気がついたら乙女ゲームだった!チートって何ですか?美味しいですか?

おばば様

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帝国編

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シャムの視点です。シャムの過去の話しの中に残酷な描写があります。苦手な方は飛ばしてください。



神から貰い受けた膨大な量の魔力、
1度見聞きすれば覚えてしまう知能、
白くスラリとした手足、神に愛される為にある身体、
神に愛された愛らしいく人形の様に整った顔。この神の祝福の証呪われたピンク色の髪と神に愛されたピンク色の大きな瞳、私はため息を吐きつつ、姿見の前で1番古い記憶を思い出す。

私はいつどこで産まれ両親が誰かも分からない、けれど自分の名前だけは覚えていた。
生後間もない頃だろうと思う、産まれて直ぐ目が見えない私に、母親らしい人に頭を撫でられ抱きしめられた。そして頬にポツリ、ポツリと暖かい水が数滴掛かる、優しく私の頬に付いた水を拭い涙声で話す。

『あなたの名前は、シ・・・シャム。さよなら私の娘、あなたは神々達の愛し子、ごめんね・・・あなたと一緒に過ごせないの』

この言葉を覚えていたから、
私はこの時程、自分の物覚えの良さを恨めしいと思った事は無い、母親の事なんて知らなければ良かったとさえ思ってしまう。
そうすれば・・・私は空の人族も含め全てを嫌いになれたのに。
この言葉を最後に私は、母親あの人の声を1度も聞かない、私は母親から神へと捧げられたのだろう。あんなに優しい声で私の名前を呼んでいたのに・・・。
長い月日が過ぎ私は歩ける歳になると、すぐに文字を覚えた、そして飢えた獣の様に沢山の本を読み漁る、

私は母親の言葉を忘れたいが故に必死だった。幼心の中、私に優しい言葉をくれた母親はいつか迎えに来てくれるのでは?と甘い幻想を抱いていた。けどそれも幻だと確信してしまった。窓から外を見ても誰も来ないからだ、確信してから何度泣きながらベッドに入ったか思い出したくは無い、

あの声を聞いてから、200年程過ぎた。
空の人族の成長は、交流があった地の人族よりも遥かに遅い。特に神の愛し子の私はなかなか成長しなかった。
空の人族は200年経てば立派な成人として扱われ、大人と見た目は変わらなくなる、結婚や子供を授かる事が出来る。けど私は200年経っても無駄に歳を重ねただけの・・・子供の容姿をしていた。

自室で姿見で自分を改めて見る、ピンク色の艶のある長い髪、そのピンクを彩る白くきめ細かい肌、ピンク色の大きな瞳、スラリとした鼻、ふっくらとして柔らかそうな唇、背中には白く美しい翼がある、姿見の前で腕を組み姿見の中の自分を睨み1人ボヤく、

「こうなると化け物ね・・・私はいつになったら大人になれるのかしら?」

これ以上自分の姿を見るのが嫌になった私は、自室を出て気分転換の散歩する為に庭へ行く、
年老いた男の使用人が私の後ろを着いてくる、この使用人は私が目が見えた時に居て、神に愛された乙女を助ける為、若い頃から長い間私に仕えている、

私は1人になりたくて後ろを振り向き、胸前にきた髪を手で後ろに払う、その髪はサラサラと背中に戻る。白い髭を綺麗に揃えている使用人を見て微笑む、

「おぉ!シャム様なんと可愛らしい!これこそ神々から愛された乙女ですぞ。」

「今、私とても気分が悪いの、考え事をしたいの1人になりたいの、1人にさせてくれないかしら?」

「シャム様の身に何かあれば、神々に申し訳が立ちません。貴女様1人の身体ではありません。その事をお忘れなく、空の人族の始まりの乙女としての自覚を・・・」

クドクドとまた言い出す使用人に、深いため息を吐く、私は他の考えをして、それを右から左へ聞き流す。
赤子の頃から何度も聞かされてきた。無論これを言うのは年老いた使用人達で、私が成人するまでに、使用人が何人も入れ替わっていくのを見ていた。
髪色や瞳の色、この姿こそ神々に愛された乙女なのです。と何度も・・・
私はこの姿になりたくてなった訳では無い。代われるなら変わって欲しい位だ。まだ使用人はクドクドと話しているが、そろそろ終わりそうだった。チラリと使用人を見る、

「・・・ですから、シャム様は特別なのです。」

「知ってるわ!何度も言わないで頂戴!1度聞いたら分かるから。」

「流石です!シャム様!祝福を与えた神々も、お喜びなさっていましょう。」

白髭の使用人は手を胸に当て頭を下げた。私はそのまま散歩を始めた。使用人が丁寧に手入れをして、育てた花達が庭を埋め尽くしている。私が遊歩道を歩けば、花達は喜ぶ様に揺れている、

50年ほど前に入れた若い使用人達は、私の事を1歩引いて世話をする。若い使用人と目が合えば私に微笑むが、その裏に怯えを含んだ顔をしていて、最初は私も傷ついたが、すぐに私は慣れてしまった、

私は知りたかった。だから私の身の回りを手伝ってくれる若い女の使用人に声を掛けた、オレンジ色の髪の使用人はピクリと両肩を跳ねさせると、腰を直角に曲げ頭を下げる。

「私の事怖い?怯えながら世話をして貰う必要は無いわ。でも1つだけ教えて頂戴。私に怯えるのは何故なの?私は何もしないわよ、その理由を教えて」

「と・・・とんでもありません。私がそんな顔をしていましたか?も・・・申し訳ありません。シ・・・シャム様を怖いなんて思ってません。」

頭を下げる使用人の顔色は見えないが、身体と声は震えていた、ほかの若い使用人も同様なのだから。と大きなため息を着くと、ピクリと使用人は震え怯える、

「もう良いわ。使用人を全員集めて。1人残らずよ!」

「は・・・はい!ただ今!」

急ぐ様に使用人は部屋を出ていくと、直ぐにこの部屋に全員が集められた、私は使用人の目線まで翼で飛ぶと1人づつ目を合わせていく、私と目が合ったオレンジ髪の若い女の使用人と、紺髪の若い男の使用人は怯えを含んだ顔で私を見る、けどそんなに私が怖いならいらない、出て行けばいい!私は我慢の限界だった。いつもなら押さえられる感情を現わにしていた。

「全員出ていって!もう誰も来ないで!」

私は怒りに任せ大きな声を出してしまう、若い使用人は両肩をピクリと動かしたが、年老いた使用人達は、そんな態度の若い使用人を睨みつけ、その後私の前に来て膝を折り頭を下げる、

「シャム様お待ち下さい。それでは私達が叱られます。せめて私達が空に帰るまでお側に・・・」

「知らない!さっさと出ていって!私の事なんて心配なんてしてない癖に!なんで!なんでなのよ!私もアナタ達空の人族と変わりは無いのに、どうして私だけ?・・・ねえ!誰か教えて!教えてよ!」

「そ・・・それは・・・。」

私は思いの丈を使用人達にぶつけた。バツが悪そうに若い使用人達は私を見るが、私は止まらなかった。今迄の鬱憤を晴らすように口が動く、白髭の使用人もその次の言葉が出ないのか悲しげな顔をして顔を下にさげた、私はそれを肯定と取り、私は長く仕えた使用人達も一緒に追い出す。
先人がしていたやり方、対象となる人の足元に転移魔法陣を作り、パチンと指を鳴らし街へ追い出す。

使用人を追い出したら、屋敷が一気に静かになった気がした。キーンと耳鳴りがして耳が痛いそれに私が寂しいなんて、気のせいだと頭を振り治す。

私が考えての今回の結果だ、怖がられるのは懲り懲りだと、人も含む生き物が居ない山の中で1人のんびりと暮らした。



使用人達を追い出してから、何百年と過ぎた、
私は生物が住まない山の中、広く大きな屋敷に1人で暮らす。
その間何度か白髭の元使用人が尋ねてきたが、すぐに追い返した。最後に会った時、白髭の元使用人は泣いていた。『シャム様を1人にしてしまい申し訳ない』と、それを聞き私は、良心がグラグラと揺らぐ、それをすぐ気のせいだと頭を振り、直ぐに元使用人を追い出した。屋敷に誰かが来るのを拒みたかった、屋敷の周りに幻惑魔法や結界魔法を掛け、私が呼ぶまで来れなくした。


あれから来る人は無い、また静かな時間を過した。私は誰も居ない山に種を撒き花を咲かせ、そこに拓けた場所を作り、椅子を置き咲かせた花を見たりした。

それでも1人寂しい時もある、そんな時には、先人の神の祝福呪われた髪の乙女の日記を見たりして過ごす。先人達は色々な事をしていた。ある者は神に祈りを捧げ、ある者は趣味に明け暮れ、ある者は空の人族と地の人を仲良くさせた者もいた。でも最初の乙女の日記は見当たらず、その内出てきそうな気もするが、時間があり過ぎるのも問題だとため息を吐いた。

私は長い時間を掛け先人の日記を読み終わり愕然としてしまった、何をすればこの呪いから解放されるのか、結局分からずじまいだった、私はこの呪いから解放される空に帰る日を考えてしまう、そんな気分を吹き飛ばそうとまた新しく見つけた厚い本を手に取った。

「私には何も無い家族や、本に書いてあった友人も・・・相談出来る相手も居ない。でも寂しくなんてないわ、私には沢山の本があるから。」

先人達も長い時間生きて暇だったのだろう、沢山の本がこの屋敷を埋め尽くす程にある、私は魔法で紅茶を入れ、ゆっくりと時間を掛け本を読む日々、結局私は本があれば生きていけるのだと思った。

ある日の昼過ぎ、日々読んでいた本を読み終わってしまい、暇つぶしに新しい本を探そうと、最奥部屋に入った時、見た事も無い古い棚を見つけた。その奥から、空の人族に昔から伝わる本を見つけた。私はさっそく読み始めた。とても厚い本だったが、それをゆっくり数日を掛け読み終わる、その話にはこう記されている。


はるか昔、ピンクの髪色と瞳を持つ乙女と神は偶然出会い恋をした。
神は乙女はいずれ空に帰ってしまうと嘆いた、
愛する乙女と共に長い時間を過ごせる様に、神は自分の涙を乙女に贈った。

神に贈り物を貰った乙女は、神の涙を受け取り感謝と祈りを捧げる、神に飲みなさいと促され乙女は神の涙を飲み干す。すると乙女は光り輝き、乙女の細く美しい背中に異変が起きた、神と共に飛べる翼が背中に生え、自由に空を飛べる様になった、神が望んだ命の時間も増え、命が伸びた事に神は歓喜した。乙女と神の間に沢山の子供が産まれた。

生きる時間は伸びてもいつかは空へ帰る。そう悩んだ神は、愛する乙女が空に返っても繰り返し神の元に現れる様に、神は乙女に自分のチカラを渡した。そして空に帰る度に祝福の乙女が生まれる様になった。


「そう・・・この物語が空の人族の始まりで、神の涙が球の正体なのね、神は自分の分身なんて都合の良い言葉を、よく思い付いたものだわ。」

神の涙は成人の義の日を迎えると、両親と一緒に神に祈りを捧げ、成人になった喜びと親離れの証でもある、神の涙を自分自身の欠片として親から子供に贈られる、子供に渡す神の涙は、産まれた時不思議とその子供が持っていて、それを成人の義まで親が大切に取っておくらしい、私は自分で空間ポッケに入れ保管をした。
 
私の成人の義の時は1人だった為、先代の日記に書いてあった事に従った、私は自分の神の涙を自分で飲み、神に祈りを捧げた、その後私の妊娠が発覚し出産した、産まれると我が子は直ぐ空に帰った。冷たくなった小さな我が子を、母親がしてくれた様に、私も優しく頭を撫で抱きしめた、涙が我が子の頬にポタポタと落ち、その涙の一部は、小さな口の中に入る、胸が裂けそうにな程に痛く、呼吸が乱れ誰も居ない屋敷の中、大きな声を出して泣いた、私の母親も同じ気持ちだったのだろうか、そう思うとまだ母親は幸せだったのかもしれない、私は生きているのだから、

どれだけ泣いたのか覚えてない、泣き腫らした目を擦りグチャグチャ頭で考える、乙女の日記には出産の事はどの乙女も書いてなかった。もしかしたら皆私と同じ様に、なったのかもしれない、私もこの事は書くつもりも無い、違う・・・書けない、何も知らない方がいい、何故かそう思った。

契りを交わした神には1度も会った事は無い、それなのに・・・と疑問は残るが、私の子供は目が開いたら何色なのか気になったが。そのまま我が子を私のお気に入りの場所に埋葬した後、自室に戻り、私は我が子が残した神の涙を花の形のペンダントに形を変え、首から下げる事にした。もちろん他から見えない様に、ドレスの下に隠し肌身離さず身に着ける、あの子は私の唯一の家族だったから。

空の人族達は好きな相手に自分の分身として贈り、贈られた相手は最愛の人のそれを身に着ける。

好きな相手がもし空の人族では無くても、空の人族と同等に生きる事は出来る。
そう・・・最初の乙女の様に、神の涙を飲めば空の人族にはなれる、
でも私は神と乙女の様になって欲しくない、必ずどちらが悲しい思いをするだけだから、
だから私は掟を作った。空の人族の代表者を呼び出し告げた、神の涙、それが長年隠してきた空の人族、いや違う、私達神に愛された乙女の秘密でもある。

そしてこのピンク色の乙女が居なくなる事は無い、空に帰ると直ぐに産まれてくるのだから、それも1日も空かずピンク髪色と瞳の乙女がどこかで産まれる。それを繰り返し、私は7人目の乙女の生まれ変わりらしい、私は私なのに・・・。
そして生まれる乙女は同じ顔らしい、使用人達以外は、ずっと私が生きていると思われている、神の祝福のおかげで、私の寿命は普通の空の人族よりも長い、空の人族の平均寿命は800年程、私は3倍以上は生きる、らしい、これは3つ前の乙女が書いていた。1つ前の乙女の日記には見たく無かった事も書いてあった、乙女が歳を重ねると、乙女の存在を同族が恐れ、乙女の名前を忘れてしまう、と、そして屋敷に仕える使用人達も、皆怯え顔で自分を見る。と、私は怯え顔の若い使用人を思い出し、その日記を慌てて閉じ、顔をテーブルに伏せると、手を振り上げて魔法を発動させ、その日記を本棚の奥にしまった。
その日記をまた見ようとは思わなかった。




そして成人の義の歳になってからは、一切見た目が変わらなくなった。空に帰る前は歳を取っていくらしい、それは乙女の日記にも書いてあった事、覚悟はしていた。

いっさい歳を取らない私を、空の人族は恐れ、ついに私の名前を忘れてしまった。私の名前を覚えているのは、私が空の人族を呼び出して、誰かを迎えに行けと使いに出した者位だ、その後綺麗に私の名前を忘れる、長年そんな日々が続けば諦めが付く、私は憂鬱な日々を過した。

ある日男が私に面会したいと手紙を寄越した、私は場所を指定し約束の日花畑に呼び出した。
私に怯えない様に気丈に振舞うが、残念な事に翼が少し震えている、私は椅子に優雅に腰掛け長い髪を弄りつまらなそうに男を見ると、男に私に会いに来た理由を聞く、

「で、私に何か用?」

「我が娘が・・・禁忌の魔法を・・・。しかしあの魔法は未遂です。どうかお許しを!もう1つあります。あの国で恐らく翼の羽根を毟られたと思います。羽根の影響で広範囲の生き物や草花が生えない土地になりました。」

神が与えたチカラの影響で、羽根を持つ物に悪意があれば災いが起きる、地の人族は知らなかったのだろう、精霊達は知ってるのかもしれない、改善されれば徐々に災いは薄まるが、だがそれは長い時間が必要とされる、空の人族の翼を毟った者は神の天罰が下される。どうなるかなんて知らない、こんな事は初めてだから、

男は両膝を折り頭を地面に着け話す。例え未遂でも許す事は出来ない、なぜなら地の人族と空の人族は、お互いに干渉しないと決まりがあるのだが、まぁ、何代も代替わりしている地の人族だから忘れたのかもしれないが、私達には使ってはいけない魔法がいくつもある、私達は神と乙女の子孫でもある、その為自分で空に帰る魔法は禁術となっている、

「まさかあの魔法を使ったの?地の人族は、ここの場所を知らないから良かったけど、知ってたら攻めて来たかもね。それで娘はどうなった?」

「娘は・・・空に帰りました。恐らく魔力切れだと思います。しかしあの子には契約精霊が居たのです。もし契約精霊のミューがいたら生きていたのかもしれません」

「ふーん魔力切れね、それで球はどうなったの?回収したのでしょうね?」

「はい地の人族の男が大事そうに持っていました。娘の亡骸と一緒に球も・・・。」

男は頭を下げたまま、震える手を前に出す、その手の中には小さな飾りが取り着けられた神の涙があった。私は涙を魔法で浮かせ、自分の手元に持ってくると、それを空中で浮かせクルクルと回しその球の記憶をぱっと見る、布に包み空間ポッケにしまう、

この男の娘は禁忌の魔法を使っただけでは無く、あろう事か地の人族と結婚をしようとしたらしい、呆れてしまい大きなため息を吐くと、椅子の手すりに肘を乗せ、ほおずえをついて男を見た、男は頭を下げたままピクリともしない、

「空の人族の掟を破ったの?私、地の人族と結婚は出来ないと言ったよね、寿命が地の人族の方が短いから、って」

「はい・・・ですがあの子の幸せを考えたら・・・」

そこで男は泣き崩れた。私より大きな男は、大声を上げ泣いているのを私は冷めた目で見た、それと同時に我が子が空に帰った時を思い出してしまい、ドレスの上からペンダントを握りしめ顔を顰める、男の気持ちはよく分かった。

「分かったわ、娘の名前は?」

「アルゲティです。お転婆でしたがとても可愛く、将来は父様のお嫁さんになると言ってたのに!他の男なんかとー!」

「うるさいわね!」

威圧すると男はそのままの姿勢で固まってしまう、このままでは話が聞けない為、私は威圧を解くと男は、そのままの姿勢でグッタリとしていたが、私はかまわず話を進めた後は、この男の記憶を少し変える、禁忌の魔法を発動した事にする為に、この男に掛けておけば、契約精霊も記憶が改変される、私は呪文が聞こえない様に話し言葉に呪文を入れ発動させるだけだ。空の人族は特殊な魔法の解除を女が、特殊な魔法の発動を男がするが、私は両方出来る、

「 そうね、あの国は行っては2度とダメ、それに聞いたわ、貴方もあの国に捕まったのでしょう?アルゲティは確かに空に帰ったの?」

「はい・・・シャム様、娘は禁忌の魔法を発動させ空に帰りました。」

私は記憶の改変を確認したので、男に何か望みは無いか聞く事にした。単に興味があっただけだった。

「もし許して貰えるのなら、魂と記憶の解除の魔法を・・・」

「空の人族として空に帰ると、地の人族として生まれ変わる、が、お前は何がしたいんだ?空に帰った子供はここには帰って来ない、」

神の涙の秘密、これを地の人族に知られる訳にはいかない、私は男の真相を確かめる為また威圧を掛けた、男は固まったまま苦しそうに声を出す。

「せ・・・成人の義を済ませ、すぐ飛び出す様に出て行った娘と共に暮らしたかった。み・・・認めたくは無いが、最愛の人と結婚して娘の子供を見たかったのです。あの子の笑った顔が見たいのです。」

お願いします。と頭を地面に擦り着ける。その地面は涙で地面の色が変わる程だった。
神の涙も無しで、地の人族はどこまで変わるのか興味が出た。男を見れば、安易な気持ちで言った訳では無さそうだから許す事にした。

「いいよ、けどもし翼が生えたらこちらに連れて来て、空の人族として迎える事を許す。その時まであれは取っておく、じゃあね」

私は魔法陣を作り男を街へ返す。特殊な魔法の発動させ完成させると、乙女に分かるそれを待った。数百年後発動が確認出来た、試しに球を地の人族に持たせて見る事にした。球の記憶を見終わると、次はあの男の妻を呼び出す。薄い紫の髪を揺らし来た女は私の前で膝を折り頭を下げた。

「シ・・・シャム様お呼びでしたか?」

私は女の声を聞いて心臓が跳ねた。母親と声が同じだった。私が産まれてから、かなりの時が過ぎた、さすがに空に帰っている、私は動揺を見せない様に頬ずえを着き話す。

「魂と記憶の解除の魔法は知ってるな」

私が問いかけると頭がピクリと動く。私はそのまま話を続ける、

「その者にこれを渡して欲しい、期限は無いが、お守りと称して渡せ、」

神の涙を空間ポッケから取り出し女に見せた。親は子供の球が分かる、だからなのか女は縋るような目でその球を見つめる、私はこの女を見て苦しい気持ちになる、またドレスの下のペンダントを握りしめた、女の視線はその球にあるので気が付いてないだろう、

「で・・・ですがシャム様あの子はもう・・・」

「翼が生えたらこちらに迎え入れる、球があれば空の人族も、あれを同族として受け入れるだろう、」

私は女に甘い言葉を掛けるが、女は微動だにしなかった、だからやれと命令をすると、女は震える手で球を空間ポッケに入れた。

「悪いけどもう少ししたら客人が来るの、そのまま飛んで帰って」

女は頭を下げたまま頷くと、後ろ向きで立ち上がりそのまま飛んで帰る、私は女を見えなくなる迄見送り、すぐさま子供の墓に行きそこに咲く花を添えた、客人は来ない、あの声を持つ女の事をもう少し見たかっただけだ、

ある日花達が騒いでいた。地面を見れば誰かが水やりをしたらしいが、この場所は幻惑魔法が掛けられ招かないと来れない、この場所に咲いてる花達は特殊で、私に侵入者の場所を細かく教える、それに従い魔法を発動させ場所を特定した。あの例の娘だった。

無断で花畑に入り水やりをして、花を持ち帰った娘を、花の香りを使い意識だけを呼び出した。娘は白金の髪色だった。頭を下げ細い両肩は震えている、

「アルゲティ」

花を持ち帰ったのは許すが、子供の墓の前で寝た事を許せなかった。感情的にならない様にしたが出来なかった。いつの間にか威圧してしまった。娘は声が出ないらしい、小さく口がパクパクと動いている、

「自分の役割を覚えてるか?」

娘は首を横に振る、空の人族は役割を持って産まれる、例えるなら私の世話をした使用人達は、私を守り育てるのが役割だ、私が拒絶する迄は役割は続く、だがこの者は地の人族、いくら魂が同じとはいえ空の人族の役割は無い、知らないのも当然とも言える、だからアルゲティの役割を伝える事にした、まず最初は不完成な魂と記憶の解除を完成させる事にした。

「忘れたのか?役割を・・・特別だ」

「アルゲティお前には罪がある。
 1つ目、滅ぼしかけた土地に向かい、それを見つけ出せ、それはその地に行けば分かる。

 2つ目、アルゲティそれは役割、お前は無情な地の人に命を掛け散らしたが、本来アルゲティ空の人の役割では無い、これは1つ目が終わり次第話す。」

そうあの地に行けばいいだけだ、自分が何をしでかしたのか思い出すだろう、
後はスっと手を横に出せば、記憶の中の髪色や瞳の色に変わり、あの国に入れば変わる事は無くなる、私はそのまま娘の意識を身体に返した。

しばらくしてから私は、娘の父親を呼び出し、母親を連れてくる様に言うとすぐ転移して行った。
私は広い花畑の真ん中の拓けた場所、呼び出した2人を待つため椅子に座り、そこから見える子供の墓をぼんやりと見ていた。
魔力を感じてそちらを見れば、花畑の向う側から空の人族が2人飛んで来る、その内の1人はオーキッド色の髪を揺らし私の前に来ると膝を折り頭を下げる。まずは女に球を娘に渡したか確認する。

「ライラ例のものは渡したか?」

「はい・・・ですがあの子は・・・」

女は悲しげな顔をしていたが、声が母親と似ている為、意識しない様に横を向き視線を逸らす。
私が手を横にゆっくり振ると、私の意のままに動く人形が出来上がる。行けと指示を出すと、それは自分で魔法陣を作り転移して行った。
それを禁忌の魔法を使ったお仕置として向かわせる。こうでもしないと示しが付かない、禁忌の魔法を使わせない様にするのも、乙女の役割だった。
私の名前を覚えていた男は顔を上げると、私の名前を呼ぶ、

「・・・シャム様何をなさるつもりで?」

「禁忌の魔法を使ったお仕置だね」

次会った時には忘れている癖にと笑う、クルクルと髪を弄りながら目の前の2人を冷めた目で見る。女は勢い良く顔を上げ涙目で叫ぶ、

「シャム様!罰なら私が受けます!」

 母親と同じ声で叫ぶ、一瞬戸惑ったが微笑んで誤魔化す。

「罰は罰だよ、私が直接行っても良いけど、それじゃつまらないでしょ?」

その後もやり取りは続いたが、あれを渡したのなら娘をこちらに呼ぶだけ、

「どうなるのか楽しみだよ、アルゲティいや・・・今はトゥカーナか、あれと出会って君はどんな顔をするのかな?この試練を乗り越えてみせて私を楽しませて頂戴」

夫婦を転移させ私は屋敷に帰る為に飛び立つ、
そろそろ娘を連れて、私の人形が帰ってくる筈だ、娘の居る場所の近くで姿を変えた。それはアルゲティが愛した男の姿、球を見れば持っていた人を見れる、
人形が被っていた黒い布を被り娘の前に出ると抱き着いた。その時に幻惑魔法を掛けた。これで娘は私をあの男と信じ込む、この試練を乗り越えたら帰す。乗り越えられない時はこのままここで私と暮らす事になる、さぁ楽しい時間の始まり、

「アルゲティ君に逢えた!」

甘く微笑み娘を見ると、目に涙を貯めて私を見る、その涙を優しく拭い、また抱きしめた。人を抱きしめるのは久しぶりだった。抱きしめながら話す、

「アルゲティを待っていたんだ!ここで一緒に暮らそう!」

「アウスト・・・」

もう少しであの魔法も完成だろう、私はニヤリと笑った。
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