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帝国編
22
しおりを挟むフィレムは光を検分する様に月を見る、指先に月の光を集め精霊の言葉を綴ろうと空中に魔法陣を書こうとして止める。先程起こった事はとても信じられなかった。
「月の光に異常はなさそうに見えるわね。でも何故地の人族の子に翼が生えたのかしら?身体が輝いて見えた事も何かあると思うのよね。」
「フィレム何か言ったか?」
「なんでもないの。黙っていてちょうだい」
私は何も手伝おうともしないルクバトに嫌気が差してしまい冷たく足らってしまう、
私に冷たく足らわれた事でルクバトは酷く落ち込むが、すぐに赤い精霊と私の小さな精霊が側に来て慰め始めるのを見て、大きく息を吐いた。
空の人族と言えば・・・魔法陣を綴りながら空の人族の転移魔法陣も精霊の文字だと分かっている、
その事を私が知ったのは、まだ空の人族と地の人族が仲が良かった頃の話になる。
◆
前精霊王の力が弱まると次の精霊王が選ばれる、選ばれた私は精霊王として私の小さな精霊を導こう、色々と知ろうと必死だった時期でもあった。
私が魔法陣の話を聞いたのは、ピンクの髪と瞳をしていた美しい空の人、
白い肌とピンク色の長い髪、背中に生えた美しい翼がより一層その人を彩る、
なんて綺麗な人がいるのだと見蕩れてしまう、私がじっと見ていたからか、私と目が合った綺麗な女の人は頬を赤く染めはにかむ様に笑うと、私の雑な質問に答えてくれた。
『魔法陣が精霊の言葉と同じな理由?・・・それは言えないの、けど、精霊も私達空の人族も地上に住む人も・・・皆同じなのよ、そして変わらないの、強いて言うなら種族の違う位よ。だってあの人もそう仰っていたわ』
ピンク髪の女性は、あの人と言う所で顔が赤くなると、両手の指を組み解くを繰り返し、何度も空を見上げる。何かを見つけたのかそちらを向いてクスクスと笑う、その笑顔は誰に向けたものなのか・・・私はチラリと見ようとした。けど女性に、『ダメ』と私の両手を掴むと困った様に笑う。種族?と私は引っかかった言葉をもう一度口にしする。
『種族・・・ですか?それはどう言う意味・・・?』
『フフ・・・ここからは内緒よ。だってあの人が怒るもの。』
けど結局何故彼らが精霊の文字を書けて、そして読めるのか分からないままだった。だけど私は彼女の名前を教えてもらった。彼女はメルクと名乗っていた。メルクと会う度に私は聞きたい事を聞いていた。
◆
私達各属性の精霊王達よりも、空の人族・・・いや、メルクは上位の存在である。とそれだけは分かった。私は今まで出会った上位の存在を思い出す。大精霊王と同じ位?なんて失礼な事を考えてしまう程、
思考が逸れたと頭を軽く振ると考えを散らす。月の光を集めた指先だけに集中する。私が頭を振った事でルクバトは心配する様に私に近づいて来た。
私はことある事に心配をするルクバトに、とてもイラついていた。心配してくれるのは有難いが集中しようとした時だったから、迷惑極まりないと思ってしまう。眉を寄せ口の中に空気を入れ怒っていると態度に出す。そうしないとルクバトは分かってくれない、
「フィレム怒っているのか?俺はフィレムの事を・・・」
「心配しているのでしょう?でも大丈夫、今集中しているの邪魔しないで欲しいの」
ルクバトは私の手をギュと握った、俺はただフィレムが心配だと顔に書いてあった、そして熱い眼差しで私を見る、私は心を無にしてその手を振り払った。
「少しは手伝いなさいよ。私の後ろにいないで」
「俺は地の人族嫌いだ、無知な奴らの為にフィレムは協力をするんだ?」
「無知は教えればいいと思っているの、彼らは教えられてないのだから、それに助けは必要よ。地の人族は私達と共存をしているわ、あなたは違うのかしら?」
「フィレム・・・俺は」
地の人族が精霊を介して魔法を使うと、少しだけ地の人族から魔力を貰っている、もちろん私達があげる魔力よりとても少ない、私達も小さな子達全てに魔力を与えられないから、とても助かっている。
愕然としたルクバトの側に、またスっと私の小さな精霊が来てルクバトを慰める。
ルクバトの所の精霊が私の側に来る。赤い髪と瞳をした精霊は私の前で深々と頭を下にさげる。律儀な子ねと顔が綻ぶ。
「フィレム様・・・いつもごめんなさい。ルクバト様はフィレム様を思って・・・」
「フフ・・・良いのよ。あなたもありがとう。あなた名前は?」
「ムム。ルクバト様が付けてくれたの。」
小さな赤い精霊に魔力を渡した。ふわふわと上下に揺れルクバトの側による。私はこれ以上ルクバトに邪魔されない様に光の膜を張ると、ルクバトだけが入れない様に小細工もした。
「これで邪魔は入らないわね。」
まずは光を表す言葉を描くと、その次は対象物を描く、
仕上げは対処の物を真ん中に置くだけ、両手をお皿の様に合わせお皿を作ると魔法陣の横に置いた、そして月の光を手のひらに集め、先程作ったお皿に入れ魔法陣の上に置く。後は小さな子達に見てもらうだけ、私達では小さな気配は感じ取れない、この子達は小さな気配を見つける事が出来る、もちろん危ないなら帰って来る様に言っているから、言いつけ通り帰って来る。
調査には私が行く事もあるがそれはとても稀な事で、魔力を受け取る事で成長する小さな子達の成長を妨げる事はしない、小さな時は魔力を吸収するが、大きくなれば魔力は増えるばかり、身体の中の魔力が多くなれば、私達精霊の動きが鈍くなる、体型維持の為にも適度に魔力は使わなければならない、
また思考に走ったと顔を上げると、小さな精霊が私の側に来て順番を「前は4だったよ」と教えてくれた。撫でて魔力を渡しお礼を言うと上下に揺れる、ふわふわと私の側を離れ5の列へ並んだ。
「さてと・・・今日の当番は5ね。いらっしゃい」
「やっと私たちね。がんばるよー!」
「おー。がんばるー」
黄色い精霊が統一された動きで上下に揺れる、小さな精霊に掛け声を掛けたのは人型の精霊で、私の子なのに初めて見る子だった。
いつの間に人型になった精霊がいたなんてと、私は驚きつつ手招きをする、私の顔を見た途端にモジモジと下を向く精霊に可愛らしいと頬が緩む。
「あなた大きくなったわね。さぁ、こちらにいらっしゃい、」
「ありがとうございますも、さっきルクバト様に貰った魔力で大きくなったんですも、」
両手を上げ元気に教えてくれた。この子は先程ルクバトが落ち込んでいた時に慰めていた精霊だと宣言すると、金色のアホ毛がピンと立ち横に揺れる、
確かにこの子はルクバトが落ち込んだ時は、いつも1番に駆け寄り慰めていた。それが積み重なり成長したのだろう、私の魔力で成長しなかったのはとても残念に思えるが、ルクバトのお陰で私の精霊は成長したけど、この子は私の精霊
「あなた1番に駆けつけていた小さな子だったのね。ルクバトに妬いちゃうわ、でも貴女は光の眷属の精霊それは分かっているのよね?」
「もちろんですも!私はフィレム様の近くに居たいんですも、もしルクバト様が暴走した時は任せて欲しいんですも。」
この子は胸をはり拳を胸に押し当てている、頼もしくも見えるのと同時に嬉しく思う、成長した精霊が近くに居たいと願う者は少ない、気が変わって旅立つかもしれないが、私達の生きる時間はとても長い、ここにいるのなら小さな精霊達と楽しく過ごせばいい、
「まぁ嬉しい事言ってくれるわね。あなたの名前を考えなくては・・・何か希望はある?」
「フィレム様とルクバト様の2人の名前から取って欲しいんですも、2人は仲良しですも」
「そうね私昔可愛がってくれた人が私の事をフィルと呼んでいた。ルクバトは、ル、が付くからあなたの名前はルル。私達が仲良し...ね。」
フィレムは顎に人差し指を置くとルクバトをチラリと見る、私が知らない間にルクバトは1度、大精霊王様を呼び出そうとしスワロキンを困らせた事があるらしい、大精霊王様は私達の親の様な存在、だけどあのお方も自由に生きたいと願っていた。
風の精霊王シィと気が合うのでは?とも思った事も無くはない、
大精霊王様の役目は全てを纏め決める存在、私達は大きな事があれば報告するが、基本は精霊王達がこの場をまとめ事態を治める。もし仮に問題が起き私達では押さえきれなかった時は、大精霊王様に力を借りる事になる。
「任せて欲しいんですも、」
「じゃあお願いね。何かあったら教えて頂戴。」
ルルを始めとした5の子達が魔法陣へと消える、
私はその後慌てて来た精霊からスワロキンからのSOSを受け取ると、光の魔力を込めた手紙を送った。
後はあの子達が帰って来るのを待つだけ。
無事にスワロキンが地上に帰ってきた気配があったので、私は転移魔法陣でスワロキンの側に行く、スワロキンは疲れたのか地面に座り込んでいた。近くに行き声をかける。
「スワロキン大丈夫?何があったの?」
スワロキンは息を整え立ち上がると、土が着いたところを手で払う、手のひらの上に向け開く、
何かの欠片かしら?と見て私は眉を寄せ息を飲む。
その欠片からは真っ黒なうずが見える、これは邪念、
しかも相当な恨みがあったのか、欠片の周囲は真っ黒で、浄化にはとても時間が掛かりそうだ。
「フィレム先程はありがとう本当に助かった。
俺が見たのは灰髪の男は湖にこれを投げたらしいが、その先を見ようとして俺が捕まりかけた。それ程に力を得ている。そちらはどうだった?」
「私の方はまだ小さな子達は帰ってきてないから分からないわ。」
「そうか・・・シィにも協力して欲しかったが、連絡が来ない」
「シィはいつもの事ね。ミラは方は何か見つけたかしら?私はもう少し小さな子達を待っているわ、」
私は魔法陣で元の場所に戻ると、丁度ルル達が魔法陣から弾き出された所だった。私は魔法で飛ばされたルル達が地面に叩きつけられない様に魔法を掛け守ると、小さな子達はオドオドとしているので、私はルルを呼ぶ、
「ルル、何があったの?」
「フィレム様光の中に変なものがあったんですも。私は何度も試したんですも、だけどダメだったんですも」
ルルがシュンと下を向くと、前髪の上にあるアホ毛も一緒に元気を無くしシュンと項垂れた。私は強い魔法陣を作ると、ルルの頭を優しく撫でる、ルルは弾かれた様に顔を上げた。
「ルル、私が見てくるわ留守番をお願いね。」
いつの間にか私の周りには、先程戻って来た精霊達が私を囲い、次はもっと頑張ると意気込んでいる。私は少し多めに魔力を与えこの子達にも留守番を頼んだ。
「私が行くなんて久しぶりだもの、スワロキンが少し危険な目にあったと言っていたの、もしもの事があるかもしれない、ルルあなたにこれを渡しておくわ。」
私の事を心配する小さな子達に「大丈夫よ」と微笑むと、小さな子達はそれでも心配なのか横に揺れる、
留守番を任せるルルに私が身につけていた双翼のペンダントを渡す。それは最後メルクに会った時に貰ったもの、それ以降メルクには会っていない、
「預かっておきますも。必ず帰ってきて欲しいですも、」
「大丈夫よ私は精霊王だもの、必ず帰って来るわ」
魔法陣に飛び込むと大きな欠片が私を襲う、私はそれを避けながら進むが、行く手を阻まれ捕まってしまうもう少し魔力を込めここから逃げ出そうとするが、魔力が足りずそのまま欠片に吸い込まれてしまった。
ルクバトは地上でフィレムの気配が消えた事に焦り、地の人族を贄に、大精霊王様を呼び出す準備を始めたとも知らずに・・・。
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