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帝国編
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しおりを挟む「なんで私の手小さいのー!」
「あら?可愛いお嬢ちゃん大丈夫?心配しなくても、その内に体も心も大きくなるわ、」
私なんで小さいの?どうしてなんでこうなった!?
それは少し前の時間にさかのぼる。
◆
ペンダントに導かれ私は空を飛ぶ、後ろ髪を引かれる様に振り返ると、先程までいた王城が小さく見え私を見送っているようにも見える、
前世で見た豪雪地帯の雪のように降っていた緑色の精霊、
今は辺りを見ても精霊はいない、精霊が降りた木々は元気になったのか少し濃い色になっていた。
光に導かれるまま進んでいると、ペンダントが強く光った。突然空に人がひとり通れるサイズのオーキッド色の魔法陣が出現し困惑した。胸元のペンダントを出し見ると、光もそちらを指している私は大きなため息をつき魔法陣を見る、
魔法陣にはご丁寧に「結晶はこちら」と書かれ、魔法陣の解除方法も瞬時に頭に浮かんだ。しかしどうやってアウラの元に帰るのか、その方法が今は分からないし、自分がシャムを捕まえた黒いモヤと対峙する、と望んだから勝手に解除する訳にも行かない、
モヤモヤと考えていると、頭の片隅にとても怒った時だけ綺麗に微笑む婚約者を思い出してしまう、
背中に冷たいものを感じブルっと身震いをして、問題が解決するまで誰も来ませんようにと、願ってしまった。これが原因で糸を辿って来ようとしたミューが来れない事など、この時のトゥカーナは知らない、
この魔法陣もしかしなくてもペンダントが作ったのだろう、現に私は魔法陣を作れないし、そもそも作り方を知らないのだから、導かれるままに魔法陣に入り転移した。
転移は一瞬だったが転移した先に見えたのは真っ白な雲海と、目が覚めるような青空、上を見上げれば眩しい太陽がある、白い砂浜と暑い日差しと青い空と海なら大歓迎だけど生憎そんなものはここには無い、
前世ミクの小さな頃を思い出す。暑い日差しの中お気に入りの白い帽子を被り、迷子にならない様にと私の手を大きな手が繋いでいる、両隣りを見上げるとニコニコ顔のお母さんと、太陽の光で顔が見えないお父さんの2人、私の小さな手を大事な宝物の様に扱いながら、可愛い娘のミクを見て笑う、一目で愛情がたっぷり込められ育てられているかわかる程、青空に浮かぶモコモコ膨らんだ大きな入道雲が見えた。
空に浮かぶあの雲は甘いんじゃないか?と甘い期待していた可愛いらしい時期が私にもありました。
ある時テレビ番組で水蒸気が雲になると知ってしまった。いや分かっていたのよ、でも夢くらいはみたい、エニフ王国で出された小さな綿菓子を思い出した私は、少しだけ雲をすくってみようとした時、ふとある言葉を思い出す。確か小さい頃に聞いた。
「雲を固めれば歩けるのよ、って教えられたなぁ、でもどんな方法だったかしら?ダメだ思い出せない」
残念ながら雲を固める方法を私は思い出せない、それでも何かしてみたくて指先でつんつんと突っついてみたり、固まれーと言いながら綿菓子を作る様にかき混ぜてみたりするが、やっぱり雲は私の指をさけて通り過ぎる、1人で何してるんだろ?恥ずかしくなってしまい、雲から視線を外しペンダントが示す方へ飛びながら自然と腕が胸を抱く、あっ、ミューはいないんだと寂しく思いながら腕を解いた。
「私はあの子の事を覚えてなかったけど、私の前世でアルゲティは覚えていたのかな?魂は一緒なんて言われても私ピンと来ないよ、
ミューを抱っこした時、気持ちが落ちついていたのかもね。もし覚えていたら、あのままずっと近くで見守っていたのかも、ミクの時代じゃなくて良かった。マサやミユキやクルミや母さんの事だったら・・・でも母さん達が気が付いても幽霊と言われて、成仏して欲しいなんて言われたら泣いちゃうわ、」
最近ずっとミューを抱っこして落ち着いた気分になっていた原因がわかった気がする。そんな事を考えてると白い雲のすき間から街が見え始めた。私は次はどこなんだろう?と好奇心のまま翼を動かして飛ぶ、
私の眼下に広がっている光景はカラフルな街並み、楽しげに街の中を飛ぶ翼を持つ人や家族連れ、手を取り合い恥ずかしげに飛ぶ初々しいカップルもいる、
私は目立たない様に空から入ろとしたが、透明な何かに阻まれ入れなかった。入れないからと街を1周回って確かめたが無理だった。もちろん隠れながらコソコソと動きノックする様に優しく叩く、間違って強く叩いたら痛そうだしバレたら大変だから、
叩くと見えるピンク色の様なドーム型、それに街は守られているらしく、どこを見ても魔法陣は見えない、
困った事にペンダントはドームの中にあるらしい行先を光で指すだけ、空から入るのを諦めるしか無いようだ。空の人族以外の侵入を防ぐ魔法なのかもしれない、中に入れないから外から観察する様に飛ぶ、
「ここは空の人族の街?カラフルでとても綺麗な街並みだけど、どの建物もえっと1、2・・・5階もある、でも街の入口はどこなの?」
独り言を言っていると私の首の後ろから緑色の精霊が飛び出した。私が祈った時に空から沢山地上に降りていた精霊、私の背中に入り込んだのかもしれない、その精霊は私の前で上下に揺れ先に飛ぶ、私は精霊は何がしたいのかわからず首を傾げると、精霊はその場でふわふわと飛び揺れている。私が近づくと精霊は先に進む、これを何度か繰り返すと流石に分かってくる。
「着いて来てってことかしら?」
そういう事かと精霊の後ろを着いて飛ぶ、精霊は白く大きな門に入ると、進まずに天井に向かって飛んでいく、このまま通り抜ける訳では無いらしい、向こう側が気になるがはぐれる訳にはいかない、
前を飛ぶ精霊を見ると、慣れている感じがする、もしかするとあの精霊は私の事を空の人族だと勘違いをしているかもしれない、私の背中を見れば大きな翼が2枚ある。シャムの話だともしかしたら翼はそのままになるのかもしれない、と言っていた、その事を考えるだけで憂鬱な気分になる。
だとしたら私は空の人族だと否定したい、けど、今の私がそれを否定したら結晶集めは進行しない、それに黒いモヤの事も分からずそのままになるのかもしれない、もどかしいまま精霊に導かれ進む、このまま進んだらアルゲティだとバレないだろうか?空に帰ってしまった人が現れればパニックになる、あれ?幽霊もこの世界にいるんだろうか?そう考えた時だった。ペンダントが強い光で輝きだして私を包む、私は眩しくて目を閉じたが、ガヤガヤという賑やかな声でそっと目を開いた。
前世では駅前のロータリーといった所だろうか?地面は白い石で綺麗に整備され花壇らしい物まである、
その花壇の奥には物売りのワゴンがあって何か売ってるらしい甘い香りが漂い、それはワゴンから甘い香りが出ている、ワゴンには前世で見た渦巻き状のペロペロキャンディが数本刺さっている、白いドレスを来た店番らしい女の人が売り、店の前でキャンディを指さした小さな女の子に空間ポッケから出した飴を手渡し、女の子はお姉さんありがとう。と喜び貰ったキャンディをキラキラとした目で見て隣にいる母親に誇らしげに見せ、母親に良かったわね。と頭を撫でられワゴンの女の人にペコリと頭を下げ翼を広げ飛んでいく、
子供が楽しげに歌っている声が聞こえる、私はもっと見てみたくなっていた。逸る気持ちを押さえながら飛び立った。
◆
門を出ると辺り一面は白い、まるで雲の上に居るようだった。私が門から出ようと歩き出すと、横から野太い声で「ちょっと待て」と声をかけられた。
白い服の男の人が椅子に座って本を読んでいたが、私が門から出て歩き出そうとしたタイミング、足を組んでいた足を咄嗟に下ろした。ドスンと音が響き私はその音にびっくりしてしまい肩は跳ね上がり、両手で頭を抱え座り込んだ。
前世で動画の中で見たどこかの国の兵隊さんが、足を高く持ち上げ歩いていた。段々と近づいて来たが私は恐怖に固まるだって巨人かな?それくらい背が大きく翼も比例して大きい、
大きな手には分厚い本を持ったガタイのいい大きな男の人、私を見下ろしじっと見る、背中には空の人族の大きな翼があって、短髪の紫色の髪と、こちらを睨む様に見るその目は同じ色を持っていた。
一言で言うならとても怖い顔をした門番が立っていた。私は咄嗟に姿を消す魔法を忘れていた事を思い出した。背中に嫌な汗が流れ落ちる、
しかし門番は私の翼をチラリと見て満足気に頷いた。だが目だけは笑っていない様に見えるから、笑うともっと怖い、思わず少し身震いをしてしまった。
私が震えた事を見た門番は手を頭に置き困った顔をした。それもしかめっ面に見えて怖い、この顔を見た子供は泣き叫びそう、
「通って良し!この街は翼がある者なら歓迎をする。悪いね俺はこの顔のせいで子供から怖がられてな、お嬢ちゃんは泣かないから偉いな。」
「あ・・・ありがとうございます。目をもう細め頬を持ち上げてみては?あっ!それと眉間は寄せない様にしてみてはどうでしょうか?眉間が寄っているとそれを見た人は怒っている様に見えてします。実際私もそう見えました。では私は精霊さんが待ってますので、そろそろいきますねさよなら」
「おうありがとな嬢ちゃん!迷子になるなよ!」
出来るだけ自然に笑う、笑いながら思う不自然ではないだろうか?と、門番は外出確認をしなかったからゆるゆるなのだろう、でも逆に助かった。外出確認をしていたら多分捕まっていたかも、
精霊は萎れた赤い花の止まると、花と一緒にゆらゆらブランコで遊んでいる様に揺れる、ゆらゆら揺れ私が来るのを待ってくれている様だ。
その姿を見てとてもミューに無性に会いたくなった。ここに着いた時も呼んでみたが返事が無いからとても寂しくなる、
「お待たせ精霊さん、さあ行来ましょう」
私は精霊の前まで行き手を差し出した。精霊は花からフワリと飛び立ち差し出した手に乗ってくれた。飛び立った精霊はとても小さく軽いから、花から飛んでも花にダメージは無い、逆に花はとても元気になった様にも見える、私はこれを見てエニフ王国の解決策を見出す。
もし風の精霊をエニフ王国に呼ぶ事が出来たら、あの何も生えない不毛の地は治るのかもしれない、これは風の精霊王シャムと要相談になるだろう、空の人族は立ち入り禁止でも、精霊は大丈夫なのかもしれないだってミューは入れたのだから、
考え事をしている間にも精霊を追い掛ける様に飛ぶ、ペンダントを出して確認をする、相変わらず精霊が向かう方向と同じ方を指しているから、方向は合っているだろう、どこに行くんだろうか?
前世で見た様なガラス張りの商店街があり活気があるらしく、何が売っているのかもう少し見たいけど、精霊は私の期待とかけ離れ街を外れていく、今思えば私が立ち止まれば精霊は待っててくれるのだから、行けば良かったと思いながら、林と言うより手入れされた木々の中どんどん進んでいく、
木々を抜けた先は海辺と白を基調とした1軒の屋敷が見える、精霊は迷う素振りも無く屋敷へ飛んで行く、ペンダントもそちらを指し示している、今の私は精霊に着いていくしかない、もしもここで精霊とはぐれてしまったら迷子になる。この時この先の事を考えてボーッとしていたのかもしれない、
後どれ程掛かるのかと少し考え事をしていた。それだけは避けようとした時だ、考え事をしていてほんの一瞬気がそれてしまった、スピードは出ていないが、ゆっくりふわふわと飛んでいた訳でもない、森の木から突然出てきた女の人とぶつかりそうになり私は慌ててしまう、両手をアワアワと左右に振りながら叫ぶことしか出来ない、
「ひゃー!危ないです!どいて下さい!」
「あら大変、止まり方を忘れたの?」
女の人はヒラリと華麗に私を避ける、さしずめ私は闘牛で女の人は赤い布を持った剣士の様だ、そのまま木にぶつかると思いギュッと目を瞑ったがフワリと後ろから抱きつかれる、
私を後ろから止める様に抱きしめてくれる。ぶつからなくて良かったとそのまま放心してる私、女の人は心配して私の身体を持ち上げて私の顔を覗き込む。その時見えたのは柔らかなオーキッド色の瞳と目尻の下に小さなホクロ、少し遅れて瞳と同じ色の前髪がふわっと一欠片落ちる、
私は申し訳なさすぎて俯きそうになったが、私よりも背の高い女の人は両手で私を軽々持ち上げると、優しい手つきで私の頭を撫でる、自分が小さな子供になった感じがしてちょっと恥しい、空の人族は皆巨人族かな?などと考えてしまう、まぁここの人達が巨人なら、私の身長は150cm位だから、そう考えてもおかしくは無い、あれ?ライラはそんなに背が高くなかったはず。
「あらあら可愛いお嬢ちゃん、あなたどこの子?どこから来たのかな?あなたここら辺では見ない子ね。
お父様とお母様はどこにいるのかな?あっ!分かったわ!
フフ。1人で飛ぶ練習していたのかな?1人で飛び回ってご両親を困らせたらダメよ、」
女の人は頭をゆっくりなでギュッと私を抱きしめる、もしかしたら女の人に子供がいるのかもしれない、優しく慣れた手つきで私は抱っこされ、頭を数回なでられ私の落ち着いた頃合をみて続きを話す。
「でもありがとう。急に止まらなくなって私に危ないと声を上げてくれたのね。
でもあなた怖くなかったかしら?可哀想にこんなに息が上がってしまって、よしよしもう大丈夫よ。」
空の人族の女の人は頭をから手を離し、次は私の背中をポンポンと優しく叩く、大人の女性からみれば私はまだ子供だ、けどそこまで子供でもない今の私は13歳、まぁ日本では義務教育の真っ最中小学校を卒業した位の歳だろう、まだ心臓がドキドキしているから受け入れてるだけ、と自分に言い聞かせ考える、キョロキョロと顔だけ動かし今の状況を考える、精霊が見当たらないという事はあれしかない最悪の結果だ。
「精霊とはぐれたから・・・今はえっとま・・・迷子?」
「フフ・・・どうして疑問形なの?精霊さんはどこにいるのかしら?」
「えっと・・・なんとなくです。考え事してたらはぐれてしまって、ごめんなさいお姉さん。」
「フフ・・・肩苦しい言葉使いをする子ね、もう少し言葉を崩しても大丈夫、ご両親がしっかりと教育をなさっているのね。」
ふと自分の手を見てしまい驚き過ぎて叫んでしまう、子供の1年は長いんだ!また元通りなんて嫌!
「なんで私の手小さいのー!」
「あら?可愛いお嬢ちゃん大丈夫?心配しなくても、その内に体も心も大きくなるわ、」
◆
そこで色々とありライラの幼少時に会う、確か前にライラは小さな頃に地の人族と交流があったと、思い出したのは王妃教育でもした歴史の勉強、空の人族が地の人族に捕まってしまう、それに怒った空の人族が、地の人族と交流を止めた。もし地の人族が捕まった側だったら、何も出来なかったのかもしれない、魔法のチカラは地の人族より空の人族の方が上、今の私達は転移魔法陣は作れない、しかも翼があって飛べるから戦争になったら一方的に地の人族の敗北になる。
「私の名前はシャム、お友達になりましょう!よろしくねライラちゃん」
「よろしくねシャムちゃん」
「なんと?!シャム様ですと?!」
ライラは破顔しながら片手を私に差し出す。私も小さな手で握手しニッコリと笑う後ろで、おじいさんが私に駆け飛んで来た。私を見て驚き「違うのか」と首を横に振る、ライラは驚きながらおじいさんの背中をゆっくりと撫で落ち着かせ、キョロキョロと私とおじいさんの顔を見て首を傾げる、
「おじいちゃん、シャムちゃんと知り合いなの?」
「いや、ライラとお嬢ちゃんすまなかった。シャム様の名前を聞いて驚いたんだ。シャム様が街に下りて下さったとばかり、シャム様は望んで閉じこもりなさったのにこちらに居らっしゃる訳では、
すまないなお嬢ちゃん、さぞ驚いた事だろう?シャム様と同じ名前を付ける者等いないと思っておった。だがシャム様程愛らしい人はおらん、ピンクの髪色が風に揺れ花達に微笑まれる愛らしい笑顔は、とても可愛らしかった。」
おじいさんは元々細い目を更に細め遠くを見る、私はこのおじいさんはシャムちゃんの関係者だと分かり、おじいさんの方に駆け寄る、おじいさんは視線を私に向け、私とライラの方を見て「すまんライラ」と目尻を下げ優しく笑うが、どこか寂しそうにも見える、
「あの・・・あのお方って空の人族の長のシャムちゃんであってますか?私シャムちゃんの事について聞きたい事があるんです。」
「なぜあなたにシャム様の事を話さねばならないのですか?あなたは何を知り何を思って、シャム様の事を聞きたいのです?」
「お願いします。シャムちゃんは強がっています。産まれてすぐに母親から離されその後大切な子供も・・・、寂しいと言い辛いんだと思うんです。シャムちゃんがもう寂しくならない様にしたいお願いします。同じ名前で混乱しますから、私の事はカーナとお呼び下さい、」
「おじいちゃんライラも聞きたい!空の人族の長って何?もしかして教会にいる銀髪のシスターの事?教えて」
ライラが聞きたいと言ったからか、私が両手を合わせ頼み方が必死だったからか、おじいちゃんは難しい顔をして空を見上げ、「そうですか」と少し目を細め遠くをしばらく見ていた。
落ち着いたのか私に恭しく頭を下げ始めるので、慌てて頭を上げてもらおうとしても「あなたの言葉使いは丁寧で見た目よりレディの様ですね、私もその様に致しましょう」と少し顔を上げ私にウインクをする。
「ライラそれは違うよ、教会のシスターは私達の長ではない、あの教会でシスターはシャム様の為に祈りを捧げるというよりも、懺悔をしている・・・いや何でもありません。シャム様の事を知りたいのなら、先に質問をしても宜しいですか?カーナ様」
「はい、私がわかる範囲なら答えましょう。」
「シャム様の事をどこまで知っているのです?」
「私は7人目だと、シャムちゃんが言ってました。後はシャムちゃんは私が作ったたこさんウィンナーが大好きです。屋敷の中にある先代が残した本は、ほぼ読み尽くしたと、」
「なぜそれを知っているのだ!」
私がそれを言うと驚いた顔をした後、とても苦い顔をして私を睨みつける、もしかしたらとんでもない地雷を踏みそうなのではないだろうか?もしかしたら踏んでしまっているかもしれない、
ライラはおじいちゃんか突然の大声を出した為、その場で固まったまま動けないようだが、大きな瞳からポロポロと涙が溢れ出てきた。
おじいちゃんはハッとしてライラを抱き上げると、すまんライラと誤っているが、ライラは首を激しく横に振り拒絶する。
「すまないライラ、いきなり大きな声を出してしまった。」
その時空気を読まない私のお腹は、ぐぅーと悲鳴を上げた。必死にお腹を押えたが音は聞こえてしまったらしく、おじいちゃんは片眉を上げ私を見る、顔が熱く赤いのが分かる、とても恥ずかしすぎる!
ライラはおじいちゃんの首に抱きつき泣いていて、私のお腹の音には気がつかなったらしい、私がお腹を押さえたら先程掛けた魔法が効かなかったと、泣き出す未来が見えてしまう、
「レディに対して何もおもてなしをしてませんでしたな、」
「あら?お父さんライラを泣かせたの?珍しいわね、ご近所さんにも目に入れても痛くないと言う程孫馬鹿なのに、」
ライラはおじいちゃんの肩で鼻を啜っていたが、声を聞き手を伸ばしてお母さんの所に行こうとしている、おじいちゃんは眉を下げ悲しそうな顔をするが、母親には敵わんと優しくライラを託した。
「カリディアそろそろ昼だ、昼食にしようシャム様もどーぞ。」
「ありがとうございます。私もご一緒していいのですか?」
「ライラのお友達だもの当然よ!今日は腕にノリをかけたの、沢山食べてね」
お母さんがパチンと指をならし魔法陣を作ると、一瞬で屋敷の庭先に転移した。ここは街から離れた所にあるからか、屋敷じたいはカラフルではない、真っ白な屋敷で3階建て、シャムちゃんの家も白かったが、ライラの家もまるでそれに合わせた様な白さ、私がポカンと口を開けて屋敷を見ていると、いつの間にかお母さんから降りたライラが私の背中を押し進める、
「速く行こう!ライラお腹空いちゃった!シャムちゃん行こう!たこさんウィンナー食べてみたい!」
「うん。ライラちゃん」
「あら?シャムちゃんご飯作れるの?じゃあご飯作ってもらおうかしら?まだお昼の用意をしてないの、材料を言ってくれれは出すわよ」
「本当ですか?お口に合えばいいんですが、」
「ライラも手伝う!教えてシャムちゃん」
私が頷くとライラは破顔して私の手を握り案内をする様に先に進む、いきなり手を引っ張られるが、この強引さは嫌いではない、そのまま私は屋敷の中に入っていった。
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