を贈られた。だがこの事を言っても信じてくれない、他の人に白い玉の形をした精霊は見えないらしい、姉だけは信じてくれた。
少女が願ったのは、少女のたった1人だけの家族であり大好きな姉と一緒に自分も居たい、
その日から精霊の協力の元、しつこい貴族から姉や近所の人々が少女を庇い貴族を追い返したが、諦めてないのかたまに姿を見た時に、ご近所さん達が少女を庇い匿ってくれた。出かけていた姉が妹が拐わそうになったと聞き慌てて家に帰り、匿ってくれたお礼をすると言っても、匿ってくれた人々は両親からすでに貰っていると言ってお礼を貰ってくれない、
少しでも役に立ちたいと姉と相談をした結果だった。
少女が歌うと精霊が来る。精霊が止まった作物に魔力を与え、作物は与えられた魔力で大きく育つ、少女は畑に行っては歌い作物の豊作を願った。
少女は姉に依存し姉もそんな妹をとても可愛がっていた。姉妹は2人中睦まじく暮らしていたが、姉は出かけると言ったきりここ数ヶ月行方が知れず、心配した少女は眠れない日々を送り日々神に祈っていた。
「神様お姉ちゃんが家に帰って来ますように。私お姉ちゃんがいないと何も出来ないよ。お願い...お願い神様、私のお姉ちゃんを探して、お願いを聞いてくれたら私なんでもするわ、」
その時白い精霊がフワリと空高く飛んで行った。少女はそれを眺めながら、姉がいなくなってからの事を考えていた。
姉が居なくなって最初の頃は近所の人が探すのを手伝ってくれていたが、乙女の家族やご近所も裕福でもなく生活に厳しい状況、何かあれば教えるからと手を引いて言う、少女はお願いします。と言うが自分を拐う貴族がまだいるかもしれない、そんな状況で頻繁に外には出られなかった。隣に住むクレアさんはよく少女を気にかけてくれた。いつも料理をおすそ分けしてくれる人であり、1人になった少女の相談を聞いてくれ、第2の母と少女は心の中だけで思っている。口に出しては迷惑になるかもしれない、そう思ったからである。言ったら言ったでクレアさんは諸手を挙げて大歓迎されるのだが、多感な時期の少女の口から出ることは無い、
姉がいなくなってしばらくたった頃、バタバタとクレアさんが少女の家に飛び込み慌ててドアを閉め、ドアを背に当て息を切らせ少女が家にいるのを見てホッとしたらしい、その場で座り込んだ。
だが何があったのだろう?少女はその慌てぶりに驚きクレアさんに近づいた時、身なりのいい人物が窓の外から見えた。咄嗟だったのだろう、力強くクレアさんに抱きしめられ庇われた。
「また来た。このままだと捕まってしまう、どこかに隠れて、」
「クレアさん、迷惑ばかりごめんなさい」
「いいんだ、あんたの両親には沢山の恩がある。あの貴族も本当にしつこいね、また畑で歌っておくれあんたが畑に来てから作物が沢山実ったんだ。...ほら来た行きなさい、」
「ありがとう、クレアさん」
少女は自分の部屋のベッドの横に立つと、精霊にお願いをしてベッドを動かしてもらう、ベッドの下に秘密の入口がある。そこを開け階段を下り精霊にまたベッドを戻して欲しいとお願いをして先に進んだ。
「この先どこに繋がってるんだろ?」
道が悪く暗い地下道をそのまま歩くには怖すぎて、壁に手を添えゆっくり歩く、
遠くに小さな陽の光が見え少女はホッとした。その光の下まで行くと、どうやら古い井戸の様だ。なぜ家と繋がってたのか疑問に思いながら、少女は井戸の横にあったロープを登り何とか外に出た。森の中だというのに暗くはない、丁度真上に上ったお日様が木々の間から木漏れ日を零す。辺りがキラキラ光り目がとてもチカチカする。少女は目の前にある池を見て驚く、白い砂と透明度が高い水面、水の中を泳ぐ魚や池の底の石まで綺麗に見える。少女は両親に言われていた事を思い出した。
『いい、家の横にある森には絶対に入ってはダメよ、お姉ちゃんの言う事をよく聞いて行動しなさい、』
お母さんは料理上手で優しいが、超がつくほど心配性だった。私の長い髪をひとつに結んでくれ、寝る前には物語を聞かせてくれた。お父さんはお母さんが心配しすぎると私との間を持ってくれたし、心配し過ぎればお母さんに対してキチンと言ってくれた。その両親からダメだと言われた事は少女は守っている。
『あの森は昔から人がいなくなるんだ。いいか絶対に行ってはいけない、』
両親やご近所さん達は、森に入ったらどうなるのか、怖い話として代々子供達に教え伝えていた。現にお爺さんやお婆さんも親から聞かされた。と言っていたから間違いはない、
この森に近づく者は神が連れ去ってしまい二度とかえってこない、だから近づいてはいけない、と口を酸っぱくして教えられていた。
街の子供はもちろん大人でさえ近づく事もないし、日を改めてと言いながら少女を狙う貴族も、この森の事を知っているから来ない、
「少し怖いけど、小鳥もいるし大丈夫よね?それにここなら誰にも迷惑をかけずいられるもの、ここに花の種を撒いて毎日様子を見に来よう、1人で家の中にいてもつまらないもの、」
こうして少女は次の日から種を持ってきては、せっせと植えていった。花が咲いたら種が出来るように花同士を擦り合わせる。花が咲くと少女のココロに余裕が出来てきたのか、花に語り掛け思い出して笑う毎日、笑ったのはいつぶりだろう、今は夏前だからか今日は少し暑い、そう感じた少女はまだ冷たい湖に脚をつけ土手に座るとそのまま寝転んだ。お姉ちゃんがいたら怒られるが、怒ってくれるお姉ちゃんはいない、
少女は涙を誤魔化す為、優しく暖かい日差しの中、クレアさんに持っていこうとした花を手に取った。親指と人差し指でクルクル回すと、お姉ちゃんの髪色と同じオーキッド色した花がクルクル回る。
街がまだ栄えていた頃、街はお母さんが育てた花で埋め尽くされていた。少女の母親は色々な場所から花の種を集めては少しづつ街に植えていった。それが功を奏したのか花の街として栄えていた。
今咲く花は家族が残してくれたもの、姉がいなくなる前から少女は種を守っていた。
だが今は戦火に焼かれ残ったのは少しの種と姉妹だけ、両親は国の争いの中姉妹を庇い空に帰ってしまった。
「お姉ちゃんどこにいるの?お姉ちゃんがいないと淋しいよ。1人でご飯食べるのも嫌、1人で寝るのも嫌、でもでもお風呂は1人で入れる様になったし、ご飯も作れるようになった。」
少女はいつもの様に花に語りかけていたが、今日は違った少女の真上から何かが降りて来る。
少女は眩しさで見えず手で影を作り空を見る。男が降りようとした場所を確認して花を庇う仕草をした。初めてここに来てから数ヶ月が経っていた為、池の周りは花が1面に咲き誇っており、少女が1人庇っても庇いきれない状況、それでも少女は花を守りたかった。踏んで欲しくなくて涙目で男を睨んだ。
「あなたは誰?私の大切な花を踏まないで!」
「分かりました。これでいいでしょう?」
黒い翼の男は少女の美しさに地上に降り立とうとするが、翼で花が散るだけで泣きそうになる少女を見てパチンと指を鳴らす。そして地上の花を踏まないように魔法で移動させ地面に足を着けた。魔法を余り見たことの無い少女は目を白黒させ男を見る。
「これはこれは綺麗なお嬢さんどうなされましたか?先程聞こえましたが、もしやお姉さんをお探しですか?」
少女はコクリと頷く、男は自分に翼がある事を驚かないのか?と疑問を持ったが、自分好みの美しい少女と話す口実は出来たと笑う、
「お姉さんの特徴を教えてください、見ての通り僕には翼があるんだ。だから飛んで探してあげるよ、」
「本当に?私…お姉ちゃんが居なくなって毎日がとても寂しかった。本当にあなたが探してくれるの?」
少女は瞳を潤ませ上目遣いで男を見る。男は黒い翼を少女に見せ得意気に笑う、
「えぇ僕が探しますよ。僕は魔法が得意なんだ。お嬢さんは毎日ここにいるのかな?
それにもしお姉さんを見つけたらここに連れてあげる。私の名前はラグエル、たまたまここを通りがかっただけの旅人です。綺麗なお嬢さんあなたのお名前は?」
「私の名前はノア、お願いラグエルさん。ミクお姉ちゃんを探して、もし見つけてくれたら私なんでも言う事を聞くわ、たった1人の家族なの。」
「ノアさんいいでしょう……契約は完了しました。では僕はお姉さんを探しましょう。」
ラグエルは深い笑みを浮かべ少女を見ると、自身の羽根を1枚取り捜索の魔法を掛けた。
◆
「ふぅ……。物語りを書くのってとても大変だって今わかった。私はやっぱり読む方が好きだな。」
分厚いダイアリーをパタンと閉じた。本来なら1日の出来事を書くことに使う物だが、ミユキは本の中でミクの事を書いていた。こうして物語を書いている事でいつでも姉さんを思い出させ、亡くなった事を忘れていられたから、
書いた物語は今流行りの悪役令嬢物、空へ上り天使になった姉さんは、ひょんな事から気がついたら前世自分が数回していた乙女ゲームの登場人物になっている。幼少時から髪ドリルが激しく、性格もキツイ侯爵令イプシロントゥカーナに転生している。悪役令嬢にしたのはヒロインは余り顔が出ないのと最初から王太子の婚約者だからだ。それに生前ミク姉さんは小学生の男の子がするようなイタズラばかりする悪役令嬢をとても同情していた。ミク姉さんは余りゲームをしていない、悪役令嬢の出現率はヒロインよりは顔の出現率より多いのもポイントだ。
ミユキ達としていた乙女ゲーム、乙女の祈りと誓い~空翼の乙女~ のヒロインを虐める悪役令嬢イプシロントゥカーナとして転生をする。姉さんが1番好きだったアウラ王太子とラブラブで結婚する。アウラはトゥカーナ一筋、これにしかならない、ヒロインに会っても何とも思わない設定にしよう!
「これだけだと物語としてちっとも面白くない、人生山あり谷ありだし、もう少しあれこれ追加しよ、ミク姉さんには絶対に幸せになってもらいたい、たとえ物語の中だけでも、」
姉さんを思い出すと今でも泣ける。
モテモテ人生なんてどうだろう?そうだ!限定ルートの祈りの乙女、悪役令嬢に翼が生えたら無敵じゃない?
色々考えた末、ふと窓から空を見上げる。秋空に相応しく空は高く雲は1つもない、ミユキは窓辺から真摯に祈る。もし輪廻転生というものがあるなら、次の人生は姉さんがただ楽しく生きて欲しい、
「絶対物語の中で幸せにしてみせる!ミク姉さん!」
◆
ピンク色した腰まで届きそうな柔らかい髪、髪色と同じ色の大きな瞳とまつ毛も長く誰もが羨む様な健康的で絹のようにきめ細かい肌にほっそりした鼻、ふっくらとした可愛らしい薔薇色の唇、
少女は美の女神が祝福を送ったと言っても過言ではない程整った顔をした少女だ。
実際他の国の貴族に是非と婚姻を求められたが、少女は姉と一緒じゃないと嫌だと言うと、諦めきれない貴族は何としても少女を手に入れようとした。拐われる1歩手前で精霊に助けられた。少女は意思を持った精霊に人類史上初めて精霊の加護を贈られた。だがこの事を言っても信じてくれない、他の人に白い玉の形をした精霊は見えないらしい、姉だけは信じてくれた。
少女が願ったのは、少女のたった1人だけの家族であり大好きな姉と一緒に自分も居たい、
その日から精霊の協力の元、しつこい貴族から姉や近所の人々が少女を庇い貴族を追い返したが、諦めてないのかたまに姿を見た時に、ご近所さん達が少女を庇い匿ってくれた。出かけていた姉が妹が拐わそうになったと聞き慌てて家に帰り、匿ってくれたお礼をすると言っても、匿ってくれた人々は両親からすでに貰っていると言ってお礼を貰ってくれない、
少しでも役に立ちたいと姉と相談をした結果だった。
少女が歌うと精霊が来る。精霊が止まった作物に魔力を与え、作物は与えられた魔力で大きく育つ、少女は畑に行っては歌い作物の豊作を願った。
少女は姉に依存し姉もそんな妹をとても可愛がっていた。姉妹は2人中睦まじく暮らしていたが、姉は出かけると言ったきりここ数ヶ月行方が知れず、心配した少女は眠れない日々を送り日々神に祈っていた。
「神様お姉ちゃんが家に帰って来ますように。私お姉ちゃんがいないと何も出来ないよ。お願い...お願い神様、私のお姉ちゃんを探して、お願いを聞いてくれたら私なんでもするわ、」
その時白い精霊がフワリと空高く飛んで行った。少女はそれを眺めながら、姉がいなくなってからの事を考えていた。
姉が居なくなって最初の頃は近所の人が探すのを手伝ってくれていたが、乙女の家族やご近所も裕福でもなく生活に厳しい状況、何かあれば教えるからと手を引いて言う、少女はお願いします。と言うが自分を拐う貴族がまだいるかもしれない、そんな状況で頻繁に外には出られなかった。隣に住むクレアさんはよく少女を気にかけてくれた。いつも料理をおすそ分けしてくれる人であり、1人になった少女の相談を聞いてくれ、第2の母と少女は心の中だけで思っている。口に出しては迷惑になるかもしれない、そう思ったからである。言ったら言ったでクレアさんは諸手を挙げて大歓迎されるのだが、多感な時期の少女の口から出ることは無い、
姉がいなくなってしばらくたった頃、バタバタとクレアさんが少女の家に飛び込み慌ててドアを閉め、ドアを背に当て息を切らせ少女が家にいるのを見てホッとしたらしい、その場で座り込んだ。
だが何があったのだろう?少女はその慌てぶりに驚きクレアさんに近づいた時、身なりのいい人物が窓の外から見えた。咄嗟だったのだろう、力強くクレアさんに抱きしめられ庇われた。
「また来た。このままだと捕まってしまう、どこかに隠れて、」
「クレアさん、迷惑ばかりごめんなさい」
「いいんだ、あんたの両親には沢山の恩がある。あの貴族も本当にしつこいね、また畑で歌っておくれあんたが畑に来てから作物が沢山実ったんだ。...ほら来た行きなさい、」
「ありがとう、クレアさん」
少女は自分の部屋のベッドの横に立つと、精霊にお願いをしてベッドを動かしてもらう、ベッドの下に秘密の入口がある。そこを開け階段を下り精霊にまたベッドを戻して欲しいとお願いをして先に進んだ。
「この先どこに繋がってるんだろ?」
道が悪く暗い地下道をそのまま歩くには怖すぎて、壁に手を添えゆっくり歩く、
遠くに小さな陽の光が見え少女はホッとした。その光の下まで行くと、どうやら古い井戸の様だ。なぜ家と繋がってたのか疑問に思いながら、少女は井戸の横にあったロープを登り何とか外に出た。森の中だというのに暗くはない、丁度真上に上ったお日様が木々の間から木漏れ日を零す。辺りがキラキラ光り目がとてもチカチカする。少女は目の前にある池を見て驚く、白い砂と透明度が高い水面、水の中を泳ぐ魚や池の底の石まで綺麗に見える。少女は両親に言われていた事を思い出した。
『いい、家の横にある森には絶対に入ってはダメよ、お姉ちゃんの言う事をよく聞いて行動しなさい、』
お母さんは料理上手で優しいが、超がつくほど心配性だった。私の長い髪をひとつに結んでくれ、寝る前には物語を聞かせてくれた。お父さんはお母さんが心配しすぎると私との間を持ってくれたし、心配し過ぎればお母さんに対してキチンと言ってくれた。その両親からダメだと言われた事は少女は守っている。
『あの森は昔から人がいなくなるんだ。いいか絶対に行ってはいけない、』
両親やご近所さん達は、森に入ったらどうなるのか、怖い話として代々子供達に教え伝えていた。現にお爺さんやお婆さんも親から聞かされた。と言っていたから間違いはない、
この森に近づく者は神が連れ去ってしまい二度とかえってこない、だから近づいてはいけない、と口を酸っぱくして教えられていた。
街の子供はもちろん大人でさえ近づく事もないし、日を改めてと言いながら少女を狙う貴族も、この森の事を知っているから来ない、
「少し怖いけど、小鳥もいるし大丈夫よね?それにここなら誰にも迷惑をかけずいられるもの、ここに花の種を撒いて毎日様子を見に来よう、1人で家の中にいてもつまらないもの、」
こうして少女は次の日から種を持ってきては、せっせと植えていった。花が咲いたら種が出来るように花同士を擦り合わせる。花が咲くと少女のココロに余裕が出来てきたのか、花に語り掛け思い出して笑う毎日、笑ったのはいつぶりだろう、今は夏前だからか今日は少し暑い、そう感じた少女はまだ冷たい湖に脚をつけ土手に座るとそのまま寝転んだ。お姉ちゃんがいたら怒られるが、怒ってくれるお姉ちゃんはいない、
少女は涙を誤魔化す為、優しく暖かい日差しの中、クレアさんに持っていこうとした花を手に取った。親指と人差し指でクルクル回すと、お姉ちゃんの髪色と同じオーキッド色した花がクルクル回る。
街がまだ栄えていた頃、街はお母さんが育てた花で埋め尽くされていた。少女の母親は色々な場所から花の種を集めては少しづつ街に植えていった。それが功を奏したのか花の街として栄えていた。
今咲く花は家族が残してくれたもの、姉がいなくなる前から少女は種を守っていた。
だが今は戦火に焼かれ残ったのは少しの種と姉妹だけ、両親は国の争いの中姉妹を庇い空に帰ってしまった。
「お姉ちゃんどこにいるの?お姉ちゃんがいないと淋しいよ。1人でご飯食べるのも嫌、1人で寝るのも嫌、でもでもお風呂は1人で入れる様になったし、ご飯も作れるようになった。」
少女はいつもの様に花に語りかけていたが、今日は違った少女の真上から何かが降りて来る。
少女は眩しさで見えず手で影を作り空を見る。男が降りようとした場所を確認して花を庇う仕草をした。初めてここに来てから数ヶ月が経っていた為、池の周りは花が1面に咲き誇っており、少女が1人庇っても庇いきれない状況、それでも少女は花を守りたかった。踏んで欲しくなくて涙目で男を睨んだ。
「あなたは誰?私の大切な花を踏まないで!」
「分かりました。これでいいでしょう?」
黒い翼の男は少女の美しさに地上に降り立とうとするが、翼で花が散るだけで泣きそうになる少女を見てパチンと指を鳴らす。そして地上の花を踏まないように魔法で移動させ地面に足を着けた。魔法を余り見たことの無い少女は目を白黒させ男を見る。
「これはこれは綺麗なお嬢さんどうなされましたか?先程聞こえましたが、もしやお姉さんをお探しですか?」
少女はコクリと頷く、男は自分に翼がある事を驚かないのか?と疑問を持ったが、自分好みの美しい少女と話す口実は出来たと笑う、
「お姉さんの特徴を教えてください、見ての通り僕には翼があるんだ。だから飛んで探してあげるよ、」
「本当に?私…お姉ちゃんが居なくなって毎日がとても寂しかった。本当にあなたが探してくれるの?」
少女は瞳を潤ませ上目遣いで男を見る。男は黒い翼を少女に見せ得意気に笑う、
「えぇ僕が探しますよ。僕は魔法が得意なんだ。お嬢さんは毎日ここにいるのかな?
それにもしお姉さんを見つけたらここに連れてあげる。私の名前はラグエル、たまたまここを通りがかっただけの旅人です。綺麗なお嬢さんあなたのお名前は?」
「私の名前はノア、お願いラグエルさん。ミクお姉ちゃんを探して、もし見つけてくれたら私なんでも言う事を聞くわ、たった1人の家族なの。」
「ノアさんいいでしょう……契約は完了しました。では僕はお姉さんを探しましょう。」
ラグエルは深い笑みを浮かべ少女を見ると、自身の羽根を1枚取り捜索の魔法を掛けた。
◆
「ふぅ……。物語りを書くのってとても大変だって今わかった。私はやっぱり読む方が好きだな。」
分厚いダイアリーをパタンと閉じた。本来なら1日の出来事を書くことに使う物だが、ミユキは本の中でミクの事を書いていた。こうして物語を書いている事でいつでも姉さんを思い出させ、亡くなった事を忘れていられたから、
書いた物語は今流行りの悪役令嬢物、空へ上り天使になった姉さんは、ひょんな事から気がついたら前世自分が数回していた乙女ゲームの登場人物になっている。幼少時から髪ドリルが激しく、性格もキツイ侯爵令イプシロントゥカーナに転生している。悪役令嬢にしたのはヒロインは余り顔が出ないのと最初から王太子の婚約者だからだ。それに生前ミク姉さんは小学生の男の子がするようなイタズラばかりする悪役令嬢をとても同情していた。ミク姉さんは余りゲームをしていない、悪役令嬢の出現率はヒロインよりは顔の出現率より多いのもポイントだ。
ミユキ達としていた乙女ゲーム、乙女の祈りと誓い~空翼の乙女~ のヒロインを虐める悪役令嬢イプシロントゥカーナとして転生をする。姉さんが1番好きだったアウラ王太子とラブラブで結婚する。アウラはトゥカーナ一筋、これにしかならない、ヒロインに会っても何とも思わない設定にしよう!
「これだけだと物語としてちっとも面白くない、人生山あり谷ありだし、もう少しあれこれ追加しよ、ミク姉さんには絶対に幸せになってもらいたい、たとえ物語の中だけでも、」
姉さんを思い出すと今でも泣ける。
モテモテ人生なんてどうだろう?そうだ!限定ルートの祈りの乙女、悪役令嬢に翼が生えたら無敵じゃない?
色々考えた末、ふと窓から空を見上げる。秋空に相応しく空は高く雲は1つもない、ミユキは窓辺から真摯に祈る。もし輪廻転生というものがあるなら、次の人生は姉さんがただ楽しく生きて欲しい、
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