120 / 175
間話
ハロウィン後半
しおりを挟む
◆
「ちょっと!なんで私の所に来るのよー」
そういって口をとんがらせているのはミラ、水の精霊王でとても自由な人だ。とヒドゥリーは美しいカボチャの飾り付けを見て、優雅にお茶を飲むとトランプの行方を見守る。
ミラの隣に座っているのはミクロン、通称みっちゃんと呼ばれている。ミクロンの横はルピー、この2人は互いに何かシンパシーを感じたらしい、この2人は出会ってから小さな声でお喋りしたり笑いあったりしている、傍から見ればおままごとみたいで微笑ましい、ククは膝の上に居てみっちゃんからクッキーを貰い食べている。
「ル…ルピーって不思議な感じする。お…美味しいよこれ食べる?」
「たべましゅ。ミクちゃんもこれたべましゅ?」
「た…たべる。お…美味しい」
可愛らしいやり取りを見ていると、姉様は急にモジモジして私の口元にお菓子を持ってきた。昔はこうして食べさせて貰っていた。
昔を思い出したのかな?姉様に小さなクッキーを食べさせてもらうと、私もお返しにクッキーを姉様の口元に持っていった。それを恥ずかしそうに食べる姉様、クッキーは小さいのにいつまでもモグモグと口を動かしている。少し不安になった頃紅茶を飲み食べ終わったらしい、背中に背負っていたうさぎは姉様の腕の中にある、それをギュッと抱きしめた。
「トゥカーナが食べさせてくれるクッキー、とても美味しいわね。」
「お姉様、こちらもどうぞ」
「ちょっとー!なんでこっちを取らないのよ!こっち取りなさいよー!」
「まぁ!トゥカーナ優しいのね」
姉様にお菓子を食べさせていると時々ミラの叫び声が聞こえる。そうそう取らないのもあるあるだ。私もババの位置がなぜ分かるのか不思議でならない、
「ちょっとー!私精霊王なんですけどー!」
「さて何の願いを叶えてもらおうかな?」
ワルドが意地悪そうに笑うと、ミラは涙目で叫んだ。
「もー!なんでもう勝つ気なのよー!」
「ミラ様は楽しい人だから表情が分かりやすい、だからカモにされるのです。」
あ…アウラ様から本音がポロリと出た。
「ミラ様に頼みたい事があります。城に1つ井戸が欲しい、」
「地下に水源がなきゃ無理よぅー!それにお願いは常識の範囲内じゃないのー!」
ワルドは白々しく「あれ?こんな所に新作のお菓子が」と白い箱を出し中を見せる。中身はチョコレートのふわふわした焼き菓子、ミラもククも口の端から何とは言わないが出てる。
ミラとククはそれを聞き逃さなかった。ククはむしろ食いつき気味でワルドを見るが、ミラはちょこちょこと指を動かし手を伸ばし箱に触ろうとしているが、ワルドは箱に伸ばした手を軽く跳ね除けた。ミラは跳ね除けられた手を引っ込め、不自然に彼方を見て下手な口笛を鳴らす。
「ねえ新作欲しいー、ねぇ頂戴よぅ!」
「ミラ様ククも手伝うから!お菓子欲しい!」
ククはミラとワルドの間を行ったり来たりして、最終的にワルドの前で止まり手もみをしている。あのククが必死だ。いや、お菓子を貰うために必死だ。
「ワルドにいさま、ルピーのおねがいきいてくれるのでしゅか?」
「こ…これルピーのお願いなの?ク…ククお願い」
ククはルピーの前に来ると手を差し出した。ルピーは訳が分からず首を傾げる。
「調べてあげる、でも報酬はお菓子よ」
「トリトリでしゅか?」
「トリトリって何よ」
「それいうとおかしもらえるでしゅ。どーぞ」
「しんじられないミラ様からお菓子を貰う時は、お腹に絵を書いて踊ったりしてた。」
ククは両手を上げクネクネと踊る。その姿は腹踊りだ。それってこっちの世界にもあるんだ。とトゥカーナは想像して出来るだろうか?とお腹を押える。
「おなかだしゅとひえましゅ。おなかだいじでしゅ」
ルピーは真っ当な事を言うとククにお菓子を1つ手渡した。まぁそうだよね小さいのにしっかりしてるわ、とトゥカーナはお腹から手を離した。後ろから猫娘の視線が痛い気がするがきっと気のせいだ。
ミラは違うの!と喚いているが、ワルド達がミラを見る視線はとても冷たい、
ククはルピーの次は私のところに来て恐る恐る手を差し出した。
「トゥカーナトリトリ、」
「はいどーぞ。でもそれを言えるのは今日だけです。今日は特別な日ですからね。お菓子ばかりだと大きくなりません。これは私が作ったカボチャのスープですこちらもどーぞ。」
私はロッテに持ってきてもらった小さなカップに、カボチャのスープを入れる。手を付けていないティースプーンで、濃厚なミルクを入れると黄色と白が美しいスープになった。
ククはクッキーを貰うと空間ポッケに入れ、私から小さなカップに入ったスープを受け取り一気に飲んだ。
「甘くて美味しい!これお菓子じゃないの?」
「これは飾り付けされたカボチャの中身なので作りました。もったいないですからね。もう少しするとこの領地の畑にお芋が沢山実ります。そちらも甘いですよ。」
「クク様、こちらにも来てください」
ククはお芋の時にまた来たいと言っていた。お好きな時にどーぞ、と返事をしヒドゥリーとケーティの所に行きトリトリ!と言ってはお菓子を貰い食べている。
「負たー!ククが言っていたトリトリ!って何よぅー」
「勝った!ではミラ様こちらをどーぞ」
結局最終的にワルドが勝ったらしい、ワルドは白い箱をスっとミラの前に出した。
「ミラ様今日は特別な日らしいですので、こちらをどーぞ。あの件も宜しくお願いします。井戸が出来ましたら追加で渡しましょう。」
「本当に?お主も悪のよぅー」
悪代官と越後屋みたいになっている2人に、苦笑いしていると目の前に影が2つさす。ゴゴゴ…と聞こえてきそうな2人に私は視線を逸らした。
「いいだろう!カーナにお願いを聞いて貰うのは僕だ。」
えっ?私は慌てて立ち上がるとアウラに抱き寄せられる。私は恥ずかし過ぎて胸に顔を埋めていると、
「トゥカーナのお願いはこの私ですわ!」
次は姉様の方に引き寄せられる。姉様本当にそろそろ不敬罪がヤバイよヤバイよ。
頭の中で緑色のヘルメットを被った人が泣き叫んでいる。私も泣き叫びたい、ヤバイよヤバイよ!
「アウラ様もお姉様もどうしてこんな事に?」
「ババ抜きしましょう。」
「あぁ。望む所だ。」
なぜ2人で盛り上がっているのだろう?私に拒否権プリーズ!
「あの…私」
「トゥカーナババ抜き「カーナももちろん参加するよね?」わね?」
「はいもちろんです…。」
嫌だと言えなかった。変な所で意気投合する2人、私は何を掛けたのか聞きたいが、2人共ギラギラした視線だけを私にくれるだけ、逃げ出していいだろうか?
ロッテがスっと私のトランプをくれた。一番上を捲るとあの変な猫が足を組みこちらをじっと見て、訴えている「勝てばいい」と、猫娘から貰ったトランプを机の上に出しカードを配る。
「アウラ様は私が勝ったら仲良くして下さいね。」
「カーナのお願いならなんでも聞く、」
「お姉様はもう少し異性に優しくなって下さい。」
「私はトゥカーナには優しいわ、けどそれが条件なら優しくするわ、可愛い妹を虐めなければね。」
「ひぃ!」
ワルドが顔を青くして席を立ち上がった。姉様あの人も王族なのですが何をしたのですか?
「さぁ始めましょう。」
◆
あれよあれよとカードが無くなっていく、カードを広げた時には猫は居なくてホッとしていたら、来なくても良いのに猫はアウラ様の所からやって来た。
猫にデコピンをしてシャッフルをして、姉様にカードを差し出したが、やはり猫はここが好きらしい、そのまま居続け現在に至る。
「後3枚だね。カーナ」
「そうですねアウラ様。でもアウラ様とお姉様は残り2枚、お姉様のカードが揃えば私の負けです。」
「アウラ様、トゥカーナが困ってますわ、助けてあげるのが婚約者としての役割だと思います。」
「ボレアリス嬢、君はカーナに甘々なんだ。今が甘やかすチャンスだと僕は思うよ。」
「同情なら要らないです。お姉様早く選んでください」
高速でシャッフルを終えたカードを姉様の前に出す。姉様はカードを何度か吟味してから、ハートのエースを取っていった。次はアウラ様のカードを私が取るため姉様の勝ちと同時にアウラ様の勝ちも確定する。
やっぱり負けたと落ち込む私の手元からスっとジョーカーの猫が消え、アウラ様はカードをシャッフルして2枚のカードを私に差し出す。
「カーナ選んで僕か僕か、」
その言葉を聞いて私はポカンと口を開けた。それはどっちもアウラ様じゃないの?と、
「どういう意味ですか?アウラ様」
「さあ選んで」
アウラはカードを2枚こちらに差し出す。前にお父様が言っていた事を思い出す。汗や鼻や視線等、アウラ様が完璧過ぎて、カードがどっちにあるか分からない、
「ではこっちで」
「本当に?」
アウラ様ファイナル〇ンサー?的な事を言わないで欲しい、そんな事を言われたら迷う、
「では、こちらを」
「本当にこっちでいいのかな?カーナ」
「大丈夫です。多分…」
私は目をギュッと閉じて恐る恐るカードを引いた。
そこにあったのはやはり猫、私は猫に愛されている。実際に侍女も猫娘だし、老後は猫を抱いて過ごしたいとも思っている。
「もう!仕方がありませんわね。私はトゥカーナに甘いのです。」
「僕もカーナと喧嘩したら勝てる自信はないよ、ミュー」
私が持っていたカードは消えてなくなり、姉様の手元にババと最後の1枚が、アウラ様に最後の1枚のスペードのキングを手に持っている。
「トゥカーナはババ抜きで負けて、勝負に勝ったのね」
「まぁ!ミュー、誰がうまいこと言えといいましたの?負けは」
姉様が鋭いツッコを入れると、ルピーとミクロンが手を繋ぎ歩いてこちらに来て、アウラと姉様の顔を見上げる。
「けんかはダメでしゅよ、おとうさまとかあさまがいつもいってましゅ。」
「喧嘩ダメ、絶対」
「ごめんなさい」
幼女2人?に怒られてババ抜きは終わった。私はルピーとミクロンに新しいお菓子を渡し、トコトコと自分の席に歩いて行く2人を見守った。
その後は姉様とアウラ様に願われお菓子を食べさせられている。聞けばこれを掛けババ抜きをしていたらしい、姉様は帰って来た兄様に呼ばれ家の中に入って行った。
私達はあの溺れた噴水の前で少し暗くなった夜空を見上げている。月が少し低い位置で私達を見ている。
「言って下さればしましたよ。もう1つ食べますか?」
「カーナが食べさせてくれる物なら、毒でも食べられそうだよ、」
「もう!変な事言わないで下さい、そんな事しません。」
「カーナにプレゼントがあるんだ。ミュー頼む」
黒い眼帯をしたミューは、手紙をスっと送るとピンク色した魔法陣が現れ、そこから夜空に花火が沢山上がる。花火の色は赤や黄色やピンク等、前世で見た形とは違うのは星型もあってとても綺麗だ。
綺麗な花火だけど、ピンク色ってだけで誰なのかすぐに分かった。素直じゃないシャムちゃんがプレゼントしてくれた花火だ。
「きれいでしゅね」
ルピーとミクロンが隣に来て夜空を見上げ笑うと、魔法陣は反応する様に光り輝き夜空の花を沢山打ち上げる。
ワルドとヒドゥリーはケーティを挟み立ち尽くしているが、ケーティは遠慮して一歩後ろに下がってしまった為、靴を片方無くした少女とリアル王子様だ。誰かが見たら喜びそうだ。と屋根を見ればライラがニヤニヤしながらあの2人を見ている。スっと視線を逸らしアウラ様を見る。
「アウラ様綺麗ですね。また次も同じ光景を見たいです。」
「僕はカーナとじゃないと、綺麗な光景も色褪せてしまう、絶対に一生一緒にいて欲しい、」
大げさだな。そう思っても嬉しい気持ちは溢れてくる。アウラ様がさり気なく私の顎を掴んだ。綺麗な顔が段々と近づいてくる。
「まぁ!アウラ様何をなさってますの?」
「ボレアリス嬢、今いい雰囲気なんだ、邪魔しないで欲しい、」
「まぁまぁまぁまぁ!トゥカーナって大胆ね!」
私は忘れていた事がある。何をしたのか親や身内にすぐにバレてしまう事た。
「カーナ行こう!」
アウラ様は私を横抱きにして走り出した。家の中からゾンビや猫娘やらモンスターが溢れて追いかけてくる。こうして追いかけられていると、少し怖いと同時に楽しくなってくる。
「逃げ切って下さいね。アウラ様」
「あぁもちろんだ。」
この後ライラにすぐに捕まったが、楽しいハロウィンはここで終わり、次の日お父様の嘆きと共に頬ずりの刑に処された事を報告します…チーン。
「ちょっと!なんで私の所に来るのよー」
そういって口をとんがらせているのはミラ、水の精霊王でとても自由な人だ。とヒドゥリーは美しいカボチャの飾り付けを見て、優雅にお茶を飲むとトランプの行方を見守る。
ミラの隣に座っているのはミクロン、通称みっちゃんと呼ばれている。ミクロンの横はルピー、この2人は互いに何かシンパシーを感じたらしい、この2人は出会ってから小さな声でお喋りしたり笑いあったりしている、傍から見ればおままごとみたいで微笑ましい、ククは膝の上に居てみっちゃんからクッキーを貰い食べている。
「ル…ルピーって不思議な感じする。お…美味しいよこれ食べる?」
「たべましゅ。ミクちゃんもこれたべましゅ?」
「た…たべる。お…美味しい」
可愛らしいやり取りを見ていると、姉様は急にモジモジして私の口元にお菓子を持ってきた。昔はこうして食べさせて貰っていた。
昔を思い出したのかな?姉様に小さなクッキーを食べさせてもらうと、私もお返しにクッキーを姉様の口元に持っていった。それを恥ずかしそうに食べる姉様、クッキーは小さいのにいつまでもモグモグと口を動かしている。少し不安になった頃紅茶を飲み食べ終わったらしい、背中に背負っていたうさぎは姉様の腕の中にある、それをギュッと抱きしめた。
「トゥカーナが食べさせてくれるクッキー、とても美味しいわね。」
「お姉様、こちらもどうぞ」
「ちょっとー!なんでこっちを取らないのよ!こっち取りなさいよー!」
「まぁ!トゥカーナ優しいのね」
姉様にお菓子を食べさせていると時々ミラの叫び声が聞こえる。そうそう取らないのもあるあるだ。私もババの位置がなぜ分かるのか不思議でならない、
「ちょっとー!私精霊王なんですけどー!」
「さて何の願いを叶えてもらおうかな?」
ワルドが意地悪そうに笑うと、ミラは涙目で叫んだ。
「もー!なんでもう勝つ気なのよー!」
「ミラ様は楽しい人だから表情が分かりやすい、だからカモにされるのです。」
あ…アウラ様から本音がポロリと出た。
「ミラ様に頼みたい事があります。城に1つ井戸が欲しい、」
「地下に水源がなきゃ無理よぅー!それにお願いは常識の範囲内じゃないのー!」
ワルドは白々しく「あれ?こんな所に新作のお菓子が」と白い箱を出し中を見せる。中身はチョコレートのふわふわした焼き菓子、ミラもククも口の端から何とは言わないが出てる。
ミラとククはそれを聞き逃さなかった。ククはむしろ食いつき気味でワルドを見るが、ミラはちょこちょこと指を動かし手を伸ばし箱に触ろうとしているが、ワルドは箱に伸ばした手を軽く跳ね除けた。ミラは跳ね除けられた手を引っ込め、不自然に彼方を見て下手な口笛を鳴らす。
「ねえ新作欲しいー、ねぇ頂戴よぅ!」
「ミラ様ククも手伝うから!お菓子欲しい!」
ククはミラとワルドの間を行ったり来たりして、最終的にワルドの前で止まり手もみをしている。あのククが必死だ。いや、お菓子を貰うために必死だ。
「ワルドにいさま、ルピーのおねがいきいてくれるのでしゅか?」
「こ…これルピーのお願いなの?ク…ククお願い」
ククはルピーの前に来ると手を差し出した。ルピーは訳が分からず首を傾げる。
「調べてあげる、でも報酬はお菓子よ」
「トリトリでしゅか?」
「トリトリって何よ」
「それいうとおかしもらえるでしゅ。どーぞ」
「しんじられないミラ様からお菓子を貰う時は、お腹に絵を書いて踊ったりしてた。」
ククは両手を上げクネクネと踊る。その姿は腹踊りだ。それってこっちの世界にもあるんだ。とトゥカーナは想像して出来るだろうか?とお腹を押える。
「おなかだしゅとひえましゅ。おなかだいじでしゅ」
ルピーは真っ当な事を言うとククにお菓子を1つ手渡した。まぁそうだよね小さいのにしっかりしてるわ、とトゥカーナはお腹から手を離した。後ろから猫娘の視線が痛い気がするがきっと気のせいだ。
ミラは違うの!と喚いているが、ワルド達がミラを見る視線はとても冷たい、
ククはルピーの次は私のところに来て恐る恐る手を差し出した。
「トゥカーナトリトリ、」
「はいどーぞ。でもそれを言えるのは今日だけです。今日は特別な日ですからね。お菓子ばかりだと大きくなりません。これは私が作ったカボチャのスープですこちらもどーぞ。」
私はロッテに持ってきてもらった小さなカップに、カボチャのスープを入れる。手を付けていないティースプーンで、濃厚なミルクを入れると黄色と白が美しいスープになった。
ククはクッキーを貰うと空間ポッケに入れ、私から小さなカップに入ったスープを受け取り一気に飲んだ。
「甘くて美味しい!これお菓子じゃないの?」
「これは飾り付けされたカボチャの中身なので作りました。もったいないですからね。もう少しするとこの領地の畑にお芋が沢山実ります。そちらも甘いですよ。」
「クク様、こちらにも来てください」
ククはお芋の時にまた来たいと言っていた。お好きな時にどーぞ、と返事をしヒドゥリーとケーティの所に行きトリトリ!と言ってはお菓子を貰い食べている。
「負たー!ククが言っていたトリトリ!って何よぅー」
「勝った!ではミラ様こちらをどーぞ」
結局最終的にワルドが勝ったらしい、ワルドは白い箱をスっとミラの前に出した。
「ミラ様今日は特別な日らしいですので、こちらをどーぞ。あの件も宜しくお願いします。井戸が出来ましたら追加で渡しましょう。」
「本当に?お主も悪のよぅー」
悪代官と越後屋みたいになっている2人に、苦笑いしていると目の前に影が2つさす。ゴゴゴ…と聞こえてきそうな2人に私は視線を逸らした。
「いいだろう!カーナにお願いを聞いて貰うのは僕だ。」
えっ?私は慌てて立ち上がるとアウラに抱き寄せられる。私は恥ずかし過ぎて胸に顔を埋めていると、
「トゥカーナのお願いはこの私ですわ!」
次は姉様の方に引き寄せられる。姉様本当にそろそろ不敬罪がヤバイよヤバイよ。
頭の中で緑色のヘルメットを被った人が泣き叫んでいる。私も泣き叫びたい、ヤバイよヤバイよ!
「アウラ様もお姉様もどうしてこんな事に?」
「ババ抜きしましょう。」
「あぁ。望む所だ。」
なぜ2人で盛り上がっているのだろう?私に拒否権プリーズ!
「あの…私」
「トゥカーナババ抜き「カーナももちろん参加するよね?」わね?」
「はいもちろんです…。」
嫌だと言えなかった。変な所で意気投合する2人、私は何を掛けたのか聞きたいが、2人共ギラギラした視線だけを私にくれるだけ、逃げ出していいだろうか?
ロッテがスっと私のトランプをくれた。一番上を捲るとあの変な猫が足を組みこちらをじっと見て、訴えている「勝てばいい」と、猫娘から貰ったトランプを机の上に出しカードを配る。
「アウラ様は私が勝ったら仲良くして下さいね。」
「カーナのお願いならなんでも聞く、」
「お姉様はもう少し異性に優しくなって下さい。」
「私はトゥカーナには優しいわ、けどそれが条件なら優しくするわ、可愛い妹を虐めなければね。」
「ひぃ!」
ワルドが顔を青くして席を立ち上がった。姉様あの人も王族なのですが何をしたのですか?
「さぁ始めましょう。」
◆
あれよあれよとカードが無くなっていく、カードを広げた時には猫は居なくてホッとしていたら、来なくても良いのに猫はアウラ様の所からやって来た。
猫にデコピンをしてシャッフルをして、姉様にカードを差し出したが、やはり猫はここが好きらしい、そのまま居続け現在に至る。
「後3枚だね。カーナ」
「そうですねアウラ様。でもアウラ様とお姉様は残り2枚、お姉様のカードが揃えば私の負けです。」
「アウラ様、トゥカーナが困ってますわ、助けてあげるのが婚約者としての役割だと思います。」
「ボレアリス嬢、君はカーナに甘々なんだ。今が甘やかすチャンスだと僕は思うよ。」
「同情なら要らないです。お姉様早く選んでください」
高速でシャッフルを終えたカードを姉様の前に出す。姉様はカードを何度か吟味してから、ハートのエースを取っていった。次はアウラ様のカードを私が取るため姉様の勝ちと同時にアウラ様の勝ちも確定する。
やっぱり負けたと落ち込む私の手元からスっとジョーカーの猫が消え、アウラ様はカードをシャッフルして2枚のカードを私に差し出す。
「カーナ選んで僕か僕か、」
その言葉を聞いて私はポカンと口を開けた。それはどっちもアウラ様じゃないの?と、
「どういう意味ですか?アウラ様」
「さあ選んで」
アウラはカードを2枚こちらに差し出す。前にお父様が言っていた事を思い出す。汗や鼻や視線等、アウラ様が完璧過ぎて、カードがどっちにあるか分からない、
「ではこっちで」
「本当に?」
アウラ様ファイナル〇ンサー?的な事を言わないで欲しい、そんな事を言われたら迷う、
「では、こちらを」
「本当にこっちでいいのかな?カーナ」
「大丈夫です。多分…」
私は目をギュッと閉じて恐る恐るカードを引いた。
そこにあったのはやはり猫、私は猫に愛されている。実際に侍女も猫娘だし、老後は猫を抱いて過ごしたいとも思っている。
「もう!仕方がありませんわね。私はトゥカーナに甘いのです。」
「僕もカーナと喧嘩したら勝てる自信はないよ、ミュー」
私が持っていたカードは消えてなくなり、姉様の手元にババと最後の1枚が、アウラ様に最後の1枚のスペードのキングを手に持っている。
「トゥカーナはババ抜きで負けて、勝負に勝ったのね」
「まぁ!ミュー、誰がうまいこと言えといいましたの?負けは」
姉様が鋭いツッコを入れると、ルピーとミクロンが手を繋ぎ歩いてこちらに来て、アウラと姉様の顔を見上げる。
「けんかはダメでしゅよ、おとうさまとかあさまがいつもいってましゅ。」
「喧嘩ダメ、絶対」
「ごめんなさい」
幼女2人?に怒られてババ抜きは終わった。私はルピーとミクロンに新しいお菓子を渡し、トコトコと自分の席に歩いて行く2人を見守った。
その後は姉様とアウラ様に願われお菓子を食べさせられている。聞けばこれを掛けババ抜きをしていたらしい、姉様は帰って来た兄様に呼ばれ家の中に入って行った。
私達はあの溺れた噴水の前で少し暗くなった夜空を見上げている。月が少し低い位置で私達を見ている。
「言って下さればしましたよ。もう1つ食べますか?」
「カーナが食べさせてくれる物なら、毒でも食べられそうだよ、」
「もう!変な事言わないで下さい、そんな事しません。」
「カーナにプレゼントがあるんだ。ミュー頼む」
黒い眼帯をしたミューは、手紙をスっと送るとピンク色した魔法陣が現れ、そこから夜空に花火が沢山上がる。花火の色は赤や黄色やピンク等、前世で見た形とは違うのは星型もあってとても綺麗だ。
綺麗な花火だけど、ピンク色ってだけで誰なのかすぐに分かった。素直じゃないシャムちゃんがプレゼントしてくれた花火だ。
「きれいでしゅね」
ルピーとミクロンが隣に来て夜空を見上げ笑うと、魔法陣は反応する様に光り輝き夜空の花を沢山打ち上げる。
ワルドとヒドゥリーはケーティを挟み立ち尽くしているが、ケーティは遠慮して一歩後ろに下がってしまった為、靴を片方無くした少女とリアル王子様だ。誰かが見たら喜びそうだ。と屋根を見ればライラがニヤニヤしながらあの2人を見ている。スっと視線を逸らしアウラ様を見る。
「アウラ様綺麗ですね。また次も同じ光景を見たいです。」
「僕はカーナとじゃないと、綺麗な光景も色褪せてしまう、絶対に一生一緒にいて欲しい、」
大げさだな。そう思っても嬉しい気持ちは溢れてくる。アウラ様がさり気なく私の顎を掴んだ。綺麗な顔が段々と近づいてくる。
「まぁ!アウラ様何をなさってますの?」
「ボレアリス嬢、今いい雰囲気なんだ、邪魔しないで欲しい、」
「まぁまぁまぁまぁ!トゥカーナって大胆ね!」
私は忘れていた事がある。何をしたのか親や身内にすぐにバレてしまう事た。
「カーナ行こう!」
アウラ様は私を横抱きにして走り出した。家の中からゾンビや猫娘やらモンスターが溢れて追いかけてくる。こうして追いかけられていると、少し怖いと同時に楽しくなってくる。
「逃げ切って下さいね。アウラ様」
「あぁもちろんだ。」
この後ライラにすぐに捕まったが、楽しいハロウィンはここで終わり、次の日お父様の嘆きと共に頬ずりの刑に処された事を報告します…チーン。
0
お気に入りに追加
1,100
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!
アノマロカリス
恋愛
テルナール子爵令嬢のレオナリアは、幼少の頃から両親に嫌われて自室で過ごしていた。
逆に妹のルーナリアはベタベタと甘やかされて育っていて、我儘に育っていた。
レオナリアは両親には嫌われていたが、曽祖母には好かれていた。
曽祖母からの貰い物を大事にしていたが、妹が欲しいとせがんで来られて拒否すると両親に告げ口をして大事な物をほとんど奪われていた。
レオナリアの事を不憫に思っていた曽祖母は、レオナリアに代々伝わる秘術を伝授した。
その中の秘術の1つの薬学の技術を開花させて、薬品精製で名を知られるまでになり、王室の第三王子との婚約にまでこぎつける事ができた。
それを妬んだルーナリアは捏造計画を企てて、レオナリアを陥れた。
そしてルーナリアは第三王子までもレオナリアから奪い取り、両親からは家を追い出される事になった。
だけど、レオナリアが祖母から与えられた秘術の薬学は数ある中のほんの1つに過ぎなかった。
レオナリアは追い出されてから店を構えて生計を立てて大成功を治める事になるのだけど?
さて、どんなざまぁになるのでしょうか?
今回のHOTランキングは最高3位でした。
応援、有り難うございます。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる