気がついたら乙女ゲームだった!チートって何ですか?美味しいですか?

おばば様

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帝国編

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 美人さんに城の近くの湖と言われ、魔法陣で転移させられた私達は、場所は湖の側だと思っていた、実際は湖の水の中に飛ばされた。足元の魔法陣はこの水は濁り見えないが、2人で水から顔を上げると服や髪がびちゃびちゃだった。すぐ側の底は腰下の水位で溺れる事は無かった。アウラは突然の事で驚いてはいるが、すぐに冷静になったらしく、すぐキョロキョロと辺りを見回す。

 私は事ある事に水が関係する事が多い、前世の時もそうだったし、前世を思い出した時もそうだった。そして今回だ流石に嫌になる。ギュッと目を閉じ嫌な気持ちをかき消す。

「カーナ大丈夫?何故あんな場所に魔法陣が・・・」

「・・・」

「カーナ本当に大丈夫?かなり水が臭うな・・・身体が冷えるまずは先に水から上がろう、」

 アウラに肩を支えられ私達は湖から上がると、私はボーゼンと湖を見ていた、「カーナ暫くそこで待ってて」と言い残しアウラは危険な魔物がいないかを確認する為、近場の岩場等の周りを見る。私は目の前に広がる光景を見て愕然とした。

 聞いてはいたが木や草等は本当に何も生えていない、水は濁りそして臭う、湖は少し深くそして小さい、
 しかし母様に見せて貰った場所とは違う、母様に見せて貰ったのは、もう少し湖が大きい場所だった。

 私は帰り道を探す為、キョロキョロと見て城を探すが見当たらなかった。そして次第に魂と記憶の解除がここでは無い事に安心する自分がいた、ヘナヘナとその場に力なく座り込む、私はアウラに声を掛けようとした、私の声は出ない、ひたすら声を出そうと口を動かすが、私の声帯は声を出す事は無かった、
 アウラは私が口をパクパクさせているのを見て、ギュッと力強く握りこぶしをつくる、また周りを確認し始める、私は話さないのでは無く話せなかった。そして喉の奥が締められた様に痛く苦しい、

 安全と確認したアウラは、地面に座り込んだ私を心配顔で横抱きで抱き上げ、近場の岩の上に私を下ろし座らせる、夏場の夕方で程よく温かい岩の上で冷えた私の身体を温めた、『温かい』小さく息を吐く、そして少し顔を赤らめアウラの上着を私の肩に掛ける、アウラの上着は私には少し大きく、スッポリと私の身体を包んだ、

 アウラも寒いのでは?と、顔を上げ首を傾げると優しく頭を撫で、「先に汚れを落とそう」と水魔法の応用の洗浄魔法で、私の身体や髪やドレスを綺麗にする、
 アウラは私が終わった後洗浄魔法を掛け綺麗にする、

 次は風魔法で濡れ髪や乾ていない私のドレスを先に乾かした後、アウラの服を乾かしていた。
 夏だからまだ良かったけど、冬場なら凍えていただろう、そこはまだ幸運だったと思う、

「カーナここはまさか?」

「・・・。」

 私はゆっくり頭を横に振ると、アウラの手を掴み手のひらに1文字づつ文字を書いていく、

『アウラ様私は声が出ないのです、アルゲティが空に帰った場所はここでは無いと思います。母様に教えて貰った場所ではありません。
 それと魔法陣を作った人は、ミューの事を知っている、水色の髪とエメラルドの瞳の美人さんでした、美人さんに城の近くの湖に飛ばすと言われましたが、実際の転移先は何故か湖の真ん中・・・、ミューなら呼べるかもしれないです。後巻き込んでごめんなさい。』

 手のひらに書き終わり、私はアウラにペコリと頭を下げる、アウラは突然頭を下げた私に驚きもせず、私の両肩を優しく掴み首を横に振る、「カーナの為だから何だってする、何も臆せずに何でも言って欲しい」と私を力強い目で見る。

 私は口パクでミューを呼ぶと、ミューは人型のまま、ピュー私の所に飛び込んでくる、私は飛び込んで来るミューを受け止めた。

「トゥカーナ!渡したい物があるのよ!」

「・・・。」

 私は口をパクパクさせ、話せない事をミューに伝えると、ミューはアウラをガン見し、「認めたくは無いけど、仕方が無いのよ」呟きと同時に手を上にあげた。

「そこの地の人族、私の声が聞こえる?」

「あぁ聞こえる・・・ミューだったね、」

 ミューは名前を呼ばれた事が嫌だったらしい、プイと横を向くが、私のの異変は気になるらしく、チラチラと心配そうに私を見る、

「トゥカーナはどうしたのよ・・・確か婚約者だったかしら?私の契約者に何したのよ!」

「怒らないでそれに僕は何もしてない!後僕はアウラ、、僕達は何者かにここに飛ばされた。転移魔法陣を作り飛ばしたのは、カーナから聞いた話だと、君の知り合いらしい、エメラルドの瞳と水色の髪の美人さんと言っていた、」

 アウラに怪訝な眼差しを向けていたミューは、アウラの話を聞き水色髪の美人さん?と首を傾げる、
 それが誰か分かったのだろう、凄く嫌そうな顔をした、何かを思い出し空に手を入れ手紙を取り出すと、それを読み始めた、読みながら凄い渋い顔をしている、
 それを見た私は、空に手を入れて取り出せるなんて、青い猫のポッケみたいで、私も使えないか是非聞いてみたい、あったら絶対便利だよね、

「・・・絶対精霊王様なのよ・・・ウゲ!」

「なんて書いてあるんだ?」

 ミューが丁度読み終わり、アウラがミューの手紙を覗き込もうとした時だった。手紙が目の前でフッと消える、私達が驚いているとミューは気まず気に話す。

「私達の手紙は読むと消えるの、消えたら魔力が送られ手紙を送った相手に、手紙を読んだ、と分かる様になっているのよ、ほら言ったそばから・・・面倒臭いのが来たのよ・・・」

 ミューが渋い顔をして見た方向を私達も見る、そこにはあの美人さんが、丁度私達の側に転移してきた所だった。
 ミューが面倒くさいとボヤく相手は、あの美人さんで、水色の髪と同じ色のドレスを揺らしながら優雅に歩く、私達に手をヒラヒラと振った。

 美人さんはミューを見て、その白く柔らかそうな頬を膨らませるが、目は泣きそうに歪んでいる、
 次の瞬間・・・子供が嘘泣きをする様に目の下に手を当て、エーンエーン(棒読み)と本当に泣き真似をし出した。ミューは呆れ顔をしているが、
 私達はその光景にあ然としてしまい、アウラと顔を見合せる、嘘泣きしている美人さんをマジマジと見てしまう、転移する前と性格が違う気が・・・。もっと大人のお姉さんって感じだったのに、今は小さな子供の様にも見えてしまう、綺麗なだけにちょっと残念な気持ちになってしまった。

「ちょっと!やっと手紙を読んだのね!ミューは冷たい。シクシク・・・」チラッ。

「精霊王様!やっとじゃないのよ!いつも、いつもいきなり送ってくるの!それに泣き真似なんて、わざとらしのよさ!なんで余所行きの話し方なのよ!」

 美人さんは精霊王様だったのね?!綺麗過ぎて女神だと思っていたわ・・・。余所行きの話し方?
 あっ・・・子供がかまって欲しくて泣き真似する時に似ている、ミューの事チラ見した目は笑ってた。
 そんな精霊王の態度を見たミューは怒り心頭だと、目元を釣り上げ精霊王を見る、
 見ているとミューはまるでお母さんの様に見え、精霊王は子供の様にも見えてくる・・・。

 泣き真似がバレた精霊王は、即座に泣き真似を止めると、下を向き自身の足元にある石をチョンと蹴っ飛ばすと、可愛らしく口を尖らせてミューを見る、
 君は拗ねた子供か?と突っ込みたくなるが、声が出ない事が幸いし、余計なひと言を言わなくて済んだ。

「えーだってー・・・暇だったからさー・・・いいじゃん!ミューにまた契約者が出来たから、遊んでくれなくて暇だったのー。」

「キィーなのよ!それじゃ理由にならないのよ!」

 ミューは話し方が違うと言っていたが、精霊王は一昔のギャルの様な話し方、
 精霊王はミューに怒られてもへこたれず、むしろもっと構えと言っている様にも見える、
 ミューと精霊王は私達を無視して話し出した。暇だったから呼び出すなんて、相手が嫌いなら呼び出しなんてしない、ミューは精霊王のお気に入りなのだろう、
 私は話せないので、心配はするが口出しは出来ない、

 私達は大人しく精霊王達の話を見守る事位しか出来なさそうで、キョロキョロと周りを見ていたアウラは、座るのに手頃な岩を見つけると、そこまで私を連れて行くと、シャツのポッケからハンカチを取り出し、自然な仕草で岩の上に広げると、私の手を取りエスコートして岩に座らせる、アウラは私の前に膝を付け私の目線と合わせる。目線が合うとアウラはフッと顔を緩め話す。

「カーナ岩は少しゴツゴツとしているから、僕の膝の上に座るかい?」

「・・・」

 私は顔を赤くしてフルフルと首を横に振る。
 そんな事されたら、う・・・嬉しいけど恥ずかし過ぎる!
 アウラは眉を下げしょぼんとしたが、その姿がまるでお預けをくらったワンコに見えてしまい、手を伸ばして頭を撫でたくなるのをグッと堪える。アウラは気を取り直した様に話し出す。

「そうか残念。・・・長くなりそうな感じがする、カーナ座って様子を見よう」

 アウラを見て頷くと、口パクでお礼を言う、私は少し腰を隅に移動させ、人差し指でアウラの手をツンツンと突つく、気がついたアウラはびっくりした顔で私を見る、私は手で岩をポンポンと叩き『半分どーぞ』と口パクして、そこにアウラを座らせた、
 これで半分こだよね。これでアウラが私の横で立っている事は無くなった。

 アウラは私が落ちないように私の肩を寄せ、身体を密着させると、私の頭に手を回しアウラに寄せる、私の頭がアウラの頭に密着させられてしまった。アウラは私の耳元で囁く「カーナもう離さないよ」私は顔から火が出そうになってしまうが、私は気を逸らす為にミュー達のやり取りを見る。

「精霊王様!どーして来たのかしら?何時もなら、こんなに速く読んでない事に気が付かないのに!」

「ひどーい!そんな事無いよー、ミューが読んだら私は一瞬で分かるのー!
 でもほんのちょっとだけ、ミューの契約者にも興味が出た。ねぇ・・・そこの貴女私とお話をしましょー?」

 精霊王は私の方を見ると女神の様に微笑む、
 アウラは精霊王の視線から私を守り、私の前に両手を広げ庇う様に立つ、私は『アウラ様・・・』と呟くが声は出ないので口パクになった。

「精霊王様、カーナに何か?」

「フフフ・・・それでお姫様を守るつもりなのー?悪い様にはしないよ、ただ、・・・聞きたい事があるだけなのー」

「・・・?」

「ねぇ・・・声が出ないの?それは何故だか分かるー?」

 私は首を横に数回振る、精霊王は凄い深刻そうな顔で私を見始めた、私はそんな顔をする精霊王を見ていると、顔からサーっと血の気が引いていくのが自分でも分かる、何かあるのかと身構えてしまった。

「貴女の体の中には・・・」

 私とアウラは思わずゴクリと喉を鳴らす。ミューはソワソワと私の側に来たので、私はミューを小さなぬいぐるみの様に抱えると、ミューは直ぐに分かったのか私が抱き抱えれる程に大きくなる。これ位のサイズ感だと抱き心地がいいな、と思わず思考が逸れた。
 ドキドキしながら精霊王が答えるのを待った。

「そこの汚い水を飲んで声が出ないんじゃないかしらー?私が転移場所を間違えちゃってー、」

 多分ね。まで付け加え誤魔化す様に、口元を手で隠すとフフ・・・と笑っている。どうやら私達は間違えて転移させられ濡れたらしい、私は精霊王をジト目で見ていると、ミューは私の手から離れていく、ゆっくり精霊王の後ろに止まる、素早い動きで空に手を入れ、そこから大きなハリセンを取り出した。

 ミューは怒りで目をつり上げ、口元だけはニヤリと笑いながら大きく振りかぶった、そのまま精霊王の頭めがけハリセンを振り下ろす。


 スパーン!


 いい音と一緒に、精霊王は頭を押え涙目で唸っている、アウラは驚きの顔の後に、一瞬だけ見せた笑顔が黒かった様に見える、実際私も『ざまぁ』とは思った。声が出てたら言ってたかもしれない。
 でもあのタイプのハリセンは、音がいいだけで実際は痛くないとも聞いたことがある。

「いったーい!酷いよミュー!うぅ・・・」

「飛ばした場所間違えたって、どーゆー事なのよ!トゥカーナはアルゲティとしての前世があって、アルゲティの復活を祈ったタブエルに、魂と記憶の解除の魔法を掛けられてるの、その解除の場所はこの地のどこかで、もし解除し始めても、ここにはライラもタブエルも来れない!空の人族は掟で、この地には来れないのに!」

 ミューは精霊王に私の説明をしてくれてるが、精霊王はミューの説明で何かが分かったのか、エメラルドの瞳を丸くして私を見る、
 私は精霊王から驚き見られる事よりも、空の人族が来れないと言う事は、母様や父様も来れないと言う事になる。
 そうなるとこの地を癒る人が居ない事になる、エニフ王国の人々の必死の祈りは・・・無駄だったのだろうか?

 私がパクパクと口を動かしていると、アウラはその口パクを言葉にしてくれる、これにはビックリした、これって確か読唇術どくしんじゅつ。言葉の通り口の動きで、離れた相手が何を話しているのか分かる、覚えるの大変そうだと思ったが、王太子教育に入っていそう・・・でも王太子妃教育には入っていないと思う・・・多分。

「母様も父様も来れないの?どーゆー事ミュー!と、カーナは言っているよ」

「そ・・・そうだったのよ、精霊王様に構ってる暇なんてなかったのよ」

 ミューに構ってる暇は無いと言われ、頭を下げ明らかにショックを受けている精霊王を無視して、ミューは私の方を向くと、アワアワしながら話を続ける。

「ライラとは私と契約をしていないから、直ぐにライラの所には行けなくて、ライラの住んでいる街の門を抜けて・・・えっと、あっ!違うのこれが言いたいんじゃないのよ!」

 私はミューを見て本当にアワアワしてると、身振り手振りで説明しようとするのは、人も精霊も変わらないのね、と不謹慎だけど笑ってしまう。

「ライラは・・・空の人族は掟があるから、この地には来れないと言ってたのよ。それでライラからこれを渡して欲しいと預かったの」

 ミューはまた空間に手を入れ出したのは、虹色の小さな球?で、ミューはそれを私に手渡し、私はそれをじっくり見る。
 虹色の綺麗なビー玉みたい。それを落とさない様に手の上で転がす。キラキラと光っているが何故か気になる。私はビー玉は気になるがハンカチに包むと、それをドレスにしまった、モヤモヤな気持ちのまま、また空間に手を入れたミューを見る。

 ミューが出したのはあの純白のドレスだった。1つ違う場所は後ろの翼の模様が無かった。キラキラと何かが付いているのか、ドレスは輝いていた。
 今思い返すと母様も純白のドレスを着ていたし、何回か会った父様も純白の衣服だった。

「うわー・・・また珍しい物を貰ったわねー。」

「トゥカーナ後・・・これお守りだって、ライラから渡されたのよ。」

「精霊王様これは珍しい物ですか?こちらに来る前にカーナが着ていたドレスと似ていますが?」

「ドレスは珍しいわねー、ドレスには複雑な魔法が組み込まれていて、着ている人を守るのー、空の人族には翼があるけどこのドレスなら、翼を仕舞う事が出来る、これは滅多に見れない物なのー。でもその球もどこかで見た覚えがあるのよねー。」

 空の人族のドレスを見て精霊王は驚きを隠せない様だった。アウラは私をじっと見ている。
 ミューは驚いている精霊王を無視して、私の方を向くと、パチンと指を鳴らした、すると今まで着ていたドレスは消え瞬時に純白のドレスになった、私はビックリして「あっ!」と声が出ると、隣りのアウラもホッとした顔をしていた、

「いきなり声が出る様になった?でも・・・この声は今日の夢で見たアルゲティの声・・・。」

「カーナ?!今日見た夢の話しは聞いてないよ?」

「えっと・・・ですね・・・」

 元々の私の声は、少し喋れば小鳥が囀っている様な高い声だった、
 アルゲティの声は大人の女性の声で、落ち着いた感じがする、だけど私はこの声は自分の声だと認識しているなんだか不思議な感じ。

 初めて夢に出てきた時や青髪の王と会った時に等にも、幾度も聞いた声。聞きなれたのかもしれない・・・と強く自分に言い聞かせる。髪、目、声・・・次々に色が変わっていく不安、その気持ちをココロの奥底に閉じ込めて蓋をして鍵を掛けた。そして私は不安を見せない様にニッコリと笑う。
 隣で私を見ていたアウラが横で眉を寄せたが、私は気が付かなかった。

「えっ!なになに?喧嘩でもしたの?お姉さんそれ聞きたいわー。」

「私の契約者を泣かせた?貴方なんなのかしら?私が逆に泣かせてやるのよ!」

「精霊王様もミューも違うから!少し私の話を聞いて欲しいです。聞いてくれますか?」

 私達のやり取りを聞き、ミューや精霊王が私の側に来た、最初から興味深そうに私の顔を見る精霊王や、落ち着かない顔をしたミューが私達の側に来る、私もミューにも聞きたい事もあるし、精霊王にも教えて欲しい事もある、

 湖に背を向けた精霊王は手を上に上げ指をパチンと鳴らす、すると湖の水が一瞬で綺麗になり。その水を1人掛けのソファの形にした、精霊王はその椅子にちょこんと座る。
 それは!?ウォーターベッドのソファバージョンなの?!私が驚いていると精霊王は私の視線に気がついたのか優しげに微笑む、

「私は水の精霊王だから、こんな事も出来るのよー。フフフーン♪︎良いでしょ?」

 あの優しげな微笑みは何だったのか?正直羨ましい、今はそれどころでは無い、
 横でアウラは自分の膝の上をポンポンと叩いていた。

「柔らかくは無いが、カーナ僕の膝に座るかい?僕の膝の上はカーナだけの特等席だよ?」

「精霊王様私も水ソファしてみたいです、後から教えてください。アウラ様お気持ちだけ頂きます。ミューはこっちに来て」

「分かったのよ・・・」

 ミューは姿を少し大きくして私の膝にちょこんと座り、アウラに勝ち誇った様に見る、
 アウラはそんなミューを見て眉を寄せ、ミューの頬をグリグリ突く、ミューはそんなアウラの手を鬱陶しげに払う、2人は睨み合い間に火花が見えた様な気がする。

 私はアウラの行動を大人気ないと思いつつも、アウラには読唇術をして貰ったし、お礼の意味も込めて私はアウラの身体に寄りかかった。
 するとアウラに手を腰に回すと、腰を寄せる様にピッタリと寄せられてしまう、ビックリしてアウラを見たが、甘く微笑まれて終わった。
 私は気にしないようにしながら、話しを進める事にした。

「話すと長くなりますが・・・最初父様タブエルとは私が産まれて少しした頃に、あっ・・・地の人族には産まれた赤ちゃんを連れていく洗練の儀という儀式があります。私はその教会で父様と会っているそうです。それと・・・・・・・・・。」

 私は今までの話しや、観てきた夢の話をした、昨日見た夢の話しになると、ミューは忌々しい気に城のある方を見てギリギリと歯を剥き出しているし、精霊王は何か思い当たる節があるのか目を大きく見開いた。

 勿論アルゲティの姿になったら父様に強制連行され、空の人族の所へ連れ戻される事、
 今寝ている王族の部屋にミューは来れない事等も話す。
 捜し物の話しは出来るのか?と考えたが、そこはアウラが分かる範囲で言うと思う、私が顔を見るとアウラは頷いてくれた。
 長い話しが終わると辺りは少し暗くなっていた。
 精霊王は全部の話しを聞き、立ち上がるといきなり叫び出した。

「空の人族の翼を毟ったですってー?!空の人族の羽根はとても神聖なものなのー。悪意を持った人が羽根を持てばその地は滅ぶとも言われているわ、禁忌の魔法を使った空の人の話しは知ってるわー。精霊王会で話し合った内容だと、確か魔力不足で不発じゃなかったかしら?でも何故アルゲティは空に帰ったのか?に行きつくわねー。」

「そうなのですか?私はアルゲティは禁忌の魔法を使ったものだと思ってました。ミューはその時何をしていたの?」

 ミューはアルゲティの契約精霊だから何か知ってると思ったが、それは私の思い違いだった。ミューは泣きそうな顔をして首をフルフルと横に振る。

「・・・私はアルゲティに頼まれて光の精霊王様の所に行っていたのよ。私が居ない時にアウストとアルゲティとの契約の糸が切れた・・・本当に絶望したのよ・・・」

「そう・・・ごめんねミュー辛い事思い出させたわね。」

 ミューも辛かったのだろう、顔を見れば泣きそうな顔をしている、私の首に精一杯抱きつく、「もうあんな思いは懲り懲りなのよ・・・」と呟く、私は「ごめんね。話しをしてくれてありがとうミュー」と言いながら後頭部を優しく撫でる。2人で慰めあっていると、精霊王は鼻息を荒くして話し出した。ミューと2人で精霊王を冷たい目で見た。

「でもでもー。・・・前世の記憶アルゲティを持っていていて、魂と記憶の解除の魔法を掛られ、アルゲティの父様に空の人族の姿になったら連れ戻すと言われたのー?でも貴女は地の人族よね?そもそも魂と記憶の解除をされて戻るのー?」

「僕達・・・イヤ・・・アウストラリス王国で話しあった結果は、結局地の人族人間は、空の人族天使には、なれない、元々の身体の創りが違う、これに皆は同意したのです。エニフ王国に来たのは捜し物です、カーナは捜し物の話は何故か出来ないので、」

「そうなのー。・・・それはもしかしたら、あの方が関わっているのかもねー。」

「あのお方ですか?前に母様も言っていた気がします。誰の事なのですか?」

「それなんだけどー。何故だか名前を忘れてしまうの、もちろん私は会った事はあるのだけどねー。可愛らしい女の子だった迄は思い出すのよねー。もちろん空の人族よりも遥かに長生きなのー、空の人族の街の保護や掟は、あのお方が全て1人で判断を下しているらしいのよー。」

「名前を忘れる?思い違いじゃないのですか?」

「それ間違いじゃないのよ。私も昔1度会った事があるけど、姿は朧気に覚えているけど、名前は覚えていないのよ・・・。」

 いつの間にか、ここに居た全員が立ち上がって話をしていた。その話を聞いて私は何故か、頭の隅でピンク色の長い髪を思い出したが、気のせいだと頭を振る。

 立ち上がった私達はまた元の場所に座る為に腰を下ろそうとした所、近くでパチンと指を鳴らす音と一緒に私達の後ろにソファがあった。今回は私が連れてきたのだから特別よー。と優しげに微笑むが、考えてみるとミューに会いたい精霊王が、ミューの気を引きたいが為に私を巻き込んだ事になる。
 ジト目で精霊王を見てからソファに座る。夏場は嬉しい冷たいソファで嬉しいが、私達はそろそろ帰らないと大捜索願いが出されていそうな予感さえする。

「そろそろ帰ろうカーナ、流石に心配していると思う。」

「アウラ様帰りたくても、その帰り道が・・・」

 ニヤリと笑った精霊王は両手を腰に置くとドヤ顔をした。ミューはそんな精霊王を物凄い顔で見ていた。

「フフーン!驚くといいわー!今いる空間の時間の流れを、みっちゃんにお願いして遅くして貰っているのー。元に戻るとほんの少ししか時間しか経っていないのよー!これは幻覚魔法よー!」

「えっ!でも日は沈んでますし、薄暗いですよね?」

「大丈夫よー!後お詫びにそのドレスに、幻覚魔法掛けておくねー」

 精霊王はドヤ顔をしてまた鼻歌を歌いながら、魔法陣を描き始めた。すると青く魔法陣は光り輝き始めた。ミューは私に飛び込んで来て抱きつくと、魔法陣は発動し始めた。

「あー!私ったら名前言うの忘れちゃったー。私は水の精霊王のー。ミ・・・」

 腰に手を当てドヤ顔の精霊王が名前を言う前に私達は転移されてしまい聞けなかった、アウラと2人して困惑していると、ミューは眉を寄せて話す。

「名前はミラなのよ・・・私は名前を言わないと決めているのよ!本当に面倒臭い精霊王様なのよ!」

 ボヤけた視界が広がり、周りを見ると私達は元の土産屋さんに居た。
 丁度ワルドがここの主人と話が終わったのか、こちらへと来ていた。ミューは私が抱っこしているがアウラと私以外は見える人は居ないから安心だった。

「アウラ土産は見つかったか?」

 アウラもア然としていたのか、入口前に置かれたファブの話をしてしまった。

「ここの木彫り凄いな・・・と見ていたよ」

「バカ!あれ程言うなと・・・」

 ドドドド・・・と地響きがしてそちらを向くと、緑色の前掛けをして、木彫りに使う道具を両手で持った細身の男性が凄い速さでやって来た。50歳位だろうか?短くは無い茶髪はボザボサしていた、髪には木彫りの破片が着いていた。主人は木彫りの道具を近くの籠に優しく入れて、頭を振り木の破片を落としてから話しだす。

「ぼ・・・僕の自信作なんだ。僕の名前はフィルクここの店を経営しているんだ、このファブは僕の運命を変えたんだ!聞いてくれるよね!!!嫌だと言っても話すけど、」

 アウラの手をフィルクは両手でガッシリ握りしめていて、離さないとフィルクの目は語っている様にも見える、
 その様子を見てワルドは1歩後ろに下がったが、アウラに腕を掴まれ逃げられない様子だった。腕を掴まれたワルドはアウラを苦々しく見ている、

「そこのお嬢様も聞くかい?いい話だよ!」

「いいえ。私は風邪を引いてしまったのか声が掠れているのです。私はお土産を探してますので、私の事はお構いなくゆっくりどうぞ。」

「でも聞いてね、このファブは僕を迷いから救ってくれたんだ。あー勿論天使様にも感謝はしているよ。でもねファブは・・・」

「お前・・・トゥカーナ嬢!風邪なんか引いてないだろ?!アウラが巻き込んだんだ、婚約者が責任を持ってこの話に付き合え!」

「ワルド!カーナと話をしないと、教会を出る前に話しただろ?」

 私が断ったのにフィルクは勝手に話しだすし、アウラとワルドはまた言い合いをし始める、私は疲れてきてしまい、ミューと顔を見合わせると首を傾ける、

「アウラ!外でトゥカーナ嬢と一言も話さないとか、出来る訳無いだろ?!普通じゃない!婚約者の事どんだけ好きなんだよ!」

「それでね。ファブを彫る時に大変な場所は沢山ある。大体の大きさを決めたら一気に彫り進まずに、まずはファブに感謝をするんだ。君は・・・」

「僕の命よりも大事な婚約者さ!」

「何それ重いわ!」

 フィルクの言葉と被り、私はアウラから凄く熱い告白を受けた気持ちになり顔が赤くなるが、頭を振りその考えを消し去る、すかさずワルドが突っ込みを入れた為また2人で言い合いを始めたので、私はアウラのその気持ちだけを貰う、するとハンカチの中に入れたビー玉がホンワカと暖かくなった、

 本当にこの球?玉?母様はお守りと言っていたが、私にはどうしてもお守りには思えないが、ここで出しても仕方が無いのでハンカチに入れたビー玉をドレスの上からボンボンと叩き存在を確認する。

 店の億の商品棚の前で3人中1人は全く違う話をしている混乱ぶりだった、フィルクは木彫りのファブに熱い眼差しを送っているし、アウラはワルドと一緒に私の話をしているが、そのやり取りはまるで漫才の様にも見えてくる。

 ちらりとワルドの手元を見ると、フィルクがいつの間にかワルドの手を掴んでいた。私は誰か止めてくれる人が居ないのかと、店の奥を見ていた。
 私の願いが通じたのか、奥からフリフリのエプロンを着けた、恰幅の良い女の人が出てきて、フィルクの後ろに立ちニヤリと笑う、フィルクの細い肩に力強くドンと手を置く、その時ボキッと音が聞こえたが、ここは知らないフリをして見逃す・・・。見ざる言わざる聞かざる・・・。ブツブツと念仏の様に唱える。

「フィルク時間だよ!サッサと用意しなさいよ!」

「アーリン?!今いい所なんだファブの特長を今からしようとしたんだ!頼むよ!もう少しだけ・・・」

 フィルクは両手を合わせお願いしたが、アーリンはフィルクを睨む、するとフィルクは奥へとトボトボと帰って行く、余程話をしたかったのか、諦め切れない様子で何度も私達の方を見ながら奥へ入っていった。

「あー!もー!すまないね。ワルド様また言っちまったのかい?気をつけな!と前に言ったじゃない。」

「悪い連れが初めて来たものだから、うっかり話してしまった。アーリン助かったありがとう。」

「僕からもお礼を言わせて欲しい、助かったありがとう。」

 周りが挨拶合戦を始めてしまい、私はまた頭をペコリと下げ、商品が入った籠をアーリンに出す。

「はいよ!お買い上げありがとね!」

 綺麗な紙やリボン等も一緒に入れて貰うと、扉からラケルタが来てお土産探しは終了となった。アウラの所迄来て私達の長い冒険?は終わり、ドタバタとした買い物はこうして終わった。ミューはまた母様の所に行って今回の事を話してくるらしい、

「トゥカーナ何かあったら呼んでなのよ・・・アルゲティの様にいきなりいなくならないで・・・。」

「ミューは心配症ね!大丈夫!すぐ呼ぶわ」

 ミューを見送ると、帰りは迎えに来た馬車で王城に帰る、人もまだ少なく馬車はすぐに王城へ着く、
 予定ではもう少し遅く到着予定だったが、エニフ王国の土壌調査をするアウストラリス王国の魔術師達が到着したらしく、魔術師達はエントランスで私達の帰りを待っているらしい、
 私達は魔術師達に挨拶をする為に、また着替え私達は王妃達が待つエントランスへと向かう、
 あの精霊王に掛けて貰った幻惑の魔法が凄かった。ロッテが脱がせたドレスをまた手に取り、またそのドレスを着せ満足気に頷いてた。

 王妃の計らいで一緒に魔術師達の前に出る、
 そこに居たのはケーティを含めた3人の魔術師達だった。ケーティが膝を深く折り、カーテシーをして代表して話し出しす。

「アウストラリス王国から派遣されて来ました。土壌調査を明日から行います。何かあれば何なりとお申し付け下さい。」

「アウストラリス王国の協力に感謝します。今日は長旅の疲れを癒し、明日から調査を願いますね。そうね・・・また例のアレをお願いしてもいいかしら?あの子も女の子なら怖がらないと思うのよ。」

「お任せ下さい。」

 王妃の言葉に了承すると、ケーティは頭上げ私に可愛くウインクをするが、残念な事に両目が閉じていた。
 私はケーティに色々な話(精霊王の話)をしたかったが、疲れている事もあるだろうと、客間へと案内され下がっていく、明日は私達も同行する事になっているので、明日ゆっくり話しをしようと考えた。
 アウラは魔術師達と話しをする為別行動になる為。小さく手を振り私は寂しげにアウラを見送った。

 王妃とも別れ私は何故か1人で廊下を歩いていた、すると後ろから真っ黒な魔術服を着た男が私に声を掛け、振り向きざま男にお腹を強打され、気を失ってしまう。

「久しぶりだなアルゲティ!さぁお仕置の時間だ」

 男は転移魔法陣を作ると、私を荷物の様に抱えた、唯一廊下に残ったのは、あのビー玉が入ったハンカチだけで、私は誰にも気が付かれずに連れ去られたのだった。
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